山本幸久のレビュー一覧
-
購入済み
しっとりとした佳作
雨の季節に合うしっとりとした良い作品だと思う。
学生時代の話と今の話が交錯して、結果的に良い方向へまとまってゆくけれども というようなストーリーが読みやすい文章で語られている。 -
Posted by ブクログ
雛人形職人や製作現場の現状を通して、伝統工芸やそれに支えられ発展してきた町の変化を描く、お仕事小説。
* * * * *
雛人形職人の世界や製作現場の現状が端的に書かれていて、わかりやすかった。
匠の業の継承や後継者不在という問題は、今やあらゆる伝統文化の世界に共通しているのではないでしょうか。その原因は無意味としか思えない因襲に起因するところが大きいと思います。
昔気質の職人たちの無駄に封建的な意識が変わらない限り、伝統文化は廃れていく一方でしょう。そこに気づいて少しずつでも改革していく必要に迫られているのが、伝統文化の世界だと思います。
本作でも、主人公の恭平が組合の年寄り連中に気遣いつつも、新しい制度作りに心を砕いていました。そして本作の魅力になっているのが恭平を支えるスタッフ、中でもクリシアの存在でした。人物設定の妙。このあたりは作者のうまさだと思います。
山本幸久氏の作品はコミカルで軽いものばかりと思っていたので、本作のような正攻法(?) の作風のものは新鮮で面白く、一気読みしてしまいました。
欲を言えば、恭平と寿々花の仲がもう少し進展したところまで読みたかった。特にモモちゃんをもっとうまく動かして欲しかったと思いました。 -
Posted by ブクログ
スカイツリーを見上げる下町の片隅にある商店街の物語、第4弾。
戦後の焼跡に24軒集まって始まった商店街ということだったけれど、今では80軒近くの店があるという。
毎回、冒頭に地図が載っているけれど、その本に載っている短編のタイトルのお店だけなので、これは・・・あの物語のお店の場所なのだが・・・と迷ってしまう。
今回の桜さんのように、お店を出て歩きながら紹介してくれると、ふむふむ、川平金物店は、水沢文具店の向かって左隣なのだな?とわかって嬉しい。
今までに登場した、全部のお店が載った大きな地図が見たいなあ〜
老朽化した二階建てで、一階がお店で二階が住居という作りが多い。
看板も古い言葉で、若い子には読めないようなものもある。
かといえば、おしゃれで新しいお店もあり。
ずらりと並ぶ入り口の奥には、それぞれの深い物語があるのである。
今までも、老いと若きの交流のお話が多く描かれてきた。
今ではおばあちゃんたちも商店街のグループLINEで連絡を取り合っているという。
20代30代の若者たちで作る青年会の活動も活発になりそうだ。
デパートがオワコンになった今、商店街って、逆に新しいのでは?と思い始めた。
一軒目『サクマ手芸店』寺地はるな
糸子と康恵はアラ還の従姉妹同志で、康恵の母から受け継いだ手芸店を二人で営む。
見た目と名前がまるで逆の、二人の「女の人生」は・・・
二軒目『ツルマキ履物店』蛭田亜沙子
23歳の小嶌以都(こじま いと)は、店主の鶴巻勲(つるまき いさお)に靴の修理を習っている。
老靴職人と以都の交流。
赤い靴にまつわる数奇な物語も。
三軒目『川平金物店』彩瀬まる
狭い小屋の中では一番弱い者がつつかれる。
命の恩人・茂さんを慕うチャボの桜さん。
四軒目『〜中古楽器・中古レコードの買取・販売〜しゑなん堂』芦原すなお
ロック好きの女子大生と、ロック好き中年の店主・レノンさんの交流。
名曲は色褪せない。
五軒目『インドカレーマーマレード』
絵美と岳(がく)の若夫婦で営む、本格スパイスのカレー店。
仲良し夫婦に危機が。
六軒目『カフェ スルス〜コアラちゃんの巻〜』大島真寿美
昔の演劇仲間のアラ還女子たちで始めたお店も、三年持った。
そして、彼女たち自身も驚くような変貌と成長を遂げるのであった。
お店は生き物。
七軒目『おもちゃ屋「うさぎや」』山本幸久
一冊の締めくくりのお話。
ほぼ全てのお店の名前と女性たちの名前が登場すると言っても過言ではない。
女性が元気な商店街、男子も頑張らなくっちゃ!
商店街に未来はある。 -
Posted by ブクログ
そろそろ雛祭りの時期である。
そして、最近テレビで、水墨画と雛人形について是非見たいと海外から女性が来日している番組を見たところだった。
雛人形は、頭師、着付師、髪付師、手足師、小道具師とそれぞれを分業で作っている。
ひとつひとつ、手作りで魂をこめて作っているのが、よくわかった。
そして、時代によって、代理雛の顔も変化しているのを知り、とても感慨深く伝統の凄さも感じた。
そのあとこの本を手にしたので、最初からすんなりと入り込めた。
この物語は、独身の恭平が、亡き父のあとを継ぎ人形職人をしながら社長として、高齢化した職人たちといっしょに奮闘していく話である。
伝統を継承しながらも今の時流に沿っていくこと、そして繋げていくことが、とても難しいのだと思った。
突然弟子入りした、前向きなフィリピン女性により、新たな風が入ってきたようで、いろいろな角度から物事が見えるようになったのでは…と思えた。
そして、修復した一つの仕事から世界へ向けての新たな仕事へと繋がる。
恭平のプライベートも独身は卒業か?と思わせる彼女の存在。
とても心温まる話だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ老舗人形の8代目をしている恭平は、職人が高齢化し後継者が育たない現状に危機感を覚えていた。
高校時代ボート部のキャプテンをして最高のモテ期だったにも関わらず、未だ独身で周りはヤキモキしていた。そんな時、ベテラン職人がフィリピン人の女の子を酔っ払った勢いで弟子にしてやると言ったのを本気にし、店にやってきて…
とにかく恭平が人が良い。いきなりやってきたクリシアに対しても追い返さず、自分の店で雇ったり、無償で母校のボート部のコーチも引き受けたりなどお人好し意外何者でもない。
出戻りで地元へ帰ってきた寿々花との距離も中々じれったくてもどかしかったけど、上手くいきそうで良かったです。
酒癖悪い宮沢だったけど、孫の雛人形の頭だけ作れてホッとしました。恭平の優しい嘘で救われた気がしました。