山本幸久のレビュー一覧
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5人の芸者が紡ぐ人生模様。文庫版書き下ろしの「お母さん」を加えた全6編からなる物語。とても面白かった。読む前は芸者というと海千山千のイメージだったが、彼女たちも普通の女性と変わらないのだと感じた。そうそう本作にはアヒルバスの主人公、デコさんも出演。相変わらずの姿にニンマリ。なんだか儲けた気分。
あらすじ(背表紙より)
東京八王子の置屋「夢民」の新人芸者・弐々(杉浦晴子)は元女子高生。大学受験に失敗、恋人とも別れてなぜか芸者の道へ。「夢民」には他にも元丸の内OL、元キャバクラ嬢、元看護師のシングルマザー、そして元女子プロレスラーなど個性的な面々ばかり。彼女たちは人生の逆境を乗り越え最高の芸を見せ -
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お仕事系の小説が得意な山本幸久。大人を主人公にした作品はどれも面白くて、著作をすべて大人買いしたけれど、子どもを主人公にした『ヤングアダルトパパ』が生理的に駄目でした。だから、小学生が主人公の本作はおそるおそる読みはじめたのですが、やられた(笑)。序盤中盤はわりと普通、終盤に胸キュンキュン、切なさにちょっぴり涙。具体的には230頁目付近。もう、大好きです。
小学5年生の山田香な子。平凡な姓にへんてこな仮名遣いの名、クリスマスイブ生まれ。文京区の高層マンションに住んでいたのに、父が突然仕事を辞め、母の実家である葛飾区の工務店に勤めるという。最初からお父さんが婿養子に入っておいてくれたなら、あり -
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『ある日、アヒルバス』が気に入って、昨年「大人買い」した山本幸久。これまた元気をもらえる本です。
凪海(なみ)はデザイン事務所“凹組(ぼこぐみ)”に勤める新米デザイナー。凹組は、30代半ばの共にデブの男2人、大滝と黒川と、凪海を含めて、社員はたったの3人。ある日、給料かつかつの生活から脱却するチャンスが訪れる。寂れた遊園地が大々的にリニューアルするため、ロゴマークとイメージキャラクター案を募集しており、凹組がそれに応募したところ、採用されたのだ。ただし、今回採用されたのは、凪海がデザインしたイメージキャラクターのほうだけ。ロゴマークは別のデザイン事務所“QQQ”が応募した案の採用が決まり、本 -
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連作短編集の本作、1話目の主人公はフリーの映画宣伝マン、藍子。2話目以降、彼女が関わる人たちが数珠つなぎ的に主人公として登場します。藍子の不倫相手やその妻子、不倫相手への腹いせに結婚した男の再婚相手と、見る側が異なる楽しみが味わえて面白い。
小説として楽しいだけでなく、嬉しいのは映画の話いろいろ。映画好きが高じて宣伝マンとなった藍子は、自分が気に入った映画に客を呼ぶために体を張ります。そんな彼女の姿にシビレる若手宣伝マンや、女好きの長老評論家、東映まんがまつりでしか映画を観たことがなさそうな配給会社のオッサンなど、映画関係の登場人物がたくさん。映画好きとしてはたまらん。 -
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ネタバレ「なんか行き詰ったり、モヤモヤすると、散髪にいくねん」という知り合いを何人か知っている。女性にとって髪は命ともいえるくらい大切なものだと言うが、男にとってもそれなりに大切なものなのである。
といってる俺は、手入れが面倒くさいので、坊主刈りだったりするのだが(笑
本作は、主人公宍戸勲の半生を床屋と家族を通じて描いた連作短編集。最後の2話を除いて、70代の勲の人生を遡る構成が面白い。前の作品に出てきた描写について「あぁ、ここのこれね」って発見できる快感が良い。仕掛けの妙で読ませてくれる。
主人公一家は結構波乱万丈の時を過ごしており、描きようによってはもっとドラマチックに仕立てられなくもないと