京極夏彦のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
民俗学に造詣の深いミステリ作家の京極夏彦が、柳田國男の『遠野物語』を再構成した作品です。
現代の文章で書きなおされた本書を通して原作の魅力に触れることができるという意味では、評価されてよいのではないかと思います。
解説を担当しているのは民俗学者の赤坂憲雄で、民俗学と文学の境界を侵犯する『遠野物語』のテクストに秘められた現代的な可能性が本書によって解放されることになったと述べられています。もちろん民俗学的な想像力をミステリに引き入れるという仕事は、著者や三津田信三、佐藤友哉らによっておこなわれており、さらに山岸凉子の少女マンガなども同様の試みとみなすこともできると思いますが、そうした方向から -
Posted by ブクログ
京極夏彦が遠野物語を現代語訳(と言うと少し大げさな気もするが)するだけでなく、序も含めて順番を大幅に入れ替えてまさにRemixしている。もとの遠野物語も佐々木鏡石の語りを柳田が語り直しているようなものなので二重の語り直しであると。
原典に沿って淡々と訳している箇所もあれば、怪異譚の性格が強いような章は、原典にはない心理描写を思い切って盛り込んで小説風になっている。京極の他の作品は読んだことないのだが、なるほどと思わせる独特の文体。
風邪で熱に軽くうなされつつ読むのにちょうど好適であったか。柳田はまさに同時代のことだと強調しているが、いくら田舎でも明治も終わりの時代にどこまでこれらの話が真剣 -
Posted by ブクログ
映画館に座らされる桟敷童は、座敷童の店版。
弟子に! とやってくるのは迷惑ですが
そんな理由からやってこられるのも迷惑。
しかもうっかり、某探偵に桟敷童に興味をもたれるとか
何してても怪しいのに、よくもまぁ…。
しかもここから~の事件。
掃除少年たる、自分を馬鹿だという少年。
こういう性格かと思ったら…でした。
探偵、関係ない気がします。
とはいえ、話としては面白かったです。
なぜ映画館に若者が増えたのか、とか。
いやでもその趣味はどうかと…しかも掃除少年まで。
一番の謎は、弟子に、とやってきていた彼。
え、そういう落ちはありですか?! でした。
幼少の頃のにらまれ、損としか…。
でもそれ -
Posted by ブクログ
九篇の鬼気迫る物語を収めた、京極小説の神髄!
日本には昔から「鬼」にまつわるお話が沢山ある。
子どもの頃に読んだ童話にだっていろんな「鬼」が登場してくるし、地方のお祭りなどにも「鬼」の存在は色濃く残っている。それに「鬼」がつく言葉も沢山ある。
ではいったい「鬼」とは何なのだろうか?
赤色や青色の肌をしている?
角が生えていて牙が映えていて、棍棒を持っている?
それとも太鼓を持っている?
鬼は人を襲うの?
どれが本当でどれが作り物なのか。それともすべて作り物なのか。または本当なのか?
暴れ回る京極夏彦氏目線の「鬼」たち。
人の心に巣喰う「鬼」たちを見せつけられて、己の心を見つめなおす良い -
購入済み
読むのがむずい&分厚い
昔、友人が読んでいたので、内容と本の分厚さが気なり購入。(のちに、この本を読んでいた友人を尊敬した。)
当時、買って後悔・・・。内容むずい。(使われている言葉が普通辞書でも、なかなか出てこない、ネットで調べてもなかなか出ない。絶対漢字検定1級クラスの文章だ!)これを書いた人、嫌がらせで書いたと当時思った。読めないので数年放置。
その後、映画になっているというので、そちらを見てから、再読。
再読して感動!!文字の凝りもすごいが、内容の凝りもすごい。
文字が読めるようになると、こんなすごいものが読めるようになることを教えられた作品。
-
Posted by ブクログ
百物語シリーズのある意味一番最初を描いた作品。
又市さんが江戸に来て、どのような経緯で「御行奉為-」ようになったかを描いた作品でした。
京極さんのお話は他のシリーズも含めて順序立てて読んでいかないとわからないものが多いです。
この本も順番通り読まないと、最後に起こる紛争とか、よくわからないかもしれません。
いずれにしても世の中の損を引き受けるというのは、身だけではなく心もすり減らすことなんだなぁ…と思いました。
本音と建て前ってバランスが難しいし、自分のなかで自分の外面と本当の自分と自分が思い込んでいるものを調和させるのも難しい。
楽に楽しく生きていきたいけれど、ときには苦しんででも自 -
Posted by ブクログ
ネタバレ小股潜(くぐ)りの又市さんらと別れてからずっと後。
徳川幕府が倒れ、明治になってから、薬研堀に引っ越した百介さんが、若いお兄ちゃんたちに昔話をするという設定でいくつかの物語が語られていました。
どれも妖怪譚って感じではあるけれど、実際は人が起こしたやり切れない事件や出来事を「妖怪のしわざ」ってことで落としどころを得るようなお話。
結局、人の哀しみや苦しみを全部人のせいだと暴いてしまうと、心の癒しが全くできなくなることがあるんだろうね。
今の日本だって、犯人が逮捕されても被害者やその家族は、そいつを殴ることも切り刻むことも自由に罵ることも同じような目に遭わせることもできないじゃん。
人で -
Posted by ブクログ
土佐あたりで聞く「七人みさき」の話から平家の落人伝説なども絡めて舞台は四国から北陸まで及び、大きな悪を絶つまでのお話でした。
各章に色々な妖怪のタイトルがついているんだけど、それらはすべて連続しているお話でした。
京極さんのお話は、シリーズで読んでいかないとわからないものが多いね。
幕府にいた大きな黒幕退治についてはサラっと済まされていて、いろんな人間関係が絡んだ「人間の悪」について描かれていました。
でも、スッキリするお話じゃなかったなぁ…。
そりゃ、悪い人間でもそれなりの生い立ちだとか悪になってしまうかわいそうな部分とかがあるんだろうけれど、何の罪もないのにそういった悪いヤツに凌辱さ