京極夏彦のレビュー一覧
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・京極夏彦「虚談」(角川文庫)を読んだ。これは、「もしかしたら。(原文改行)今、見聞きしているこの現実らしきものこそーー。(原文改行)嘘なのかもしれないのだし。」 (143頁)といふ「クラス」の最後の文章に集約されるのかもしれない。帯には「この現実はすべて虚構だ」とあり、カバー裏には「この現実と価値観を揺るがす連作選。」とある。表現は悪いが、語られる内容が現実であるのかどうかが分からない物語といふことであらうか。例へば安部公房はとらぬ狸とかデンドロカカリヤ、S・カルマとかを使つて「この現実と価値観を揺るがす」やうな作品を書いた。ところが京極はSF的な要素や幻想文学的な要素は排除する。物語はあく
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Posted by ブクログ
すべて三文字のカタカナタイトルが付けられた怪談集。
「レシピ」が本書の華麗なる嘘の世界を開く。
スイートポテトにココナッツミルク。
言葉だけの印象では何も怖くない。
そして出てくるおばけも怖いわけではない。
それより怖いのは、どこまで妄想なのか、どこまで真実なのか、そっちの方だ。
「クラス」も、同じく虚実ない混ぜの物語だ。
妹を失ったクラスメートの話のはずだったのに、そもそもの前提を全てひっくり返される。
「キイロ」も子供の遊びから始まる怪しげな物の存在。
子供の頃はなんとなく見よう見まねで拝んでみたり、あるいは恐れてみたりする。
大人になるに従ってそれが信仰に変わり…ということを考える -
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『豆腐小僧双六道中ふりだし』で登場した豆腐小僧が、「豆富小僧」として現代に出現した「小説豆富小僧」のほか、狂言や落語の作品が収録されています。
豆富小僧は、世界の天候をコントロールする技術の開発を進める亜月博士を母にもつ少年・敦史が、神社の廃屋で「豆富小僧」という妖怪を思いえがいたことで、現代に出現します。『豆腐小僧双六道中ふりだし』と同様、達磨や三毛姐さんといった妖怪たちとのコミカルな駆け引きの横で、亜月博士の務める会社を乗っ取ろうとする金の亡者の犬上や、過激な自然保護団体の「フィールド・フォックス」の面々がドタバタ劇をくり広げます。『豆腐小僧双六道中ふりだし』の著者自身による、現代を舞台 -
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『遠野物語remix』以来、2作目に読む京極作品。
聞くところによると、彼の作品の中では珍しく、かなり温かい雰囲気の作品らしい。
主人公は、益子徳一という、リタイアした男性。
公団住宅に一人で暮らしている。
この人物の、何でもないといえば何でもない日々が、本人のとりとめのない語りで描かれる。
地デジとやらに変えねばならないとやってくる「田中電気」二代目とのやりとり。
スーパーでうっかり試食してしまい、欲しくもないウィンナーを買うことに、自分で追い込まれていく過程。
きっと、自分に余裕があったら、こういう徳一さんにおかしみを感じたりするのだろう。
が、今は時期がいけなかった。
忙しくて、