京極夏彦のレビュー一覧
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ネタバレ「手首を拾う」
「ともだち」
「下の人」
「成人」
「逃げよう」
「十万年」
「知らないこと」
「こわいもの」
の8編。
このうち「成人」は東雅夫・編「平成怪奇小説傑作集〈3〉」で既読。
初めて読む、非・京極堂の一冊。
怪奇シーンド真ん中のリアリストが、実話怪談ブームに対してとった態度……実作でそれを表明しているあたりが、やはり一歩抜きんでている。
黒沢清がどれだけホラーを撮っても、おそらく幽霊など毛ほども信じていないのと同じく。
本作で幻想へ踏み込むのは、実際に幽霊が存在しているからではなく、文体芸。
ある筋とある文体が両立すれば、向こう側への回路がキリキリっと開いて、いてはならぬ・見てはならぬものが存在し始めてもう後戻りできない……その気配を変奏した短編集。
茫漠とした思弁が、カキっと異界チャンネルに合う、というか。(どうにも擬態語が多いね)
でも上に書いたことって、上質な小説すべてにあてはまることなのかもしれない。
要素の少ない「手首を拾う」「ともだち」「下の人」もいいし、一番具体的な「成人」もいいが、「逃げよう」のスラップスティック一歩手前なわちゃわちゃ具合も面白い。 -
Posted by ブクログ
殺された女の関係者らの前に突如現れた男。各章一人の関係者と男の対話によって物語は構成されていく。男との対話の中で剥がされる彼らのメッキと露われていく彼らの不全。見出される人間誰しもに"普通の"暗黒。そして女が男の問いにただ一人「死にたい」と言った訳。
人間誰もが嫉妬・不幸・自棄・諦観を着飾っていて、その実、裏では名誉・地位・栄冠を渇望している。前者は唯の自己防衛であって、後者を見ずに押し込むための蓋に過ぎない。だから問の前に「死にたくない」と言う。そしてそれは決して特別な事じゃない。人間に普通の暗黒なんだと。しかし中には本当に弱い人間がいる。彼らは声も出せず弱いとも言えずただ笑うことを知っている。彼らは何を渇望することもない。ただ偏に充足している。だから、問に対してただ真っ直ぐに「死にたい」と言うんだと。ここに普通の人と普通じゃない人の境界を示したかった。この小説に対する自分の勝手な解釈です。 -
購入済み
おでこ
最中事件も明智コスプレ事件もしょうもなくてほのぼの学生らしいけど、咄嗟に思いつくのすご。でもあの短時間で早着替えは無理がありそう。中禅寺先生のおでこの縦線ってこんなに露骨だったかな。
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ここのところ、“どうしました?”という勢いの刊行ラッシュだった京極センセ。
(多分、デビュー30周年がらみということなのでしょうけどね・・)
本書は江戸の長屋を舞台にした謎解き奇譚、連作八話が収録されております。
慣れているとはいえ、やはりこの分厚さに“重っ(物理)”とはなりますが、内容的には連作短編ということもあってか、サラサラ進む読みやすさでございました。
〈藤左衛門長屋〉の家主(藤左衛門)の息子で、差配の藤介が語り手となって、長屋で起こった謎や事件を、店子でもある本草学者・久瀬棠庵が真相解明していく展開でございます。
で、棠庵が探偵、藤介がワトソンという役割なのですが(京極堂シリーズでいうところの中禪寺と関口、巷説シリーズでの又市と百介ってところですかね~)まぁ棠庵は日がな一日部屋に引きこもっているので“安楽椅子探偵”という感じですね。
因みに、このクセツヨ本草学者・棠庵は『巷説百物語』のエピソード・ゼロといえる『前巷説百物語』にも登場していて、本書は彼の若き日の姿が描かれているということになります。
「京極堂」や「巷説」では事件の解決において元凶や因を“妖怪”のせいにして丸く収めていくパターンでしたが、こちらの棠庵は「虫」(昆虫みたいなリアルな虫ではなく“塞ぎの虫”とか“疳の虫”の「虫」です)のせいすることによって、事件が収まるところに収まっていくというところがポイント。
真相は突き止めるけど、敢えて煙に巻くのはお馴染みの“京極スタイル”ってところですな。
基本棠庵が謎解きをするのですが、八話「頓死肝虫」では藤介が奮起して事件解決するという話で、“藤介、やるな!”と彼の活躍に嬉しくなりました。
ところで、こちらは体としては“謎解き譚”なのですが、京極さんが本書についてのインタビューで「ミステリというより落語」みたいな事を仰っていたように、キャラたちの“テンポ良くかみ合わない”掛け合いが落語っぽいかも・・と思いました。
(あ、まわりくどいのはお約束です~笑)
ということで、結構ライトに読めちゃう“謎解きモノ”で楽しませて頂きました。
まだフィーチャーされていない店子もいるようですし、棠庵と根岸奉行との関係も気になるので、是非続編も出して頂きたい・・何ならシリーズ化しても良いかも、と思った次第です~。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ【2024年181冊目】
赤えいの幻、六部と舞首、生き続ける蛇、山男と移りゆく時代、光る青鷺、終わりの百物語。世に不思議なし、巷説百物語シリーズ第三段。
読むのに随分と時間がかかってしまいました。前作は「もしかしてここで終わるつもりでした?」みたいなお話でしたが、今作はその後の話です。どちらかというと読者側、巻き込まれ側の百介が語り手に変わり、四人の元武士たちが読者側という立ち位置に。
交錯する昔に起きた事件と、現在の事件を繋ぐ一白翁の回顧録というのが正しいかもしれません。ただ、小股潜り一向が好きな私としては伝聞ではなく臨場感あるその場その場の話として読みたい!と思うなどしました、だからなかなか進まなかったのかも。
京極堂シリーズに出てきた由良氏もひょっこり登場してきたりして、他シリーズとの連動ににっこりするなどしました。やはり鳥に囚われてるんですねぇ。
今シリーズは全部で七作、果たして次はどのような巷説百物語が展開されるのか。やっぱり目が離せそうにありません。
初読:2012年11月1日以前 -
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ネタバレ幽談
京極先生のショートミステリーを期待したのですが、いずれの短編も存在の不確かさを主題とした不思議な話集でした。手首を拾う、ともだち、下の人、成人、逃げよう、十万年、知らないこと、こわいものの全8編の短編集です。ベッドの下に”いる”「下の人」や生きた手首を拾う「手首を拾う」など、奇想を元にしたものや、アイデンティティの崩壊の様子を淡々と綴った「知らないこと」や「ともだち」、禅問答を思わせる「こわいもの」などいろいろなアプローチで壊れてしまうことを追求しています。
一風変わった怖い話を味わいたい方にはお勧めしますが、京極堂や又市シリーズのような爽快感はありませんので、ご注意下さい。
竹蔵 -
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ネタバレ徳一さん(72)の一日密着レポート、みたいな小説。
私が今まで読んでいた老人が主役の小説とは全然違った。
私が今まで読んでた小説は「老人なのにアグレッシブすぎる!」と思うくらい色々展開が変わっていった目まぐるしい小説だったので「これがホントの姿だよなあ」とある意味新鮮だった。
地味に生きてるようで、意外に顔を覚えられてる徳一さん。
あと、レンジが家にないので驚いた。
一体徳一さんいつの生まれなの!?と思って地デジ終了の2011年から逆算してみたところ、戦前の生まれだった。そりゃ色々ついていけないよなあ。
時々ハッとするセリフを言ったりしてた徳一さん。
「鍛えているから衰えません」と豪語している奴は本格的に年をとる前に死ぬ。とかは結構その通りなのでは?と思ってしまった。
あと「長く生きているんだからお前なんかよりずっと物知りだよ。ちょっと疲れてついていくのが面倒になってるだけだ」のくだりも。
今気づいたけど、私の初、京極夏彦だったわ。