奥田英朗のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
サラリーマンって大変だ。クライアントには気を遣い、上司の機嫌をとり出世を狙う。部下の突き上げ、同期との競争、女子社員の噂話‥そんな諸々と戦いながら家庭を守らなきゃならない。サラリーマンの悲哀を面白おかしく描く奥田先生、さすがです。
・マドンナ
新人総合職女子に恋心を抱いてしまった中年上司。おとな気なくも若い部下と張り合うが、結局は他部署の爽やか男子に持っていかれるという結末。(好きな女の子ができたことも、振られてしまったことも、妻は全てお見通し)
・ダンス
会社の規則に従わず、好き勝手に行動する同期を軽蔑しつつも羨ましく思い、馬鹿馬鹿しいと思いながらも運動会に参加して上司の言いなりになっている自分に嫌気がさす。気がつけば同期を応援し、上司に喧嘩を売ってしまっていた。(息子は同期と同じく自由に生きようとし、ダンサーを目指している)
・ボス
前任部長が移動し、さぁ次は自分の番だと喜んでいたのに、外部から同い年の女が部長に任命された。美人な上に頭がよく、隙を全く見せない。酒に煙草にゴルフ接待と楽しく過ごしてきた仕事っぷりを悉く否定され、窮屈さを感じる。
(隙がないと思っていた女上司に意外な趣味が‥。自分の妻にも若い歌手に恋する乙女の一面を見たばかりで、「推し」を持つ二人を羨ましく思う)
・パティオ
土地開発会社が取り組む「港パーク」は企業と住宅の誘致に成功したが、遊び場として観光客を取り込むことができない。閑散とした公園に、いつも藤棚の下で本を読む老人がいる。清潔でオシャレ、しかもハンサムで背が高く、信久は好ましく眺めていたが、会社が公園での企画イベントを開催するたびに姿を消し、信久がつい話しかけてしまった後はめったに現れなくなってしまった。(田舎で一人暮らしをする父親と、その紳士を重ね合わせ、彼らの憩いの場を奪ってはいけないと強く思う)
それぞれ主人公の家族の話と並行して語られ、妻にからかわれたり諭されたりする姿がまた面白さを膨らませている。時代設定はひと昔前、ちょうど私がOLだった頃と重なるので、「ダンス」や「ボス」の会社の在り方はかなり昭和的。社内旅行や運動会など懐かしの会社行事だ。