あらすじ
昭和三十八年十月、東京浅草で男児誘拐事件が発生。日本は震撼した。警視庁捜査一課の若手刑事、落合昌夫は、近隣に現れた北国訛りの青年が気になって仕方なかった。一刻も早い解決を目指す警察はやがて致命的な失態を演じる。憔悴する父母。公開された肉声。鉄道に残された“鍵”。凍りつくような孤独と逮捕にかける熱情が青い火花を散らす――。ミステリ史にその名を刻む、犯罪・捜査小説。
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Posted by ブクログ
20251015
初の奥田英朗さん、そして分厚さに圧倒されましたが読み始めたらあっという間でした。ミステリーとらいうよりヒューマンドラマな感じしますね。
昭和38年ということで自分の父が生まれた時代が舞台で、今とのギャップを感じられるのがおもしろかったです。まずお金の価値が違うし、携帯はおろか一家に一台電話のある時代じゃない。戦争から復興し、欧米の仲間入りをしようとがむしゃらだった日本、みたいなものを感じて、これが今に続いてるのかーと思ったりしました。
衝撃だったのは、身代金引渡しの時間変更を一斉に知らせられないということ。え、携帯あるじゃん?と思いましたが…ないんですよね。
昭和の警察、やくざ、事件、その泥臭さというか男たちの汗にまみれた感じがすごく良かった。
実写化の配役を語り合いたい。仁井さんのファン多そう。(笑)
Posted by ブクログ
ミステリーにも警察小説にも見えるけど、ジャンルを越えた「奥田英朗さんの小説」としか言いようがない唯一無二の味わいがあります。話の中身は辛いけど「人の清き心」に触れて生きることが少し楽になる、そんな小説だと思いました。
Posted by ブクログ
東京オリンピックの1年前の東京。実際に東京の下町で発生した誘拐事件をモデルとした刑事物の小説。
礼文島出身の青年と警視庁捜査一課の若手刑事。特に刑事が地道に足で操作を行い、また当時は個人の力量に頼りスタンドプレーや尋問での暴力など時代を感じる。
当時の風俗を活かした描写が絶品だが特急の名前を「しらとり」にしたのはなぜだろうか?実際は「はくつる」かと。オリンピックの前年には存在しなかった架空の列車だからだろうか。
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後半は息つく暇もない、緊迫の展開。
こいつが犯人なのか?いやでもそうじゃないと信じたい…と思わされる人物描写が圧巻。
空き巣の宇野と刑事の落合のダブル主人公の様な構成だが、2人の掛け合いなどが多いわけではなく周りを固める登場人物達が本当に魅力。特に落合のバディの大場が少しずつ落合を認めていく描写が良かった。
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日本中を震撼させた『吉展(よしのぶ)ちゃん誘拐事件』をモチーフに、奥田英朗が書いたフィクションミステリー。
昭和38年というこの時期は東京オリンピックを目前にして 日本中が沸き立っていた。刑事の捜査もアナログで、足で聞き込みし、恫喝し罪を白状させる力技…
そして何故誘拐し、殺してしまったのか…犯人の背景についても想像ではあるが描いている。実際の吉展ちゃん事件同様に、犯人は逮捕されるが、子供は帰ってこなかった…
小説を読んだ後に、実際の事件について書かれている記事などを読むと、かなり忠実に物語化していることがわかるので、なかなかリアリティある内容であるのは間違いない。
もちろん実際の犯人は当然に、その犯人のことを描いた小説の主人公も身勝手な犯行で情状酌量の余地も無いのだが、誘拐に対する捜査方法(逆探知、報道協定と公開捜査、ポリグラフ…ウソ発見器の導入等)の変遷がこの事件をキッカケに変わっていったということが何となくわかる。
800ページあるので、読み応えはなかなかでした。
Posted by ブクログ
最後まで怒涛の展開であっという間に読んでしまった。
この作品は2人の主人公がいて一人が宇野寛治、もう一人が刑事の落合昌夫。双方に感情移入してしまい宇野が人を殺したとどうしても思えなかったし、殺していて欲しくないと願った。
だからこそ最後宇野が自供を始めた時、怒りよりも悲しみを感じてしまった。
間違いなく言えるのはこの宇野という存在を作った継父が一番の悪だと言うこと。
Posted by ブクログ
奥田先生のこの時代の小説、面白すぎます。
オリンピックの身代金が大好きで、期待して読み始めたら期待通り。
罪の轍、、読み終えてタイトルの意味を考えて、、心が暗くなる。
Posted by ブクログ
文庫で再読。800ページは大作だが飽きない臨場感、スピード感。1960年代の東京五輪前夜、今はインターネットだが、この頃はテレビが新しいメディアだった。匿名の人々の心根の醜さは今に通じるようだ。表紙にも注目の価値あり。実際の写真だそうです。
Posted by ブクログ
素晴らしかったです。奥田英朗さんは大好きなのですが、本領発揮といかこの時代の熱さとかややこしさとかが、たっぷり味わえて最高です。「オリンピックの身代金」ファンとしても「オチ」が出てくるだけで、熱かった。
前半に丁寧にストーリーを紡いで、最後のほうはもうわくわくが止まりませんでした。
非常に切なく苦しい話ですが読んだ後の達成感良しです。
Posted by ブクログ
当時、10才の時の話で、周囲が騒がしかったのをよく憶えている。事件の中身については全く知らないままだったが、今回、小説ながらこんな事件だったのかと驚いた。しっかり読ませてもらいました。
Posted by ブクログ
800ページを超える大作。
犯人の自供を今か今かとページを捲る度に焦らされた。
東京オリンピック前の浮き足立つ昭和38年に起きた
最悪で悲惨な誘拐事件。刑事たちの犯人逮捕への執念に感嘆した。終盤、逃走した犯人を捕まえる描写は手に汗握るほどスリリングだった。
どんなに不幸な生い立ちや環境で育ったとしても、人を殺める正当な理由には決してならない。
結末はとてもやるせない。
Posted by ブクログ
後半は、怒涛の展開で読むのが止まらなかったけれど、犯人の動機や事件に至った経緯はそこまで深くなく、消化不良感はあった。
ちょうど青森旅行に行き、八甲田丸の見学もしたばかりだったので、最後の捕り物のシーンは光景を具体的に想像できて良かった。
確かに青森の朝はきれいだった。
Posted by ブクログ
昭和の東京オリンピック前年に起きた児童誘拐の社会派ミステリ
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昭和38年、東京
男児誘拐事件に人びとは震撼した──
絶対零度の孤独を抱える容疑者×執念でホシを追う捜査一課刑事
昭和三十八年十月、東京浅草で男児誘拐事件が発生。日本は震撼した。警視庁捜査一課の若手刑事、落合昌夫は、近隣に現れた北国訛りの青年が気になって仕方なかった。一刻も早い解決を目指す警察はやがて致命的な失態を演じる。憔悴する父母。公開された肉声。鉄道に残された〝鍵〟。凍りつくような孤独と逮捕にかける熱情が青い火花を散らす──。ミステリ史にその名を刻む、犯罪・捜査小説。
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礼文島で昆布漁の下働きをしている宇野寛治 二十歳
義父からの虐待のせいで、子供の頃から脳機能に障害があり、周囲から莫迦だと見下されていた
金に困ると、良心の呵責を感じることなく空き巣を繰り返している
あるとき、質屋に売った事をきっかけに逮捕されかけるが、船を盗んで東京に逃亡
そして、東京暮らしでも盗みを繰り返すが……
読み始めはどんな物語になるのか先が見えず
面白さに関してはスロースタートなので人を選ぶかもしれない
ただ、途中からは、「吉展ちゃん誘拐殺人事件」をモデルにしている事に気づき、どんどん面白さを増していく
それと共に、あの事件がどうなったのかを知っているが故に陰鬱な気持ちにもなる
あの事件は昭和の犯罪史の中でも大きな事件として扱われる
日本で初めて報道協定が結ばれた事件でもある
逆探知ができない時代
家電と公衆電話の特徴
市民に協力を求める劇場型捜査の始まり
警察の捜査方法の杜撰さ
情報を共有しない個人成果主義
警察の不手際と右往左往っぷり
暴力団との馴れ合いなど
現代の常識と違いがあって、隔世の感がある
その他にも、昭和を感じる描写が色々
山谷で酒を飲んでいた人が貧血で倒れるのは、輸血用の売血によるものだし
活動家達の存在もそう
集団就職の欺瞞
障害者に対する差別意識など
昭和を感じる部分も多々あるけれども
便利なツールの広まりによる影響は現代にも通じる
「馬鹿が一万人に一人の割合としても、分母が一億人なら一万人の馬鹿が出現する。全国津々浦々まで行き渡るってえのは、こういうことでしょう」
現代ではSNSが正にこれ
無関係な人間達の馬鹿騒ぎ
知名度のためのパフォーマンス
正しく使えば便利だけど、悪用しようと思えばできるし
善意であっても迷惑な事もあるしな
途中で、この1年後を描いた「オリンピックの身代金」に登場する刑事さん達だと気付くけど、それぞれの特徴は覚えてないなぁ
私が物語を読むときは、登場人物を記号的な読み方をしている面がある
終盤、宇野が死刑になるかどうかの疑問
大場は、一人殺したなら無期懲役、二人なら死刑と言っていたけど
永山基準はこの事件の後だた気がするんだが?
この時代にもそんな認識が世間ではされていたのだろうか?
それを聞いた宇野の行動
まぁ、序盤から色々と伏線はある
もちろん容認できないけれども、途中で大場に連絡を取ろうとするあたりが、どうも憎めない
考えようによっては単なる馬鹿なのだろう
ただ、性根は曲がっていないというようにも捉えられる
もし幼少期にまともな親の元で育っていたら……、と思ってしまう
なので、宇野に同情する点がないわけではない
「こんなやつ死刑にしてしまえ」とも思わない
でも、罪がないわけではないし
悪いことは悪いことと認識しながらも窃盗を繰り返しているわけだしなぁ
それにしても事件の結末に救いがない
3日くらいで読んだけど、800ページ以上あったようだ
このくらいの厚さでも、京極と比べてしまうとそんなでもなくなってしまうバグ
まぁ、上下巻や複数巻の作品もあるので、心理的ハードルはそんなにない
Posted by ブクログ
1963年に発生した”吉展ちゃん誘拐殺人事件”を題材にしたミステリー。北海道出身で知的障害がある宇野寛治は稚内や礼文島で数々の問題を起こし、逃げる様に上京。花の都・大東京での生活にも慣れてきたところ、時計商宅で殺人事件が発生。容疑者として寛治が浮上するのだが、神出鬼没の寛治は一向に尻尾を出さない。同じ時期、豆腐屋鈴木商店の吉夫ちゃんの誘拐事件が発生。。。時計商殺人事件と吉夫ちゃん夕刊事件の関連性は!?800頁を超えますが、ガッと読めちゃうので寝不足にご注意ください♪
Posted by ブクログ
犯人はこの人だろうとある程度分かっても、捜査の描写が長くても、退屈にならないボリュームだった。
犯人が罪を認めてからが展開が早かった。
当時の社会の様子とか、警察内部の様子とかが細かく描かれていてこの時代ってこんな感じだったのかと面白かった。
Posted by ブクログ
最初から最初までひきこまれっぱなしでした。
犯人の男の生い立ちや心理描写、時代背景とその時代に生きる人たちが緻密に、かつ生き生きと描かれていた。
しかし、犯人の生い立ちはあまりにも過酷だった…。
犯人を追う登場している刑事たちの、執念の捜査に一気読みでした。
当時は携帯端末もパソコンもないし、電話だって全家庭にあるわけでもなく、まだ新幹線だって開通していない時代。防犯カメラもなく、当時の警察官たちの捜査は大変なものだったろう。
大場と落合のコンビがよかった。
Posted by ブクログ
誘拐事件が起きるまでが長く感じたが、その後はジワジワと真実に迫っていく感じで、続きが気になり一気に読み切ってしまった。
日本が戦争から立ち直り景気も良くなり翌年には東京オリンピックがあり、皆が明るい未来に向かっているそんな時代背景だったり、今では忘れかけていた不便さがはがゆくもあり読んでいて懐かしかった。
ただ実際にあった事件を元にしているというのが頭にあり、半分ノンフィクションを読んでいる様な気分にもなり読み終わった後には辛さが残ってしまった。
Posted by ブクログ
刑事と被疑者、ほかの登場人物の視点で描かれ、飽きなく、また実話をモチーフに誘拐というテーマなので
さらに緊迫感もあり、先が気になりどんどん読めました。「砂の器」を思い出します。
でも本作は事件についてより、当時の描写にすごく興味を持ちました。(事件については尻すぼみ感が、)
これまでは感情移入しやすかったり親近感持てる、その時その時の時代設定の本を好んで読んでいて
あまり時代設定の違う作品は、これというもの以外読んでこなく、なんで書くのかなって思っていたくらい。
電話やテレビの登場で事件が混乱って、実は今のSNSに置き換えると同じなんだと。
歴史は繰り返すってほんとだなと思いました。
ちょっと読書の趣味嗜好の幅が広がった本になりました。
それにしても、東京から礼文島に着くまで二日後って、、技術の進歩も感じます。
Posted by ブクログ
奥田さんの小説が好きです。伊良部さんではあんなに笑わせてくれるのに、これはただただ重い…でも気になってやめられない。実話をもとにしてるという感想があって、それにも驚きました。本当にあったと思うとさらにただただ辛い。
この犯人には犯人であってほしくなかったし、どこかで幸せになってほしいとも思ってたけど、ただの自分勝手だなと思った。警察には色んな人がいるけど、犯人逮捕のための執念はすごい。
Posted by ブクログ
1つの大きな事件が、どうやって起きてどう解決されていくのか、ヒリヒリとリアルな描写は、ずっと手に汗握る。
ページ数は多いが、全く飽きることなく、常に展開があって、事件が転がり続ける。
高度経済成長期の日本の温度感や、警察の古い体質がとてもリアルに伝わってくる。
最後に大きな展開は無いが、どうすれば時間は防げたのか、考えてしまう。
Posted by ブクログ
素晴らしい作品でした。実話ベースですが、ミステリー作品としてのエンタメ要素もしっかりとあり、とても楽しめました。とにかく、現代から見れば、その当時の時代ならではの障害、障壁が如何に犯罪捜査を困難なものとしていたかがわかります。電話ひとつとってしてもそう、北海道と東京の行き来とってしてもそう。そんな中、奮闘する刑事達の感情やら組織論やらが非常にわかりやすく描かれています。また、舞台となる礼文、南千住山谷や上野、浅草等の、如何にもといった街々の状況や特性も情景伝わりやすく描かれており惹き込まれます。そして、宇野寛治の人生。ここまでの事件となってしまわないよう、どこかで防ぐポイントは無かっただろうか、、宇野の苦悩、負の誘発とその連鎖といったところでしょうか。ページ数も多く読み終えるまでに少し時間はかかりましまが、重厚感ある素晴らしい作品だと思いました。
Posted by ブクログ
上野・浅草界隈に地縁があることもあり、楽しく読めた。昭和の時代背景が丁寧に描写されており好感を持った。
一方でストーリーはやや間延びしてしまっていた印象。肝心なスタジアムでの身代金奪取の場面の真相が詳らかにならなかった点は刑事小説としては残念に思う。
Posted by ブクログ
展開、構成も良くて、読みやすい。
でも、ちょっと(かなり?)がっかり。
それまで(この本の中で)積み上げてきた人物像に全く合わない行動を、最後の最後で持ってこられても。途中までの面白さが台無しでした。人にもお勧めできない。
佳境に入る手前くらいから、(気絶ではなく)衝動的行動を取る傾向が示唆されていれば、まだ納得できたのだが。
Posted by ブクログ
昭和38年に起こった実際の誘拐事件を元にした犯罪捜査小説。
北海道礼文島から渡ってきた空き巣常習犯の青年と、警視庁の若手刑事の視点を中心に物語が進む。
この年代の下町が舞台ということもあり、逞しく好ましい人物が多く描かれるが、事件やその背景はやはりやりきれない
Posted by ブクログ
昭和38年の少年事件の話
莫迦と言われまともに仕事も出来ず
善悪の意識がない罪の重ね方が
やはり未成年によくある『育ち』によるもの
なのに逮捕されてからのしらばっくれようは莫迦には出来ない所業
なんともスッキリしない結末でした
Posted by ブクログ
重厚な作品。
加害者にもそうなる背景があったというのは理解できるが同情はできない。
被害者であり加害者。
轍はどこで断つことができるのだろう。
Posted by ブクログ
二連続で奥田英朗の積本消化。
クライマックスに向かって、だんだんと力が抜けていくようで、なんとも残念。
序盤は、本当にコイツが犯人なのか?と、吉田修一の「怒り」の雰囲気があり、ミステリーを醸し出していた。
それが中盤から犯人視点のロードムービーになり、特に謎がないというのが尻すぼみだった。
オリンピック直前の街の様子の描写は特筆もの。
刷新されていく東京の裏の山谷のドヤ街、国鉄や都電の乗換など、60年前の光景が見える。
事件を追う装置になるのが、当時の国鉄だ。
数十分ごとに上野から仙台行きや、青森行きの急行が出ていたのは今からでは考えられない。
当時の緻密な描写の反面、ストーリー展開が物足りない。
ニシン漁で栄えた礼文島は、昭和三十年の不漁を境にかつての賑わいは見る影もない。
幼少期の事件が原因で脳障害を持つ宇野寛治は、唆されて網元の番屋に火をつけて島を脱出して行方をくらませる。
数か月後、東京では強盗殺人が発生した。
連続する空き巣、賽銭泥棒の線を捜査一課の落合が当たっていくと、林野庁の標章を付けた作業服の男が浮かび上がってくる。
そして起きる小学生の誘拐事件。
警察の失態で犯人を取り逃したが、その捜査の過程で挙げられた人物が宇野寛治だった。
幼少期に継父に当たり屋をやらされて残った記憶障害は、宇野寛治の罪に対する意識の欠落を招いた。
生きるほどに、罪の轍が深くなる。