内田樹のレビュー一覧
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内田さんのブログの記事の再録本。今回もいろいろ考えさせられました。
「清水の舞台から飛び降りる」ような切羽詰った状況で下を見ずに飛び降りても、ちゃんとセーフティネットに引っかかるような直感の働き。「どうふるまってよいのかわからない場面で適切にふるまうことができる」こと。内田さんは人間の知性とはそういうものだといいます。なるほど~。
『1Q84読書中』にある、「おそらく読者は物語を読んだあとに、物語のフィルターを通して個人的記憶を再構築して、『既視感』を自前で作り上げているのである」という記述は目からウロコ。小説を読んで、その中のエピソードや空気を自分の経験や感性と重ね合わせるとき、確かに脳内でそんなことしてるのかも。
『記号的殺人の呪い』では、秋葉原の無差別殺傷事件を例に、無差別に命を奪われた「記号的殺人」の被害者たちは「誰でもよかった」と言われることで「死んだ後にもう一度殺される」、という表現にハッとさせられます。そして、こういう事件の容疑者が以前にあった無差別殺傷事件に言及することを「歌枕」の構造に喩えて論じる部分は、私にとってまったく新しい視点からの話だったけれど、本当にそうだと深く深く納得。
『妥協と共生』の、ご飯を食べるときに忙しく箸を使う「右手」が「口」に対して「おれはただ筋肉疲労がたまるだけなのに口のヤローは美味しい思いしやがって」と不満に思うことだってあるかもしれないけど、身体全体としてはうまくいってる、という「共生」の喩え話には笑えました。
次から次に面白い話が出てくる一冊。頭の中をガラガラと引っ掻き回される感じで楽しめました。 -
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内田樹の邪悪なものの鎮め方を読みました。
内田樹の主張が記述されているエッセイ本でした。
「子ども」から大人になれない人が増えすぎた社会、習慣としての「読字」の重要性、偏差値教育の弊害、記号的殺人の邪悪性、モラルハザードの構造、「常識」とは、現在の科学では証明出来ないものもあるかも知れないという柔軟性が大事、など面白い話題が満載でした。
それぞれの主張は面白いだけではなく、自分の生き方に組み込んでみたいな、と思うものもたくさんありました。
最後の章は内田樹が学生に向かって語りかける形で書かれていて、こんな先生に指導される学生たちは幸せだなあと思ったのでした。 -
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“いつもの”ブログ記事の再録本なのですが、今回は「邪悪なものの鎮め方」という切り口がドンピシャ決まった感じで最後まで(知的)興奮が続きます。
(前作の「昭和のエートス」にはまったくアンテナが反応しませんでした)
多くの記事が書かれたのは今から5年ほど前の2008年前後。本書に書かれている問題意識は当時よりさらに重要性を増していると感じました。曰く、
「どうしてよいかわからないとき、つまり、既知の解決策が当てはまらないとき、どうふるまったらよいかを知っていることが大切」
「呪いの力を馬鹿にしてはいけない。いつの間にか自縄自縛になっていないかもよーく考えよう」
「一気に社会をよくする政治は、歴史上、必ず粛清と強制収容所を伴っていたことに注意しよう。私たちの住んでいる社会には問題もたくさんあるが、身近なところから少しづつよくするしかない」
「科学的ではない、証明されていない、という時、それが単に私たちの手持ちの計測器の精度不足にすぎない可能性に留意しよう。」
など。
智慧なり。 -
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久々発見、内田さんの本。
ちょっと大きめの本屋さんでじっくり本棚漁る時間は至高ですが、収穫があるとなおよしですね。
「憂国論」というタイトルそのままに、現代日本の様々な問題を独特の視点から掘り下げて意見を述べている本です。
特に強い口調で何度も述べられているのが以下の3点。
・国家のことを考える際にグローバリストの言うことを信じてはならない
・市場開放・自由主義を行政に適用するべきではない
・国の役目は、国民全員をいかに食わしていくか、である(下村 治著『日本は悪くない 悪いのはアメリカだ』参考)
ざっくりといえば、フランスの特徴的な思想のひとつである「自然権」の影響を大きく受けた(と私は感じる)考え方+福祉国家(国民国家)思想がその根幹にあります。
他にも日米関係の特殊性や贈与経済への転換への展望などが書かれています。
著者自身も述べていますが、書籍に書かれた内容は決して一般的な意見ではないでしょう。
しかし逆に言えば、タイムリーで今風でないのに、こうして人が「なるほど」と思える文章を書くことができるということは、読者の視野を広げ、新しい考え方や行動のきっかけとなる可能性を秘めているのではないでしょうか。
個人的には、行政への自由主義的思想の介入度合がここ数年顕著である点は同感ですが、グローバル企業の意見に傾聴するか否かについては自分の知識が浅いゆえに一概に信じられないとも言えません。
また、天からの授かり物である先天的な資源(etc. 身体的特徴、才能)は他の誰かと分けあい、共有すべき、との意見について、後天的な資源(etc. 知識、能力)はどう考えていらっしゃるのか気になりました。
「この本で述べられていることはすばらしい!著者の言うとおりだ!」
というレビューばかりの本よりも、
「著者はこんな風に言っているけど他にはどんな意見があるんだろう or わたしは〇〇についてはこうだと思うなぁ」
といった「その先」につながる感想が持てる本が見つかるとうれしいですね。
こういった、手にとってよかったなぁ、と思える本に出会えるのはしあわせなことです。 -
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ネタバレWebに書き溜めたものを編集した、いつもの内田先生スタイル。憲法9条、教育論、倫理的生き方…等々、「おじさん」的には溜飲下がる切れ味のよいエッセイ。(切れ味のよさに惑わされ、自分で理解できた思っているだけかもしれませんが)。
その中で特に印象に残った言葉は、sauve qui peut 「生き延びることができるものは、生き延びよ」。船が沈没したり、最前線が崩壊したりしたときに、最後に指揮官が兵士たちに告げる言葉で、内田先生が娘さんの旅立ちに送った言葉。集団として生き延びることが困難な局面では、一人ひとりが自分の才覚で生き延びる他ないと。厳しい時代ではありますね。 -
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腰巻きに「おじさんと若者が,ゆるゆると日本の未来を話し合ってみました…」と書かれていますが,そのとおりのシンポジウムの記録でした。
ただ,話されている内容は,立ち位置がしっかりしていて,しかも包容力もある話で,とても好感が持てました。
グローバル化と国民国家とは両立できない…とすると,わたしたちは,もう一度,地に足をつけた国民国家を作る必要があるだろう。
話を聞いていると,「わたしたちの地域の再生も無理ではない」と思い,勇気が出て来ます。できるところから,できる人がやる。
「人はカネのためだけに生きているワケではない。」-これも腰巻きの言葉です。
第3回シンポジウムの結論…「ぬるリベ」(ぬるいリベラル)。これはいいですね。