内田樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
とにかく言いたい放題じゃねーか、と切り捨てるのは早計にすぎる。
少しばかり前の政治談義だが、ほとんどの事象は「言葉」の問題に収斂される。
言葉の(日本語の)構造の問題でもあるし、言葉をどう扱うかの問題でもある。
こういうことを押さえていないと、政治でも仕事でも失敗の要因を表層的なものにしか求めなくなり、ますます学習性無力感に陥るはめになる。
最近「空気」をどう作って人を動かすかってビジネス書を読んだが、感覚的に近いものがある。
沈む日本を、シュリンクする市場を、ダウンサイジングしていく社会を直視した上で、ビジョンが描けるリアリスト。少なくとも政治の場に求められるのはそんなリーダーっちゅう -
Posted by ブクログ
ちゃんと理解できていなかったからかもしれないけど、難しい本だった。
全体を通して、今問題視されている様々な現象に関して、政治的な観点から原因を探って議論している印象、特に一貫したテーマはないように思った。
特に気になったのは、
・人間の記号化による9.11同時多発テロなどの犯罪
・「天職」という概念による転職ビジネス
・原発を「荒ぶる神」として鎮める
という話だった。
ネガティブな話題が多かったけど、過ぎたことに対してポジティブに向き合う姿勢がいいと思った。
意識したわけではないけど、この人の著書は二冊目だった(一冊目は生物の福岡教授との対談)ので、この人の本は俺に合うのかも。 -
Posted by ブクログ
はぁ、内田樹はよいですね。
身体感覚に興味があり、読みました。
「オニババ化する女たち」三砂さんと内田樹さんの対談。女性の性・出産を軸に、身体感覚と個人の生き方、社会、組織のあり方についての対談。
目からウロコ。
▼コミュニケーションと身体感覚について。
余白、ノイズ、それを感じる、受け止める、待つ感性。
ビジネスの現場では、費用対効果(費用は時間的コスト)を考えて、「結論から先に、論点をまとめて、決めない会議は必要ない」などと言われたりするもの。
それを否定はしないし、チームのメンバーがそうした配慮をすることはお互いの時間と、仕事の先にあるお客さんを大切にすることになる。
なんでもシス -
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内田樹の街場のマンガ論を読みました。
内田樹のマンガに関するblogなどを集めたエッセイ本でした。
今の教育が画一的な「犬のしつけ」のようなものになってしまっている状況で、マンガは子供たちに人間的な成長について教えている、と言う指摘は面白いと思いました。
日本でマンガが発達している理由として、日本語の特殊性について言及しています。
日本語が表意文字と表音文字をあわせて使っているため、日本人は言葉を認識するときに脳内の複数の場所を使っている。
マンガも絵と言葉が同時に書かれている表現方法なので、これは日本語の特殊性によって発達した、という説明が面白いと思いました。
少女マンガを読むためには -
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内田さんのブログの記事の再録本。今回もいろいろ考えさせられました。
「清水の舞台から飛び降りる」ような切羽詰った状況で下を見ずに飛び降りても、ちゃんとセーフティネットに引っかかるような直感の働き。「どうふるまってよいのかわからない場面で適切にふるまうことができる」こと。内田さんは人間の知性とはそういうものだといいます。なるほど~。
『1Q84読書中』にある、「おそらく読者は物語を読んだあとに、物語のフィルターを通して個人的記憶を再構築して、『既視感』を自前で作り上げているのである」という記述は目からウロコ。小説を読んで、その中のエピソードや空気を自分の経験や感性と重ね合わせるとき、確かに脳内 -
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内田樹の邪悪なものの鎮め方を読みました。
内田樹の主張が記述されているエッセイ本でした。
「子ども」から大人になれない人が増えすぎた社会、習慣としての「読字」の重要性、偏差値教育の弊害、記号的殺人の邪悪性、モラルハザードの構造、「常識」とは、現在の科学では証明出来ないものもあるかも知れないという柔軟性が大事、など面白い話題が満載でした。
それぞれの主張は面白いだけではなく、自分の生き方に組み込んでみたいな、と思うものもたくさんありました。
最後の章は内田樹が学生に向かって語りかける形で書かれていて、こんな先生に指導される学生たちは幸せだなあと思ったのでした。 -
Posted by ブクログ
一気読み。マンガ読んでるくらい熱中して読んだ。
日本語の特殊性がマンガの読み描きを可能にしているという養老孟司の論に、日本人でよかった!と心底思った。少女漫画、宮崎アニメ、好きなジャンルがばんばん出てきて幸せだった。引用以外にもいろいろあります。ほんと内田樹は気持ちいいな。
しかし唯一ひっかかったのがボーイズラブ論。エロス、大なり、私(自己)、という図式に則って、BLはエロスの嚆矢だから私たちを魅了する説。エロスが自己決定の支配下にない、むしろエロスを抑えるから人間は人間足りうるというのには同意するんだけど、ことBLに関してはもう一歩あると思う。つまりBL世界では、登場人物は性欲が自己決定下に -
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“いつもの”ブログ記事の再録本なのですが、今回は「邪悪なものの鎮め方」という切り口がドンピシャ決まった感じで最後まで(知的)興奮が続きます。
(前作の「昭和のエートス」にはまったくアンテナが反応しませんでした)
多くの記事が書かれたのは今から5年ほど前の2008年前後。本書に書かれている問題意識は当時よりさらに重要性を増していると感じました。曰く、
「どうしてよいかわからないとき、つまり、既知の解決策が当てはまらないとき、どうふるまったらよいかを知っていることが大切」
「呪いの力を馬鹿にしてはいけない。いつの間にか自縄自縛になっていないかもよーく考えよう」
「一気に社会をよくする政治は、歴史上