松本清張のレビュー一覧
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彩り河(上)
業界紙の雇われライターである山越は、東洋商産の経営状況に疑いを持つ。東洋商産の社長高栁は、銀座のクラブ・ムアンの美人ママ山口のパトロンらしい。しかし山越はこれに疑いを持つ、さほど大きくもない東洋商産、しかも経営状況もよくない、こんな会社の社長が、パトロンであるはずがないと。
山口と高栁には不可解な災いが起きてしまう。そんな中、山越の調査活動はついに東洋商産を操っている陰の人物へと到達する。 -
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中央流砂
農林省の課長補佐である倉橋は、砂糖汚職に深く関わっており、警察から取り調べを受け、逮捕間近となった。警察や検察は、組織がらみで次官や局長やさらに政治家が絡んでいるとにらむ。その追求の糸口となる倉橋が崖から転落して死亡する。農林省で暗躍する西弁護士が彼の死を発見する。はたして事故か自殺かそれとも....。
定年も見えてきた事務官山田は、局長岡村などのエリートコースとは、無縁な男であり上司に従順な官吏である。山田は事件の真相は掴んでいるのだが、一切口をつぐみ、内心とは裏腹に岡村局長に従順な振る舞いである。 -
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NHKの特番「未解決事件」で、松本清張が帝銀事件をノンフィクションで書こうとしたものの、葛藤の末に小説として出す経過が描かれていた。なるほど本作の前半は小説のように進んで行くが、後半はずいぶん趣きが変わってくる。こういうのをルポルタージュというのか…。
その後『日本の黒い霧』で結局ノンフィクションとして取り上げたところを見ると、やはり清張は帝銀事件については他作品とは異なる向き合い方をしていたのかなと思った。
個人的に後半は読み進めるのに苦労したが、何度か読み返すうちに良さがわかってくるのかも。 -
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数の風景
断魚荘にたまたま宿泊した縁もゆかりもない男2人(TとI)、会話を交わす仲となった。2人の男の目を引く女性(U)も宿泊していた。
IもU女史すぐに舞台から去ってしまう。Tを中心に物語はさほどインパクトなく、何が本筋なのか分かりにくいまま展開していく。唯一、Tはある女性が殺害された疑いを持つ。このことが物語の後半の主題となっていく。
終盤になって、事件は起きた。IとU女史が再登場する。とくに、U女史がみた「数の風景」が事件解決の糸口となる。
終盤が読みどころの小説といえる。
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松本清張文学忌 1909.12.21〜1992.8.4 清張忌
若い頃、よく読んだ松本清張。どれを再読しても良いけれど、残してある文庫の紹介文を読んでいたら、この中編集が連作推理小説集とあり、全く覚えてないのでこちらを読みました。
が、しかーし、連作ではありませんでした。共通事項は、死者が出るところしかないです。
(ちなみに昭和の文庫本)
そして、新装版の紹介を確認したら、傑作中編小説に変わっていた。やれやれ。
「歯止」
能楽堂の場面から始まり、演目は「班女」
結構後、二年で自殺した姉。死因は薬物接種。遺書はなし。その妹も現在高校生の息子の非行と犯行に苦しんでいる。偶然、息子の奇行を母親が治めている家庭の存在を知り、そこから、自分達の将来そして姉の自殺の理由に思い当たる。
「犯罪広告」
警察が動いてくれない犯罪を立証するため、広告を作り投函を続ける男。遂に、地域を動かして現場確認ができることになる。真実に近づきすぎた悲しい男。
「微笑の儀式」
古拙の微笑 飛鳥仏の様な口角を僅かにあげた微笑み その微笑みを持つ彫刻の精密な出来栄えに疑念を持つ そしてその彫刻によく似た死者との関係を探す
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この作家の膨大な作品の数々を「清張山脈」と称することがあります。デビューの遅さを反発力とするかのように社会構造、昭和史、古代史、占領下の闇、そして天皇制…テーマがテーマを呼び次々と連なっていく激しい造山活動は発表当時のジャーナリスティックなインパクトを超えて没後30年を過ぎ今もなお仰ぎ見られています。今年になってもNHKで「小説 帝銀事件」という作品自体の成立をテーマにしたドラマが放映されていました。しかし遠くで眺める山脈の中にどんどん分け入っていくとちょろちょろとした渓流にもならない湧き水みたいなものがあることを知るのです。湧き出ているのは人間の嫉妬、恨み、憧れ、虚栄、諦観、自分でもコントロール出来ない感情の漏れ。そういった「清張源泉」みたいな短編集が本書です。今まで雑誌や新聞には掲載されただけで本になってない作品の数々。それは人間の小さな心の揺らぎのスケッチみたいなもので大作になる前のデッサンのようにも思えるのです。きっと「清張山脈」は「清張源泉」という感情の水脈が社会テーマという山塊を削って出来た作品群なのかも知れません。そして巻末の「雑草の実」を読むに至り、登場人物の心の泡立ちはすべて清張自身の心から生まれているのだと確信します。「半生の記」は読んだことがありましたが「雑草の記」で語られる友人という存在に憧れ、逆にそれから距離をおく感情の痛々しさこそ松本清張の原動力なのではないか、と思いました。
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「松本清張」の時代小説集『軍師の境遇 新装版』を読みました。
『表象詩人』、『溺れ谷』、『新装版 遠い接近』、『半生の記』に続き、「松本清張」作品です。
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「松本清張」がつむぐ、軍師「黒田官兵衛」の波乱にみちた生涯。
天正三年、「羽柴秀吉」と出会い、軍師「黒田官兵衛」の運命は動き出す。
「秀吉」の下で智謀を発揮して天下取りを支えるも、その才ゆえに不遇の境地にも置かれた「官兵衛」の生涯を描いた表題作ほか、二編を収めた短編集。
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「羽柴(豊臣)秀吉」の下で智謀を発揮した軍師の「黒田官兵衛(如水)」、戦国大名「細川忠興」に仕えた鉄砲の名人「稲富直家」、江戸の板元「蔦屋」の使用人である男… 時代の脇役から描かれた3作品が収録されています。
■軍師の境遇
■逃亡者
■板元画譜 ――耕書堂手代喜助の覚書
■解説 葉室麟
やはり… 本書全体の3分の2を占める表題作『軍師の境遇』が最も印象に残りましたね、、、
「黒田官兵衛」は、2014年(平成26年)のNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』の主人公だったので、当時、知名度が一気に向上した人物ですが、残念ながらドラマは観てないんですよね… 本書を読んで、観ておきゃ良かった と感じましたね。
天正3年、軍師「黒田官兵衛」の運命が動き出す… 播州御着の城主「小寺政職(まさもと)」の家老だった「官兵衛」は、「毛利」を捨てて「織田」につくよう進言し、自ら使者として「豊臣秀吉」に謁見する、、、
軍師としての才を認められ、「秀吉」の中国攻め以来、参謀として縦横の機略を振るい、その天下取りに絶大の功をたてたが… 余りに卓越した才知ゆえに不運の境遇を味わうことに。
「おれが死んだら、あとはだれが天下を取るか遠慮なくいってみよ」―侍臣たちの返事に首を振った「秀吉」が頭に想い浮かべるのは、片足が不自由で、風采の上がらぬ「官兵衛」の姿だったらしいですからね… 実力が認められているが故に、「秀吉」から警戒され、疑惑が身にふりかかるという皮肉な運命を受け入れることに、、、
ホントに、部下には欲しい人物だし… 知力だけでなく、精神面の強さにおいても、自分もそうありたいと思う人物でしたね。
鉄砲の技術が認められ「細川忠興」に仕えるが、名人気質が災いして「忠興」とは反りが合わなかった「稲富直家」… 彼は「忠興」の留守中、愛妻「於玉(おたま)」(受洗し「ガラシャ」と名乗る)の護衛を命ぜられるが、その際、敵側に逃亡したことから、「忠興」に憎まれ、他の大名への仕官を妨害される、、、
したたかな軍人ではなく一介の砲術師で、愚直なまでの技術者の正直さが不運をもたらした運命を描く『逃亡者』。
かつて一世を風靡した板元「蔦屋重三郎」は、「松平定信」の寛政の改革という政治に翻弄され、弾圧により店の経営がじり貧となる… 「重三郎」は再起を図って「写楽」の絵に賭けるが失敗する、、、
いかに努力しても政治の狭間に沈むしかなかった「重三郎」の不運を使用人である男の視点から描いた『板元画譜 ――耕書堂手代喜助の覚書』。
うーん、やはり、『軍師の境遇』に比べ後の2篇は印象が薄かったですねー