松本清張のレビュー一覧

  • 黒革の手帖(下)

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    『紙の月』に続いて女性行員横領もの。超有名な作品ですが、ちゃんと読むのは初めて。

    1980年の作品で、土地転がし、脱税、不正入学など、バブル前の欲望渦巻く雰囲気がよく出ています。何度もドラマ化されていて、その度に現代風にアレンジされているのだと思いますが、基本的にはこの時代背景があってこそ成り立つ物語だなと思います。

    銀行から横領した金で銀座のママに転身したところから物語が始まるので、残念ながら思っていたほど横領の話は出てこなかった。この頃は架空口座や無記名口座が法律で禁止されてなかったことにまず驚きます。

    「優生保護法」とかもさらっとでてくるんですが、これが1996年まで存在して

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    2025年05月06日
  • 蒼い描点

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    松本清張なのに、期待したほどおもしろくなかったー!!
    そもそも600ページ超も必要ないよね。
    前半特に冗長気味で、似たような説明の繰り返しがしんどい。
    出版かなにかの都合で、無理矢理長くしなければならなかったのかと考えてしまったほど。

    それに登場人物の誰にも感情移入ができなかったな。
    崎野も一人コソコソやっていて気分悪いわーと思うけど、典子もなんだかんだ言いつつ許しちゃってるところがイライラする。

    女流作家、代作とテーマもおもしろくて、清張なのにこんなこともあるのね。

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    2025年04月29日
  • 黒革の手帖(下)

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    さすがでした。
    女の事件簿が、ちゃんとサスペンスになりました。
    あざやかな伏線回収でスッキリというより、ちょっと寒気がしたら止まらなくなっちゃったという感じでした。

    今も夜の銀座はこんななんだろうか?
    松本清張先生は銀座に足を運んでいたのだろうか。

    「錯誤による抹消」
    土地取引においてこんなことがまかりとおるなんて。法を犯すことなく。いわゆる法の抜け道なんですかね。

    振り返ると、登場人物全員悪い奴ばかり。

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    2025年04月12日
  • 絢爛たる流離

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    3カラットのダイヤの指輪を持った人の
    お話ですが、それがいろいろな人にわたっていく
    12の連作短編集でそれぞれに事件が起こる
    いろんな人たちがいてそれぞれにまたいろいろな
    ことが起こっていました
    ダイヤの指輪は何を思っただろうか

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    2025年04月10日
  • 黒革の手帖(上)

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    まだ誰も死んでないぞ。
    サスペンスというより、昭和の女の事件簿、的な展開です。

    バーではなくバアという表記が時代を感じさせます。

    黒革の手帖がまた活躍しちゃうのかしら。下巻の盛り上がりを期待します。

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    2025年04月06日
  • なぜ「星図」が開いていたか―初期ミステリ傑作集―(新潮文庫)

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    清張の初期の短編作品を8編集めたもの。
    過去に読んだ作品やテレビドラマや映画になり、なじみのある作品も幾つか収録されている。「市長死す」や「張込み」は、その最たるもの。
    いずれも、今となっては、レトロ感が溢れているが、「声」は電話交換手ならではの発達した聴覚が取り上げられ、なかなかレアなネタで新鮮さを覚えた。
    また、映画の世界に抜擢された劇団男優が顔を群衆に曝すことで“過去”の暴露に怯えるという皮肉な展開を描いた「顔」も面白いストーリーだった。
    犯人に対し、過誤をしゃべらせる「ミュンスターバーグの方法」を使って追い込んでいく「反射」も興味深く、共犯者の自供からの破綻を怖れるあまり、ある男に調査

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    2025年03月31日
  • 任務 松本清張未刊行短篇集

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    ・多彩な短編。戦後(戦中)の色が濃い。
    ・松本清張が新聞社勤めであったことは知っていたが、社会問題を扱う作品達やはっきりとした文章のキレから記者出身だろうと思い込んでいたので、下積みの長い印刷技術者で、広告部に所属と知って驚いた。
    ・半生を振り返って書くのが本や執筆への思いよりも家族を食わせなくてはならない焦りと学や社交力の無い自分への内省なのが意外。

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    2025年03月15日
  • 黒革の手帖(上)

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    ベテラン女子行員・原口元子が勤めていた銀行から7500万円を横領した。それを元手に銀座のバアのママとなる。そのバアの常連客であった医者から5000万円を巻き上げる。元子の欲望はまだまだこれから。前編終了。

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    2025年03月12日
  • 草の陰刻 新装版(下)

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    主人公の若手検事、瀬川良一の孤軍奮闘の調査により、真相まであと一歩というところで殺人事件の時効が明日成立してしまうところまで迫ってきます。ネタバレになるので結果は書きませんが、真相に近い大物の代議士は一筋縄ではいかない巨悪の根源のようなヤツです。

    政治家、暴力団(反社)、 建設会社、 警察、 検察‥これらの持ちつ持たれつの関係の中で、悪人ほど高笑いする構造はこの頃も、60年経つ今もあまり変わらないのではないでしょうか。それを感じた作品でした。清張氏はこれらの組織を(今回は検察を)実によく調べて消化していることに恐れ入ります。
    ただ、もっと優れた作品を知っているだけに、今回は遅々として、臨場感

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    2025年02月28日
  • 草の陰刻 新装版(上)

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    松本清張氏の作品を文庫の新刊で読めるのは嬉しいですね。1971年に講談社文庫より刊行された本書を改訂し、文字を大きくした新装版です。清張氏56歳の時の作品で、読売新聞の連載小説でした。

    そのため長編独特の丁寧さがあり、遅々としている印象ですが、清張ならではの風土性や、深層を追う者の心理描写がよく描かれています。


    この小説の中での追う者は、検事の瀬川良一。松山地方検察庁 地方支部の倉庫から出火し、事務官の平田健吉が焼死し、戸棚の中から事件簿の2冊目(昭和25年から26年にかけての部分)だけが紛失しているのに気付きます。そのことに疑問を持った瀬川検事の単独での真相究明が始まります。

    紛失し

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    2025年02月28日
  • ガラスの城 新装版

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     表面上はガラス張りで綺麗な会社だが、中に蠢くのは嫉妬、欲望などなど。そんな会社で次々と起こる不審死、失踪事件。そんな事件を追う2人の女性社員の視点から事件は様々に推察されていく。
     2人の女性の手記、ノートを基に物語が展開されるため、ついついその情報が正しいと思い込んでしまう。そこがこのミステリーの面白いところ。人は見かけによらないし、誰が正しいのかは最後までわからない。
     どんでん返しとは違うが、巧みな構成に引き込まれてしまう。

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    2025年02月16日
  • ゼロの焦点

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    風景の描写がうまいので、読んでいてパッと頭の中で想像がつく場面が多い。戦後の生き方とか、戦争が女性の一生に与えた影響とか、勉強になる部分もあって面白かった。
    個人的には、分かりやすいけれど説明が何度も重複していてちょっとくどい、と思ったので星3つ。

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    2025年02月09日
  • ゼロの焦点

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    ネタバレ

    探偵ではない一般人が推理を進めるという話の流れは少しユニークだった。
    昔の作品であるからなのか現代では考えられない情報のやり取り(見ず知らずの人間に個人情報を渡す)であったり主人公の禎子の価値観(見合い結婚で間もないのに一生懸命尽くした本多より鵜原を好意的に見ている)のせいで変に物語に入り込めなかった。

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    2025年01月26日
  • 草の陰刻 新装版(下)

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    ネタバレ

    子どもの頃、本棚にたくさんあった松本清張の本、何度か手に取ったがかブローカーとか代議士さえ意味がわからず…大人になったらわかるのだろうか…なんて思ったことを思い出した。

    今のテクノロジーとかコンプライアンス的なこととかと照らし合わせてリライトするとしたら、ほとんどのことが残らなくなってしまう…が、小さな伏線回収は見事だし、終わり方の問題提起もさすがだと思う。読み応えは抜群。

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    2025年01月20日
  • 信玄戦旗

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    信玄軍記(河出文庫)と同じもの。
    典厩の戦死、家康の三方原での敗北、信玄の死の描写は素晴らしい。
    武田時代の金山所在図なども詳しい。

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    2025年02月24日
  • 渦

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    面白かったけど、最後がイマイチだったな。あの女の人がなんで数ヶ月前にも目撃されてたんだろ。

    テレビ視聴率の謎から殺人事件に発展していくのは面白かった。あと、昭和ってこういう気持ち悪いナンパがあったんだ…。

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    2025年01月19日
  • 影の地帯

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     さすがに松本清張の小説だけあって、文章が自然ですんなり入っていける。ただし、死体の処理方法は少しいただけない。バラバラに切断した上で、パラフィンで固めて別々の湖に捨てるというのだから、不自然過ぎる。この頃の清張は、一月に900枚もの原稿用紙を書いていたというのだから、少し乱暴なストーリーになってしまう作品もあったということなのだろう。最初に出会う女性とハッピーエンドになるのだが、これも安易だよなぁと思いました。

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    2025年01月17日
  • ゼロの焦点

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    ネタバレ

    時代は感じさせるもののぐいぐい読み進められた。さすが名作。禎子視点で推理が進み、状況証拠?が中心でやや心許ない気はしたが、その当時だと防犯カメラもないだろうし仕方ないかなとも思った。戦後の混乱は想像もつかないが、当時の女性がおかれた状況を思うと胸が苦しい。ラストはとても辛い。能登であることが一層辛さを増す気がする。この暗さは雪国が舞台だからこそかなぁ

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    2025年01月12日
  • 黒革の手帖(下)

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    ネタバレ

    昨年から読んでいたこちらが、今年の一冊目になった。
    実家(北陸)の暗い冬にピッタリすぎる、ゼロの焦点と、この黒革の手帖で年末年始を挟んで、なかなかの濃いお正月となった。

    上巻は、原口元子がこわーい、と思いながら読んだ。
    昨年末によくみかけた銀行の貸金庫丸パクリ事件は、この本の冒頭の顛末さながらである。
    ブイブイ言わせる元子は、さらに上へ上へと挑戦していくのが上巻。
    ところが下巻に入ってから、急に世界はガラリと足元から崩れていく。
    そのおおもとは、上巻の元子の行動に恨みを持つ女たち。
    ひどいしっぺ返しを受け、そのまま終わる…。
    マジか、どこかでさらにやり返せるかと思ってたので、終わりまで見て頭

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    2025年01月17日
  • ゼロの焦点

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    北陸の実家で年越しに読む。
    ちょうどラストは大晦日の話だった。

    暗いし怖いけど、面白い。
    新婚の夫が失踪、その義兄も殺される。
    調べるうちにわかる夫の正体。

    夫が謎の人だとわかる展開が怖い。
    戦後13年はまだこんな社会だったのだなあ。
    この当時の金沢、東京の雰囲気も同じくなんだかこわいんですよ。

    自分(主人公=妻)との結婚が、夫にとっての崩壊の始まりだった、とうすうす気づいてしまうのが、なんとも苦い。はあー。


    そんなわけで、今年の本はこれで終わりです。
    来年もよろしくお願いします。

    これからも、みなさまのもとに本の神様が微笑まれますように。

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    2025年01月12日