松本清張のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
松本清張『共犯者』新潮文庫。
古本屋で貰った金券で購入。昭和55年、1980年の刊行と45年前の作品。当時は消費税も無く、文庫で320円というのは中程度の価格ではないか。自分が高校生だったこの時代には180円や280円、320円という価格で文庫が購入出来たのだ。
10編の短編を収録。
『共犯者』。過去に犯した強盗事件で手にした金で事業に成功しながら次第に疑念に囚われ、自滅していく男の話である。国内外問わずよくあるパターンの話であるが、松本清張の手にかかればスリリングな短編に生まれ変わる。松本清張をはじめ、昔の小説家はこうした教訓めいた短編を多く残している。
『恐喝者』。大雨で洪水に見舞われた刑務所から脱獄した男が恐喝者となり、殺人者に堕ちていく様が描かれる。一度道を踏み出した者は油断した瞬間にどこまでも堕ちていくのだろう。
『愛と空白の共謀』。夫が出張先の旅館で亡くなり、独り身となった女。1年後、不倫相手の夫の同僚と飛行機に乗った際、ふとしたことから夫の死の真相を知る。まさに『愛と空白の共謀』というタイトルが全てを表している。
『発作』。何とも暗く、気持ちが沈むような話。実家で病気療養中の妻に仕送りも満足に出来ぬ程に自堕落な生活を送る男が会社や知人に前借りや借金を申し出る。
『青春の彷徨』。父親に付き合いを反対された若い男女が死に場所を求めて彷徨うが、様々な人びととの出会いで思い留まる。およそ前時代的な話。今の若い人たちでは理解出来ないだろうな。
『点』。共産党への潜入取材捜査をしていた元警察官の男が僅かなつながりのある伝手から様々な言い訳をしながら金品をせしめて、その日暮らしを続ける。自分が以前働いていた会社でもキャバクラの女にハマり、顔見知りとあらば数千円を借りようとする男が居たのを思い出した。最終的に数千万円の借金を作り、退職金と持ち家を売却して整理したようだ。
『潜在光景』。昔、近所に住んでいた馴染みの女性と偶然再会したことから、不倫、殺人者へと転落していく男。そればかりか過去の罪をも露呈される。
『剥製』。鳥の鳴き声を真似て鳥寄せする男と雑誌に掲載する文章の原稿料を上げようとする男の共通点。嫌な所は目に付き、心に残るものだ。
『典雅な姉弟』。名家の系統に育ちながら、何故か見合い話を悉く断わる弟、独身生活を続ける姉。その姉が何者かに殺害される。今では禁止用語とされるような言葉が連発するが、昔の方がまともだったのではないかと思う。
『距離の女囚』。6人で収監される女囚が語る自身の意外な犯歴。
定価320円(古本0円)
★★★ -
購入済み
風の視線
若き奈津井久夫は頭角を表しはじめた有能な写真家である。「杉の会」が開催した五人展に展示した写真は、奈津井が特に高い評判だった。千佳子と見合い結婚するが、愛情とは縁遠い2人であった。物語は、奈津井が密かに思いを寄せる女性を明らかにしていく。一方、千佳子も過去の男性がおり、自ら再び接近していく。
竜崎重隆はM物産のシンガポール支社長であった。妻、亜矢子は同行せず、重隆とは別居状態であったが、それは彼女の望みでもあった。
久世俊介はR新聞社事業次長の肩書き渋い中年であった。津久井の属する「杉の会」は久世の支援を受けていた。
津久井久夫、千佳子、竜崎重隆、亜矢子、久世俊介が、複雑に絡み合う人間模様の物語である。
千佳子は過去の男の宿泊するホテルの部屋を訪ねる。
下巻へ続く。 -
購入済み
Dの複合
『北緯三五度、東経一三五度を英語でフルに書くと、"Latitude 35 degrees North, Longitude 135 degrees East"だ。4つのDが重なり合っているから「Dの複合」だ。』
と、小説のタイトル解説が途中に出てくる。これだけでは、意味不明である。小説の中盤までは各地の浦島伝説や羽衣伝説のウンチクが語られ、古事に無関心な方は、⭐︎1個の評価かもしれません。しかし主人公である伊勢が「Dの複合」の匂いを嗅ぎつけたあたりから、かぜん清張小説の世界へ引き込まれていく。
作家の伊勢忠隆は、出版社の編集者、浜中三夫の案内で各地を巡り、雑誌「草枕」に掲載する紀行文と随筆をまぜたようなものを求められている。伊勢は、浜中が案内するルートに何らかの作為を感じてくる。編集者に身を置いているが、いったい浜中は何者なのか。編集長の武田健策が殺害される。浜中の素性が見えてくる、浜中が暴こうとしている陰の人物が浮かび上がってくる。そして「Dの複合」が解き明かされる。 -
Posted by ブクログ
表題作『或る「小倉日記」伝』、いつか読んでみたいと思っていた。障害があり、周りから疎んじられ、でも、一生を捧げられることを見つけて、満足な気持ちで最期を迎える。でもその後の数行に、せつなくなる。
他の話の主人公は、みな、似たような感じで、自分の信念というか熱中するものがあり、それに夢中になるあまり、周りが見えなくなり、やはり疎んじられ。(人間誰しもが持っているいやな部分でもあるような気がする。そして、体制に逆らえず、逆らう気もなく流される周りの人たち、たとえその主張が間違っていたとしても)
結局、はたから見たら哀れに感じるが、彼ら自身は幸せだったのかもしれない。 -
購入済み
翳った旋舞
1人の女性、まだ人生経験の浅い三沢順子に短い間に起きた数奇な人間模様を描く。勤めているR新聞社の川北編集局長は、権力を有していたが、財界の「怪物」として知られる大物海野辰平の前では全くの小人であるのを順子は目にする。そして順子は、海野の正体も見えてしまう。