松本清張のレビュー一覧

  • 強き蟻

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    「松本清張」の長篇サスペンス作品『強き蟻』を読みました。

    『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈上〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈中〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈下〉』、『眼の壁』、『時間の習俗』、『霧の旗』に続き「松本清張」作品です。

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    欲望が犯罪を生み出す!
    夫の遺産を狙う「伊佐子」のまわりには、欲望にとりつかれ蟻のようにうごめきまわる人々。
    男女入り乱れ愛欲が犯罪を生み出す異色の長篇!


    遺産目当てに三十歳も年上の会社重役と結婚した「沢田伊佐子」。
    女盛りの肉体を武器に

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    2022年09月06日
  • 憎悪の依頼

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    時折自分の行動は正しかったのか、悔恨の思いをよぎらせることがある。相手や環境が悪かったのだとやり過ごし、自身を正当化すると、周囲と歪みが生じてしまい修復できない孤立が待っている。これは同調しろという忠言ではなく、過去の振る舞いをどう受け止めて対応するか、完璧は備わっていない日常に向き合う姿勢こそ前進する一歩となる。と偉そうに言える身分ではない私は心の弱さを自覚する。ちょっとでもカッコよく正論を吐く雰囲気だけは学んでいるからタチが悪い。セコい、そんな人間の心情が松本清張の短編に潜んでいる。そこに共感する。やはり面白い。

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    2022年08月31日
  • 駅路

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     1957(昭和32)年から1962(昭和37)年、次々と傑作を大量に発表し、清張ブームを巻き起こした脂ののった時期の短編集。調べてみると、ちゃんと発表年代順に作品が並んでいることがわかった。
     おおむねミステリ/推理小説の系列の作品が多いようだが、清張の場合は犯人の欲望を描き、倒叙の形で構成された方が彼らしくて面白い。なので、本格推理小説というのとはちょっと違う。興味は卓抜な探偵にあるのではなく、一線を超え犯罪を企むことになった犯人の欲動のあり方にある。そしてそれが、清張らしく一切同情心のない、ドライでクールなストーリーテリングとなっている。やはり読んでいてそれが清張の醍醐味であり、面白い。

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    2022年08月22日
  • Dの複合

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    パッとしない紀行作家が編集者浜中と共に浦島伝承や古代史、そして殺人事件に関与していくサスペンス。日本中を舞台にした壮大さとタイトルの意味、意外な犯人(勘の良い人は気づきそう)といった要素が揃った大作。どうも回りくどいというか強引な気もする。通俗サスペンスと見れば謎の女や登場人物達のスレ違いが楽しめる。
    主人公の作家と奥さんが注文や金に一喜一憂する部分が1番リアリティがあった。

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    2022年08月22日
  • 彩霧(さいむ)~松本清張プレミアム・ミステリー~

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    銀行の弱みを手帳に記して横領した男。その友人達が男の愛人から手帖を回収しようとするミステリー。
    欲望のための横領や金で転ぶ仲間、裏切る愛人など世の中の現実を提示してくれているが感情移入はし難い。

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    2022年08月22日
  • 小説日本芸譚

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    運慶、雪舟、織部など日本史に残る芸術家の心情を描いていて特に新たな世代や価値観における葛藤は興味深い。
    それにしても最後の仏師の話は資料が無いと作家の妄想的私小説みたいになっていて当時の編集者がよくOKしたと思う。内容の理解が足りないのかもしれないけどこの連作で1番楽しみにしていたところだったので残念。

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    2022年08月20日
  • 時間の習俗

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    点と線の続編(メインの刑事が同じ)でアリバイ崩し。あんまり完璧過ぎるアリバイも疑われる好例。
    老刑事との交流が続いているのにホッコリする。

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    2022年08月20日
  • 絢爛たる流離

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    第二次世界大戦前夜から高度経済成長期までの日本の歩みをこんな風に読ませてくれるなんて、さすが。
    それにしても、松本清張はホントにタイトルがかっこいいなあ。

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    2022年08月14日
  • 花実(かじつ)のない森~松本清張プレミアム・ミステリー~

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    ヒッチハイクしてきたカップルの容姿差(そもそも失礼な話だ)が気になり女の方に一目惚れした青年が事件を追うサスペンス。彼女が居るのにここまで執念を燃やして女を追うコイツの方が恐い気がする。

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    2022年08月11日
  • 渡された場面

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    八月四日 清張忌から読み始めたのですが、しっくりこなくて、お時間かかりました。きちんと、推理小説です。一捻りある構成だと思います。
    九州唐津で、旅館の女中をしていた一人の女性が、博多へ行くと言って、誰にも知られず姿を消す。
    四国で、小金を貸していた未亡人の殺人事件が起こる。この二つの事件そのものは、関係ないもの。それが、ある「同人雑誌」に投稿された小説の一部が、事件の場面を渡していく。
    どちらの事件も、この小説のある場面から解決を見ていくのですが、偶然の繋がりが疑問を持たせていく。うーむ。なんだか、私が説明すると面白くなさそうになる…
    ネタバレになるけど(ネタバレても、これだけ古いと読まないか

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    2022年08月10日
  • 霧の旗

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    兄の冤罪事件の弁護を断った弁護士への復讐譚。
    話の内容よりも女の執念の恐ろしさに震える。いきなりアポ無しで来て格安弁護してくれと頼み断られ兄が獄死したら復讐というのは筋が通らないと思うが。こういう他責思考の人間とは絶対関わってはならないし良心を信じてはいけないという教科書。

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    2022年07月31日
  • 水の肌

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    指:以前、TVで見た事があるような気がする。ちょっと出来すぎの感じがあるがストーリーとしては面白い。
    水の肌:ミノルタ光学?諏訪湖?鉄道は出てこない。超エリートの優越感を維持する為の悲しい性か、こうはなりたくないものだ。
    小説3億円事件 まあまあかな~、独自の推察は面白い。
    疑視:てっきり犯人は主人と思ったが違っていた。
    あとがき:人間の心理にひそむ弱点が、その環境とからみあう事によって、犯罪をも公正し、それらの人間の破滅にも通じる事を示している。前半生の苦労の多い生活をとおして、人間心理の諸側面を知り、身の安全を守ろうとするために、悪の道にふみみこむ男女や、運命のうけとめかたを誤って、自分の

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    2022年08月11日
  • 憎悪の依頼

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    「松本清張」の短篇集『憎悪の依頼』を読みました。

    『聞かなかった場所』、『或る「小倉日記」伝 傑作短編集〔一〕』、『張込み 傑作短編集〔五〕』、『黒い画集』、『眼の気流』、『巨人の磯』に続き「松本清張」作品ですね。

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    犯罪者のいびつな心理!
    嫉妬に火をつけた一通の手紙。
    男は恐ろしい報復を企てた――。

    私の殺人犯罪の原因は、「川倉甚太郎」との金銭貸借ということになっている。
    ――金銭のもつれから友人を殺害した男が刑の確定後に、秘められた動機を語る表題作。
    女性が失踪し、カメラだけが北海道でみつかった。
    死体は発見されず、容疑者の新進画家には堅

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    2022年07月10日
  • 小説帝銀事件 新装版

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    昭和23年の大量毒殺事件を「小説」として発表しているのであくまでもフィクションという事か。軍部犯行説に動いていた捜査陣が平沢犯行説に傾いていく過程が描かれている。生存者がいるというところに被験者を絶滅させたとされる731部隊にしては手抜かりがある様に思える。
    平沢氏が芸術家は命より名を惜しむという考えだったにせよ金の出所がハッキリしなかったのは作中にあるように疑惑を晴らすのに障害であったといえる。
    生き残りの人が顔を見ても意見が割れた事から人間の観察力の薄弱さがよく分かった。

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    2022年07月07日
  • 時間の習俗

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    アリバイ崩しがメインなので仕方ないとはいえ最初から峰岡犯人ありきで話が進んでるのが残念なところ。動機も弱いといえば弱いかなあ。
    北九州民としては点と線と同じくお馴染みの場所が舞台になっててそこは楽しめました。

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    2022年06月26日
  • 高校殺人事件

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    文庫、古本で購入。解説によると、1959年から1961年まで、高校生向け雑誌「高校上級コース」「高校コース」に掲載。清張には珍しい青春サスペンス唯一の作品。その割には、淡い恋愛などのストーリーはなく、事件の背景には戦争が関係している。

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    2022年06月26日
  • 神々の乱心 下

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    「松本清張」の長篇歴史ミステリー作品で最後の小説となった『神々の乱心』を読みました。

    『失踪 ―松本清張初文庫化作品集〈1〉』、『月光 ―松本清張初文庫化作品集〈4〉』、『十万分の一の偶然』に続き「松本清張」作品です。

    -----story-------------
    〈上〉
    昭和8年。
    東京近郊の梅広町にある「月辰会研究所」から出てきたところを尋問された若い女官が自殺した。
    特高課第一係長「吉屋謙介」は、自責の念と不審から調査を開始する。
    同じころ、華族の次男坊「萩園泰之」は女官の兄から、遺品の通行証を見せられ、月に北斗七星の紋章の謎に挑む。
    ―昭和初期を雄渾に描く巨匠最後の小説。

    〈下

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    2022年06月20日
  • 神々の乱心 上

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    「松本清張」の長篇歴史ミステリー作品で最後の小説となった『神々の乱心』を読みました。

    『失踪 ―松本清張初文庫化作品集〈1〉』、『月光 ―松本清張初文庫化作品集〈4〉』、『十万分の一の偶然』に続き「松本清張」作品です。

    -----story-------------
    〈上〉
    昭和8年。
    東京近郊の梅広町にある「月辰会研究所」から出てきたところを尋問された若い女官が自殺した。
    特高課第一係長「吉屋謙介」は、自責の念と不審から調査を開始する。
    同じころ、華族の次男坊「萩園泰之」は女官の兄から、遺品の通行証を見せられ、月に北斗七星の紋章の謎に挑む。
    ―昭和初期を雄渾に描く巨匠最後の小説。

    〈下

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    2022年06月20日
  • Dの複合

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    ネタバレ

    ※犯人ネタバレ


    タイトルセンスに脱帽
    浜中くんの壮大で回りくどい復讐計画。
    みんなグルだったから、関係者がすぐに捜査線上に浮上したんだな。
    最初の白骨死体がただの話題作りだったのは驚き。
    浦島伝説や羽衣伝説が、淹留説に基づいたもので、それが網走で無実の罪で投獄されたことを指すってのは、ちょっと迂遠すぎる。そりゃ社長も気づかないよ。
    関係のない第三者の坂口みま子が殺されて、浜中くんは本当の意味で後戻りできなくなったんだな。
    武田編集長がかわいそうすぎる!!過去の因縁も知らなかったわけだから
    ニセ?藤田くんはとてもよかったな。ノリで転職したり墓を暴いたり白骨埋めるの手伝ってくれたり、飄々として

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    2022年06月11日
  • 霧の旗

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    【虐げられし者が反旗を翻す】

    動機について読んだもの、みんなが「なにそんなことで」と思うだろう。だけど、ここには常識や凡庸の正義はありはしない。テロはいつだって捨て身で、失うものがないからこそ、それに全てを没頭することができるのだから。

    最後主人公の純潔が手折られる時に、ああ。彼女はただの少女だったのだと思い出す。初恋を儚く散らした少女の行く末が、少しでも凪ぐようにと願いたくなった。

    短い作品ながら、松本清張を存分に味わった。

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    2022年06月06日