あらすじ
作家の伊瀬忠隆は雑誌の依頼を受けて「僻地に伝説をさぐる旅」の連載を始めた。第一回浦島伝説の取材地丹後半島いらい、彼の赴くところ常に不可解な謎や奇怪な事件が絶えない。そして突然の連載打切り。この企画の背後に潜む隠された意図の存在に気づいたとき、伊瀬は既に事件の渦中に巻き込まれていた。古代史、民俗説話と現代の事件を結ぶ雄大な構想から生れた本格的長編推理小説。
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久しぶりの松本清張作品。やはり格式は高い。「Dの複合」ということでどんな「D」が複合しているか楽しみにしていた、が、「D」が出てこなかった。何なんだ?500ページの超大作、100ページは、怪奇系紀行文を書く作家(伊瀬)と編集者(浜中)が浦島・羽衣を旅する。そこで白骨死体が発見される。そこのには「第二海竜丸」という木片が落ちていた。さらに坂口みま子が殺された。殺人が起きてからは一気に話しが動くが犯人・動機が分からない、これぞ松本清張の醍醐味なのか?ラストで真相が明らかになるが、怒涛のラストは凄かったです。⑤
解説読んでいたら「D」の意味が分かりました。坂口みま子がキーパーソンだったのかな?
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昭和40年代の作品。売れない小説家が、新規雑誌社から紀行文執筆を頼まれて、編集者と一緒に浦島伝説・羽衣伝説の取材旅行にでるのが、奇怪な事件に遭遇するきっかけ。緯度経度、35にまつわる旅先。
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東経135度
北緯35度
この地点を取材旅行で赴く作家・伊瀬と編集者の浜中。
そこで見つかった白骨死体。次々と起こる殺人事件。
この経度・緯度には恐るべき秘密が隠されていた。
スリリングで面白い、昭和の雰囲気を感じられるミステリーだった。
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売れない作家の伊瀬忠隆に、雑誌「草枕」の「僻地に伝説をさぐる旅」の連載依頼がくる。編集者・浜中と共に浦島伝説と羽衣伝説が残る伝説の場所をめぐる中、次々と起こる不可解な事件。35という数字にこだわる謎の女の出現に、正体不明の白骨死体。連載のために訪れる先々の共通点は・・・連載企画の裏に潜んだ計画とは・・・。ストーリーの展開もテンポ良く、ぐいぐい引き込まれて、最後にまさかの大逆転。最高に面白いミステリーでした。
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私が読んだ清張作品の中でベストワン。難解なタイトル、浦島や天女の伝説、日本地図上での奇妙な偶然。それらがつながった時の興奮をもう一度体感したく、改めて購入した。近々再読する。
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最近テレビドラマ化される事が多い、松本清張先生。
「砂の器」、「黒革の手帖」、「けものみち」いずれも高視聴率のようだけど、どれも見ていない。ましてや、小説自体も読んでいないというチョット乗り遅れ気味な感じもするけど、この「Dの複合」が火スペや土曜ドラマ劇場なんかで2時間ドラマ化されたら、是非見てみたい。(もう、やってたりして・・・)
売れない作家が、小出版社の月刊誌に旅の紀行文「僻地に伝説をさぐる旅」の連載依頼を受けたところから、物語がスタートする。
旅先で白骨死体遺棄事件が起こり、当初は単なる偶然と思っていた事件が、曰くありげな人物が登場し、さらに謎めいた35、135という数字が指し示すものは何かと、ミステリー性がどんどん増していく。そこに日本古代史・説話・民間伝承が実にうまく絡み合い、様々な布石が幾重にも重なり実に巧妙なプロットになっている。
余談だけど、浦島伝説・天女羽衣伝説が実は抑留説であったなど、昔話再発見というところもあり、古代史ロマン的な楽しみ方もあって読み応え十分で長編ものが好きという人にお薦めです。
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謎が謎を読んでどんどんわからないことが増えて…を繰り返して読んでいった先に気づけば一周まわって戻って来てたみたいな話だった。大掛かりすぎる気がするけれど、それだけ深いものを抱えていたのかななどと考えたり。
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古代史、民俗学の諸説をもとに、旅も絡めたミステリー。「点と線」「ゼロの焦点」の雰囲気を思い出す。
終盤は、えーっ、そうきますか!という驚きに満ちている。
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<君は今どこにいる?>
売れない小説家に舞い込んだ一件の依頼。浜中にリードを引かれるが如く、伊瀬は連れ回される。
緻密すぎるストーリー。色鮮やな織物も、一つ一つの糸になるまで解いていくとそれがなんだったのかよく分からんのです。
偶然。思いもかけない出来事に遭遇することを言う。偶然、映画館で恋人とデート中の先生を目撃したりとか、偶然、無くなっていた片方のピアスを見つけたりとか、偶然、目の前で交通事故が起きたりする。どうして起きたのか、原因なんて見当たらないように見える。またえてして、そうゆうことは重なる。たまたま誤送信してしまったメールに限って、他人に知られては困るような内容だったりする。
でも、本当に「たまたま」なのだろうか。運が悪かった、もしくは良かっただけだろうか。その時集中力が切れていたのは、昨日夜更けまでゲームをしていたせいじゃないか? 先週彼女に振られたことを引きずっていないと胸を張って言えるだろうか? 突き詰めれば源泉が見えてくることがある。「偶然」とは濃い霧みたいなものなのかもしれない。晴れることもある。
伊瀬の浜中に対する胸中も、終始面白い。「知ったような顔をすぐにする小賢しい若造が、鬱陶しい奴め」と心中で毒づきつつも、「おい、なんで連絡してこんねん。心配したやろ」とキレもする。まあそんな憎めないやつ、いますよね。笑
最後、読み切った時に心に残る余韻、想い。そっくりそのまま主人公と重なったのか、これは、と思いました。
なんとなく「古い人でしょう」と今まで松本清張を読んでこなかったことを恥じております。と同時に、これからたくさん出会うことができるという事実にワクワクしています。良かった!
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伝承を追う紀行文から始まる殺人事件。北緯35°東経135°……35という数字に気がついた者、謎の男と女、ミステリーの要素に浦島伝説、羽衣伝説と民族伝承が絡まった読み応えのある作品。
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松本清張の風土民俗への強い関心は言うまでもないが、他の作品に輪をかけて紀行文的であるところが特徴的であり、非常に愉しかった。私のようにひねもす日本地図を眺めていられる人種には堪らないだろう。
一方で、その両軸となるミステリ的側面はやや体裁的に感じた。いわゆるミステリを期待する人や、松本清張をあまり読んだことがない人には勧めない。
ところで物語のキーワードとなる船舶の名前だが、その画数が35になっている。特に言及が無かったので偶然なのかもしれないが、氏の遊び心を想像せずにはいられない。
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推理小説の巨匠、松本清張の長編推理小説。本作は、怨念による殺人事件に古代史を織り交ぜた、松本清張作品の代表作の一つですね。
松本清張作品を読むのは『点と線』に次いで2作目なんですが、ストーリー重視である自分の好みにすごく合っていて、面白いことを再確認しました。
これが、1968年に刊行された作品だなんて思えない。それくらい古くささや読みにくさを感じさせない作品です。
松本清張らしく、密室トリックなどの謎解きではなく、「犯人は誰なんだろう、殺人の動機は何なんだろう」ということを、読者にハラハラ気にさせながら読ませる作品であり、もちろん推理小説なんですが、殺人事件の謎を追うサスペンス作品ですね。
間違いなく、火サスとか好きな人は面白く読めると思います。
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伝説部分は少々読みにくいものの、ストーリーはそれなりに楽しめる。清張独特の重厚感はやや影を潜めるが、巧妙に仕込まれた取材旅行のステージが序盤から用意されている。いつしか主人公の作家とともに、事件の渦中に引き込まれてしまった。本タイトルには重要な意味が隠されている。
Dの複合
『北緯三五度、東経一三五度を英語でフルに書くと、"Latitude 35 degrees North, Longitude 135 degrees East"だ。4つのDが重なり合っているから「Dの複合」だ。』
と、小説のタイトル解説が途中に出てくる。これだけでは、意味不明である。小説の中盤までは各地の浦島伝説や羽衣伝説のウンチクが語られ、古事に無関心な方は、⭐︎1個の評価かもしれません。しかし主人公である伊勢が「Dの複合」の匂いを嗅ぎつけたあたりから、かぜん清張小説の世界へ引き込まれていく。
作家の伊勢忠隆は、出版社の編集者、浜中三夫の案内で各地を巡り、雑誌「草枕」に掲載する紀行文と随筆をまぜたようなものを求められている。伊勢は、浜中が案内するルートに何らかの作為を感じてくる。編集者に身を置いているが、いったい浜中は何者なのか。編集長の武田健策が殺害される。浜中の素性が見えてくる、浜中が暴こうとしている陰の人物が浮かび上がってくる。そして「Dの複合」が解き明かされる。
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羽衣伝説や浦島伝説を追って各地を飛び回るのだが、その動きがあまりに不自然で、意図的なものがあることは明白。もったいぶられた挙句、最もわかりやすい結論。
緯度と経度に並ぶ土地を繋げるという発想から、やや無理目のミステリーとなっている。
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パッとしない紀行作家が編集者浜中と共に浦島伝承や古代史、そして殺人事件に関与していくサスペンス。日本中を舞台にした壮大さとタイトルの意味、意外な犯人(勘の良い人は気づきそう)といった要素が揃った大作。どうも回りくどいというか強引な気もする。通俗サスペンスと見れば謎の女や登場人物達のスレ違いが楽しめる。
主人公の作家と奥さんが注文や金に一喜一憂する部分が1番リアリティがあった。
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※犯人ネタバレ
タイトルセンスに脱帽
浜中くんの壮大で回りくどい復讐計画。
みんなグルだったから、関係者がすぐに捜査線上に浮上したんだな。
最初の白骨死体がただの話題作りだったのは驚き。
浦島伝説や羽衣伝説が、淹留説に基づいたもので、それが網走で無実の罪で投獄されたことを指すってのは、ちょっと迂遠すぎる。そりゃ社長も気づかないよ。
関係のない第三者の坂口みま子が殺されて、浜中くんは本当の意味で後戻りできなくなったんだな。
武田編集長がかわいそうすぎる!!過去の因縁も知らなかったわけだから
ニセ?藤田くんはとてもよかったな。ノリで転職したり墓を暴いたり白骨埋めるの手伝ってくれたり、飄々としていて面白い
諸悪の根源は社長だが、大体は浜中くんのせい。こいつも悪い奴だよ
最後の手紙の独白は、やはり一抹の切なさがあった
先生、今度は本当に浜中くんの新聞広告出すんじゃないのか。全国紙で
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2016.1.5
やはり犯人はあいつかと。
途中の引き込まれ具合はさすが松本清張。
但し、最後は今ひとつインパクトに欠けるか。
民俗学、抑留説は面白い。
東経、北緯、あそこに符合するところがたまらんな。
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初めて読んだ松本清張。
何となく関係性は仄めかされるものの関連性が不明確な事件や自称がひとつになっていく感じは、一部が重なりあっているいくつかの円がひとつに重なっていくような感じ。
宮部みゆきの、関係なさそうな点的事件がひとつの線で結ばれていく感じとはまた違って、自分の推理をしながら読むことができた。
初めて読んだのもあったが、物語に没頭するまでの時間がかかったのが難点。
この没頭するまでの時間をエンジンがかかるまでの時間と表現すると、なるほど知らない作者の本を読むのは「本当にエンジンがかかるかなあ」という車に対する不安と同一視できるのかな。
でも、エンジンがかかってからの颯爽感を感じさせる筆致はさすがビックネーム!
2013.7.4
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地図帳と見比べながら、途中からスリルで一気に加速する。がしかし、最後の章が共感しがたい、無責任すぎやしないか?!それでも松本清張は読んで損はない。
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紀行文ミステリーの王道、とでも言えば良いのでしょうか、個人的には、ミステリーそのものよりも、舞台となった各地の情景描写に心惹かれたのは事実。そもそも読んだきっかけも、旅で行った丹後半島と浦島伝説が絡んでいると勧められたので。
ミステリーそのものは、多少垢のついた、平板な内容かな、と思わないでもありませんが、これはきっと逆で、最近のものがこういった時代のものを模している(部分もある)のだろうと思います。
どうにも、ミステリーというと「謎解き」をしたくなりますが、本書は、それよりはドラマそのものを追う方がメインになってしまいました。逆に、謎解き、という感じの内容では無かったような気がします。結果、紀行文としての印象が強くなりました。
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羽衣伝説には興味があったので色んな情報が得られて得した気分。それにしても調査力というか取材力?がすごいなーと関心。
でも読む勢いがつくまで結構時間がかかったなー。
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タイトルは知っていたが読んだことがなかったので。
売れない作家が「草枕」という雑誌の編集者と取材の旅へ出るとそこへ殺人事件が起こる。最初は野次馬気分でそのことを雑誌へ書いたがそこのことで様々な事件が次々に起こる。
最初は難しくて読みきれないかもしれないと思ったが後半一気に読めてしまうほど展開が早く、面白かった。
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あまり売れない作家の伊勢忠隆は、天地社の雑誌の依頼を受け「僻地の伝説をさぐる旅」の連載を始めた。天地社は財産家の奈良林が道楽で始めたらしい小さな出版社。編集の浜中と浦島伝説、羽衣伝説で有名な丹後半島などを取材旅行に出かけるが、木津温泉で白骨死体の発掘現場に接したり、あるいは明石人丸神社で計算狂の坂口みま子という女にであったりする。ところが第一回の記事が載ると、あの謎の女坂口みま子が尋ねて来て、三十五の秘密を解いたかと思うと、熱海の山の中で絞殺されてしまう。第二回目の取材で美保の松原等に行く内、伊勢は自分たちが歩いている場所が北緯百三十五度、東経三十五度の線上であることに気がつく。愛読者と称する二宮健一とみま子のおぼろげな関係が浮かび上がってくる。
【ここからネタバレ】
やがて突然の連載打ち切り、浜中、二宮等の失踪、武田編集長の不思議な水死と続く。警察は自殺と判断するが、直感的に伊勢は他殺と考えた。伊勢の鳥取三朝温泉、網走刑務所などへの事件調査の旅が続く。
そして浜中の出現と事件の解明・・・・。実は昭和十六年に起こった和歌山県加太岬で密航船の機関長が船長に殺された。しかしこれは船の所有者奈良林の教唆によるものだったが、船長一人が網走に収監され二十年の刑期を過ごした。その息子が実は浜中で、じわりじわりと奈良林に復讐しようとした。一方、奈良林は武田が犯人と考えて、二宮等に殺させてしまった、などという筋書き。
【感 想】
前半部分でひろげた風呂敷がどのように収束していくのか。タイトルの意味はなど読ませます。・・・・しかし謎解きが唐突かつちょとご都合主義なのが残念でした。