松本清張のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「Dの複合」に続き、再び松本清張作品の「影の地帯」を読んでみた。
新進カメラマンの田代利介が九州での取材旅行の帰途、飛行機の中で若い女性と同伴者の小太りな男と偶然出会う。この単なる偶然な出会いが思わぬ展開を見せていく。
田代の行き付けのバーのマダムが失踪してしまい他殺体として発見される。田代は情報を求め動き回るが、その立ち寄り先に若い女性と小太りな男が現れる。最初は単なる偶然だったものが、田代が核心に近づくにしたがい意図的なものへと変化していく。そして、バーのマダムの失踪と時期を同じくして、大物政治家も行方不明となる事件が発生する。この事件も時期が偶然だったものが、次第に関連性が見えてくる。
この二つの事件の背景にはなにやら政治の裏社会の姿が見え隠れし、その影で暗躍する謎の組織的集団が関わり田代の周囲の人間に手が及び、田代自身も生命の危機が迫り来る。
現代のサスペンス小説から比べるとスピード感や手に汗する派手などんでん返しはないものの、ゆっくりとではあるがじわじわと読む者に恐怖感を与えていく筆致はやはり、社会派サスペンスの巨匠松本清張ならではないだろうか。
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Posted by ブクログ
ネタバレ好きな話ではあるが、所々違和感(疑問)あり
ミステリとして
・前半は、姉の死で独りになった主人公が華やかな場に身を置き色んな人や土地に出会っていく展開にわくわくしたけれど、途中から特定の人物や自動車に拘っていて停滞を感じた
・とくに、自動車の話を細かく掘り下げていた割に種明かしの内容は粗く感じた
・謎解きが説明的に詰め込まれており、余韻がなかった。探偵役との受け答えもなく、犯人同士の会話の中で一気に説明&調書で補足しており、それまでの丁寧な描写とのギャップを感じた
人物描写として
・主人公がタフすぎる。姉とは顔も成績も就職先も違い、そんな姉からの圧倒に満足しているという冒頭の記載から、妹は普通の子なんだと思っていた。けど実際は姉と同じ職場で働いていけているし(働きながら事件の真相も追う)、顔も姉に似ていると言われる。ポテンシャル高かったんだなーというのに何気に驚いた。眠っていた力が花開いて姉をも凌ぐ、という感じ。
物語進行のノイズだからなのか本人が躓くシーンがなかったが、急に孤独になり、職が変わり、関わった人が(自分の行動も起因して)次々亡くなったら普通は気おかしくなるでしょと思い、主人公についていけない部分あり
・そもそも何故姉がすごいという描写をしたのかな。妹→姉の尊敬を示すにしても、姉の能力をそんなに強調しなくても成り立つのではないか?
・犯人たちが、主人公に怪しまれていると勘付きながらもデートの誘いにるんるんで応じるのが能天気すぎる
・主人公が犯人にとって最も危険な人物なのに命を狙われなかったのは、さすがに姉と妹両方に関与すると事件間の繋がりがばれちゃうから?
でも、姉を亡くした妹の激闘物語と思えばいいのかも。
犯人も、役を全うするプロ犯人じゃなくて普通の人。説明のつかない行動だってする。その方が、生っぽい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ解説で平野謙が触れているとおり、ミステリとしては色々アラが目立つ。
途中でしきりに「(田村久子が)本多を殺さねばならない理由がわからない」などと動機が疑問視されるが、本多は宗太郎を殺した疑惑の人物を追っていたとすればどうだろうか?しかも本多は全く警戒せずウイスキーに青酸カリを混入されるという宗太郎と同じ殺され方をする不自然。
が、それより何より、色んな推理や主人公だけが知る秘密を何故か一切警察に漏らさず、超人的行動力で解決しようとする。自身にも危険が降りかかると感じなかったのか?
本筋以外にも義理の兄夫婦に対して自分の夫を呼び捨てにする、その義兄が亡くなったのに嫂に遺骨を持たせて一人で東京に返し葬儀にも出ないなど、言葉選びや筋運びに不自然さが目立つ。
まあしかし、なんだかんだ言っても先を読みたくなってページをくる手が止まらないのは事実。結局は名作とされるだけのことはある。 -
ネタバレ 購入済み
面白いのだけれど…
杉田省吾という作家が、日本女性初の国際結婚をしたクーデンホーフ・ミツコの本を書くために、オーストリアとチェコに取材するという作りになっているが、なぜ「杉田省吾」なのか。松本清張の名では駄目なのか、その辺りの説明は無い。
ミツコ(青山光子)は、EC構想の理念の先駆けを唱えたリヒャルト・クーデンホーフ=カレルギーの産みの母である。
てっきりミツコ自身がヨーロッパで生活していく間に構築した理念・思想なのかと思っていたが、そうではなく、あくまでも言葉通り「産みの母」なのだと知った。
おそらく、リヒャルトの母親が日本人(東洋人)でなければ、あるいは母親の名前など残らなかったかもしれない。
遠い異国で、若くして夫を失い、七人の子を育て領地を治めた。日本ではおそらく寺子屋レベルの学問しか修めていないだろうが、領地を守るため法律や経済など必要な知識を貪欲に学び、短期間にそれらに精通するようになり、夫亡き後、有能(で、専制君主的)な領主となっていく。
しかし、領主としては有能でも、母としてはどうだったのだろうか。本当のミツコはどんな人だったのか…。
当時の西洋人であれば(失礼ながら)現地妻ですませそうなところを、きちんと籍を入れ、日墺両政府の認めた婚姻を行う。(夫は外交官なので、結婚には政府の許可が要る)よほどの美人なのか?と思う人が多かろう。
なんとなく小柄で童顔の少女然としたイメージを持っていたが、写真ではスラリとしてスタイルも良さそうで、どちらかと言えば奥ゆかしげだが、聡明そうな印象を受けた。
クーデンホーフ家のルーツを調べるためにプラハへ向かう飛行機内でミツコの息子の一人が書いた記録を読む部分から、クーデンホーフ家とミツコの衝撃的な(?)事実が明らかになる。
しかし、本書の後半はハプスブルク家の悲劇になり、ほとんどミツコについては触れられておらず、また、残念なことにミツコ本人についての資料がなさ過ぎて(100年前なら日本人は珍しかっただろうに)、小説でもないし、旅行記のような…ミツコについて知りたいと期待して購入したのだが…。
よく調べたとは思うものの、とにかく全体的に散漫で中途半端な印象が残る。
なお、ミツコが亡き夫のことを家族のために語った本があるのでそちらを読んでみたい。
(大和和紀さんのレディーミツコもおすすめ)