松本清張のレビュー一覧
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ネタバレ奉天で銃器店を営んでいる横倉健児は、同業の先輩である竜頭商会の宇野陽太郎に話を聞いている。宇野は退役海軍少佐で、なんでも大本教に入信し、宣伝使の辞令を貰い、満州で宣布してくるようにと出口王仁三郎より言われてきたという。宇野に、これからも大本教にのこられるのかと問うと、「じつはどうしようかと迷っている。いっそ宗教団体を創ろうかとも思っています。新興宗教は鉄砲屋よりも儲かりますからね。」と。横倉は、吉林省吉林に向かった。かれはそこで現地の宗教事情を探りに行ったようである。舞台は日本からはなれ、満州に広がる。それがどのように繋がってくるか。宮中、華族、満州、大きな舞台の中で、松本清張最後の小説を読む。これは未完の小説だが、面白かった。
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ネタバレ埼玉県特高課係長の吉屋は、月辰会研究所に目を留めた。宗教団体だろうか?天理研究会事件を思い出したからだ。案内の警察署長は宗教団体ではなく、占いをしているようだという。東京方面から自動車で来る人もいるとか。しばらく様子を窺っていたら、その研究所に呼ばれたタクシーに女性が乗って出てきた。駅前でその女性に会のことを尋ねようとしたが、拒否され、仕方なく警察署まで同行してもらったが、名前は言うがどうしても身分を明かさない。無理を言うと包みを抱えて離さない。無理にその包みを取り、中を覗いて驚いた。「深町女官殿」と記された封書が出てきた。そして、バックからは「宮内省皇后宮職」職員「北村幸子」という名刺が出てきた。驚いた吉屋と署長は彼女に謝って引き取ってもらった。その後しばらくしてから、北村幸子が宮城を辞め、吉野の田舎に戻ってすぐに吉野川に入水自殺をしたと知った。なぜ彼女は自殺したのか、自分の強引な訊問が影響しているのか、それを突き止めたい気持ちにかられる吉屋であった。
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ネタバレ以前、『オカルトクロニクル(サイトの方)』で「青ゲット事件」を読んだ時、松本清張がその事件を元に「家紋」という短編を書いてあると知り、読んでみたかった本。
ただ、「家紋」はややイマイチだったかな?
雰囲気等はいいんだけどなぁー。
というのも、雪代の思うその人が犯人だったとすると、市之助も美奈子も、そして隣家のお房もその人をおそらく知っているわけだ。
だとすると、いくら街灯がない暗い中に頭巾をかぶっていたとしても、ちょっと無理があるような?
確かに明治のこと(「家紋」ではいつの事か書かれていない)だから、いくら廃仏毀釈の世とはいえ、寺の権威はまだまだ相当あったとは思う。とはいえ、2人殺され(実際は3人だったらしい)、子供も殺されるところだったというとんでもない事件で口をつぐんじゃうものかなぁーと思ってしまうのだ。
冒頭の“信仰のために信徒の間に共同防衛意識が強く、聞き込みが困難だからである”という地域の状況は理解できる。でも、そういう地域なら、そういう地域ならではの自浄力みたいなものがあるんじゃないのかなぁ…。
ま、その時代もその地域の状況も知らない現代の人が現代の常識であれこれ言っても意味のないことなのかもしれないが。
この『死の枝』には11の短編が収められているが、いずれもひょんなことで事件が発覚したり証拠が現れたりという話になっている。
意外な面白さだったのが「史疑」。
ある地方の古文書収集家が持っているという、幻の古文書「史疑」。
それを見て論文を書きたい学者がその収集家の元に訪れるものの、収集家は偏屈なのか決して見せようとしないという前半。
後半は、若手の学者がそこを訪れるのだが、ひょんな流れで事件が起きてしまう。
ひょんな流れで起きた事件は、さらにひょんな展開へと進み。そのひょんな展開で起きた出来事が数年後、やっぱりひょんな事をきっかけにある人にひょんな疑惑を抱かせる…という、いわゆる「偶然が多すぎ!」と嫌う人も多そうな話なんだけどさ(笑)
とはいえ、世の中って、実際にはこの手の偶然で出来事が成り立っていることが多いわけで、これは長編で読んでみたかったなーと思った。
(名探偵…、といっても探偵は実際にはいないから名刑事というのはそういう偶然を引き寄せる執念を持った人なんじゃないのかな?)
偶然といえば、最後の「土偶」も偶然(たまたま?)が起こしてしまう事件だが、これは怖いなぁー。
このパターンで起きている事件って、実は世の中の事件のかなりの割合を占めているんじゃないだろうか?
そういう意味でも怖いんだけど、事件を思い起こさせる土偶がなぜか犯人の元に集まってくるその状況は、ある意味死者の祟りのようで、そっちの意味でも怖かったと(笑)
松本清張って、愛想のカケラもないみたいなところがあるんだけど、読みながら想像を膨らませていくと妙なユーモアが滲みだしてくるところがあるような気がする。
ブツ切りでぶっきら棒な文章のくせして、所々やけに鮮やかに情景を浮かばせる点とか(「家紋」の最後の方、向こう岸を真典が歩いていく様子を雪代が見ている描写なんて、もお…!)いい、こういうのを「巧い」と言うんだろうなぁー。