あらすじ
四国の県警捜査一課長香春(かわら)銀作は、文芸雑誌の同人誌評に引用された小説の一場面に目をとめた。九州在住の下坂一夫が書いたというその描写は、香春が担当している“未亡人強盗強姦殺人事件”の被害者宅付近の様子と酷似しすぎていたのだ。再捜査により、九州の旅館女中の失踪事件と結びついたとき、予期せぬ真相が浮び上がる――中央文壇志向の青年の盗作した小説が鍵となる推理長編。
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昭和51年の作品。九州北部、佐賀県唐津付近、玄界灘に面した町の旅館に、東京から作家が執筆のため数日間滞在。しかし、思うように執筆は進まず、滞在中に書いた原稿をボツにして、帰京。そのボツにしたはずの原稿が、殺人事件の決め手となる。4人が亡くなり、芝犬も重要な役割を果たす。
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すごーく面白かった。
結果はわかっているんだけど、
さてどうやって解決にいたるのか、というところで
意外な展開がいっぱいあった。
こういっちゃなんだけどさわやかな読後。
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はじめて読んだ清張作品。
清張に関して「有名」という以外、何の知識もなく読み始めたのでこの作品の完成度というか、清張の凄さを思い知らされた。
ひとつの事件や嘘を隠蔽するために次々に事件と嘘を繰り返し、苦境に立たされる犯人。
こう繋がったのか!と、最後に感服させられる。何度読んでもおもしろい。
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やっぱり松本清張の作品は動機や事件経過がリアリティに溢れてて好きだ。二人の女を同時に妊娠させて片一方を殺すような酷い犯人だけど、盗作したり犯行現場に近寄るのすら躊躇ったりするような小物感が拭えないのも人間味がある。こういう人間が起こした事件、ごく当たり前に新聞に載ってそうと思わせるのがすごい。
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BSテレ東.2024.1.31 ドラマ放送
四国の県警捜査一課長香春銀作は、文芸雑誌の同人誌評に引用された小説の一場面に目をとめた。九州在住の下坂一夫が書いたというその描写は、香春が担当している“未亡人強盗強姦殺人事件"の被害者宅付近の様子と酷似しすぎていたのだ。再捜査により、九州の旅館女中の失踪事件と結びついたとき、予期せぬ真相が浮び上がる――中央文壇志向の青年の盗作した小説が鍵となる推理長編。
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「松本清張」の長篇ミステリ作品『渡された場面』を読みました。
「松本清張」作品は、今年の7月に読んだ『憎悪の依頼』以来ですね。
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四国の県警捜査一課長「香春銀作」は、文芸雑誌の同人誌評に引用された小説の一場面に目をとめた。
九州在住の「下坂一夫」が書いたというその描写は、「香春」が担当している“未亡人強盗強姦殺人事件"の被害者宅付近の様子と酷似しすぎていたのだ。
再捜査により、九州の旅館女中の失踪事件と結びついたとき、予期せぬ真相が浮び上がる――中央文壇志向の青年の盗作した小説が鍵となる推理長編。
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「下坂一夫」は、坊城町の旅館女中「真野信子」と博多のバーに勤める「景子」の二人の女性と付き合っていたが、時を同じくして二人が妊娠、、、
「下坂」は「景子」との結婚を選び、邪魔になった「信子」を殺害し山中に死体を埋める… 事件は発覚しないと思われたが、「下坂」が同人誌に発表し、文芸雑誌の同人誌評で取り上げられた作品の舞台が、四国A県芝田市で発生した“未亡人強盗強姦殺人事件"の場面と酷似していたことから、四国の県警が「下坂」から聞き取りを行い、徐々に真相が明らかになる。
「下坂」が「信子」から入手した、作家「小寺康司」の原稿を盗用したことが真相発覚の鍵になり、読者には犯人や犯行内容が予め明かされているのですが、警察が真相に迫る展開が面白く、感情移入できました、、、
全く別々の二つの事件が予期せぬ接点でつながり、解決していく展開は巧いなぁ… と感じたし、愉しめましたね。
双方の事件に芝犬が絡んでおり、いずれも事件解決の鍵となっているという小道具(動物?)の使い方も良かったです。
面白かったですね。
以下、主な登場人物です。
「香春(かわら)銀作」
四国の県警捜査一課長。
文学好きで県警部内の同人雑誌に小説を投稿している。
「下坂一夫」
唐津の同人雑誌『海峡文学』に作品を発表している。
抽象的な文学理論を云い、非文学的なものを軽蔑している。
29歳。
「真野信子」
下坂の恋人。
千鳥旅館の女中。
「小寺康司」
中堅どころとして期待の声もあがっている小説家。
千鳥旅館に滞在している。
39歳。
「古賀吾市」
『海峡文学』同人。
漁船員。
「景子」
博多のバーの女。
東京出身。
下坂の子を身篭る。
「越智達雄」
四国の県警捜査一課警部補。
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全く異なった土地で起きた事件は "ある文章" によって紐解かれていく。その偶然は繋がりが見えないピースの僅かな接点によって背景が明らかになる。悲劇は愚かな欲望であり、不誠実が心を曇らせていく。松本清張の物語は人間の性(さが)をとことん突き詰めていく。だから面白い。
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2つの事件が、作家志望の青年の盗作から紐解かれていく。なにか、作家である作者の「作家」という職業のアンチテーゼ的な皮肉も込められているように感じた。
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再読。
青年の盗作した小説の断片が鍵となる話。
老舗陶器店の息子であり、中央文壇志向の地方の文学青年の屈折した心情が良かった。
青年役が京本政樹、その恋人の旅館の女中役が坂口良子のドラマを見て、読みたくなった。
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気位の高い青年作家(専業では無い)が妊娠した恋人を抹殺するも盗作した文章から綻びが生じる倒叙型ミステリー。もっとも後半は刑事サイドからの追い込みになる。
松本清張の作品は天網恢々とでもいうべき顛末になるが本作の主人公についてはほぼ無職で女2人を妊娠させる好色ぶり、女関係を完全に秘匿する狡猾さ、困ったら殺害という方法を選ぶ短絡さ、しかも何の躊躇いもなく実行する冷酷さ、ケチをつけておいて文章を丸ごと盗作し追求されても言い訳する厚顔無恥さ、探りを入れて直ぐに後悔する小心さ等の条件が揃いすぎている。あくまで妄想だが同じ小説家として松本清張が最も許せないタイプの悪党だったのかもしれない。
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八月四日 清張忌から読み始めたのですが、しっくりこなくて、お時間かかりました。きちんと、推理小説です。一捻りある構成だと思います。
九州唐津で、旅館の女中をしていた一人の女性が、博多へ行くと言って、誰にも知られず姿を消す。
四国で、小金を貸していた未亡人の殺人事件が起こる。この二つの事件そのものは、関係ないもの。それが、ある「同人雑誌」に投稿された小説の一部が、事件の場面を渡していく。
どちらの事件も、この小説のある場面から解決を見ていくのですが、偶然の繋がりが疑問を持たせていく。うーむ。なんだか、私が説明すると面白くなさそうになる…
ネタバレになるけど(ネタバレても、これだけ古いと読まないか?)、この事件の繋がりは、小説の中の6ページの場面描写。投稿された小説のその部分だけが、賞賛されていた。そこは、小説家が書いて作品としては、発表せず捨てたものだった。ここがね、面白いところなんですよ。偶然手に入れた表現を自分の作品に入れ込んだ素人作家。その描写は四国の殺人現場の近くのものであり、彼とは無関係なのに疑われて、結局、女中殺しがバレちゃう。という屈折。しかも、この6ページ部分を、プロ作家が書いたっていう仕上がりで準備しなければならない作者の勇気よ。しかも柴犬が両方の場面ででてくるのだけど、別の犬という謎。