松本清張のレビュー一覧
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松本清張作品だが、社会派と言うよりは「奇妙な味」系の短編集。いずれも読み応えのある作品だが、「凶器」のブラック感が特に印象に残った。
「遭難」
前半は、山岳雑誌に掲載された道迷い遭難事故の手記。後半は、その時のリーダー江田が被害者の姉の依頼で従兄の槙田と弔い山行に出掛ける様子が江田の視点で描かれる。後半は倒叙系に変わって、二人の心理戦を描いたサスペンス小説。山岳小説としても楽しめる作品。
「証言」
会社や家族に内緒で元部下の女性をかこって逢い引きを重ねる石野。その帰りに近所の住人と会ったばかりに厄介事に巻き込まれる。「人間の嘘には、人間の嘘が復讐する」という結末。
「天城越え」
主人公が -
Posted by ブクログ
短編3つ。1本目が死んだ姉と、やや薄気味悪い姉の旦那の話で、純文学なのかと思ったら、途中でいろんなパーツがパキーンとはまるミステリ。はまるまでの気持ち悪さのせいで、途中まではなかなか読み進められず。
あと2本はどんでん返しで、最初からミステリと解るので読みやすい。阿夫里村の話は、怪文書と供述調書とで本筋が語られる、かなりクラシックな手法だが、今読んでも全く古臭さを感じない。
もう一つは、最初から落ちがわかっている状態だが、事件性がないところに事件を作っていく。
1本目の薄気味悪さには嫌悪感を催す人も少なく無いだろうが、松本清張の安定した面白さが詰まった1冊だ。 -
Posted by ブクログ
表題作は昭和27年度の芥川賞を受賞
純文学にカテゴライズされ、芸術的な評価を受けたものだが
今にしてみれば「天城越え」の原型的作品であり
社会派ミステリーの嚆矢として、日本のホワイダニット…
高村薫や天童荒太、宮部みゆきあたりまで影響を及ぼしていることは
顧みられるべきだろう
どんなつまらない人間にも人生の物語がある
その点を掬い上げようとする方向性は、自然主義~プロレタリアに続く
日本近代文学の正統とも呼べるものだ
まあ、「市民ケーン」の焼き直しと言われればそれまでだが
その他には
経済事情などで進学をあきらめるしかなかった人々の
それでもなお学問への情熱たちきれず
必死に努力を重ねはする