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史実に残っていない小倉在住時の森鴎外の足跡を10年の歳月をかけてひたむきに調査する田上耕作とその母。病、貧乏、偏見、苦悩の中で、衰弱が進んでくる(「或る『小倉日記』伝」)。自らの美貌と才気をもてあまし日々エキセントリックになるぬい。夫にも俳句にも見放され、「死」だけが彼女をむかえてくれた(「菊枕」)。昭和28年芥川賞を受けた表題作ほか、孤独との苛酷な戦いをテーマにした、巨匠の代表作品集。
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Posted by ブクログ
・・・・・書きかけ・・・・・ 松本清張は、101年前の1909年12月21日に今の北九州市小倉に生まれたと確か覚えたはずなのに、最近の研究では、本当は広島市で生誕して小学校低学年は下関市で育ち小倉に住んだのは高学年になってからだといいます。さすがミステリーの巨匠、自らの出自もミステリアスに
ナツ100四冊目。 「事実は小説より奇なり」というか、 ミステリー小説ではない(犯人がいない)のに、 細かい人間描写の中に 人間の暗闇がどぎつく顔を見せている。 松本清張さんの文章に圧倒されて やみつきになる一冊。
芥川賞を受賞した表題作と他5篇を集めた短編集。 後の清張のような推理小説的な展開はほとんど見られない。 まず表題作だが、小児麻痺のようなものを患った男が、九州にいた頃の森鴎外を研究していくという話。 全体にも通ずることだが、人物の心情などをほとんど地の文で書かない簡潔な文体が読んでいて潔い。 内容は...続きを読むまずまずといったところ。 他の4篇に関しては、全体的なテーマとして、登場人物(主に主人公)が、一つのことに集中していて他のことには目もくれないような一途さを持っており、 そのせいで他者の反感を買ってしまうという、熱心さに基づく哀れさが展開されている。 途中では、その人物に反感を持ってしまうが、話が終わるときにはいつの間にやら憐れみを感じている。 松本清張の初期の代表作といえるだろう。
芥川賞受賞の代表作を含む短編集。彼特有の人間の嫌なところをうまく描くというスタイル、それが静かに燃えている感じ。知的で研究熱心な主人公、でも障害のある見た目では社会が簡単に受け入れない。誰もが共感できる人間関係のもつれと絶望感。さすが。
松本清張氏初期の短編集。大衆向け、推理小説のイメージが強い著者だったのでいい意味で驚いた。 切ないやるせない結末が多い。人は皆孤独と向き合ってその人生の歩みを進めていく。だが自分次第でいかようにもできることを自戒すべきだ。
表題作は昭和27年度の芥川賞を受賞 純文学にカテゴライズされ、芸術的な評価を受けたものだが 今にしてみれば「天城越え」の原型的作品であり 社会派ミステリーの嚆矢として、日本のホワイダニット… 高村薫や天童荒太、宮部みゆきあたりまで影響を及ぼしていることは 顧みられるべきだろう どんなつまらない人間に...続きを読むも人生の物語がある その点を掬い上げようとする方向性は、自然主義~プロレタリアに続く 日本近代文学の正統とも呼べるものだ まあ、「市民ケーン」の焼き直しと言われればそれまでだが その他には 経済事情などで進学をあきらめるしかなかった人々の それでもなお学問への情熱たちきれず 必死に努力を重ねはするが 結局はその情熱が仇となって、同学者に恐れられ嫉妬され 疎外されて偏屈になり 誰にも理解されぬまま孤独に朽ちてゆく姿を書いた そんなような短編ばかり集めている 低学歴を補うため渡仏して、おのれに箔をつけようともくろむ 在野研究者のありようは あるいは、「破戒」や「新生」に書かれた藤村の独善を 非難するものなのかもしれない
敗者の物語。 収められている短編はそのような企画意図で集められたものと思われる。 どれも、意欲と才能ある者が貧しさや経歴の不備ゆえに辛酸をなめる孤独な物語。 主人公たちはみな地方から東京へ何らかのコンタクトをとる。最初は歓迎され、のちに反感を買い、疎まれ、自らの情熱に殉死するかのような最期を迎える。...続きを読む 物語の序盤に主人公たちが最初は歓迎され期待されるところは、清張の作家デビュー時と同じようなシチュエーションなのだ。 しかしながら今となっては清張は敗者ではない。この表題作のあと、超のつくベストセラーを量産して昭和の大人物となった。 それにしても、これほど同じ構図を持つ物語をいくつもつづったということは、清張にとってこの主題はよほど重要なものだったのだろう。怨念に近いものを感じた。いいものを読んだ。 特に表題作は美しい。「でんびんや」の悲しげな鈴の音の描写がとても効果的。
松本清張の小説とはいえ、事件や時刻表が出てくるわけではない。 しかしこの初期の掌編にこそ、後に続く不朽の名作『点と線』の 老刑事の捜査への執念や、『砂の器』の 犯罪者の不遇な身の上が生む悲劇など、 氏の推理小説の原点を垣間見ることができる。 森鴎外の小倉滞在時の日記のゆくえを、長い歳月をかけて追い...続きを読むかけた、 田上耕作という男の話である。 彼は生まれながらにして歩行と言語に重い障害がある。 不自由な身体で差別にあい、孤独に押しつぶされそうになりながらも 小倉日記のゆくえを探して東奔西走する。 「小倉日記」は現存するのだろうか? 彼の調査は価値のあるものなのか? 最後の一文にせつないリアルがこもる。 再読。昭和27年芥川賞受賞作。
表題作『或る「小倉日記」伝』、いつか読んでみたいと思っていた。障害があり、周りから疎んじられ、でも、一生を捧げられることを見つけて、満足な気持ちで最期を迎える。でもその後の数行に、せつなくなる。 他の話の主人公は、みな、似たような感じで、自分の信念というか熱中するものがあり、それに夢中になるあまり、...続きを読む周りが見えなくなり、やはり疎んじられ。(人間誰しもが持っているいやな部分でもあるような気がする。そして、体制に逆らえず、逆らう気もなく流される周りの人たち、たとえその主張が間違っていたとしても) 結局、はたから見たら哀れに感じるが、彼ら自身は幸せだったのかもしれない。
まだ狭い世界の、松本清張。 「或る「小倉日記」伝」 松本清張さんの本を読む際に、プロフィール欄に必ず書いてある本。 この作品で、芥川賞を受賞されたからですね。 読んでみると、文章に関しては、もう松本清張さんだな、と 思うのですが、世界観が今まで読んできた作品に比べて狭いですね。 登場人物の数だけで...続きを読むなく、独善的な主人公の意識がメインになって 短編が終わっていくからでしょうか。 自分の信念にまっすぐに、夢中になって、でも認められない、 報われないといった人の話が5つ6つ続くのですが、 そんな主人公の独善に、周囲の嘲笑に同調する際に 「はっ」とすることはありました。 自分の言動、行動に主人公と等しいものはないか? 独善的な振る舞いはないのか? こういったところに、本の素晴らしさはありますね。 生意気な若手にさりげなく薦めてみてはいかがでしょうか。 松本清張氏の作家人生の中でかなり初期の作品ですから、 ここから数々の著作を経て、社会的な作品が生まれていくんですね。 次の本も読み始め、それが20年以上後に発刊されたものですので、 時期による違いも楽しめたらと思います。
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