松本清張のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
岡倉天心は、「茶の本」という日本というものを
世界に知らしめた人で、法隆寺の秘仏を開き、
大観、春草を育てた人で、自ら取り立ててくれた文部官僚の九鬼男爵の
奥さんを寝取って、修羅場をくぐり、東京美術学校の校長を追放された人。
そして、美術史を編纂し、伊東忠太の建築史にも影響を与えた。
という風に、ある程度の理解していたが、
松本清張にかかると、実に 人間臭い岡倉天心が、噴出する。
手法としては、原典にあたり、そこから解釈して、
天心はどのような人物だったのか?を明らかにしようとする。
最初に、東京府巣鴨病院長(精神病学の権威)への九鬼男爵の申請書から
始まるのであるが、原文そのままなので、読みづらく、
ヒーコラして、読んで、なんとなく、松本清張の原典主義が理解できた。
まず、その推薦者も、名士がずらりと並び、恐れ多いほどの
プライバシーのなさに、不思議な違和感を感じる。
結局、妻初子を 病院に入れたいということなんだけど、ここまでの格式がいるのか
というような、大層なものから始まる。
天心は、若くして結婚し、茶屋の娘で、教養もなく、
嫉妬心で、天心の英語の卒論を破いてしまい、
結果として短期間で「美術論」を書いて出したことが、
美術に大きく関わることになった。
その前に、フェノロサの通訳をしたことも大きい。
天心は、外国人並みの英語を操れたというから、その当時ではすごい。
松本清張は、岡倉天心の様々な事件と事例を分析しながら、
人はとかく天心を芸術家として見たがるが、東大卒の文部官僚にすぎないと看破する。
文部官僚だったから、東京美術学校長は快適だった。
確かに、天心は芸術的な先見性(着眼性)を持っていたことで、
魅了し、カリスマ性もあった。
天心は、天才的なアジテーターであり、稀有のオルガナイザーであり、
またプロデューサーであった。天心は、創造の人であり、守成の人では無かった。
得意の時は、翼羽ばたいて発想雲のごとくわくが、失意の時は何もかも投げやりになる弱い性格。
うまくいかないと、逃げ出してしまう傾向にある。
その上、天心の下半身は 継母や姪にさえ節操もない。
姪に産ませた子供を弟子に押し付けて結婚させる。
その上、取り立ててくれた男爵の奥さんを寝とる。
まぁ。自己愛パーソナリティ障害なのかもしれない。
また、自分の言い訳をあまりしないことが、ダンディと思っている。
九鬼男爵の息子 九鬼周造、息子の岡倉一雄の本から見た天心もなんと言えず、かわいそうな存在でもある。
微細に人間を暴露していく 松本清張の冷徹な目は、天心を裸にする。いやはや、すごい話だった。 -
購入済み
期待に応えてくれる名作
どこかの大学教授が書くよりも歴史の奥行きが学べる。権謀術数を駆使して権力の掌握を得ていった明治政府の主人公たちの裏事情もよくわかったようだった。
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Posted by ブクログ
(相変わらず、松本清張さんの未読作品をつぶしています。本当に作品を多く残された・・・!)
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昭和17年、主人公は徴兵検査で第二乙種不合格だったのに32歳にして召集令状が来てしまった。入隊後のいじめ、残してきた家族への思い、朝鮮への転属、死なずに復員してきたのに家族6人は広島の原爆で死に、たった一人になってしまった。戦後の混乱そして赤紙を書いた人たちへの恨みに凝り固まって、復讐を目指す。
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そんなことを言ってはなんだが、ありそうなストーリ、だが、清張さんにかかると迫真だ、ご自身の経験もあるそうなのだが。
主人公はちょうどわたしの実父と同じくらいの年齢、父も教育招集は受けたが、その後、乙種だったからなのか、役所勤めだったからなのか、ツテがあったのか戦争中ずっと父はいた。ま、わたしは昭和16年生まれだからなにせ幼児、後から聞いた話。でも、母は、家族は心強かっただろう。わたしたち幼い姉妹も苦労してないはず。
それに比べてこの主人公色版画工の職人は自営業ゆえ、自分がいなければ商売ができない。その苦労を残った家族にさせ、あげく帰還しても、何もかも失ってしまったことがわかる。なぜ自分がこうなるのか、不公平への悔しさ、恨み。
この不条理を述べないでなるものか!という意気込みがひしひしと伝わる。
しかし、作者は「かたきを撃って」ストーリをおしまいにしない。
だいたい「かたきとは何か?」戦争というものか、政治家か、軍人か、国家なるものを憎むべきか。大きく言えば人間の営みの矛盾か。
小説の最後、主人公の頭の中で
「・・・・・モモナク、ソチラニイク。ヨシコドノ」
という電信文の想起に、泣いてしまった・・・・・・・・・。
解説に代表作の大作『昭和史発掘』がこの小説と同時進行とある。氏が何に情熱をかけたのか伝わるではないか。 -
Posted by ブクログ
上下巻 完読
さすがです!
行員として職務にまっとうする日々の中で
仕事ができても会社に長年尽くしても
決して女子行員は高みを望めない
真面目に働いてきたのにもはやお局として煙たがられる存在
元子はうんざりしていた
絶望していた
経験と信頼を「黒革の手帖」に書き留め
銀行から〝ちょうだい〟した7000万円で銀座にクラブをオープンする
愛も情も知らず大人になってしまった元子
欲だけが彼女の活力となり這い上がろうと
お金に人生を捧げる姿は何故か哀しい
お勉強になります
人が思う人としての幸せは人それぞれ
だとしても幸せになれない人はどこまでいっても結局は幸せにはなれない
なぜなら幸せはお金や地位や人から与えられるものでなく、ただ単純に自分で感じるものだから
人の恨みを積み重ねたきた結末がちゃんと辻褄の合ったミステリーでやっぱ最高。
2019.9.5
今年の15冊目 -
Posted by ブクログ
主役の戸谷は、正直にいって「馬鹿」だと思う。
犯罪行為に手を染めているにも関わらず、計画は杜撰でその場限り、楽観的すぎ(というか嫌なことからは目をそらす性格)、人を見る目がない。
犯罪を行うのならば冷徹さがひつようなのに、そういった覚悟もなく、ただただ楽観的な自分の予測に従って破滅している。
まさしく「士道不覚悟」
弁護士の下見沢からするとこのような下らない男は軽蔑に値すると思うし、だから罠をかけたのだと思う。
下見沢が最初から戸谷を罠にかけようと思っていたかは作中からはわかないが、このような男はいずれか誰かに破滅させられただろう。
途中でトヨがいう「あなたは私がついていないと破滅しますよ」は現実となったのである。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ1.気になっていた松本清張シリーズ、今度は銀座の女の野望を描くストーリーということで、まったく開拓していない分野だったので購入しました。
2.銀行員として働くことに退屈さを感じていた原口元子は、バァとして働くことを決意し、銀座で働き始めた。そして、数ヶ月経ったのち退職をして、自分の店を持つことを決意した。元子は自分の店を持つために、会社の金を横領することにし、見事に会社の金を奪った。これの裏には、支店長と次長のある弱みに付け込んだことがきっかけだった。これを機に、退屈さを感じていた元子の人生は、一気に様変わりし、銀座のママに君臨するために、あらゆる男の弱みに付け込んだ。果てなき野望を掲げた女のサスペンスストーリーが今始まる。
3.話の前半から引き込まれてしまいました。最初の、銀行員が不祥事という言葉に特に弱いというところにリアル感がありました。また、元子が女1人であらゆる男の弱みに付け込んで世間を渡り歩いていく姿は意固地に見えました。男女平等の社会が浸透し始めた現代では、女性にとってどのように思っているのかは、常々考えています。銀座のような場所であれば、元子のような女性が特に多いと思うのですが、指名されることが命の彼女達は生き残りをかけて闘っています。私はこのような女性には縁がないので、普段と違う女性について知ることができたので、面白かったです。