あらすじ
飛行機の中から富士山を写したばかりに、思いもかけぬ事件に巻込まれたカメラマンの田代は、撮影旅行先の木崎湖や青木湖で不気味な水音を聞き、不審な波紋を目撃する。行く先々に現れる小太りの男と謎の木箱を追う田代の周辺で、次々に起る殺人事件は、保守党の有力幹部失踪事件と関連を持ち始め、偶然と必然の織りなす経過のうちに、醜悪で巨大なその全貌を現わし始める……。
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Posted by ブクログ
長野を舞台に鉄路を行き来、先日巡った土地も多く実感を持って読み進めることができた。土地も東京から行きやすいが人口の少ない山中の湖という実用に基づいた選び方であり、大変しっくりくる。変に伝説や言い伝えを重視することなく、無理ない設定であり、内田康夫よりも好きなところ。さらに田舎の地形や人々、街並みなどの描写が丁寧、松本清張、全部読みたい
一介のカメラマンが巻き込まれる事件としては規模が大きすぎるという点で異例なのかな、刑事が主人公ではないだけに意外というところ
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昭和34年から地方新聞に連載された長編作品。名所の各地湖畔を舞台に、最後の結末も松本清張ならではのサービス精神満載。TV2時間サスペンスドラマには、打ってつけの作品。
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犯人の首領格がヤツだったとは・・。まさかあいつが一味に加勢していたなんて・・。これは最後の最後、事件の全容が明かされたときの感想。新進のカメラマン田代は、とある偶然から不可解な謎に巡り合う。そこには平然を装い、心奥でほくそ笑む輩どもの罠がまっていた。700頁にのぼる長編推理小説。
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「Dの複合」に続き、再び松本清張作品の「影の地帯」を読んでみた。
新進カメラマンの田代利介が九州での取材旅行の帰途、飛行機の中で若い女性と同伴者の小太りな男と偶然出会う。この単なる偶然な出会いが思わぬ展開を見せていく。
田代の行き付けのバーのマダムが失踪してしまい他殺体として発見される。田代は情報を求め動き回るが、その立ち寄り先に若い女性と小太りな男が現れる。最初は単なる偶然だったものが、田代が核心に近づくにしたがい意図的なものへと変化していく。そして、バーのマダムの失踪と時期を同じくして、大物政治家も行方不明となる事件が発生する。この事件も時期が偶然だったものが、次第に関連性が見えてくる。
この二つの事件の背景にはなにやら政治の裏社会の姿が見え隠れし、その影で暗躍する謎の組織的集団が関わり田代の周囲の人間に手が及び、田代自身も生命の危機が迫り来る。
現代のサスペンス小説から比べるとスピード感や手に汗する派手などんでん返しはないものの、ゆっくりとではあるがじわじわと読む者に恐怖感を与えていく筆致はやはり、社会派サスペンスの巨匠松本清張ならではないだろうか。
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さすがに松本清張の小説だけあって、文章が自然ですんなり入っていける。ただし、死体の処理方法は少しいただけない。バラバラに切断した上で、パラフィンで固めて別々の湖に捨てるというのだから、不自然過ぎる。この頃の清張は、一月に900枚もの原稿用紙を書いていたというのだから、少し乱暴なストーリーになってしまう作品もあったということなのだろう。最初に出会う女性とハッピーエンドになるのだが、これも安易だよなぁと思いました。
Posted by ブクログ
松本清張の長編推理小説。権力と闇の組織の結びつきがテーマ。
全編に緊張感が漂い、かつ、良いテンポで、ちょいちょい美人が登場するエンタメ的要素もあり、かなりの長編(600頁)ながら一気に読ませる。