あらすじ
花のお江戸は天保時代の、ある朝のこと。大川(隅田川)に厚い霧がたちこめる中、亡霊のように漂う一艘の釣舟があった。やがて二人の男の水死体が流れ着く。川底をさらうと豪華な女ものの煙管(きせる)が見つかった。いったんは事件を任された岡っ引・藤兵衛だが、聞き込みをはじめると、八丁堀の同心からやんわりと圧力がかかる。お上に関係のある事件か? 反骨の藤兵衛を助ける颯爽の旗本・釜木進一郎、無気味な寺僧、大奥に棲む女たちを配してくり広げられる、長篇時代推理!
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Posted by ブクログ
藤兵衛と釜木が上からの強大な圧力に負けずに岡っ引きのプライドで事件を解決していたのでさすがだなとおもった。
最後まで何が真実なのかわからなかったので面白かった
Posted by ブクログ
「松本清張」の時代小説『新装版 鬼火の町』を読みました。
『表象詩人』、『溺れ谷』、『新装版 遠い接近』、『半生の記』、『軍師の境遇 新装版』に続き、「松本清張」作品です。
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朝霧の大川に浮かぶ無人の釣舟。
漂着した二人の男の水死体。
川底の女物煙管は謎を解く鍵か。
反骨の岡っ引「藤兵衛」、颯爽の旗本、悪同心、大奥の女たちを配して描く時代推理。
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天保の江戸を舞台にした時代推理… 時代小説というよりは、ミステリ小説として愉しめましたね。
■幽霊船
■煙管の追及
■厚い壁
■煙管の持ち主
■屋形船
■再び乗出す
■挑戦
■雲の中
■夜と昼
■五分の魂
■結束
■首なし水死人
■釜木の着想
■川路三左衛門という男
■浦風参詣
■二階の俳人
■解説 寺田博
天保11年5月6日の朝、霧の深い隅田川で無人の猪牙(ちょき)舟が浮んでいた… やがて、百本杭で、船宿つたやの船頭「仙造」と屋根師和泉屋の職人「惣六」の水死体があがった、、、
二人とも脇腹に青い痣ができていて、当身をくらって水に落とされたものと思われた… 駒形を縄張りとする御用聞きの「藤兵衛」は、八丁堀の同心「川島正二郎」に事件の解決を任された。
「藤兵衛」は、舟が漂っていたあたりの川底を漁師に潜らせて捜査させると、銀造りの煙管が発見された… そこで「藤兵衛」は、まず江戸有数の袋物屋を訪ね歩き、この煙管入れを造った店を探し当てる、、、
仲町の相生屋で、注文したのは千七百石の旗本「駒木根大内記」の用人「伊東伝蔵」であることを突き止めた… しかし、上役の「川島」から、この事件の探索中止の命令が出て、唯一の証拠品の煙管を奪り上げられる。
ちょうど、その頃、「藤兵衛」の前に小普請組の旗本「釜木進一郎」が接触してきて、煙管の持ち主が「徳川家斉」の愛妾「お美代の方」のお気に入りの中臈「浦風」であることを示唆する… また、屋根職人「惣六」と関係があった娘義太夫の「お春」が何者かに襲われて殺され、水茶屋の女中「お絹」は新米の岡っ引き「吉次」にしょっぴかれ、「伊東伝蔵」は切腹し、「釜木」に煙管の持ち主を教えた「浦風」の部屋子「お島」は何者かに拉致される、、、
再び犯人捜しに乗り出した「藤兵衛」は、「川島」から十手返上を命じられるが、「釜木」と子分たちに支えられながら、探索の糸を手繰っていく… 反骨の岡っ引「藤兵衛」にのしかかる圧力の正体は? 「藤兵衛」を助ける颯爽の旗本「釜木」、足をひっぱる悪同心「川島」、無気味な寺僧や大奥の女たちを配して江戸を舞台に繰り広げられる展開が愉しめる作品でした。
最終章の『二階の俳人』で、70歳近い老人で俳人となって「竹亭」と名乗っている「藤兵衛」が事件の全貌を語るのですが、その前章までの展開がブツっと切れた感じで唐突感があったのは、ちょっと気になりましたが、、、
まっ、全体的には愉しめたので、次も捕物帳を読みたくなりました。
Posted by ブクログ
時代推理小説。ストーリーの中に程よく入り込めて心地よい。次々と起こる難題に立ち向かうテンポも良い。最後の最後で怒涛の答え合わせをする感じはやはりこの作者独特の感じがする。
Posted by ブクログ
~内容(「BOOK」データベースより)~
朝霧にかすむ大川に無人の釣舟が浮んでいた。やがて二人の男の水死体が流れ着く。川底にあった豪華な女ものの煙管は?反骨の岡っ引藤兵衛にのしかかる圧力の正体は?藤兵衛を助ける颯爽の旗本釜木進一郎、足をひっぱる悪同心、無気味な寺僧や大奥の女たちを配して江戸を舞台にくりひろげる長篇時代推理。
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岡っ引き藤兵衛に対する川島の妨害にやり切れない思いを感じつつも、藤兵衛と子分たちの絆に読んでいて力が入った。ただ、「かげろう絵図」の島田新之助を彷彿とさせる釜木進一郎に、島田新之助ほどの輝きがなかったのが残念。
Posted by ブクログ
松本清張の時代物の推理小説。
隅田川に上がった2人の水死体は、柔道に長けた者であろう下手人によって、みぞおちを打たれていた。その現場から上がった細工物の煙管をつてに犯人を追う岡っ引き藤兵衛であったが、同心(岡っ引きの上司)川島に、捜査から手を引くよう指示される。その後、参考人たちが次々と謎の死を遂げていくが…。
なかなか凝ったストーリーで楽しめる時代・推理ものであるが、時代小説が苦手なんだよね。理由はまたいずれどこかに書こうとおもうが、やはり苦手なものにとっては、なかなかとっつきにくいものである。
とはいえ、そこは松本清張、同心とは何であるか、奉行所との関連はどうでという説明もかなり丁寧に書かれており、苦手意識が克服されるかもねという作品である。
一応推理小説という形にはなっているが、最後の最後で「点と線」スタイルが始まるまで、結局動機やらなにやらが、読者には予想もつかないため、単純に人間模様や岡っ引きの捜査を楽しむのが正しい読み方であろう。
わかりやすかったが、やっぱり苦手かもね。