あらすじ
小さな出版社を経営する紺野美也子は、ベストセラーをねらって大流行作家に近づき、その魅力で書下ろし小説を依頼する。ところが、作家の欲望の影が、しだいに彼女を追いつめ、さらに、愛する二人の男性との間で苦悩する美也子の、破滅への道が始まる。美貌の女社長をめぐって展開するサスペンス長編小説。
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無もなき北斗出版社社長 紺野美也子は、女手一つで出版社を成功させるべく併走する。夫の卓一は詩人を目指す純朴な人柄、2人は相思相愛である。美也子は自社から卓一の詩集を出版することを夢見るのである。
美也子は人気作家の青沼禎治郎へ接近する。女好きの青沼は、魅惑的な美也子に下心を抱く。美也子は、強引に青沼から書き下ろし原稿を手に入れたのだが、、、。
美也子は卓一と知り合う以前に、銀行頭取井村重久の加護を受けていた。結婚後も井村と手を切れずにいたが、卓一は疑うことをしなかった。
卓一は散歩中に近所の野見山房子と知り合う。房子は美也子と青沼の関係に立ち入っていく、美也子と井村の関係も察知する。何も知らない素振りの卓一を思いやる。卓一は本当に何も知らないのか?
ある日、卓一は美也子に置手紙をして旅に出てしまう。房子の卓一に対する思いやりの感情、美也子に対する不満、青沼に対する激昂が綴られる。
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松本清張全集未収録作品。
いまの時代になってこれを読むと、まったく紺野美也子に同情できないどころか、青沼氏に同情する方が多いのではないだろうか。そもそも色仕掛けで契約履行を促してきたのは紺野側。青沼氏の据え膳を食うのはまあ男としてあるあるであろう。純粋な夫の愛情が美化されているが、ホス狂いの女とまったく同じ思考回路ではないか。
もちろん小説自体は面白く、文句なしの五つ星。
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美貌と色気を兼ね備えた美也子は、自らが立ち上げた出版社を大きくする野望を持つ。それも愛する夫(詩人でヒモ同然)の本を出版してあげたいが故。その為には、女の武器を使い、愛人のパトロンもいる。その後、男を手玉にとったしっぺ返しを喰らうが、それはあまりにも代償として大きかった...。始めは『黒革の手帳』ばりの悪女話かと思ったが、どうもそうではないらしい。美也子の切なさ・脆さはぐっとくる。下手したら昼メロのような雰囲気になるところ、そうはならないのはやはり松本清張だからか。隣人房子のキーパーソンぶりは凄い。
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主人公の美貌の出版社社長はなんて厭な女なんだろう。
黒革の手帳のように、喝采を送りたくなるような悪女ではない。
三人の男が出てくる。
女好きの流行作家。愛人の銀行頭取。無名の詩人である純粋な夫。
背表紙の ”二人の男の間で苦悩する” というのは、綺麗ごとで本当に嫌な女だった。
厭な女ぶりを、じっくり味わえる作品。
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【立ち上がるための脚は、ついているか】
久しぶりに松本清張を読んだ。不甲斐ない自分への戒めのつもりだった。流れない時間を無理やり動かすための歯車でもあった。読み終わりに感じたものは、読み始める前となんら変わりなかったが、時間だけは動いている。
自分には出来ないことがある。出来ることもある。できたことが出来なくなる時もある。僕には自信が無さ過ぎた。
会って話してみたくても、嫌わるのが怖いのだ。見知らぬ人でいたい。出会いは別れ。ファンでありたい。読みたいから。認識し合えば、何かの拍子で僕がなにかをやらかして、本が読めなくなる。そんなことになったら。常識がないのです。だから、怖くなって。心から懺悔しても、自分は許してくれないのに。渡そうと思った本カバーと栞はもうごみ箱に入れた。書いた手紙はやぶってもやした。馬鹿なんだよね。僕は昔から馬鹿だ。
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塗られた本 松本清張(著)
松本清張を読み返して、ずいぶん私の中の価値観が、
変わっていたことに気がついた。
松本清張を社会派と呼ばれていたことの意味が、
やっと分かったような気がした。
ピュアーな気持ち、純粋な気持ちを大切にするものを、
主人公に据えることで、社会の汚濁、人物の低俗さを、
浮かび上がらせることに、主題をおいた。
多分、若かりし頃の社会と大人というものに対する
私の見方もそんな風だったのだろう。
松本清張は、ピュアーで、ロマンチストだった。
今読むと、松本清張の手法であり、何と無く、
胡散臭さを感じるのである。
小さな出版会社を立ち上げた 美也子。
水商売から、純粋な気持ちで、詩人を好きになり、
詩集を出したいばかりに、出版社をつくる。
その資金は、どこから出ているのか?という疑惑があるが、
エロティックな本をだす、流行作家に、色仕掛けで、
原稿依頼する。露骨すぎても、美貌のために、流行作家も心が動く。
据え膳 食わぬは、男の恥ということだ。
流行作家は、人参ぶら下げられて、原稿を書き上げる。
房子は、新劇の女優で、バーで働く。
美也子の旦那、伸一をよく知っていた。
美也子のやり方に、反発しながら、伸一に同情する。
流行作家の狙いも、房子にわかる。
そして、房子は、流行作家の作品の主役となる。
劇は、そこから始まるのであるが。
頭取のワンマンさ。そして、事故によって、没落。
寂しい人生がはじまる。美也子の支援者だった。
ピュアーないきかたをしている伸一は、
生活無能者として、自覚する。
その結末は?