松本清張のレビュー一覧
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ネタバレ昨年から読んでいたこちらが、今年の一冊目になった。
実家(北陸)の暗い冬にピッタリすぎる、ゼロの焦点と、この黒革の手帖で年末年始を挟んで、なかなかの濃いお正月となった。
上巻は、原口元子がこわーい、と思いながら読んだ。
昨年末によくみかけた銀行の貸金庫丸パクリ事件は、この本の冒頭の顛末さながらである。
ブイブイ言わせる元子は、さらに上へ上へと挑戦していくのが上巻。
ところが下巻に入ってから、急に世界はガラリと足元から崩れていく。
そのおおもとは、上巻の元子の行動に恨みを持つ女たち。
ひどいしっぺ返しを受け、そのまま終わる…。
マジか、どこかでさらにやり返せるかと思ってたので、終わりまで見て頭が真っ白になった。
たしかに元子は酷い仕打ちをしてきたが、銀行時代の男性行員に対する苦しさや、悪い銭を貯めてきた小悪たちにムチを振るってきただけなのに、と思ってしまった。
安島との一夜の描き方はちょっと微妙。
こんな悪女もまた女だったのだ…!体の悦びに打ち震えていたのだった!とか言いたげな、清張氏の筆はなんだか古臭くておっさんの描く女像だな、ととたんに白けてしまった。
今までの元子がいなくなったようで詰まらない。
最後まで読んで、銀座の夜を舞台に、男や女のアツい戦いに燃えたのは事実だけど、このおわり方にはヒューと背筋が寒くなった。
みうらじゅんの言う、松本清張の後ろメタファーがよくわかった気がします…。 -
Posted by ブクログ
北陸の実家で年越しに読む。
ちょうどラストは大晦日の話だった。
暗いし怖いけど、面白い。
新婚の夫が失踪、その義兄も殺される。
調べるうちにわかる夫の正体。
夫が謎の人だとわかる展開が怖い。
戦後13年はまだこんな社会だったのだなあ。
この当時の金沢、東京の雰囲気も同じくなんだかこわいんですよ。
自分(主人公=妻)との結婚が、夫にとっての崩壊の始まりだった、とうすうす気づいてしまうのが、なんとも苦い。はあー。
そんなわけで、今年の本はこれで終わりです。
来年もよろしくお願いします。
これからも、みなさまのもとに本の神様が微笑まれますように。 -
Posted by ブクログ
戦後の日本を舞台とした凶悪犯罪。読み進めていくうちに明らかに犯人の人物像とは違う人が犯人に仕立て上げられているなと思いながら読んでいたら当時は自白重点主義といい被疑者がやりましたと言えば犯罪立証という今生きている私からすれば恐ろしい時代だったことがわかった。
それは確かにそれっぽい証拠に主観を立てて問い詰めていけば段々と被疑者もやっていおうがやっていまいが追い詰められていく。犯行につながるものに対する主観はあったが確実に結びつく証拠ではない、でも犯行を自白したらそれで立証される。
大衆の声も被疑者の考えも刷り込みや決めつけ、大きな力をもつものからの圧力でどうにでもなってしまう。それは時代が変わった今にもあるのではないかと感じてしまうところもあった。 -
Posted by ブクログ
NHK大河「軍師官兵衛」そのまんま。いやもう、カッコ良すぎる黒田官兵衛。秀吉も嫉妬するほどの才知、先を読む洞察力、判断力。秀吉の猜疑を感じて早々に出家し、黒田如水と改名したぐらいだ。それほどの頭と男気がありながら、自分を死ぬ寸前まで追いやった憎むべき城主を許し、最期まで家老と城主という立場を守り続けたこの忠誠心。しびれるな〜。蹴られても殴られてもご主人様を慕う忠犬のようだ。このダメダメ城主は御着の小寺政職(まさもと)、大河では鶴太郎が演じた。申し訳ないけどこのダメ城主と赤っ鼻の鶴ちゃんが重なってしまう。小寺のために息子を人質に差し出し、小寺のせいで何年もの間土牢で過ごし「ちんば」になってしまった官兵衛。それでも毛利に見捨てられ放浪していた小寺を引き取っているのだ。男の中の男とはこういう人のことをいうんだろうね。
2話めは細川忠興(細川藤孝の息子)とその妻於玉(おたま.明智光秀の娘)の話。三浦綾子の「細川ガラシャ夫人」から、夫の帰りを健気に待つ妻と妻を思う優しい夫のイメージが植え付けられていたが、こちらの小説では全く違う。全くそりの合わない二人。於玉は粗暴な忠興を嫌い、忠興の短気と於玉の勝気はしばしば衝突した、とある。しかし忠興は世にも美しいこの妻を衷心から愛していたようだ。於玉が忠興の変態的な愛情と、その圧迫に耐えかねて、キリシタンの信仰に入ったのは彼女の絶望感からであった。
話は鉄砲の名人である家臣稲富直家に及ぶ。細川家が窮地に陥った時、直家は忠興を裏切って細川家から出て行ったが、主人を裏切った不忠者ということで、どの家からも雇われることはなかった。しかしその鉄砲の腕前だけは重宝され、全国を回遊しているうちにできた門弟は数知れなかった。 -
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遠い接近
時代背景は戦時中から終戦直後。山尾信治は予期せず赤紙召集となる。前半は所属連隊での苦渋に満ちた日々、いつ南方戦線へ送られるのか不安な日々を過ごす様子が綴られる。本来、赤紙対象でないはずの自分へ、赤紙がきた。そこには作為があった、ある人物が浮かび上がった。
無事生きて終戦を迎えるが、家族は疎開先の広島で原爆にあい全員が亡くなった。赤紙を作為したその人物へついに接する、「遠い接近」であった。信治の復讐が始まる、完全犯罪を成し遂げたと思えたが、、、