あらすじ
若い芸術家の憧れの的である美貌の人妻・竜崎亜矢子。彼女は夫・重隆との愛なき結婚に苦しむ“名家の囚人”であった。カメラマンの奈津井久夫は亜矢子に惹かれながらも見合い結婚をした。取材で出向いた青森県十三潟で男の死体に遭遇した奈津井は、その写真で脚光を浴びる。亜矢子への憧憬をカメラに託す奈津井だが、彼女は新聞社勤務の久世俊介と……。彷徨う愛の行方は!?
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Posted by ブクログ
1961年から雑誌『女性自身』に連載。旧華族に嫁ぐも「名家の囚人」の竜崎亜矢子。その夫は、愛人関係が盛んな総合商社シンガポール支社長。一方、亜矢子に恋焦がれながらも、それを忘れるべく亜矢子紹介の千佳子とお見合い結婚するカメラマンの奈津井。新婚旅行の東北、そして青森県の十三潟で遭遇した自殺死体を撮った写真で高く評価される。しかし、奈津井も新妻の千佳子の距離は一向に縮まらないどころか、千佳子の過去が徐々に明らかになっていく。
風の視線
若き奈津井久夫は頭角を表しはじめた有能な写真家である。「杉の会」が開催した五人展に展示した写真は、奈津井が特に高い評判だった。千佳子と見合い結婚するが、愛情とは縁遠い2人であった。物語は、奈津井が密かに思いを寄せる女性を明らかにしていく。一方、千佳子も過去の男性がおり、自ら再び接近していく。
竜崎重隆はM物産のシンガポール支社長であった。妻、亜矢子は同行せず、重隆とは別居状態であったが、それは彼女の望みでもあった。
久世俊介はR新聞社事業次長の肩書き渋い中年であった。津久井の属する「杉の会」は久世の支援を受けていた。
津久井久夫、千佳子、竜崎重隆、亜矢子、久世俊介が、複雑に絡み合う人間模様の物語である。
千佳子は過去の男の宿泊するホテルの部屋を訪ねる。
下巻へ続く。
Posted by ブクログ
シンガポールで商社マンとして成功した男、貞淑な美人妻アヤコ、新進カメラマンの青年、その妻である千佳子、昼行燈だがアーティスト達の応援者たる記者。大体この5人が織りなすラヴストーリー。死体が出てきた事からミステリーが始まると思うと全然そうはならない。
言い分はあるがそれぞれ勝手な連中ではある。王道ヒロイン的なアヤコも言い寄られた男の処理に見合い結婚させるなどしている。それでも夫の方が松本清張作品によく見られる愛人持ち(人妻でも容赦なし)金にも汚めかつ人間性も嫌な奴というお手本の様なヒールのため他の登場人物達が浄化されていた。