田中芳樹のレビュー一覧
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ネタバレ第五章「君主の度量」
パルス歴315年
トゥラーン・シンドゥラ・チュルクの三国同盟が成立し、パルス侵入の危機が迫る。
しかし戦いを決めたのは軍事力ではなく情報戦だった。敵陣に流された噂が猜疑を生み、三国の同盟は自壊する。
知恵と人心によって勝つ道を選ぶ。
その戦略を支えたのが軍師 ナルサス 。隠遁生活をしていた彼が正式に殿下に仕える決意を固める。
第六章「救いの一矢」
パルス領ペシャワールはルシタニア軍に包囲される。ルシタニアの大司教による惨殺から救った「一矢」を放ったのは
流浪の楽士にして弓の名手 ギーヴ。
第七章「流浪の楽士」
ペシャワール攻囲戦は十日に及び、
城内の疲弊は限界に近づく。
抑圧されていた奴隷たちが蜂起。
内側から体制が揺らぎ、包囲戦は転機を迎える。
第八章「血塗れの門」
第九章「流血の狂宴」要点
パルス王都エクバターナはついに崩壊。
王宮は陥落し、都市は虐殺と略奪に呑み込まれる。
そこに入城したのが
ルシタニア国王 イノケンティス七世。
彼の到来は勝利の凱旋
狂信的宗教国家による支配の始まり
第十章「囚われの王妃」
王都陥落後、
パルス王妃 タハミーネ は捕虜となる。
その美貌と気高さは敵国の男たちすら惑わせ、
ルシタニア国王 イノケンティス七世 は
彼女を自らの妃に迎えようとする。
しかしここで浮かび上がるのは、
ルシタニア側の不安定さ。
国王派と、王弟 ギスカール 派
私の好きな「将国のアルタイル」と似ている部分がありそう。
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『魔天楼』に続く「ドラよけお涼シリーズ」第2弾。権力を茶化す氏の筆の冴えはますます鋭利になっているようである。感覚的にはやはり『創竜伝』に通じるものがあると思う。読んでいてとても面白いのだけれど、作品としては作者の中では特殊な位置にあるものになるのだろうか?というのは、他のシリーズものは軸になるストーリーがあって結末に向かって進んでいることが判るし、単発作品は単発作品でその長編ごとに完結しているわけだが、これはそのどちらにも属さないような気がするのだ。よくある永劫回帰型のシリーズものになるのだろうか?キャラクターそれぞれが魅力的なので今後に期待したいと思う
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ネタバレ宇宙暦801年、新帝国歴003年——ラインハルトの初陣から10年が過ぎた。
キルヒアイスは亡く、ヤン・ウェンリーもいない。ロイエンタールも鬼籍に入った。銀河を駆けた英雄たちは、ひとりまたひとりと退場していった。そしてラインハルト自身も、原因不明の「変位性劇症膠原病」に身体を蝕まれている。息子アレクはまだ幼く、父と子はまだ会ってもいない。
最後の戦いが始まる。
ユリアンはラインハルトとの会談を目指していたが、「新世紀号」の救難信号を受けて出撃。帝国軍との「シヴァ星域会戦」へと突入する。帝国軍から亡命し、ヤンとともにユリアンたちを導いてきたメルカッツが、乗艦ヒューベリオンとともについに散る。
長かった銀河英雄伝説が、ついに最後の時を迎える。
この物語に最初に触れたのは高校生の頃だった。
あれから25年。
これは、自分が生きてきた人生を振り返る回想なのだ。
すべての景色が感慨深い。かつて銀河を埋め尽くした艦隊も、名を轟かせた提督たちも、少しずつ退場していく。星々の物語が、静かに幕を閉じようとしている。 -
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ネタバレ今までいろいろ怪奇的生き物が登場してきたこのシリーズだが、土着の風俗や伝説的存在ではなく、まったくの人間のエゴで作り出された存在がグロテスクで哀しい。
自由の国アメリカの、実は全然自由ではないキリスト教への妄信。
この作品に出てくるアメリカの大富豪は、キリストの再来を信じて、その日に備えて驚くべき準備をしている。
自分中心でしか物事を考えない金持ちは、キリストの教えすら自分に都合のいいように捻じ曲げる。
金さえあれば何をやってもいいなんて、キリストは言ったか?
「弱肉強食」「自己責任」などはキリストの教えなのか?
今回涼子は、まったくの休暇を泉田くんと過ごそうと、結構小細工を駆使して楽しみにしていたのに、事件の方が涼子に、いや泉田くんに襲い掛かってしまったのだ。
だから、やむを得ず、残りの休暇を楽しむために、涼子は全力を尽くす。
まあ、事件そのものをも楽しんだかもしれないが。
合間合間に挟み込まれる自由時間に、涼子がきっちり予定を組んでいたことがうかがわれて微笑ましい。
ここは普通に20代の大金持ちのお嬢様なんだな。 -
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ネタバレ次から次へと、よくもまあこんな飛んでも事件が起きるな、東京。
今回は『山枯らし』という、自然に存在する妖怪(?)が、マッドサイエンティストの手によって環境テロに対する武器として作り変えられる。
それはすでに環境テロそのものなのだけど、自分だけは正しいことをしていると信じ込んでいるのがマッドサイエンティストたる由縁。
薬師寺涼子はそんなマッドサイエンティストに名をつける。
怪人「への一番」。
悪人にかっこいい名前を付けるべきではないという、確固たる信念からの名づけ。
自己評価はさておき、泉田警部補は頭も切れるし、剣道・拳銃・体術にも優れ、スタイル抜群、多分イケメン。
今まで彼には弱点がなかった…ように思う。彼女には振られたけど。
そんな泉田君の弱点はミミズであることが今回分かった。
そして、ミミズの大群に出くわした時の彼の行動に、大笑い。
いやいや、心からイケメンだよ、彼は。笑 -
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ネタバレひとは、「蛇が苦手」「蜘蛛が苦手」の二種類に分かれるのだそうだ。
だとすると私は圧倒的に蜘蛛がダメ。
蛇は毒がなくてまあまあ小型サイズなら何とかなるけど、蜘蛛は毒がなくてもどんなに小さくても無理だ。
なので、今回の話はちょっと読んでいて厳しかった。
シリーズが続いて作者もいろいろ設定を考えるのが面倒くさくなったのか、この蜘蛛は、科学者が作り出したものでも、古代の生物でもなく、ただ、存在するのだ。
なぜ巨大化したのか、なぜ長生きなのか、なぜ人間に化けることができるのか、それらについての説明は一切ない。
カナダのバンクーバーにある公園で発見された、日本人の男女の不審な死体。
その謎を解き明かすため、何なら犯人の検挙もするためにカナダに出張で来たというのに、いつも通り悪党に襲われ、怪物に襲われ、そいつらが日本人を殺害したというオチ。
それはいいんだよ。
ワンパターンという名の様式美。
でも、物証がないのに事件解決というのはあまりにも乱暴すぎる。
お涼さん、物証をゲットすることができたら、完璧なんだけどねえ。 -
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ネタバレ国際的な巨大ハイテク企業の一角で、錬金術をものにした元工学博士が作り出す、伝説上の怪物たち。
怖い。
私は学生の頃、モンティ・パイソンの映画で「人喰いウサギ」を見てからというもの、どんなに愛くるしい小動物と言えど、油断をしたことがない。
やっぱりいるんだ、「人喰いリス」。
初期に比べて涼子の、泉田警部補に対する愛情表現が割とストレートになってきているのだけど、相変わらず彼はそのことに全く気付かない。
けれども、法を無視してまで突っ走る涼子の行動に、「やれやれ」と思いながらもちゃんと付き合うのだ。
尻拭いも含めて。
相変わらず作者の、日本の政財界人や高級官僚に対する嫌悪感がはなはだしくて、偏見が過ぎるよなあと思いながらも、痛快である。
”だいたい日本が世界を支配して、どんないいことがあるっていうの?世界じゅうに何億枚も地域振興券がばらまかれるのかしら”
懐かしい「地域振興券」。
そして、「確かに」としか言いようのない、現在まで続くバラマキ体質。
成長がないというか、ほんと勉強不足だな、最近の政治家。 -
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ネタバレ数十年ぶりに勘違いが是正されました。
私、薬師寺涼子と小早川奈津子をごっちゃにしてました。
どちらも田中芳樹の作品に登場する人物です。
最初に読んだのが『創竜伝』で、小早川奈津子の強烈な個性というか、アクの強さに驚きました。
敵も味方も関係ない。
天上天下唯我独尊。
金も権力もすべて自分のためのもの。
次に読んだのが『摩天楼』。
敵も味方も関係ない。
天上天下唯我独尊な薬師寺涼子。
でも、警察?完璧なスタイル?
…多分、『創竜伝』のあの人の、巨体になる前の前日譚だ。
しかしなぜまあ、あのような変貌を遂げることになってしまったのか。
よし、シリーズものみたいだから、いずれ読んで謎を解明しよう。
そして、『摩天楼』の続編であるこれを読んで、勘違いに気付いたのである。
っていうか、『創竜伝』を再読したので、名前の違いと、心根のありようが全然違うことに気づけたのでした。
薬師寺涼子は、いい。
いや、性格は悪いけど。
でも、自身の正義感に基づいて行動するからね。
手段は問わないけど。
他人のことは知ったこっちゃないと言っていても、彼女のターゲットはあくまでも政治家や宗教家や大企業の経営者で、税金を使って私腹を肥やすようなやつらと、そのおこぼれにありつこうと蠢いているやつらばかりだ。
今回はほとんど使われることのない財務省の三田分室(大豪邸)を舞台に、最初は政治家と宗教家が幽霊会社を通じて助成金を着服している件を追っていたはずだったが、その地下で行われていた怪物の生成の秘密まで知ってしまい…。
作者がストレス解消のために描いたというだけあって、読んでいるほうもストレス解消ができる。
なんといっても、日ごろ私腹を肥やしているであろう政治家たちを糾弾しきれないのは、それなりの手続きを通してて法に則った言動でないと弾劾できないから。
それを薬師寺涼子は、まず自分の頭で考えて体を動かして、手段は問わず、理屈は後からこじつけることで結果を出す。
本来なら、正義を振りかざせば手段は問わない的な行動は好きではない。
でも薬師寺涼子は、好きな言葉として「勝てば官軍」を挙げている。
確信犯だ。
そして田中芳樹お得意の、軽妙な会話のやり取り。
目に浮かぶかのような、派手で大仰なアクションの数々。
これはもう極上のエンタメ小説として笑って流すしかなかろう。
きっかけは勘違いだったけれども、これからもシリーズを読んでいこうと思う。