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遠未来の宇宙。始祖ゴールデンバウムによる王朝樹立以降、専制君主と門閥貴族が支配する銀河帝国と、その独裁に抵抗する人々が作り上げた民主主義国家・自由惑星同盟(フリー・プラネッツ)、帝国領でありながら陰で権力を操ろうと画策するフェザーン自治領(ラント)──三つの勢力によって構成された銀河の盤面で繰り広げられる英雄たちの闘争と栄光を描いた宇宙叙事詩は、刊行から現在に至るまで日本SFの金字塔として永らく読者を魅了し続けている。『銀河英雄伝説』を愛してやまぬ作家たちが捧げる6編を収録する公式トリビュート集。/【収録作】序文=田中芳樹/「竜神滝(ドラツハ・ヴアツサーフエル)の皇帝陛下」小川一水/「士官学校生の恋」石持浅海/「ティエリー・ボナール最後の戦い」小前亮/「レナーテは語る」太田忠司/「星たちの舞台」高島雄哉/「晴れあがる銀河」藤井太洋/著者のことば
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Posted by ブクログ
6人の作家による銀河英雄伝説公式トリビュート・アンソロジー。
原作が完結してから何年?1989年の完結?30年近く経て、トリビュートされるのは衰えない人気の証明。
嬉しい。
タイトルに列伝1とあるからには、今後も刊行の予定があるという含みと思います。銀英伝の世界が、銀河の歴史が1ページ、また1ページと増えてゆくわけです。これは嬉しい。
「竜神滝の皇帝陛下」
エミールのラインハルトへの心酔っぷりを評して、釣りをしている時も宇宙を釣り上げているようでした、という一文があったことを思い出す。そこからふくまらせた作品。日常生活というか余暇を楽しむことができないラインハルト。彼の数少ない日常の光景を垣間見える、と言いたいところだが、そう上手くはいかない。違う作家の文言ではあるが、彼に『目指せ一般市民』はできないのである。
エミールがラインハルトとの約束を果たしている将来も伺えてニヤリとする。帝国一の信頼と忠節を持ち合わせる医師であったのでしょう。
「士官学校生の恋」
魔法使いは、いつでも魔法使いだった。ヤン艦隊に欠かすことのできない重要人物アレックス・キャゼルヌ。彼が風邪をひいたらイゼルローンが風邪をひく、そう言わしめたキャゼルヌ。その彼が頭が上がらない人物であるオルタンス夫人。彼女なくしては、ヤン艦隊は成り立たない。
女は何でも知っているのよ、とウインクされたら、ホールドアップ。探偵オルタンスの続編希望。
「ティエリー・ボナール最後の戦い」
題名のボナール少将の活躍と引き際の良さもいいのだが、在りし日のウランフと、未だ何者でもないルビンスキーの存在に、目を引かれてしまう。
ボナール少将の軍人としての終わり方は、ひょっとするとヤンが描いていた理想系なのでは。過不足なく職務を勤め、悠々自適な年金生活を送るという。二人の天才を筆頭に紡がれた、激動の時代が始まる寸前にリタイアするという、この時代で最も幸福な人生を送った人物の一人か、ティエリー・ボナール。
「レナーテは語る」
あのオーベルシュタインが犬を飼っているだと!あのオーベルシュタインがか。
その遠因になったであろう事件の物語。登場した最初から退場の最後まで憎まれ役を担い続けたオーベルシュタイン。人間臭さというものを感じるエピソードがほとんどなかった彼に、唯一あるのがあの犬。
また、彼を偲んで語り合うという構成がいい。これをロイエンタールあたりが見かけたら、なんと思ったことか。皮肉の一つでもいうのだろうけど、きっと無表情で受け流されてしまうのだろう。ヴァルハラでも、相変わらずの相容れない関係。
「星たちの舞台」
ちょっと入り込めなかった作品。個人的には、悪巧みに奔走するアッテンボローを見たかった。ヤンとヒュパティアの掛け合いに、何を見出すか読み取るか、が自分の中にあれば違った感想になっていたはず。
小さなものでも、誰かにとって大事な存在であれば蔑ろにしない、というヤンの主義、というほど大上段ではないが、はこの頃から変わらないのだと嬉しくなる。それを表現できるから、同盟と共にあったのだから。
「晴れあがる銀河」
ルドルフ登極直後の銀河帝国。晴れあがるというタイトルとは裏腹に、作品通じて感じるのは不透明な空気。新しい時代が始まったはずなのに、新たな時代の夜明けに立ち会っているはずなのに、闇が押し寄せてくるような不安。
その違和感を感じている少数の人間が、避難するべく選んだのが後の、という作品。
晴れあがってゆく世界に残った微かな影。その存在は、どぎつい光で宇宙を照らそうとしたルドルフの帝国に何をもたらすのか。その影の中には、深い闇が潜んでいるとは、知るはずもないこと。おもしろい。
ポプランを主人公にした作品がなかったのは意外。本伝後のポプランだと、宇宙海賊サーガになってしまいそうではある。
早く2巻を読みたい。さらなる銀河の歴史のページをめくりたい。
Posted by ブクログ
普段アンソロジーは手にとらないのですが、銀英伝トリビュートとくれば話は別です。
ファン必読の書と言えるでしょう。
列伝1とあるので、今後2、3と続いてほしいです。
では、簡単なエピソード紹介を。
①竜神滝の皇帝陛下(小川一水さん)
ラインハルトの新婚旅行中の数日が描かれます。
僕は最後の作者自身による注釈を見るまで気づきませんでしたが、原案はあの超有名な漫画の1エピソードらしいです。
冒頭のエピグラフに続いて、史書あるいは史家の論文と思しき記述があってから本編に入るという銀英伝らしさ溢れる構成に、一話目から胸が熱くなります。ラストに年表形式で語られるエピローグもいい。
②士官学校生の恋(石持浅海さん)
正伝でのお気に入りキャラの一人であるアレックス・キャゼルヌが主人公の、なんと安楽椅子探偵もの。
といっても、キャゼルヌの役回りはワトソンで、安楽椅子探偵は彼に縁のある一人の女性キャラなんですけどね。
ヤン・ウェンリーはまだ士官学校生で、ロベール・ラップやジェシカ・エドワーズも登場します。
③ティエリー・ボナール最後の戦い(小前亮さん)
宇宙歴791年、帝国歴482年。銀河史に燦然と輝く二人の英雄が姿を現す少し前の、とある艦隊戦が描かれます。
ルビンスキーも、まだフェザーンの自治領主補佐官として登場し、彼らしい暗躍ぶりを示します。
④レナーテは語る(太田忠司さん)
ほんの短い間、オーベルシュタインの部下だった女性レナーテの回想によって語られる、彼女の同僚の死をめぐるミステリー。
鋭すぎる切れ物オーベルシュタインの意外な一面も窺える良編です。
⑤星たちの舞台(高島雄哉さん)
士官学校卒業の直前、音楽学校の女子学生との二人芝居の舞台に立つヤンが描かれます。
とっても青春してるエピソードです。
⑥晴れあがる銀河(藤井太洋さん)
皇帝ルドルフの治政下、正伝には名前も出てこない数名の人々が、ルドルフの命令によって航路図を作る様が描かれます。
合わせて帝国の優生思想政策の萌芽も描かれており、帝国内の一般人にとっての暗い未来を容易に予想させる一編でもあります。
ラスト一行はニヤリですね。
Posted by ブクログ
銀河英雄伝説公式トリビュート作品集の一巻。
六名の作家による六編の短編が収められている。
それぞれに、作家が本編に出てきた一文に着想を得ていたり、好きな人物をこうだったらと掘り下げてみたり、本編には過去の史実として書かれていることがリアルに知れるシーンが描かれていたり、自由で夢がある一冊。書き手から銀河英雄伝説への愛情が伝わってくる。
士官学校に通ってた頃のヤンが女装して舞台に立っていたり、オーベルシュタインに女性の部下がいたり、ラインハルトが良き父親として振る舞おうとしつつ釣りをしていたり・・・。
あれだけドラマチックな物語の中にいた人たちの何気ない日常が描かれていて、読んでいて楽しかった。
それぞれのキャラクターの個性が、ブレていない点も良かった。
1巻だから続くだろうし、続きも猛烈に楽しみ!
Posted by ブクログ
ユリアン「・・・」
ヤン『どうしたんだい、ユリアン。そんな浮かない顔をして』
ユ「て、提督。この報告書を読まれましたか?」
ヤ『あぁ、なかなか良く出来てるじゃないか。何か不満でもあるのかい?』
ユ「そりゃ、ヤン提督は活躍が報告されてますけど、僕は、言え、私の事はどこ
にも書かれてないんです。不公平じゃないですか!」
ヤ『そうは言うけどね、ユリアン。あのキルヒアイスやロイエンタール、
ミッターマイヤーについても書かれていないよ』
ユ「で、でも提督。あのオーベルシュタインなんて、大活躍じゃないですか」
ヤ『確かに。ユリアン、君は何歳だい。今回報告されているのは、それなりに
年齢を重ねている人の昔話がメインなんだ。君はまだ若い』 『それに、キャゼルヌ
少将のを読んだかい』
ユ「もちろんです、それにしてもキャゼルヌ夫人、すごいですね、
少将もかたなしって感じでした」
ヤ『キャゼルヌ先輩は、本来とても優秀な人だ、なのにあの描かれようだ』
ユ「私は、まだこれからと言う事でしょうか」
ヤ『まぁ、そう言う事だよ。ただあまり期待してはいけないよ。他にもまだまだ
優秀な人材はいるからねぇ。シェーンコップはもちろん、ビュコック提督なんて、
若い頃の話を探し出したらキリがないはずだよ』
フレデリカ ❛私なんて、エル・ファシルにいた頃、当時のヤン中尉にサンドイッチ
とコーヒーを差し入れた話しぐらいしか思い出話が出てこないのよ。これでも
士官学校を次席で卒業してるのだから、他にももっとありそうなものでしょ、
そうは思わない、ユリアン?❜
ユ「・・・」
ヤ『・・・』
フ❛あら、わたし、何か変な事を言ったかしら❜
とまぁ、こんな短編集です。
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