山田風太郎のレビュー一覧
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水滸伝の頃の中国。豪商の西門慶は7人の妻妾と多数の手伝いの者を豪邸に侍らせ、贅沢三昧の日々であった。西門慶の親友である応伯爵」は西の城に入り浸っているが、目にするものは妻たちのドロドロとした人間関係。その中でも最も美しく、力を持ち、様々な問題のきっかけになるのが、淫魔で妖艶な潘金蓮だった…。
長いがこまめに章分けされ、目まぐるしく展開するエログロ歴史小説。序盤から手足を切り落とされるとか、はらわたを切り裂き、という描写もありつつの、一方で要所要所でかなりきつめのエロ要素があるため、かなり読者を選ぶ内容である。
妖術などが出てくる話かと思っていたが、そういう物は特になく、多くの章は謎解きのような探偵小説チックな話である。また、江戸川乱歩や横溝正史のように、悪役もまた固定されているところが読みやすい要因であろう。
ただ、中国名に馴染みが無いため、男女の違いがわかりにくかったり、劉が何人か出てきたりと中盤まで誰がどうしたのかわからないまま読んでいた。
また、文章は現代語が織り交ぜられたりと、かなり砕けた内容にはなっているが、章の終わりくらいには漢詩のようなフレーズを織り交ぜてきたりするので、どっち方面の終わりでいいのかな?と悩むところもあり。
なお、本としては終盤に「えっ?」となる展開となるが、まあそれはそれ、読んでのお楽しみである。
エンターテインメントとしては良作であるものの、やはりエログロの表現が少し現代には合わないかと思うし、読者も選ぶ一冊である。 -
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拙者、山風の明治ものクロスオーバー大好き侍なので、こちらにも手を出す。
本当は幻燈辻馬車よりこっちを先に読むべきだったかも。
とりあえず上巻を終えての感想は、
早く読み切らないと、登場人物が覚えきれない!です!
内容としては、明治の大警視の川路とその部下たち(藤田五郎もいるよ)vs江戸の警察たる奉行さまとその手下たちの推理&力技バトル。
そこにあちこちの有名人やその親が登場。
江戸と明治は本当に地続きなんだなあ、そこに大正昭和が連なっているんだなあと、まあ当たり前のことだが、それをしみじみ感じた。
明治の軍人官僚が薩長土肥だったけど、冷遇された佐幕側の藩士たちの思いは(とくに会津、越後、加賀)、改革派だったのに内ゲバで全然活躍しなかった水戸藩は、そして忘れ去られた奥羽から昭和の軍人が多く輩出された理由、と時代も人も縦横無尽で知識がぐるぐる回されていく。
冒頭に少しだけ登場する、半七捕物帖の半七にも、偶然に頼りすぎ、と一喝する山風。笑わせてもらった。
上巻では幻談大名小路と、幻燈煉瓦街が面白かった。
東條英機の家が会津の能楽師だったことも初めて知る。
ラストに出た冷血漢の鳥坂は架空のキャラか。
この人の物語は、架空なのか、史実なのか、いつもなかなかわからない。
山風の視線は、江戸に置いて行かれた人々の側にある。
これからどうなっていくのか楽しみ。
たまに、あたおか性快楽マシーンみたいな女性キャラが、一ミリも感情のない道具として登場するのがキツイ。
これがまあ山風ワールドの醍醐味でそこがないと解決しない話も多いのですが、今の私にとってはそれが最大の雑音でした。
読んでいると、たんげいすべき、たんげいすべからず、とかが口癖になりそう。
ちらっと読んだ最近の漫画バージョンの兵四郎は、色気お兄さんという感じで、私のイメージと違ってて笑った。 -
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山田風太郎忍法シリーズは私が生まれた年から連載が始まり、氏の人気小説家の地位を確立した。トンデモ忍法のオンパレードで、表題作『忍法関ヶ原』にも伊賀者服部半蔵支配下の忍者が、徳川方と豊臣方の決戦を左右するであろう大筒の生産拠点国友村を巡る諜報活動で活躍する、身体から糞の臭いを発し、何万匹というハエを操り、ハエで形づくられた人影の分身の術「蝿達磨」。米俵に身を隠す為に、身体の水分を抜き、赤ん坊程の大きさに変身できるナメクジの術「枯葉だたみ」。男女の睦ごとにも奇怪な術を駆使するくの一が登場するのが、山田風太郎の真骨頂。残りの忍びは四人の鍛冶、鎌太夫、鉄算、鍋三郎、鋤右衛門を凋落し徳川方につく。そして役目を果たした伊賀者は生き残った三人も褒美はただ死を賜らんのみ、と書置きし自決した。表題作ほか、『忍法天草灘』、『忍法甲州路』、『忍法小塚ッ原』、『忍法聖千姫』、『忍法ガラシヤの棺』、『忍法幻羅吊り』、『忍法瞳録』、『忍法死のうは一定』。巻末に日下三蔵氏の忍法帖雑学講座⑫を収録。
最後のおことわり、には「本作品中には、九ニページ以下二十四ページにわたり、きちがい、癪、啞、癩癇、白痴、びっこなど心身の障害に関する、また、混血児、非人、支那など、今日では差別用語として好ましくない用語が使用されています。しかし、戦国・江戸時代を背景にしている時代小説、および著者が差別助長で使用していないことなどを考慮し、これらの『ことば』改変はいたしませんでした。読者の皆様のご賢察をお願いいたします。」とある。1999年発行。
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映画を観る前に読もうと買いました。
八犬伝のターン「虚」と、作者の滝沢馬琴と葛飾北斎がしゃべっているターン「実」という構成がおもしろいです。八犬伝、登場人物が多く複雑で相関図が欲しいー!と思いながら読みました。え?死んじゃうの?!と思ったところは、「実」ターンで北斎が突っ込んでくれました。私自身は馬琴と北斎の性格や暮らしぶりがおもしろく、『北越雪譜』の鈴木牧之が出てきたりと「実」ターンを読むのが楽しいです。八犬伝は本筋以外の補足?がたくさんあり、すごく長い物語だとはなんとなく知っていましたが、なるほどこういう感じで長くなっていったのかと「実」ターンでわかりました。
まだ上巻なので、下巻で八犬士が全員揃ってどんな結末を迎えるのか、また、馬琴と北斎やその周りの人々がどうなるのか楽しみです。 -
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「あれは絵になる。」
葛飾北斎が馬琴とお路の執筆作業を見て発する言葉。映画でも印象に残ったが小説でも印象に残る。
日本のif小説、異世界もの、架空戦記、SF小説、幻想小説において、筆頭と言える作品を物語だけでなく、書き上げた滝沢馬琴とは如何なる人物かを教えてくれた。歴史上の人物としてではなく、作家人間滝沢馬琴の生涯物語と言える。
戯作本としての八犬伝を楽しめ、滝沢馬琴の人生小説としても楽しめるおいしい作品である。
映画化により本作を知って初めて読むが、世に知られた忍法帖シリーズとは違う山田風太郎の世界が存分に堪能できた。
映画も小説もまた見なおしたくなる作品。 -
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71年頃の作品集。匂い立つようなエロスに満ちた話が多い。全7編。
「姦臣今川状」
菊池寛の短編に「三浦右衛門の最後」という酸鼻を極める話があって、私はずっとこれを架空の人物と思っていたのだが、この話を読んで実在の人物であったと知り驚愕。
「売色奴刑」
実に風太郎らしい作品。男どもが女の美しさにまなこくらんで、勝手にそれぞれ自滅した事件にもかかわらず、奉行のお裁きによって、懸想されただけの女たちがなぜか奴女郎に堕とされて、禽獣の見世物もかくや、倫理も人権もあればこそ、という肉の奴隷に処せられる話。まったくもって理不尽に過ぎる話でどうなってしまうのかと思ったら、そこはさすがに風太郎だけあって、なるほどそうくるか、という結末を迎える。 -
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樺戸集治監看守の有馬四郎助は訪れた空知の監獄で大雪で立往生。空知で厚遇を受け長居をすることになった。その間に教誨師の原を追いかけて家出して来た男爵令嬢に会う。監獄に監禁した原を殺そうと企む県令の岩村。原を救うために囚人たちとともに奇想天外な罠を県令に仕掛ける。そして奇跡が囚人の手によって起こる。
キリスト教を絡めてしまったので忍法帖のような展開は望めないが、それでも敵役の県令を肉体的には傷つけず目的を達成するあたりは面白い。その一方で山田風太郎にしては物足りない。やはりもっと派手にスカッとしたいものだ。
有馬の人間性は高く評価される。「私は彼らを囚人としてでなく、人間として処遇します。私はキリスト教について説教はいたしません。ただ私は彼らと友人になろうと努力します」関東大震災発生時の混乱でも一人も囚人が脱走しなかった驚くべき事象に対して、のちに有馬はそう語った。素晴らしい人間愛である。
さて、下巻は「地の果ての獄」が半分くらいで、残りのページは5篇の中短編を収録している。「斬奸状は馬車に乗って」の切ないストーリーが苦しい。年を取って来て、恋愛も人の気持も現実はこういうものなんだろうなと思い始めてきた。恋愛体質も終わりに向けて変わってきたということなんでしょうね