山田風太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ日本の、否、世界の運命を別つ数日間が、複数の人の手記などによって立体的に浮かび上がる。誰もにとって地面がひっくり返るような出来事が起きたとき、言葉はふさわしくないけれど、人間というのは面白いなあと思う。作家は民衆の「語りべ」であると著者が言うように、作家の手記は特に興味深いものであった。
玉音放送を聞いて、涙を流すどころか死を選ぶ人もいたと云う。国家のために、と命を投げ出すことも、敗戦後の日本で生きる気力を失ってしまうことも、正直理解しがたい。今は何を信じればいいのかわからない時代だから、戦時中の日本全体のひたむきさが少し眩しかったりもする(向かう方向が戦争でさえなければ…)。
蛇足だ -
Posted by ブクログ
多対多のエログロ能力バトルを描いた忍法帳シリーズも12巻に…って、なんかちがうぞ。なんと、この巻はうってかわって短篇集である。エロも忍法もそれほど多くは出てこない。歴史の中に名を残す人物が実は…というような吃驚を楽しむもののようだ。
あとがきではないがあとがきのような短編で、著者自身が、なぜ荒唐無稽な忍術モノをはじめたのか、ということに触れている。だがこの短編集は、それほど荒唐無稽でもない(いや、首切っても死なない奴とかは出るけどさ)。長編の忍法帳に比べると、歴史小説っぽい雰囲気があって、それはそれで嫌いではないのだが、何か逃避的娯楽たる読書から、少し地面に近いところにひきずりおろされたよう