山田風太郎のレビュー一覧
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最強妊婦とエロ忍者の戦い。巡るのは、妊婦の腹に入っている豊臣家の胤。
くノ一の術というのは、別名女の武器を使う術であるといわれるけれど、そのタイトル通り、くノ一たちはおよそ超人的、というか超自然的な術を用い、対するエロ忍者群もまた、光景を想像したくないようなトンデモ技(精液垂れ流してトリモチ)などを展開する。忍法は使わないが、超人的な体術を誇る妊婦も乱入し、さらには大御所徳川家康が、孫娘千姫可愛さにトチ狂い、手助けしたり邪魔したり。忍法の多くが下半身系なのだけど、エロくはない。むしろグロい。そんなわけで、ハチャメチャな進行ではあるのだけど、果たしてその結末に唸るのであった。イヤまじて唸るよ。 -
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ものすごい調理技術を持つ忍者(←かなり違っている)が、捻くれてドイツもコイツも死ねばいいのに、と暴れる話。いや、やはりちょっと違う。多対多、男対女の能力バトルではあるのだけど、主人公は片方の陣営の見張り役であり、見張りが必要なだけあって、登場する女たちはけっこうコロッと男に転んでしまう。忠臣蔵、と銘打っているだけあって、舞台は浅野内匠頭率いる四十七士を巡っての、吉良側の味方同士の駆け引きなのである。
「女と忠義が嫌い」という主人公。ところが実のところ、どいつもこいつも忠義野郎ばかりで、主人公はションボリと去っていく。忠義というのはかくも面倒くさいものか。僕も割と嫌い。
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ネタバレ鮎姫可愛いよ。鮎姫。
筆者が『B級にも満たない作品』と評したらしい一作。
なるほど確かに、他の山田作品に比べ情念と言うかパワーと言うか、そういう熱量はあまり感じられなかったかな。
と言うのもやっぱり悠太郎の振る舞いが影響してると思う。
べらぼうに強い訳でもなく、一貫した強い思念がある訳でもなく・・・
ちょっと読んでいて爽快感を得られない部分はあったかな。
お縫に鮎姫に敵方である葉月に、女性登場人物が軒並み印象深い立ち位置であるがゆえ、尚更。
とは言えあくまでも『忍法帖シリーズ』という期待感が高いせいでもあるけどね。柳生と比べちゃったりするから。 -
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1947(昭和22)-1962(昭和37)年に
一般誌や少年向け雑誌に掲載されたホラーテイストの作品を集めた短編集。
作者が医学生だったためか、専門知識を引用したネタ多数……とは、
言い換えれば、精神や身体の疾患および異形を題材にしているということで、
表題から岡本綺堂の『青蛙堂鬼談』風の雰囲気を想像していた
自分のアテは見事に外れた。
だよね……だって……山田風太郎だもん(笑)
巻末に断り書きがあるとおり、時代が古いせいか、現代より人権意識が低く、
今だったら活字になって商業出版など不可!
――な語句・表現が散見されるが、
その旨を注記した上で原文どおり掲載という編集姿勢は好ましい。
マ -
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山田風太郎の昭和20年の日記。
兵役検査で合格しなかった事実を知っていると、アメリカに対する敵愾心や、戦争が終わって転向した日本人に対する怒りが、より悲痛に感じられる。
あとがきで小学校の同級生34人中14人が戦死した事実に思いをはせ、
「死にどき」の世代のくせに当時傍観者でありえたことは、ある意味で最劣等の若者であると烙印を押されたことでもあったのだ。
と記している。おそらくは、最期までその劣等感は克服できていない。今で言う医大生だったので、たとえ兵役検査に合格できる体を持っていても一兵卒として徴用されることはないのだが、それを隠れ蓑にしている疾しさが行間から感じられた。
ほんとに -
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山田風太郎の代表作『魔界転生』を、これまた山田風太郎原作の忍法帳をコミック化するのに定評のある、せがわまさきがコミック化した第二巻。
絵は妖艶美麗にして、ストーリーは重厚。だがしかし、話の進みは亀の歩みw
名だたる剣豪のバックグラウンドを丁寧に描いて行ってるから、従来の山田風太郎のスピード感とはちと縁遠くなっている。そこが残念とも言えるし、『あれ?魔界転生ってこんなに剣豪のバックグラウンドを丁寧に描いてたっけ?』とも思える。そういう意味で、山田風太郎原作のものよりキャラの愛憎が際立っていて、深く感じられる。
田宮坊太郎とかこんなにかっこよかったんかい。とか。荒木又右衛門ってこんなに剛毅だったん -
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山田風太郎 著「あと千回の晩飯」を読みました。
著者独特の死生観、老いへの提言をユーモアたっぷりに綴ったエッセイ集。
自分の余命を感じながら老いを生きていく人生観は、まだ想像がつきません。
おそらく、人生の折り返し地点を過ぎてしまったと思われる自分ですが、人生のゴールをどのような心境で走り終えられるのか、考えずにはいられませんでした。
著者のようなユーモアや皮肉を込めた辛辣な切り口で人生や世界を割り切ることができたら、老いの世界も悪くはないのではないかなと感じました。
自分はあと何回晩飯を食べられるのでしょうか。
家族と共においしく食べられる幸せをしっかり -
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短編集。
PART1(本格もの)
【天狗岬殺人事件】先生とお父さんが二人で話をし、それを息子が聞いているというあの場面が不穏な雰囲気で良いです。手紙に綴られた彼女の複雑な思いと、親の勝手に振りまわれた青年の心の傷も残酷。「揺れるもの」には親二人のエゴが詰まっており、結末も苦々しかった。派手なトリックと不穏な雰囲気が漂う良質なサスペンスです。
【この罠に罪ありや】刑事が尋問によって相手を追い詰めていく様がロジカルでとても楽しいですが、心理的なオチにしているのがおもしろいです。
【夢幻の恋人】夜な夜な繰り広げられていたであろう狂気の遊びを想像するとぞっとします。哀しい愛の物語が根底にあるものの