山田風太郎のレビュー一覧
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1947(昭和22)-1962(昭和37)年に
一般誌や少年向け雑誌に掲載されたホラーテイストの作品を集めた短編集。
作者が医学生だったためか、専門知識を引用したネタ多数……とは、
言い換えれば、精神や身体の疾患および異形を題材にしているということで、
表題から岡本綺堂の『青蛙堂鬼談』風の雰囲気を想像していた
自分のアテは見事に外れた。
だよね……だって……山田風太郎だもん(笑)
巻末に断り書きがあるとおり、時代が古いせいか、現代より人権意識が低く、
今だったら活字になって商業出版など不可!
――な語句・表現が散見されるが、
その旨を注記した上で原文どおり掲載という編集姿勢は好ましい。
マッドなドクターの話は楳図かずお御大の絵が相応しいのではないか、
などと勝手に思った。
ストーリーそのものよりも、戦後の混乱が尾を引く都会の片隅で、
治安が悪く、主人公たちの周囲に塒(とぐろ)を巻くように
危険な夜の空気が充満している部分が怖かった。 -
Posted by ブクログ
山田風太郎の昭和20年の日記。
兵役検査で合格しなかった事実を知っていると、アメリカに対する敵愾心や、戦争が終わって転向した日本人に対する怒りが、より悲痛に感じられる。
あとがきで小学校の同級生34人中14人が戦死した事実に思いをはせ、
「死にどき」の世代のくせに当時傍観者でありえたことは、ある意味で最劣等の若者であると烙印を押されたことでもあったのだ。
と記している。おそらくは、最期までその劣等感は克服できていない。今で言う医大生だったので、たとえ兵役検査に合格できる体を持っていても一兵卒として徴用されることはないのだが、それを隠れ蓑にしている疾しさが行間から感じられた。
ほんとに本をよく読む人だなというのも印象的だった。 -
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山田風太郎の代表作『魔界転生』を、これまた山田風太郎原作の忍法帳をコミック化するのに定評のある、せがわまさきがコミック化した第二巻。
絵は妖艶美麗にして、ストーリーは重厚。だがしかし、話の進みは亀の歩みw
名だたる剣豪のバックグラウンドを丁寧に描いて行ってるから、従来の山田風太郎のスピード感とはちと縁遠くなっている。そこが残念とも言えるし、『あれ?魔界転生ってこんなに剣豪のバックグラウンドを丁寧に描いてたっけ?』とも思える。そういう意味で、山田風太郎原作のものよりキャラの愛憎が際立っていて、深く感じられる。
田宮坊太郎とかこんなにかっこよかったんかい。とか。荒木又右衛門ってこんなに剛毅だったんかい。とか。
転生した剣豪達は強いのは当たり前だけど、ある意味、天草四郎時貞や宮本武蔵の取り巻き化してたのを掘り下げて解釈し、バックグラウンドを広げる試みとしては実に評価できる。
今回は槍の名手、宝蔵院胤舜と柳生但馬守宗矩。そして、尾張柳生の狂犬、柳生兵庫介如雲斎。
それぞれがそれぞれの悔いを抱き、最強を夢見ながら懊悩し、そして朽ちて行こうとする。そんな強きもの共の心に滑り込む魔性。
哀しいよなぁ。やるせねぇよなぁ。などと思いながら、剣豪達の生涯を調べ直してみるのも一興かと。 -
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山田風太郎 著「あと千回の晩飯」を読みました。
著者独特の死生観、老いへの提言をユーモアたっぷりに綴ったエッセイ集。
自分の余命を感じながら老いを生きていく人生観は、まだ想像がつきません。
おそらく、人生の折り返し地点を過ぎてしまったと思われる自分ですが、人生のゴールをどのような心境で走り終えられるのか、考えずにはいられませんでした。
著者のようなユーモアや皮肉を込めた辛辣な切り口で人生や世界を割り切ることができたら、老いの世界も悪くはないのではないかなと感じました。
自分はあと何回晩飯を食べられるのでしょうか。
家族と共においしく食べられる幸せをしっかり味わっていきたいと思いました。 -
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短編集。
PART1(本格もの)
【天狗岬殺人事件】先生とお父さんが二人で話をし、それを息子が聞いているというあの場面が不穏な雰囲気で良いです。手紙に綴られた彼女の複雑な思いと、親の勝手に振りまわれた青年の心の傷も残酷。「揺れるもの」には親二人のエゴが詰まっており、結末も苦々しかった。派手なトリックと不穏な雰囲気が漂う良質なサスペンスです。
【この罠に罪ありや】刑事が尋問によって相手を追い詰めていく様がロジカルでとても楽しいですが、心理的なオチにしているのがおもしろいです。
【夢幻の恋人】夜な夜な繰り広げられていたであろう狂気の遊びを想像するとぞっとします。哀しい愛の物語が根底にあるものの、それを覆う滑稽さと恐ろしさで混沌としていて素晴らしい。
【二つの密室】名探偵のパロディ。「超名探偵」この方法を密室の謎を解くために使うというのがおもしろい。「大完全脱獄」ば、ばかな…。確かにものすごい脱獄。方法もすごいけれど、脱獄した場所もすごい。どちらも皮肉が利いてます。
PART2(ナンセンス小説)
【パンチュウ党事件】パンパンたちのおへそがとられるという、事件も登場人物たちもふざけているおもしろおかしい話なのですが、こういう喜劇の中にふと真面目な心理をまぎれこませるのが上手いと思います。こんなアホっぽい事をしでかした犯人の心には戦争からくる暗いものがあったでしょうし、最後の女の啖呵にもはっとさせられます。
おへそがとられるというとおとぎ話じみてますが、それが実は皮膚移植というのがまた凄い。
【こりゃ変羅】これまたばかばかしい設定ですが、この変な出来事が齎す事件が狂気じみています。最後のセリフも滑稽でいて不気味。
男性目線からの男の体、性欲やセックスについてが女のわたしには新鮮でした。これは男性が読むのと女性が読むのとでは感想が違ってくるのかもしれません。親指をひょういと立てるようにコントロール出来る事のばかばかしさなど、男性ならもっと共感できて楽しめるのかも。
【江戸にいるわたし】現代から江戸へタイムスリップしてしまった男女。時代考証をきちんとした上で、もしこれがこうだったらという作者お得意の展開です。
こういうタイムスリップものでは歴史を変えていいのか、というテーマがありますが、主人公二人が歴史に疎く、未来の事なんかなんにも考えてないいきあたりばったりなのがおもしろいです。
はちゃめちゃな2人が当時の江戸をかき回すのに、最後はしっかりまとめるのが楽しい。
【贋金づくり】ちょとしたユーモア小説。
PART3女探偵捕物帳
【三人の辻音楽師】美女・未香と老人・玄城と少年・雛乃介の3人は、かつて殺害された一族の復讐の為に復讐相手たちを訪ねまわる。毎回3人が直接手を下すこともなく、復讐相手が何者かに殺害されてしまいます。そして未香が犯人を推理するというパターンですが、こうも都合よくいくとこの3人がますます怪しいです。この話は見世物にされた女の苦悩と、太陽をぼんやり眺めている描写が哀しい。
【新宿殺人事件】殺人事件の舞台を整えるまでの、不倫だとか火事だとか事故だとかのなんやかんやが楽しかったです。しかし襲われた娘はあまりにも不憫。このトリックとオチはおもしろかったです。
【赤い蜘蛛】衆人観衆のなかでの不可能犯罪。赤い蜘蛛が不気味なシンボルとなっています。舞台劇のようでした。
【怪奇玄々教】新興宗教の奇跡という名の奇術のネタバレが楽しいです。火の上を歩くとか生首とかばかばかしくて良い。総務の柴田の突然の告発場面もおもしろく、野心溢れるこの犯人は好きでした。未香は関係ないと言っていましたが、柴田も戦時中沖縄に行っています。そしてあの最後となると、益々この3人が不気味です。
【輪舞荘の水死人】転落のトリックもおもしろいですが、登場人物たちの人間関係が互いに身を縛り動機にも繋がっているのがおもしろい。
PART4(サスペンス)
【あいつの眼】眼は口ほどに物を言うといいますが、殺人犯特有の眼というものが本当にあるのかな、と思ったり。
【心中見物狂】自殺した女の手記から物語が始まりますが、この手記がまた哀しい。一途で不器用な女の姿が浮かび上がります。その死を悼む男の取った行動もまたいろんな意味で痛々しいです。誤解が積み重なって迎えたラストはなんとも残酷。
【白い夜】そっくりな二人の女が相次いで自殺した。それぞれの夫二人がこの相次いだ事件について己の見解を語るわけですが、隠されていた本当の人間関係が明かされると同時に事件の様相もかわってくるという驚きが連発される展開です。更に大がかりなトリックも登場して、密度の濃い贅沢な一編でした。
【真夏の夜の夢】車の中で死体に気づかないとか、警察がなぜ死体をあんな風にとかは思うものの、偶然が偶然を呼びあのような結末になったことは、神を信じるといった男にとって運命のように感じます。青年の波乱な人生と母親の幽霊エピソードが上手く絡んでいるのもおもしろかったです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ女って怖いgkbr。読んでる間ずっと薄ら寒さを感じました。
男を手玉に取る女達の恐ろしさやエロティシズム、業をまざまざと描写した中篇2編を収めています。
最初の「誰にでもできる殺人」は、とあるアパートの一室に越してきた男が、押入れの隙間に隠された一冊のノートを見つけることから始まります。
そのノートにはその部屋にこれまで入居してきた人々が綴る奇妙な体験談が綴られており、彼等の話の中心にはいつも1人の女性がいて・・・っていう、何とも分かりやすいオムニバス形式のサスペンス・ホラー(?)。
奇妙な住人、奇妙な事件、奇妙な符号。
真実に限りなく近い印象を持つ読者のもどかしい気持ちを高めながら、次々と悲劇的な結末を迎える住人達の数奇な人生が、視点を次々と変えながら語られていくのが面白い^^そしてあのラスト^^
あんまり意味を成さない見取り図があるのもご愛嬌ですね^^
二編目の「棺の中の悦楽」は、初恋破れた男が、曰く付きの大金を使って女達を弄ぶ話なんですが、最後に意外な展開があったり、意外な人物が男の人生を破滅にまで追い込むっていうラスト数ページの件^^主人公ドンマイ
あれ・・・今回ただ内容要約してるだけじゃん・・・ -
Posted by ブクログ
短編集。
【忍者服部半蔵】忍法帖シリーズではお馴染みの服部半蔵。伊賀を束ねる頭領としての話は、ほかの忍法帖シリーズでの服部半蔵を知っているとよりおもしろいと思います。
忍法帖シリーズではそんなばかな!というようなとんでも忍法が魅力の一つですが、作者が自分で作った忍法を登場人物の一人にそんな無茶な、と突っ込ませているのがおもしろいです。その皮肉に陰に生きる忍者の哀愁も漂っています。
まさに「服部半蔵の血」とでも言うべき意外なラスト。最後の台詞もこの人物が忍者として変わった冷酷さと、変わらない軽薄さが伺えて味わい深い。
【忍者枯葉塔九郎】体をばらばらに出来るという忍術を様々に活かした物語ですが、あんなことしちゃうのには驚きました。分かっていてもあれは勇気がいると思いますが、それほど彼女に執着していたことへの表れかもしれません。悲劇的な末路を感じさせる不気味な最後。
【忍者梟無左衛門】こ、この忍法はすごい。作中にもある通り一体何の役に立つのかと思いますが、こんな話にしてしまうなんて。権力者に対する女の必死の抵抗には痛快さがありましたが、それがもたらす結果の悲惨たること。この忍術を決して使ってはならない、という言葉が思いだされます。恐ろしい施術場面といいその結果といいほとんどホラーです。
【忍者帷子万助】ハッピーエンドかと思わせてのこのラスト!すべて丸く収まったのに気味の悪さが残るのが恐ろしい。帷子万助の本当の心情はなんだったのでしょう。凄い体験をしたもんです。
【忍者野晒銀四郎】これもまたほとんどホラーです。忍術修行に出ていた銀四郎が親族には冷淡だったり、恋をした女には甘かったり、イマイチ感情移入出来ない男でした。なのでその結果にも特に感慨深いものはなかったですが、恐ろしげなラストの描写は良いです。
【忍者撫子甚五郎】これはおもしろい!天下分け目の関ヶ原の合戦で暗躍する忍者たち。こちらは史実を知っているわけですからこの物語の結果も当然分かっています。が、それでもこの戦いはどうなってしまうのだろうとやきもきしました。忍者がその任務を立派に全うした後に、歴史の行く末を示すというのがまた巧い。
【忍者傀儡歓兵衛】忍者、忍術が衰退し今や誇りしか残っていない伊賀組。その上これは忍術でさえないがもしれません。常人離れした体術、忍術ではなく、ただ伊賀の誇りを描いています。蝋人形などの怪しさは健在。
【忍者鶉留五郎】これも同じく伊賀者の誇りを描いているわけですが…。このオチは可哀想ながら笑ってしまう。お父ちゃんのかっこよさとかっこ悪さが笑えて哀しい。5ページくらいのちょっとしたショートショートというかんじです。
【「甲子夜話」の忍者】エッセイ。創作についてや、記録されている忍者について言及しています。作者の創作の話はおもしろいです。作家さんはその描写の正確さに拘り場面を再現したりするというのはよく聞きますが、本当にこんな珍妙な行動をとっているのかと思うと笑えます。まして山田風太郎氏はとんでもな忍者小説を書いているわけですがら。創作の苦労さと真摯さを感じます。