あらすじ
鎌倉幕府打倒に失敗し、隠岐へ流される後醍醐天皇、お人よしで涙もろい足利尊氏、冷徹な合理主義者足利直義、好色悪逆に生きる高ノ師直、師泰兄弟……百獣横行の乱世を、綺羅をかざり、放埒狼藉をきわめ、したたかに、自在に生きぬいた、稀代の婆沙羅大名・佐々木道誉の生涯を描く、絢爛妖美の時代絵巻。
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Posted by ブクログ
鎌倉末期から室町時代までを生きた、佐々木道誉(ささき どうよ)を描く。
1319年〜1367年を扱う「太平記」は、まさにこの時代、リアルタイムで書き続けられており、この作品は山田風太郎世界が全開の「魔界太平記」とも言えようか。
将軍方(北朝)対、天皇方(南朝)の南北朝が60年にも渡る争いを繰り返し、戦国の世に匹敵する、あるいはそれ以上に天下は乱れて、民衆を苦しめた。
登場人物全てがあちらこちらと手を組み、寝返り、入り乱れること、作者自身も「筆舌に尽くしがたい」と描写するくらいややこしい。
全ての事件に道誉が何らかの形で関わっており、彼が時代を動かしているような錯覚さえ抱く。
しかし、道誉は派手に立ち回って注目を浴びながらも、政治的には影に徹し、顔の広さを生かしては敏腕ネゴシエイターとなり、時には自ら毒を盛った。
道誉は乱世が好きである。乱世の中でこそ存分に婆沙羅を楽しみ、彼は輝いた。
いちおうの立場を足利方に置くが、後醍醐天皇の魔帝ぶりにも魅入られる。
彼を動かすのは彼自身の美意識である。
武士として出陣する一方で、芸能や美食を愛し、公卿とも親交を深めて優雅で煌びやかな雰囲気をまとうその姿は、泥臭い坂東武者たちとは一線を画す。
幕切れは鮮やかで、夢幻の芝居を見ているよう。
足利家は三代義満の世になった、また新しい文化が花ひらくであろう。
「時には魔帝と」
「時には野望児と」
「時には妖僧と」
「時には神将と」
「時には人獣と」
「時には隠者(いんじゃ)と」
「時には狼群と」
「時には鬼魁(きかい)と」
「時には大将軍と」
「最後に魔童子と」