佐藤雫のレビュー一覧
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2027年の大河ドラマの主人公、小栗忠順の物語。最後まで幕臣であることを貫き、最後は斬首される。倒幕側からではなく、倒される幕府側にいた者で、なおかつ先の世を見つめ、民のために国のために国益になるものを残そうとした。先見の明があったにも関わらず、旗本としての自分を最後まで貫き通した。疱瘡痕を残した見た目は男前ではなかったかもしれないが、その生き様は、倒幕や大政奉還に巻き込まれながらも、ぶれることなく国としての未来を見つめて、幕臣として闘う男前な生き様だった。
今風に言うと忠順は、ダメな経営者の下で働く、とびきり財務能力のある部下、かな。
立場が違うと、こんなにも見え方が違う。そして、矜持を持つ -
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鎌倉三代将軍・源実朝の理想と現実を、哀しくも美しく描いた歴史ロマンです。歴史小説というよりは、一人の青年の生き様を丁寧に綴った内容で、歴史小説が苦手な方にもおすすめです。
和歌を愛し、武力ではなく「言の葉」の力で世を治めようと願う青年将軍・実朝と、彼を支える御台・信子の運命が煌めくような筆致です。著者は本作でデビューし、小説すばる新人賞受賞! ひょっとして実朝に恋してる? と思うほど、魅力的な人物造形と描写に感心しました。
平安初期の「古今和歌集」序文(紀貫之) 〈やまとうたは、人の心を種として、万の言の葉とぞ なれりける〉が、実朝の理想とするところでした。
千年も昔から、「伝 -
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今まで実朝にはあまり良いイメージがなかった。「武から逃げたかっただけじゃ?」「なんでそんなに和歌?」「あっさり前世の話に騙された挙句、港にならない地形でもろい船なんか作っちゃって」とか。でも武に依らない統治を目指し、人によって態度を変えない強さを待ち、当時珍しかったであろう妻onlyっぷりに、真の優しさを持った人だったのかなと思い、好きになりました。
実朝以外の人についても、人物描写がはっきりしていて面白かったです。
歴史時代小説には、難しい漢字にも「知ってるよね」的にふりがなが少ないものが多いですが、この本は読み方のみならず、それについても説明的にならずにさりげなく説明してくれていて、分かり -
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歴史小説というより恋愛小説として読んでたけど、ちゃんと歴史の通説もしっかり抑えたうえで、玉と忠興の心情をしっかり描写している。本能寺の変の頃や関ヶ原の時の2人がどんな思いでいたのかを書いた話ってあんま聞いたことなかったので、こういう解釈があるのかと。途中は忠興に食傷気味になるんだけど、最後は泣かされた。
心のままに、玉は忠興の妻として死ぬことを選んだけど、それはキリシタンとして救いがないわけではないことをオルガンティーノに語らせるとこがまたいい。タイトルが最後にわかるのね、ガラシャと呼んでやればよかったと。
著者が同年生まれという縁もあって、応援したい。 -
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細川忠興とガラシャの幼少期から結婚、そして細川邸の炎上に至るまでの愛の物語。
最初から、もう…文体が美しくエロい。いや、違うな…艶があって蠱惑的。
めちゃめちゃうっとりしました…。
私は細川忠興様=日本一のモラハラ武将だと記憶しておりましたがね。
佐藤雫さんが描くと、なんとこんなに美しい愛の物語(一部ご乱心表現あり)になるんだ…とクライマックスは泣きました。
しかも忠興様、ほぼ全女子が大好物の「不器用&一途」からのグッドルッキング!!口から砂が止まりませんでした。
そして、織田信長から豊臣秀吉、徳川家康へと政権が変動してい時代の中での細川家とガラシャさんの苦難の運命をここまで細かく -
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明智光秀の娘・玉とその夫・細川忠興の物語です。
言葉少ない忠興と心が少しずつ通いあっていくところは心が温まりました。そんな、幸せな夫婦生活が一瞬だったからこそ、もうなんでこんなことに〜!と思いながら読んでたらほんと涙が止まらなくて、後半は涙と鼻水でグズグズでした。
明智光秀が信長に謀反を起こしてからは、謀反人の娘ということで幽閉されていた玉ですが、再び戻ってきて生活を共にするようになってからの忠興の愛が重たすぎて重たすぎて。
重すぎるが故に、最愛の妻とどんどんすれ違い心が離れていってしまう忠興も本当に憐れというか不憫というか…。めちゃくちゃ玉を愛していて、そして愛されたいと思ってるのにそれを -
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緒方洪庵が素晴らしすぎる!!
なんて凄い人なんだ!!
聞いた事ある名前だなと思ったら大好きなドラマ
「仁」の武田鉄矢じゃないですか(꒪⌓︎꒪)
仁での武田洪庵はそれは素晴らしい人で死ぬ前の2人の語る場面は号泣でした(꒦ິ⌑︎꒦ີ)
と言う事で武田洪庵もとい緒方洪庵です。
医師で蘭学者の緒方洪庵は当時まん延した「天然痘」《発症すると高熱が出て化膿性発疹が起こり、致死率も高い》を英国のジェンナーが開発した牛痘苗をワクチンに使う予防法をいち早く取り入れ、正確な情報を発信しつつスピード感をもって普及に努めた。
今では当たり前になった予防接種
「予め防ぐ」という考えさえない時代に命懸けで種痘を -
Posted by ブクログ
歴史小説を読んでいる際、特に史実をもとに創られた物語を読んでいるとき、いつも「これは本当にあったことか」「この部分は作者の虚構か」ということに引っ掛かる。地の文に歴史的背景が補足されている小説なら、さらに気になる。そういう癖があるので、余計にネット検索して自分にネタバレされることがちょこちょこある。今回も大方そうだったが、主人公二人の切実な物語に順調に入り込んで、途中から「虚実なんてどうでもいい」と思い始め、一気に読んだ。
実朝の源氏/北条の血を引くゆえの「宿命」と、信子の公家の娘であるゆえの「使命」がそれぞれの心に苦しい葛藤を引き起こして、それを抱えたからこそ、二人の間に生じた純粋な感情が