あらすじ
美しい海沿いの景色と裏腹に陰謀、嫉妬、憎しみが渦巻く鎌倉幕府。その若き三代将軍・源実朝のもとに、都から摂関家の姫・信子が嫁いできた。突然の縁談と異国の地に不安を覚える信子は、実朝の優しさと生まれて初めての海の匂いに包まれ、次第に心をゆるしていく。一方、自分のために鎌倉へ来てくれた妻を生涯大切にしようと誓った実朝は、信子の導きで和歌の魅力を知り、武の力ではなく言の葉の力で世を治めたいと願うようになる。しかし、殺戮さえいとわない醜い権力争いが、否応なく二人を悲しみの渦に巻き込んでいくのだった……。悲劇の将軍の葛藤と信念、そして運命に翻弄された夫婦の切実な愛を描く歴史恋愛小説。第32回小説すばる新人賞受賞作。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
史実を元に、こんなにきれいにまとめ上げてることに感動!最後ホロリときてしまった…
登場人物が多い物語は本来苦手なのですが、このお話はそれぞれのキャラクターや心情が丁寧に描かれてるので、どの人物も人物像を描けて物語にぐいぐい引き込まれていきました。
佐藤雫さんの他の本も読みたいと思います!
Posted by ブクログ
鎌倉三代将軍・源実朝の理想と現実を、哀しくも美しく描いた歴史ロマンです。歴史小説というよりは、一人の青年の生き様を丁寧に綴った内容で、歴史小説が苦手な方にもおすすめです。
和歌を愛し、武力ではなく「言の葉」の力で世を治めようと願う青年将軍・実朝と、彼を支える御台・信子の運命が煌めくような筆致です。著者は本作でデビューし、小説すばる新人賞受賞! ひょっとして実朝に恋してる? と思うほど、魅力的な人物造形と描写に感心しました。
平安初期の「古今和歌集」序文(紀貫之) 〈やまとうたは、人の心を種として、万の言の葉とぞ なれりける〉が、実朝の理想とするところでした。
千年も昔から、「伝えたいこと(事=言)は、心を種として、伝える相手の心に蒔かれ、やがて成長し、その葉が生い茂る」と…。和歌の中に、現代に通じる「言葉の力」の原点を見る思いがしました。
そんな、今の時代を先取りするような感性をもつ実朝の理想は、陰謀蠢く不穏な鎌倉という時代が許さず、実朝の望まなかった熾烈な権力争いに巻き込まれていき…。
それでも、抗うことのできない現実から逃げず、自身の運命に毅然と対峙する実朝の姿に、涙を禁じえません。単なる〈ひ弱な悲劇の将軍〉ではなく、〈美しい「言の葉」を愛した青年〉なのでした。
享年28歳の青年将軍。その理想は、800年後の今、叶えられているのでしょうか? 読後、勝手な自己陶酔への没入感覚に陥る(危険な)一冊でした。
空蝉の世にも似たるか花桜
咲くと見しまにかつ散りにけり
(古今和歌集 読み人知らず)
Posted by ブクログ
今まで実朝にはあまり良いイメージがなかった。「武から逃げたかっただけじゃ?」「なんでそんなに和歌?」「あっさり前世の話に騙された挙句、港にならない地形でもろい船なんか作っちゃって」とか。でも武に依らない統治を目指し、人によって態度を変えない強さを待ち、当時珍しかったであろう妻onlyっぷりに、真の優しさを持った人だったのかなと思い、好きになりました。
実朝以外の人についても、人物描写がはっきりしていて面白かったです。
歴史時代小説には、難しい漢字にも「知ってるよね」的にふりがなが少ないものが多いですが、この本は読み方のみならず、それについても説明的にならずにさりげなく説明してくれていて、分かりやすかったです。歴史的結果が分かっているので、途中から終わってほしくない思いで読みました。
今、鎌倉はまるで、食べ歩き、インバウンドのエンターテイメントの街のようになっているのが少し残念です。私自身は歴史を感じに行くのが好きなのですが、今度は改めて永福寺跡や鶴岡八幡宮を踏みしめたいと思います。
Posted by ブクログ
・さねともぉ。。。
・のぶこぉ。。。
・とももりぃ。。。
・みなせぇ。。。
・やすときぃ。。。
・ってなる物語だった。
・これだけ壮絶で儚い話が、現実に起こったことが基になっているというのが衝撃。
・実朝が生きている間の話は、言葉のマイナスの力の強さを思い知った。
・だが、実朝が言葉の力を信じて行動したおかげで、実朝の意志を受け継いだ人間たちが、言葉のプラスの力を信じて世を治めることができたと思う。
・テストの勉強でしか覚えなかった人間たちが、生き生きとしている情景が思い浮かんだ。もっとちゃんと歴史勉強しておけばよかった。
Posted by ブクログ
歴史小説を読んでいる際、特に史実をもとに創られた物語を読んでいるとき、いつも「これは本当にあったことか」「この部分は作者の虚構か」ということに引っ掛かる。地の文に歴史的背景が補足されている小説なら、さらに気になる。そういう癖があるので、余計にネット検索して自分にネタバレされることがちょこちょこある。今回も大方そうだったが、主人公二人の切実な物語に順調に入り込んで、途中から「虚実なんてどうでもいい」と思い始め、一気に読んだ。
実朝の源氏/北条の血を引くゆえの「宿命」と、信子の公家の娘であるゆえの「使命」がそれぞれの心に苦しい葛藤を引き起こして、それを抱えたからこそ、二人の間に生じた純粋な感情がとても清らかで愛しい。
また、権力に翻弄されながらも、流されずに、何度もつまずいても、言の葉で世を治めようとする実朝の決意も尊い。たとえ儚くても、言の葉は時代を越えて残るのだ。
少し虚構の部分もあるが、物語は実朝の生涯に起こったいくつかの事件に沿って時間順に進んでいく。すらすら読めるし、主人公の気持ちにも入り込みやすい。とても良い読書体験だった。
匿名
一気に読みました
静かに、美しい文章で、涙も誘われ、実朝夫婦の生き様を、読ませていただいた感じです。
世が世なら、きっと、武に頼らず、言の葉で導こうとした権力者は慕われたであろうに…、と、切なくなりました。
Posted by ブクログ
かつて存在した歴史上の人物も、こんなふうに葛藤したり苦しんだり時に笑ったりしながら生きていたのかなと考えると少し不思議な気持ちになります。
権力に翻弄されながらも、自分を持とうと足掻く実朝はなんだかかっこよく見えました。
Posted by ブクログ
とにかく美しくて、涙が出ます
史実を考えれば、変えられない行方を
こうであって欲しいと願わずにはいられないです
本当に綺麗で、清らかで、壮大で
言の葉は、残りて
言の葉の力を信じたくなります
Posted by ブクログ
実朝と信子の、お互いを敬い慈しみ合う姿が美しく、
またとてつもなく切ない。
幼い実朝を由比ヶ浜に連れて行って遊んでくれていた大姫が、実は実朝の中に木曽吉高を見ていて、実朝を『よしたかさま』って呼んでたところはハッとして涙が出た。
佐藤雫さんの本はまた読みたい。
Posted by ブクログ
言の葉で世を治めるという実朝の考えは、力ではなく言葉で解決するという意味で現在にも通ずるところがあるなと思った。
その点で実朝はちょー賢い
信子は一生つらい
実朝死ぬところをもっと時間かけてやってほしかった。
Posted by ブクログ
「鎌倉殿の13人」ですっかり実朝くんファンになってしまったので、読んでみた。
もちろん鎌倉殿とは違う描き方をしているのだけど、とてもよかった。
実朝様とその御台所信子様(ドラマでは千世様)中心のストーリー。
Posted by ブクログ
お友達のお勧めの一冊です。史実に忠実なのに、女性の作家さんのためか、繊細な描写が多く読みやすかったです。鎌倉の三代将軍、源実朝と公家の姫、信子との夫婦愛が何とも言えない甘酸っぱさで、とても良くて。また、実朝は、和歌に秀でていて、金槐和歌集が後にまとめられたそうです。
Posted by ブクログ
鎌倉殿の13人を見ているひとにおすすめの本として紹介されてるのをみてこれは読まねば!!と手にとった本。登場人物がちょうど今見てる人たちですっと入ってきたのがよかった。歴史に詳しくないのでどれくらい忠実なのかわからないけど、頼朝を尊敬しながらも『言の葉で世を作る』と言う自分の政治を全うしていたのもすごいなと思った。(つい最近ドラマで頼家の振り回された挙句の不憫な死をみたので。)
個人的には、信子も素敵な女性だったけど水瀬がすき。信子と実朝みたいに重保殿と会えてたらいいよね。公暁は親の仇というよりも実朝への恨みのだけのような気もしたな、、、今の世も大して変わってない。言の葉ですべての人の心を動かせますように。
この本を読んでから和歌にすごく興味を持ったので色々調べている。おすすめ。