横山秀夫のレビュー一覧

  • 64(ロクヨン)(下)

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    ネタバレ

    Marvelous! But…

    本書の凄みは、薄っぺらい会話がほとんど無い点。つまり、斬れば血が出るシリアスな内容を登場人物たちが本音で語っており、特に広報室の三上やその部下の諏訪、松岡参事官などの言葉のやり取りには胸が熱くなるような迫力と感動がある。
    その背景には、不祥事続きのD県警生え抜きの刑事部長ポストがキャリアの指定席(天下り)となりそうな事態がある。刑事部では誘拐事件を解決できないばかりか、証拠隠蔽も発覚しそうになり、三上らの広報室は記者クラブ対応に翻弄される。
    本書のクライマックスの一つは、情報の出し惜しみをする刑事部のせいで三上が自分の首をかけて記者たちを説得する場面。
    「お前らおかしくないか。実名発表をもぎ取ったのになぜ大切にしない?俺は実名発表に踏み切った。話すべきことはすべて話した。D県警が汚いから、信用できないから、だから俺と握手ができないのか。話を白紙に戻して、また一からこの不毛な争いを繰り返すのか。そうしたいならそうしろ。組織と組織の話にしろ。ここでの話をデスクに報告し、俺の上司にも抗議しろ。すぐに新しい広報官が来る。そいつと匿名実名の議論を最初からやり直せ」(P166)
    熱い、熱すぎる。
    また、松岡参事官の(外出しようとしない)三上の妻への気遣い。
    「家から出ないんだと?外の空気を吸った方がいい。電話を待つ気持ちはわかるが、人助けということなら自分を納得させる理由になるんじゃないのか」
    三上は唇を噛み締めた。刑事に未練はありません。さっきの言葉は取り消せない。取り消すつもりもない。それでも、未練がましく思った。この男の下で、もう一度働きたい。(P271)
    何度かの無言電話を家出した娘からのものだと信じようとする妻は、電話を待つためになかなか家から出ようとしない。元婦警だった妻を誘拐事件のアベック捜査要員として使いたいとの元上司の愛ある申し入れに三上は頭を垂れる。

    本来であれば、満点評価もありの内容でしたが、どうしても気になった点が。
    リアルな小説だからこそ、無視出来ない瑕疵。
    以下はマジなネタバレあります。

    誘拐事件の被害者家族の雨宮が14年前に電話越しに聞いた犯人の声を何万人の声からピンポイントで特定できたこと。まず、人間の記憶はテープレコーダーとは違うし、人の声も年齢とともに微妙に変わる。そしてなによりも万が一間違っていたら、どう責任をとるのか!?

    これは本作展開の肝の話(三上の妻への無言電話と繋がる)だけに、外せない要素だったのは理解した上で、リアリティ重視の小説だからなおさら犯してほしくなかった禁じ手でした。ってことで、最終的には星4つ。

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    2026年08月21日
  • ノースライト(新潮文庫)

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    建築とミステリ。

    ミステリの舞台として建築物が着目されることはあるけど、ミステリの主題となるのは珍しく目を引いた。

    どちらかと言うとミステリよりは人間ドラマ主題の小説であり、バブルを生き抜いてきた中年たちの人生の栄枯盛衰を感じさせる。それぞれ背負うものがあり、終盤の展開には胸にくるものがあった。

    ミステリ要素はちょっと肩透かし感があったかも。途中までのミステリアスな感じから一転して後付け感があった。特に怪しい男の正体とか。

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    2026年08月18日
  • クライマーズ・ハイ

    購入済み

    息遣い感じるほど臨場感あふれる

    未曾有の飛行機墜落事故とそれを記事にするため、奮闘する新聞記者たちの物語。
    書きたいものと記載されない記事との葛藤、新聞を作るためにそれぞれの立場に立っている人の思惑や葛藤がとてもリアルに描かれていて、臨場感あふれる作品。
    山に登る約束を果たせなかった盟友の息子と約束の山に挑む現在と、飛行機事故の渦中にてデスクという立場を背負って最前線で原稿にむかっていた過去が中和され、息苦しさを感じずに読みすすめられる。

    #ドキドキハラハラ #泣ける #深い

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    2026年08月18日
  • 第三の時効

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    F県警捜査一課を巡る短編集。

    一班朽木、二班楠見、三班村瀬の各班長の個性が強烈。

    短編だけに複雑なプロットはないが、解決の瞬間の衝撃は十分で、解決に至るまでの主登場人物の心理描写が秀逸。

    捜査能力が極めて高い3班長の容赦なさと、班長同士のライバル意識を反映して、全編にはヒリヒリする緊張感が漂う。
    それを象徴する、田畑課長を軸にした「囚人のジレンマ」を前半最後に持ってきた構成もよく効いている。

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    2026年08月17日
  • クライマーズ・ハイ

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    ネタバレ

    一生に一度あるかないかの地元で起こった大事件について、毎日締め切りを伸ばしつつも新聞を完成させていく北関新聞社の人達。
    佐山をはじめ頑張ったのに上の人の一声で一面に載らなかった人達のことを思うとよくあることなんかもしれないけど心苦しかったし、毎回上司と言い合いになったり裏が取れてないのに出していいのかと板挟みになる悠木の心中を思うと疲れてしんどかった。
    大きい命と小さい命…考えさせられた本でした。

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    2026年08月14日
  • 第三の時効

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    これはすごい。どの作品も短い中に加害者被害者警察官と全部の思惑が詰まってる。警察小説はあまり読まないけれど、こんなハイレベルな作品があったのかと読んで呆然とした。

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    2026年08月12日
  • クライマーズ・ハイ

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    アツい
    座敷でよかった土下座がしやすいからなあ!と
    てめえトラックの鍵盗みやがったな!のシーン好き
    でもこんな職場絶対嫌だストレス性胃腸炎待ったなし
    遺書はいつ見ても泣いちゃう
    大スクープをモノにしそうで毎回逃すのやきもき
    序盤でほぼ全ての登場人物が出てくるから関係性が把握しづらくて混乱する

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    2026年08月01日
  • 半落ち

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    作中に本のタイトルが出てくると身が引き締まるのは自分だけ?(「来たっ、、!」ってなるw)タイトルの「半落ち」って半分しか自供していないって意味なのか。まさかの結末で、おすすめされてる理由に納得。心理描写に引き込まれていく。

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    2026年07月30日
  • 半落ち

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    面白かった。
    色々な立場の人間目線で、犯人と向き合う。
    ただ空白の二日間を解き明かすだけではない、
    人間の優しさや心の移り変わりを見ることができる

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    2026年07月27日
  • 影踏み

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    読み応えあった。
    面白かった。

    連作短編のような形だけど、1つの流れでもあるかな。
    緻密に張り巡らされたあれやこれやが繋がってくるうまさ。

    なるほどよくある警察モノとは視点が違って、泥棒目線で話が進み、その泥棒が探偵役をも担うという面白さ。

    読んでいるとノビカベを40代くらいに感じてしまうのだけど、アラサー寄り30代なんだよな。
    頭も腕も良くて度胸もある。
    そりゃ主人公張れるわ〜

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    2026年07月23日
  • ルパンの消息

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    15年前の女性教師の自殺は殺人事件だった、というタレコミがあったのは時効成立のまさにその日。当時「ルパン作戦」と称して期末テストを盗みに学校に侵入していた不良3人を筆頭に学校関係者の事情聴取がはじまる。

    刑事視点と不良の喜多視点、現在と過去の両方で事件の真相を暴いていく構成。全部読んでも24時間というテンポの良さを味わえる警察小説。

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    2026年07月22日
  • 半落ち

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    めちゃくちゃ重厚。
    梶と関わっていく警察・マスコミ・司法関係者のそれぞれ視点で話が進んで行く。
    新聞記者と警察のやり取りも良かった。ネタとかオチとか、元新聞記者ならではのアツいやり取りが描かれている。
    最後の裁判シーンで、全員が真実を追求したい思いで梶に視線を送るところ、それぞれの立場がありつつ意思が通じあった感じがして良かった。
    やはり最後の面会はグッと来ました。
    そんなに綺麗に死ななくていい-。 感涙。

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    2026年07月21日
  • ノースライト(新潮文庫)

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    建築士が建てた家に、引っ越したであろう家族がなぜ失踪したのかを追っていく話。

    主人公の気難し屋ぶりがたまに目につくけど、総じていいお話だった。

    建築用語がたくさん出てくるところは、なかなか読み進めるのが大変だった。長いし。

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    2026年07月19日
  • 64(ロクヨン)(下)

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    『64』を読み終えて最も印象に残ったのは、警察組織という巨大な世界をここまで緻密に描き切ったことだった。上巻は物語の進行だけを見るとゆっくりで、長く感じる場面もあった。しかし、その時間を使って警察組織の内部や人間関係、各部署の思惑が丁寧に積み重ねられていくため、物語の世界が少しずつ立体的になっていく。テンポの遅さは好みが分かれる部分だが、その積み重ねが作品全体のリアリティを支えていた。

    主人公・三上についても非常に魅力的だった。物語の序盤では、自分の立場を守るために飲みたくもない唾を飲み、組織の中で折り合いをつけながら生きている。しかし、自分の置かれた立場や果たすべき役割と向き合い、覚悟を決めてからは、その言葉や行動に強い熱が宿っていく。正義を振りかざすのではなく、組織の中で葛藤しながらも信念を貫こうとする姿が、この作品の大きな魅力だった。

    下巻では、上巻で丁寧に積み上げられた人間関係や組織の力学が一つにつながり、物語として大きく動き出す。終盤は横山秀夫らしく無理なく綺麗にまとめられており、読み終えたあとの読後感も良かった。

    一方で、全体としてはやはり長さを感じる作品でもあった。組織描写を重視するぶん、展開の遅さが気になる場面もあり、その点は好みが分かれると思う。しかし、その丁寧さが作品のリアリティや終盤の説得力につながっていることも確かである。

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    2026年07月14日
  • 半落ち

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    現職警察官が、アルツハイマーを患う妻を手にかけ、みずから自首する。動機も経緯も語るのに、犯行から自首までの空白の二日間だけは頑として口を割らない。

    妻が記憶を少しずつ失っていく過程は、忘れることそのものの怖さを静かに突きつける。最後まで空白の二日間について語らず、秘密を守ろうとした沈黙には、人としての実直さがにじむ。

    立場の異なる語り手が交代しながら同じ事件に向き合う構成が、一人の選択がいかに社会と地続きかを浮かび上がらせる。

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    2026年07月14日
  • クライマーズ・ハイ

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    非常に読み応えがある本だった。
    山を登る場面は専門用語も多く、想像しにくい部分も確かにあった。しかし、熱渦巻く北関の大部屋とは対照的に、どこまでも澄み渡る壮大な山の描写は、物語に入り込みすぎて昂っている自分の気持ちを少し落ち着かせてくれる効果があったように感じた。
    また、望月彩子の言葉は非常に印象的だった。
    世界最大の航空機事故で亡くなった方も、交通事故で亡くなった方も同じ命である。しかし前者の命はずっと記録され続け、追悼され続ける。
    では後者は軽い命、小さい命なのかと言われれば決してそんなことはない。しかし、この2つの命を扱う報道機関は命に差をつける必要がある。
    メディアはどのように伝えていかなければならないのか、簡単に結論を出すことは到底できないが、記者という仕事はこれにずっと向き合い、考え続けていくべきことなのかもしれないと思った。



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    2026年07月09日
  • ノースライト(新潮文庫)

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    やっぱり横山作品はとてもいい。
    中年男の再生の物語から生じる熱に、力をもらえる。
    それが夫婦の、家族の再生に繋がっていくことを願わずにはいられない。

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    2026年07月03日
  • 64(ロクヨン)(下)

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    最後まで小説としての完成度は高いと思う。
    公私の大きな問題があるが片方について不消化のようなそれでもいいような気分になった。

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    2026年06月24日
  • 64(ロクヨン)(上)

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    広報官という設定は面白い。刑事ではなく広報官という目線で、だけど元刑事であるので事件についてはよく見えてくるように描かれている。

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    2026年06月24日
  • 第三の時効

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    短編集だけど登場人物が共通してる。ミステリーまけど警察内部の人間関係が垣間見えて面白かった。個人的にはタイトルにもなってる『第三の時効』が1番好き。最初は警察内特有の言葉や法律上のルールに戸惑ったけど説明もちゃんとあるので読みやすい。

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    2026年06月12日