横山秀夫のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
1985年8月12日に起きた日本航空123便墜落事故の場所が、群馬県であったことから地元の新聞社に巻き起こった登場人物の葛藤や、組織内の軋轢、人間模様を、元新聞記者の作者だからこそ描ける非常に現実感のある話しは、傑作が保証されていたように思う。
40年以上前であるから、この生々しい組織内の派閥や上下関係が成り立っているのか、この時代も新聞社の中ではこと本のようなことが毎日行われているのか分かりかねるが、新聞社の毎日の戦いが理解できて興味深く読み進められました。
一方で、世界一遭難死亡事故が多い谷川岳一ノ倉沢の衝立岩を絡めた人間模様を、時間軸を変化させて、人の想いの振り返りを上手く使っている -
Posted by ブクログ
最初から最後までずっと面白かった。
序盤で登場人物が次々と出てきて、ごっちゃにならないようメモしたけど、メモしたら整理できて、見返すことはなかった。
取り調べの心理戦の描写が緊迫感あって良かった。
受ける側は、相手はどこまで知っているのか、自分は何を話せばいいのか、極度のストレス状態。
警察側は、優勢ではあるけど自白に頼る部分が大きく、また時効のリミットを悟られたら一気に劣勢になる危うい状態。
こういう微妙な心の揺れって心理としては複雑なのに、スッと文章が入ってきてイメージできちゃうから不思議。
回想と現在を行き来する構成で、15年の移り変わりの表現もすごく好き。
ストーリーと直接関係な -
Posted by ブクログ
1985年に起きた御巣鷹山の日航ジャンボ機事故を扱っているだけに、当時の昭和の空気感が色濃く描写されていて、今では眉を顰める行動や言動が時代を感じさせた。
リ○イン片手に24時間戦えますか?の絶頂期だと思うけど、あの頃は良くも悪くも日本人はみんな元気があったように思う。
物語は地元紙の記者である悠木和雅が、事故の全権デスクとして極限の苦労と葛藤に晒される日々と、その17年後の衝立岩登攀の二つの軸で進行する。
本作は単なる報道の舞台裏の描写に留まらず、いろいろな要素が盛り込まれていた。仕事にかける情熱だったり、新聞社内の凄惨な派閥争い、家庭内の複雑な問題、親子の微妙な距離感、同僚の不審な行動 -
Posted by ブクログ
ネタバレ終戦記念日をきっかけに再読。
第二次世界大戦終盤、戦況が悪化するにつれて学生たちも徴兵される。
普通の一青年がある日突然軍隊へ。
そして、死という未来しかない特攻隊へ。
日本を、家族を、愛する人を守るためなら死ねる、死ぬぞ、という文字通り決死の覚悟と、だけど生きたい、死にたくない、という感情の狭間の描写が秀逸で、読んでいて苦しかった。
フィクションとはいえ、実際に回転に乗って亡くなった人たち一人一人に、想像を絶するほどの感情があったと思う。
特攻隊は誇らしい、名誉だ、という間違った洗脳。そして、そう思い込まないと、自身の感情のコントロールや、存在意義を見失ってしまう。
狂っていたと -
Posted by ブクログ
ネタバレ上巻で幸田メモの真相に迫ってからの下巻。
長官視察の裏にある思惑。
広報室とマスコミの対立。
ストーリーが畳み掛けるように動き始め、繋がっていく展開で一気読み必至。
地方生え抜きの最高峰、刑事部長ポストを召し上げてキャリアが座る。
刑事部出身の三上にはその重大さが痛いほど理解できる一方で、警務部としての職責でその発表の地・長官視察を成功させなければならない。
「D県警をダラスにするのか、しないのか。」p132
この一言がなぜか強く印象に残った。
(余談:読んでいる時期がちょうど北中米W杯で、ダラスで試合があったからかも)
「上イコール組織です。組織の意思を無視した広報なんて広報と言えま -
Posted by ブクログ
ネタバレ何度も読み返している一冊。久しぶりに読みたくなったので再読。
昭和最後の年に発生した誘拐事件、ロクヨンの長官視察に端を発する警察組織内の攻防。
記者クラブとの駆け引き。
失踪した娘、あゆみの行方。
自らを取り巻く様々な問題に翻弄されつつも、正面から向き合っていく三上の姿が印象的。
特に刑事部対警務部の警察内部の派閥争いの描写が細かく、引き込まれます。警察小説好きにはたまらん。
ストーリーは時に滞留しながら、でもそのもどかしさもまた三上の焦燥感を共にしているように感じられる。
上巻では、ロクヨンの鍵となる幸田メモに迫る。
隠されたその内容に三上がたどり着いたとき、そこにもあまりにたくさんの -
Posted by ブクログ
警察小説読みたいなーから第三の時効を読んだらとても面白くて、じゃあやっぱり有名な半落ちを読んでみることに。昔映画が大ヒットしたのは覚えてるけど見てなかったので。
良かったですー。ラストは涙がポロポロ出てしまった。
人の心根の優しさに触れられて良かった。
ミステリとか、最近?のエンタメ映画とか小説とかって身近な人に裏切られるみたいな展開が多いけど、優しい方に裏切られる?作品は良いですね。定期的に浴びたいです。
警察→検察→弁護士→裁判官→刑務官とそれぞれの立場と視点から描かれていて、読みやすかったです。ただ、立場とか役職とかあまり認識なかったからなかなか頭に入ってこなかったんだけど -
Posted by ブクログ
熱いね。熱過ぎる。
私はやっぱりこういう刑事物が好きです。
文章は硬質で、出てくる男たちは荒々しい。だけど、描かれる人間の心理描写は緻密で繊細。刑事も、被疑者も、被害者も、生々しい人間たちがぶつかる中で生じるミステリの先の読めない緊迫感。
F県警強行犯捜査一課
一班 朽木
二班 楠見
三班 村瀬
県警の誇る精鋭部隊のリーダーたちが己の手柄をかけて熾烈に争う様。めっちゃくちゃ面白い。
全6話の短編集。それぞれの話が異なる視点人物で描かれることでF県警捜査一課の雰囲気が立体的に描かれて行く。
そして、最後の「モノクロームの反転」で彼らが直接ぶつかりあう。
熱い。続編あるのか。読むしかない -
Posted by ブクログ
派手な事件や強烈などんでん返しがある作品ではないが、読み終えたあとに静かに「きれいだった」と感じる小説だった。
ミステリとして謎を追う構造ではあるものの、中心にあるのは事件そのものというより、人の人生の空白や失われたものの余韻だと感じた。
建築や「家」というモチーフを通して、人が何を残し、何を残せなかったのかが丁寧に描かれていく。その積み重ねが、最後に静かな形で収束していく。
ただし、純粋なミステリーとして見ると評価は4。
謎解きのカタルシスや意外性を強く求めると、やや物足りなさを感じる部分はある。一方で、その“派手さの欠如”こそが作品の静けさや余韻につながっているとも言える。
終わり方