横山秀夫のレビュー一覧
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横山秀夫作品は面白い。
凝ったトリックはなく、心理トリックというか、視点人物の錯誤が中心になっている。
探偵ものによくある、調査フェーズが退屈という問題が無いのは、主人公が上司からのプレッシャーで苦悩している姿がヒリヒリするからだろう。
組織内で問題が起こる。
主人公は解決を命じられる。
解決できなければ組織内での評価が下がる。
それは社会的死を意味する。
社会的生命の危機を感じる主人公は操作は、自ずと生命の危機を感じさせるヒリヒリした物語になる。
退屈なミステリーは操作フェーズが退屈なのだ。横山作品の主人公はヒリヒリしている。
だから面白い。
4作品の中では「鞄」が好みだった。
上司からの無茶ぶりに苦しみながら、上昇志向に取りつかれた主人公は逃げる選択を考えられない。リアルなサラリーマンの姿がそこにある。
・陰の季節
天下り先の先輩が暗黙の了解を無視して、居座ってしまう。
・地の声
まじめなベテラン警察官がホステスと繋がっているというタレコミがあり…。
・黒い線
似顔絵担当の婦警が行方不明に…。
・鞄
県議会で警察に打撃を与えるような発表をするという議員への対処で右往左往する広報官。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ15年以上前の作品。
なんだか変な感じになるが現代の詐欺事件や闇バイトとかの時事を見るよりもこの主人公の様な泥棒の方が親近感を覚える。
一つの動機に対して自分自身(個人)で完結するからなのかと思う。勿論泥棒を稼業とする事は断固否定するが。
作品自体はとても面白く、知らない言葉や聞いた事はある、今までは意味をそこまで理解しようともしない言葉が多く出てきて勉強になった。
単に泥棒にも色んな種類があり、その種類の数だけのやり方があるのも知った。
頭をひねって「防犯」に重きを置き換えて読めば防犯の啓発本にもなりそう。
作品は「愛」がテーマ。
真壁は泥棒を稼業としてはいるが、それは過去の一家心中の過去からの流れで、それが「影」となり本人の意志ではないのだろうと推測。
死んでしまった双子の弟が影であり、分身の様な影が夜の世界では自分も影のような存在になれるからなのかと。
久子とのラブストーリーも秀逸で言葉にはないがしっかりとした深い愛情を見ることができる。
不器用といえば不器用だが一昔前の男らしいハードボイドな格好良さが素敵だった。
真壁と久子の今後が気になる所ではあるが、そこは完結せず読者に投げ掛けるように終わるところも秀逸だと自分は感じた。 -
Posted by ブクログ
1.動機 は良かったです。警察手帳の紛失対策として一括金庫に付いては掘り下げてなかってが、紛失の調査、原因、発見に至る、誰も処分されない所が、作家 ミステリー作家の所以か?
署内で一括保管される三十冊の警察手帳が紛失した。犯人は内部か、外部か。男たちの矜持がぶつかりあう表題作(第53回日本推理作家協会賞受賞作)
2.逆転の夏
女子高生殺しの前科を持つ男が、匿名の殺人依頼電話に苦悩する「逆転の夏」。
3.ネタ元
沢口靖子主演でドラマ化した社会派サスペンス
沢口靖子と内藤剛志、キャップとデスクのやり取り、科捜研にツナガルドラマ、脇役がすごい
BS TBS
4.密室の人➡️妻の茶室?法服を身に纏った密室の夫?全てを失った二人が最後の向かった場所は、密室の茶室だつた。
公判中の居眠りで失脚する裁判官を描いた「密室の人」など珠玉の四篇を収録。 -
ネタバレ 購入済み
完全なる『傑作』!
今から15年程前に成りますか、NHKのスペシャルドラマと、劇場版映画でほぼ同時期にリリースされたんですよね。
そんな情報を聞き、テーマが「日航機墜落事故」でしたので、当時まだ中学生で夏休み中の事故で深夜まで報道番組に齧り付いて見ていたり、色々と想い出の多い悲しい事故でしたから、直ぐに原作を手に取りました。
「こんなドキュメンタリーみたいな生々しい、火傷しそうに熱い物語が有ったのか」と読後、ブルッと震えた記憶が未だに残っています。
ただ単にあの悲惨な事故を描くのではなく、あの事故でスクープをスッパ抜いてやろうと云う地元新聞社が舞台の、男たちが熱くぶつかるひと夏のお話と、主人公の親友の死と云う対極的な事故を上手~く絡み合わせた、著者の作品の中では一番好きな小説です。それ以上は、本書を読んで体感してください。
ところで最初に触れた映像化の話ですが、確かTVドラマ版の方がOAが先だったのですが、そのドラマの出来が恐ろしく良くて、劇場版を観に行った時に「ドラマの方が良かったなぁ」と思わず呟いたのも、懐かしい記憶です。
本書を読み終えたら、その映像2作品を観てみることもお奨めします。原作の何処を端折ったのか、何処に力を入れたのか、作り手の考え方が分かって面白いですよ。まだまだ若手だった滝藤賢一さんが良い芝居をしています。 -
Posted by ブクログ
顔FACE 横山秀夫
●動機
まとまった休日のため、ビジネス書以外で小説にも手を伸ばしたくなりました。
横山さんをチョイスです。
ロクヨン、クライマーズハイ、半落ちなど記者、警察、そして犯人側のいずれの描写も迫りくるものあります。
●主人公は?
20代女性警察官です。
鑑識で目撃情報をもとにモンタージュを作成する、絵心もスキルもある方です。
転機が訪れます。
ある事件で、彼女の描写が機会となり、犯人検挙となりました。
しかし、描写と犯人の乖離があるため、逮捕後に書き直しを命じられます。
そして、実行します。
組織の力に、若さ、情熱だけでは太刀打ちできませんでした。
そして、葛藤と戦い、休職をするほどのダメージとなります。
さらに、復職をしたら、異動という顛末でした。
●小説のタイトル「顔」
小説のなかで、女性警察官が男性警察官からどのように見られているのか?の描写があります。
それに耐える顔、表情に出さない顔。
閑職に追いやられても、冷静に職務をする顔。
同期が、後輩が辞めていくなか、警察官を続ける顔。
これらは、すべて彼女が見せる顔です。
なぜ、耐えるのか?何のためななのか?
彼女には、ひとつの「信念」ありました。
それが幼少期の記憶です。
『なぜ、警察官を志したのか?』
●読みおえて
働く、生きる。
楽しいことも、苦しいことも、悲しいこともあります。
その繰り返しの毎日です。
そんなとき、自身が自身にどう声をかけるのか?
結局は、自分自身です。
主人公の20代の若き女性警察官の生き方から感じとれるものがありました。
横山秀夫さんの世界。
人間味が溢れる世界。
だから、好きなのかもしません。 -
Posted by ブクログ
「犯人逮捕は事件の終わりではない。そこから始まるもうひとつのドラマがある…」(本の帯の著者の言葉より)
事件の真相は時に残酷な真実をつきつける
そんな5つの短編集
「真相」
息子を殺された父親が知る息子の「素顔」とは…
「18番ホール」
レジャー施設の建設、産業廃棄物のごみ置き場設置などで揺れる過疎の村の村長選挙に立候補した男。どうしても勝たなければならなかった理由があり…
「不眠」
リストラされた男が目撃した不審な車。近所で起こった殺人事件の真相とは…
「花輪の海」
学生時代、空手クラブ内で起こった事故死。リンチのような先輩の執拗なしごきの末に起こったのは…
「他人の家」
出来心で犯罪を起こした男。しかし出所後も犯罪者ということで世間からは冷たい仕打ちを受け…。そんななか、手を差し伸べてくれたのは…
どの作品もおもしろかった!!
犯罪の裏に隠された人間の心の闇と慟哭と葛藤
事件は解決しても
のしかかる苦く重く皮肉な真相
ラストの「やられた~!」感は
さすが横山秀夫先生だわ~! -
Posted by ブクログ
D県警シリーズのひとつで、読む順番が気にならなければどこからでも読めなくはないが、部分的にわかってしまうところもあるので、順に読んだ方が良い。流れは①影の季節②動機③顔(本作)④64ロクヨン⑤刑事の勲章(電子書籍)なのだが、私は逆行していた。
今回はD県警の二渡ではなく、機動鑑識班の似顔絵捜査官平野瑞穂が主人公。男性社会と言われた中で女性が如何に活躍していくかが描かれている。
二渡はほぼ名前だけ出てくる。
6歳で放火被害を受けたしおりとの接点は、瑞穂の気持ちが特に上手く描写されていると感じた。
後輩の似顔絵婦警との関係性はがろうにある絵が物語っているように思う。絵には描き手の表現したい感情が現れる。文字と同じように、しかし異なる形で。
銀行強盗訓練の際に本当の銀行強盗が起こる。ここでも婦警の立場で瑞穂の苦悩が表されている。絵を描く際には対象をよく見る、それが役に立ってくる。
心の銃口では、南田婦警との気持ちを共有しながら事件を追いかける。「相棒」の箕田とともに。瑞穂が大きく成長したと感じる。
最後に心の銃口の意味がわかり、瑞穂の揺れ動きながらも正義を貫く真面目な姿が美しささえ感じた。そしてその中で強くなり成長していく姿を応援したくなった。
いつのまにか瑞穂が警察官としての「顔」になっていた。