横山秀夫のレビュー一覧
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本作は、梶の事件という一本の強固な【縦軸】と、彼に関わるあらゆる立場の人間たちの有り様という【横軸】が見事に交差して進む、重厚な人間ドラマである。
章ごとにスポットが当たる警察、検察、新聞記者、弁護士、裁判官、刑務官といった横軸の人々。彼らにもそれぞれ生きてきた人生があり、私生活に重い荷物を抱えている。
最初はそれぞれの思惑や組織の論理で梶の沈黙を暴こうとするが、梶の言い訳を一切しない静謐な佇まい、その揺るぎない芯の強さに触れることで、彼ら自身が目を背けてきた人生のドラマや痛みが引きずり出され、問い直されていく。
そして終盤、頑なに守り通された「沈黙の理由」とその真実が明かされたとき、梶の行動のすべてが理解できた。
そこで明かされる「命のリレー」、そして「人生50年」という言葉の意味。
梶が守り抜いた沈黙は、冷たい拒絶などではなく、誰かの命の灯火を繋ぐための、どこまでも純粋で人間らしい「究極の優しさ」と「覚悟」であった。
法や組織の冷徹な論理で始まった物語が、最後は人間の善意と温かさに満ちた場所へと着地する。
悲しい事件でありながら、絶望では終わらない、温かい感動に包まれたラストには涙が止まらなかった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレひさしぶりの横山秀夫作品。本作はF県警強行犯係を舞台にした短篇集である。どの収録作品もなかなかおもしろく読むことができたが、刊行から時間が経過したため気になる部分が出てきてしまっている。本作は単行本の刊行が2003年なのでそこまで古いわけではないのだが、そもそも表題になっている「時効」という概念じたい、法改正によって現在では殺人事件などでは撤廃されている。また、取り調べなどにおける刑事の態度などにも気になる部分が散見される。もし現実世界において本作に登場するような取り調べが行われていたら、間違いなく大問題になるであろう。もちろん本作はただのフィクションなので問題はないが、しかしたとえば昨今違法な取り調べも一因となった冤罪事件が相ついで報じられているなかでは、なかなか「エンターテインメント」として消化することは個人的にはできなかった。あと、コレは時代性とは無関係の部分として、刑事それぞれに過去のエピソードのようなものが描かれているのだが、どうもそれらのエピソードが浅いというか、たんなる「エピソード」に留まっていて、作品のなかでうまく「活きて」いない気がする。うまく表現することができないのだが、もうすこし掘り下げることで作品全体にも深みが出たと思う。あるいは、あまり深く書くとボロが出るからあえてそうしているのかもしれないとも思った。たとえば捜査車輛で人を轢き殺してしまったエピソードが登場するが、いくら相手側の過失とはいえ、その後も平然と刑事を続けていて違和感がある。処分は受けたのかもしれないが、作中にはとくに描かれていない。中途半端に描いて違和感を抱かせるくらいであれば、最初から登場させないほうがよいのではないか。全体的におもしろく読めるのだが、こういうエピソードの使いかたは残念に思った。
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相変わらず横山秀夫さんの短編集は安定して面白いです。
【動機】
ある日、警察署から三十人分の警察手帳がぬすまれた。主人公の貝瀬は警察手帳の一括保管の制度を起案した。上層部は起案者の貝瀬の責任を負わせようとしている。犯人は内部か外部か?
この様な警察内部の組織、人間関係は作者さん得意分野ですね。
【逆転の夏】
女子高生を殺害した前科者、山本の所にある日、電話で殺人の依頼が来た。
山本がどんどん追い込まれていく姿がとても良かったし、結末が全然予想出来なかった。
それにしても職場上司の社長がクソ過ぎます。。。
【ネタ元】
県民新聞の女性記者、水島真知子。
ある日、大手新聞記者から引き抜きの話が。
女性記者と生きづらさが強烈に書かれている。
これも最後が予想しづらかった。
【密室の人】
裁判長の安齋。彼は真理中、居眠りをして妻の名を寝言で言ってしまった。
これは発想が面白い。ただ最後がいまいちでしたかな。
個人的には【動機】と【逆転の夏】が良かったですが、解説を見るとどちらもドラマ化されたのですね。納得です。
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Posted by ブクログ
読み終えた後、涙が止まらなかった。これほどまでに心が洗われるような経験は、今までになかったかもしれない。
横山秀夫の『半落ち』は、妻を殺害した元警察官・梶聡一郎の「空白の二日間」を巡る物語だ。しかし、読み進めるうちに、これは単なる事件の謎解きではなく、梶に関わった人々の生き様と、彼らの目に映る「梶聡一郎という人間の本質」を描いた物語なのだと気づかされた。
私が最も惹かれたのは、第一章の主人公である志木和正、そして裁判官・藤林の妻である亜紀子のパートだ。志木は、組織の論理に翻弄されながらも、梶の沈黙の中に「一人の男としての凄まじい覚悟」を見出す。そして亜紀子は、被告人という立場を超え、彼の佇まいから「この人はとても優しい人だと思います」という真実を直感する。法廷で語られたその言葉は、冷たい空気を一瞬で温かく変えるようで、胸が締め付けられるほどに泣けてきた。
一方で、夫である裁判官・藤林が下した判断は非常に厳しいものだった。最初は、なぜあれほど優しい梶に対して、情を汲まない冷徹な判決を下すのかと疑問に思った。しかし、深く考えるうちに一つの答えに辿り着いた。藤林は、梶を「可哀想な人」として片付けたくなかったのではないだろうか。
梶は、自分の犯した罪を何かのせいにするような男ではない。自ら裁かれることを望み、すべてを背負って立っている。そんな梶に対し、中途半端な同情で刑を軽くすることは、彼が命をかけて守り抜こうとした「男の誇り」を汚すことになってしまう。藤林が私情を排し、あえて峻烈な法を突きつけたのは、同じ信念を持つ男として、梶の覚悟に対する最大限の「敬意」だったのだと思う。
「優しい人だからこそ、厳しく接することが最大の敬意になる」
この作品には、そんな深い愛の形がある。誰からも愛され、尊敬された男が、なぜ一線を越えなければならなかったのか。その沈黙の先にあった答えは、あまりにも悲しく、そして美しい。
登場人物たちがそれぞれの人生の痛みを抱えながら、梶という一つの光に向き合う姿を通して、私は「人間を信じること」の尊さを教わった気がする。この深い余韻を、私は一生忘れないだろう -
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ネタバレ一人娘が失踪中であるD県警広報官の三上のもとに、ある事件の被害者遺族を警察庁長官が訪問するという話が舞い込む。その事件は14年前に発生した幼女誘拐殺人事件で、未だ未解決となっている通称「ロクヨン」であった。遺族のもとに段取りをつけに行ったところ拒絶されたことに疑問を持った三上は、ロクヨンについて書かれた極秘の「幸田メモ」というものが鍵を握っていると考え、調査を開始する。やっとの思いで幸田メモの正体に辿り着いた三上は、それが日本の警察組織自体を揺るがしかねない、隠蔽事件の告発であることを知るーーー。
淡々とした文章の中にも三上の心情がうまく織り交ぜられ、警察組織内の緊張感や重厚感が伝わってきた。幸田メモについて明らかになったので、ここから三上がどうしていくのか、ロクヨンの真相は明らかになるのか、そして娘の失踪とはどう絡んでいくのか、後編を楽しみにしたい。 -
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横山秀夫さん著「半落ち」
「影踏み」以来の著者の作品となる。
近所の古本屋さんに何気なく立ち寄って眺めていたらこの本を発見。なんと100円。
物語を思い出せない… 迷わず購入してみた。
当時この作品は映画化され物凄く話題になった。寺尾聰さんの主演映画で映画館で観たのを覚えている。
調べてみれば2004年公開とのこと。ということは20年以上経っている。
時間が経つのが早い。そんなにも時間が経っていた事に驚いている。
読んでいる最中に色々と思い出してきた。
当時多分この作品は映画を観た後に読んだのだと思う。その事自体をあまり覚えていないのだが明らかに再読になる。
読んでいて「あーそうだった、そうだった」と何度思った事か…
なんだか記憶を呼び覚ます為の読書になってしまった。
この殺人犯が何故黙秘を続けているのか?最後まで読んでやっと思い出す始末。自分の記憶力の無さに唖然とするも、再読ながら結構楽しめたのも事実。そういう意味ではよかったといえる。
今後もかなり昔に読んだのだが忘れてしまっている作品を読む事もあろうかと...
なんとなくそれはそれで楽しみながら読めるのではないか?と感じさせられた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレなんか…すごかった(語彙力)
色々詰め込んだなって感じ。半グレ高校生、友情、教師と生徒の恋愛、レズビアン、レイプ、殺人、トリック、etc…1冊でこんなに色々味わえる物語もなかなか無いと思う。たくさん出てくる登場人物がちゃんとストーリーに絡んできて、終始圧倒されてた。お前、ここで来るんか…って。特に最後の婦警さんとか。
でも黒幕の動機が私のような一般人にはあまり理解できなかったのと、親バカと言えど警察のお偉いさんがそんなことする?ほんとにぃ?って思ってしまうカラクリもあって、荒っぽいなと感じる部分も少々。けど全体的にとても面白かったし、何より夢中になってほぼ徹夜で読んでしまった。
興奮冷めやらぬまま感想を書き殴ってやろうと思ったら、深夜ゆえかアプリがメンテナンス中。よってこれは寝不足の頭でメモに書き散らしたもののコピーです。