あらすじ
人間魚雷「回天」。発射と同時に死を約束される極秘作戦が、第二次世界大戦の終戦前に展開されていた。ヒジの故障のために、期待された大学野球を棒に振った甲子園優勝投手・並木浩二は、なぜ、みずから回天への搭乗を決意したのか。命の重みとは、青春の哀しみとは――。ベストセラー作家が描く戦争青春小説。
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戦争とは大切な自国を守るためのもので、戦争とは明日も生きるために戦っているものだと思っていた。人間魚雷「回天」で特攻して行く彼らはそうではなかった。自分自身が兵器の一部となり、後ろを振り返ることなく突っ込むことしか許されない。拒むことはおろか、笑顔を作ることさえ、喜びを喜びとして感じることさえ許されない。そんな死を約束された彼らが特攻として出撃するまでどのように過ごしたのかを描いた物語。
並木の願いはちゃんと読者に届いたのだと思う。
人間魚雷「回天」。そんな恐ろしい兵器が日本で使われていたこと。多くの若者の命を奪っていったこと。決して私たちが無視してはいけないことなのだ。
そして、並木はみんなの生きる活力ともなった。
死ぬために戦っていた彼らに生きる理由を与え、前を向く勇気を与えてくれた。
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神風特攻隊は有名だけれど、海軍が行った人間魚雷というこれまた恐ろしい回天隊のお話。気になって調べたら、攻撃成功率わずか2%…。開発もろくに完成していない状態だったからか、訓練や攻撃前に機体の故障によって亡くなる人も多く、主人公の並木もそのうちの1人。元々は大学野球をやっていた学生が、特攻に志願し自分なりの死ぬ理由をずっと探してやっと見つけ、いざ出撃という直前の訓練で行方不明になってしまった。小説を読みながら、出口のない海というタイトルにそういうことかと思った。読んでいると頭がおかしくなりそうな世界に身を置いて、戦争そのものと戦っていた人たち。艇の中でのシーンは緊迫感がすごくて、自分もそこにいるくらい心がピリピリした。並木の、人間魚雷・回天隊があったことを人々に知ってほしいという思い、小説を通してだけど私はしっかり受け取ったよと言いたい。
学徒出陣になる前に、大学野球チームとマスターが集めた新宿ガラクターズとの秘密の試合は泣けた。先に軍隊に入っていた剛原が最後に登場したのもよかった。この時大活躍した小畑くんや、北、沖田など登場人物みんな愛おしかった。1番は並木で、こんな素晴らしい人間が特攻の、しかも攻撃ではなく訓練で命を落としたのがなんともいえない。美奈子さんとの恋も苦しかったけど、後に美奈子そっくりの孫とのつながりが書かれていて少しだけ救われた気持ちになった。
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先を読むのが怖かったけどページを捲る手が止まらなかった。どこにいてもこの本の世界に入り込めてすらすら読めた。こういった時代があったことを忘れてはいけない
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回天。子供の頃は、詳しく知らなかったが、きちんと後世に伝えるべき事実。その舞台の葛藤を、感情を小説にしてくれた。こういう事実もあったんだろうと想像できる。先の大戦のことは、やはり涙なしでは読み終えれない。悲しさと、虚しさとモヤモヤの複雑な余韻が残らざるをえないが、また読み返すだろう。息子に読ませるべき、大切な本。
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戦争の小説はたまに読むけど本当に毎回苦しくなる。でも、日本国民として知るべきだと思う。本作はすごく読みやすかった。飛行機に乗る「特攻隊」は知っていたけど、水の中の特攻隊「回天」が存在するなんて知らなかった。この平和な時代に住んでる私じゃ彼らの気持ちはわかるとは嘘でも言えないけど、自分自身が武器になるなんて今ではおかしいって思うけど、本作で書かれてるような教育がされてたら、、思い込むしかないよね。すごい深くて重くていい話だった。
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地面を踏みしめるそんな当たり前のことに喜びを感じることなんて、一生ないだろうと思った。
そういう今の時代が有り難いことなのか、当然のことなのか、わからない。
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想像以上にダメだった。
読んだことないジャンル。
難しいとかそう言う次元じゃなくて苦手。
心臓バクバクして、手汗出たり、単語見ただけで手が痺れるというか。
なんかトラウマでもあるのか?
もしかして前世で乗ってた?
とにかくしんどかった。
史実があっての作品だから尚更辛い。
全部がフィクションならいいのに。
今からできることなんてたかが知れてるけど、歴史を知ると言う意味では読んでよかったな。
本当に辛かった。
それに向かう覚悟も恐怖も葛藤も私は知ることはないだろうし、知らなくていい。
相反する感情がぐちゃぐちゃになって、でも全部本心でっていう。
ここまで重い状況ではもちろんないけど、分かる部分もあった。
一行一行祈るように読んだ。
考察とかじゃなくてそれしか感想出てこない。
まだざわさわする。
でもこういう歴史があったことを知るのは必要な作業かも知れない。
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8月になると、戦争を題材にした本を読みたくなる。「戦争を風化させない」「戦争の悲惨さを忘れてはいけない」等と言う、心持ちがある訳ではなく、自分の中では8月は「戦争の本を読む」と言う季節感というだけである。
「出口のない海」は、特攻機「桜花」に次ぐ、人間が弾頭になって海中を進む人間魚雷「回天」の話、というだけではなかった。野球を楽しむ学生たちが、敗戦色が濃くなりつつある時代に徴兵され、そこにいた「並木」青年に焦点を充てた物語りである。
温かな家族も、淡い恋も、野球への夢のことも、最期の時まで忘れなかった「並木」青年。彼の脳裏に蘇ったのは友達の笑顔か、仲間の言葉か、それとも戦争と回天のことだったか、それは誰にも分からない。
この本が教えてくれたことは、回天のことを忘れられたら、誰からも思い出されなくなったら、この戦争のために死んでいった兵隊たちは、死ぬために生きることはなかった、と言うこと。兵隊たちの青春が、戦火の中に青々と燃えていたこと。
若くして英霊になることを誇りにした者もいたかもしれない。けれど本当はどうだっただろう。生きることに縋り、日の本を背負う覚悟なんて。
「彼ら(米英たち)にも家族がいる。」
戦争は誰も幸せになんかしてくれない。私はそう思う。当時なら非国民と言われて迫害を受けただろう、母は何も悪くないのに世間に謝ってばかりいただろう。それでも、私は戦争の二文字に、幸福が入り込む余地はないと断言する。
しかし、「並木」青年は見つけたのだ。唯一の幸せを。自分の夢を叶えた幸福を抱いたのだ。それだけは誰の意見もつけいる隙はない。もちろん、この感想を書く私にも。
戦争の作品で、主人公が幸せの中で散った作品は数少ない。この本を多くの人が読み、一筋の幸福に目を向け、夢を叶えますように。そう思わせてくれた作品だった。
よかった
高校生です。読書感想文の本を探していたところ、この本に出会いました。戦争を題材にしようと思っていたのですが難しい本が多くどれにしようか迷っていたのですが、野球をしている大学生が主人公という事で親近感が湧き、この本に決めました。野球への思いや戦争への不安、そして野球を諦められない思いが上手く表現されていて、とても良かったです。この本をきっかけに戦争について興味が湧き、戦争の恐ろしさが少しですがわかったと思います。
最高です。
戦争もの、ということで二の足を踏んでいました。好きな作家なので、期待ハズレを覚悟の上でしたが、最高でした。日本が中国といつか戦争の道をたどるかもしれないと恐れる今日、小説とは思えないリアリティがありました。そして今回も人として、いかに生きるべきか、を教えられました。警察ものではありませんが、
最高です。
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人生観と死生観の狭間に苛まされる主人公
そして周りの人間の視点を挟みつつ、出口のない海に旅立つこととなった
さすが横山氏
時代を問わない不朽の名作
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野球が好きだった青年が戦争によって夢を諦めさせられるのが読んでいて辛かった
出撃する頃には野球界で輝いていた並木の姿が幻のようになってしまっているのもなんだか切ない...
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太平洋戦争期、回天という人間魚雷で海軍による体当たりによる特攻を描いた小説。
主人公並木浩二は甲子園で優勝投手になり期待されながらも、肘の故障で進学した大学でくすぶっていた。肘の故障から回復を目指している時、太平洋戦争勃発。戦局が悪化していく中で、並木をはじめ多くの若者が学徒出陣し、回天特攻隊に志願した並木を始め若者たちを描いている青春戦争小説になっている。
読みやすく、内容も分かりやすいが、日本がなぜ、特攻をやる国になってしまったのかというのがとても悲しい。追い詰められると、自己犠牲を厭わないという、民族性をもつ国民は戦争を放棄すべきなのだ。理解不能な戦争を仕掛ける日本は、米国に今まで使われたこともない原子爆弾で終止符を打たれたと、私は思っている。
Posted by ブクログ
とんでもない本だった。
戦中を描いた小説や映画でこれほどまでに、人間の死に際の気持ちを苦しいほどに感じるものはなかった。
タイトルの出口のない海とはそういうことかと、読み終えてより感じる。
心に余裕がある人だけ読んでほしい。
Posted by ブクログ
神風特攻隊は小説や映画でも描かれることが多いが、この作品は回天「人間魚雷」がテーマだ…
回天とは魚雷にたくさんの爆薬を搭載し、人間が直接操縦し戦艦に体当たりする特殊兵器…
回天は神風特攻隊の水中版だ!
脱出装置もない回天に一人で乗り込み、暗い海の中を操縦し、敵の艦船めがけて突っ込む…
想像するだけで身震いがするこの人間兵器にたくさんの若者が散っていった…
ヒジの故障のために、期待された大学野球を棒に振った甲子園優勝投手の並木浩二
彼はなぜ回天への搭乗を決意したのか?
彼を取り巻く家族、友人、恋人の複雑な感情に考えさせられるものは大きい
警察小説でもミステリーでもない横山秀夫さんの戦争青春小説
回天について学べる作品でもある
必ず死ぬとわかって行くのは、もう人間ではいられない
それは機械の一部だ 歯車だ
自分自身に対する確たる死の宣言は、人としての感情を捨ててしまわねば成立しない
俺たちの死は、人間が兵器の一部になったことの動かしがたい事実として残る
昭和19年11月から終戦までの回天の出撃回数は31回
出撃隊員、事故による殉職者、搭乗整備員ら145名が回天と運命をともにした
今日は広島原爆投下から80年
広島平和式典で小学6年生の二人が素晴らしい未来平和宣言のスピーチをした…
力強い姿に涙が止まらなかった
どうぞこの子たちの未来が希望にあふれるものになりますように…
大人の責任は大きい
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人間魚雷『回天』の搭乗員となった大学生を描いた青春小説。元甲子園優勝投手だが、肘を痛め速球が投げられなくなる。魔球開発に取り組むシーンが結構多かった。一方で回天出撃時の描写も詳しかった。回天に搭乗するだけでも非人道的だが、回天の故障で特攻せず基地に帰還すると、上官から罵詈雑言や鉄拳制裁を浴びせられるとは信じ難い。
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特攻隊か…
こっちは、空の神風やなく、海…
魚雷を操縦できるようにしただけ。
空でも脱出困難やのに、脱出口もないとは…
聞くところによると、零戦も飛行性能は、凄いけど、乗ってる人を防御する為のものはないみたい。なので、軽量化も出来る。玉当たっても、アッサリ貫通。
この時代、人は、歯車の一部と考えてんのかな。
アホちゃうか!
そんな歯車のようにしたら、優秀な人材おらんようになるし、形勢逆転もなんも出来んやん。目先の言葉だけ、考えんと遠い先を考えて欲しかった。日本さん!
それ考えてたら、アメリカと戦わんって話もあるけど。
そういう、状況下に振り回される若者たち…
平和な時代に生まれ、経験も何もない自分には、言葉もないけど、どんな気持ちやったんやろ?
それも、日本が負けるの分かってて…
こういう悲劇が二度と起こらないように、後世の人達にも伝えないと!
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本を読むきっかけになった一冊。
中学生の頃に初めて読み、それ以来定期的に読み直している一冊。
忘れてはいけない、80年前にこの国で本当にあった話。
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最終兵器「回天」が意味すること。
戦争とは、青春とは――。
人間魚雷「回天」。発射と同時に死を約束される極秘作戦が、第2次世界大戦の終戦前に展開されていた。ヒジの故障のために、期待された大学野球を棒に振った甲子園優勝投手・並木浩二は、なぜ、みずから回天への搭乗を決意したのか。命の重みとは、青春の哀しみとは――。ベストセラー作家が描く戦争青春小説。
青春の哀しみとは、命の重みとは――
横山秀夫が描く「戦争」がここにある。
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人間魚雷。非人道的な兵器である回天の搭乗員を通して、人間の強さ、弱さ、美しさ、醜さが描かれている。多くの若者が貴重な命を失った戦争、私たちはその事実をけっして忘れてはならない。
読み終えた後にふと周りを見ると、窓の外には綺麗な青空が、テレビには大リーグで活躍する日本人が映っていた。きっとこれが主人公が観たかった光景なのだろう。それを当たり前のように見ることが出来ることに感謝しなければならない。
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読書から少し離れてしまっていて、本屋で悩みに悩んで取った一冊。読書に熱中している時は読みたい本で溢れてたはずなのに…この本に出会えて良かった。
戦争や歴史を深く知らない自分にとっては、過去に残酷な争いがあったのは知っていてても現実味がない。平和な日本にいると海外で戦争が起きていても、ニュースで流れる事故や事件くらいに見聞きしてはすぐ忘れる物になっている気がする。
この作品は人間魚雷″回天″のに搭乗する事になった元甲子園優勝投手の話。読み進めると訓練中に命を落としたり、故障の多さ、目標の敵艦撃破の成功率の低さを知った。様々な場面での描写がリアルで、現代との違いを感じつつも読む事ができた。
Posted by ブクログ
息子の本棚から拝借。空の特攻隊にくらべあまりに知られていない人間魚雷、回天。人がやっと一人分乗れる魚雷に爆薬を積み海中を進みそのまま敵艦へ突っ込むのだ。敗戦の気配が漂う中、回天に乗る事になった並木。野球や恋人への想いと国の為に死ななければ、という心の葛藤が描かれてる。出撃直前で故障したり、戦争で生き残るのは運だけだと思うがただ最後がちょっと綺麗すぎるかなぁ
Posted by ブクログ
横山秀夫さんの本は、すべて読んだつもりでしたが、文庫本の背表紙のあらすじを読んで、これはまだだったなと読み始めたら、やっぱり止まらなかった。
戦争はほんとに恐ろしい。人が人でなくなってしまう。そんな中で人であり続けられた主人公。こうやって死んでいった人が多勢いたんだと思うと…そして今もそんな恐ろしい戦争は世界で続いているんだと思うとやるせない。理不尽としか言いようがない。
Posted by ブクログ
人の生活に戦争があったことを感じた。前途ある青年が死ぬ意味を考え続けていた。きっとこの時代の多くの人が同じようなことをしていたと思う。令和の戦争がない時代の日本に生きる1人の人間として、立派に生きなきゃいけないと思った。
Posted by ブクログ
好きな作家で、この方の本はほとんど読んでいる。再読。
第二次世界大戦時、回天という特攻兵器に乗る兵隊の物語。野球部学生だった主人公が「生きたい」と思う気持ちを持ちながらも回天という特攻兵器に乗ることになる、心情が読んでいて苦しい。戦時の厳しいその様な時代でも希望を胸にし、葛藤し、己の生に意味を見つけようとする姿に心打たれる。
あまり知られていない回天という兵器と共に、その時代の流れ、雰囲気を知ることができた。
Posted by ブクログ
人を武器の一つと考えるような狂気がどうして生まれたのか?戦況が悪くなってやむに止まれれずの作戦だろうが、悲惨すぎる。国民は、従うしかなかった。並木の良識がかわいそうすぎる。