あらすじ
1985年、御巣鷹山で日航機が墜落。その日、北関東新聞の古参記者・悠木は同僚の元クライマー・安西に誘われ、谷川岳に屹立する衝立岩に挑むはずだった。未曾有の事故。全権デスクを命じられ、約束を違えた悠木だが、ひとり出発したはずの安西はなぜか山と無関係の歓楽街で倒れ、意識が戻らない。「下りるために登るんさ」という謎の言葉を残して――。若き日、新聞記者として現場を取材した著者みずからの実体験を昇華しきった、感動あふれる壮大な長編小説。
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Posted by ブクログ
1985年、御巣鷹山で日航機が墜落。新聞報道を巡る記者たちの葛藤を描く。時間との戦い、情報の取捨選択、それぞれの部署のプライド…。
主人公が家族と向き合う様、病に倒れた同僚の謎、爽やかな登山シーンが、物語に厚みを加えている。
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引き込まれた。最後までページを捲る手は止まらなかった。
1985年8月12日、群馬県御巣鷹山に墜落した日航機123便。
その日、群馬県の地方紙・北関東新聞の遊軍記者である悠木は
同僚の安西と共に衝立岩登攀へと向かう予定だった。
だが、安西との待ち合わせに向かう直前、社内で事故の一報を受け
悠木はそのまま全権デスクに任命される。
混乱が渦巻く社内、そして地獄を体験する現場。
組織の中の権力関係のバランスが紙面に載せる記事を操作し悠木を苦しめる。
読み終え、まず思ったのは悠木の抱える信念である。
彼の信念、はたまた彼の中の正義。
これほどのものが自分の中にあるだろうか。
ここまでの覚悟と責任を自分は背負えない。
命の重さ、口で言うのは簡単である。
当事者でなければ、見える景色は違う。
実在の事故を背景に、ここまで読者に問う作品は久しぶりに読んだ。
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日航機墜落ニアミス経験があるので一応の思い入れがある話。
85年の夏、新聞社、、、熱い時代。映画では、でんでんがいい感じだった。
映画はどうしても端折るんで、小説の方がそりゃいいわな。あの夏の熱気とかそういう雰囲気を味わう系。
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はじめて横山さんの作品を読んだが、これは読み応えのある本だった。
前半部分の航空機事故発生のあたりは、読んでて本当に引き込まれた。
電車で読んでて、口がポカンとあいてしまった。
そして、なんとも言えない気持ち。
なんだか、涙が出てくる。
これは泣かせる本ではないけど、泣いてしまう本だ。
無駄のない文章は、著者の記者の経験からだろうか。
佐山に書かせた雑感は、とても印象深い、何度も読み返したくなる文章だった。
でも、あの一説、どこかで絶対見たけど、思い出せない。。
日航ジャンボ機の墜落。
私の記憶には一切ない。
だけど、実際に起きた事故として、その緊迫感が迫ってきた。
これは、事故そのものを扱った小説ではなく、あくまでも地方新聞社がそれをどのように伝えようとしたか、どのように事故と向き合ったか、
そしてジャーナリズムの精神とは、、など著者の記者の経験があるからこそ真に迫ったリアリティのある内容を伝えてくれた。
それはとても興味深いものだったけど、
航空機事故はあくまで背景として、悠木という人物を描いたことに醍醐味があると思う。それによって、より深い(もしくは普遍的な)テーマを伝えていると思う。
この本が航空機事故にちなんだタイトルがつけられたのではなく、クライマーズ・ハイというタイトルになった理由ではないか、と勝手に思った。
その通りだ、と唸ったのは、
人生で、二度と同じ場面を与えられることはない、というもの。
あの時、あの一言が言えたなら、こう振る舞えばよかった、と思ってもまったく同じ機会は二度と来ないのだ。
そして、「その一瞬一瞬に、人の生きざまはきまるのだ」、と。
そうだ。常に何かを選択して生きてるし、選択する意識もないまま反射的に振舞ってしまうこともある。それが、自分の思ってたものと違っても、
思ったより良くても。
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ちょうどお盆だったので、40年前に起こった日航機墜落事故について知りたくなって、本書を読み始めた。当然事故の詳細が語られると思って読み始めたが、どうやら違っていたらしい。事故を通じて、新聞を作るという仕事を生業にしている人間模様を描いた作品であった。
毎朝当然のように、新聞が自宅に届けられ、当たり前のように新聞を読む。しかしその当たり前の、『新聞を読む』という行為は、記者が自らの足で現地に赴いて取材し文章を作成、デスクが赤を入れ、構成を整え、広告を入れ紙面を作成、これを輪転機に回して印刷、刷り上がった新聞を各地の配達所まで配送、その後各家庭のポストに届けられ、漸く読むことができる。そういった一連の作業を、雨の日も風の日も毎日毎日続けているということを今更ながら気が付いた。
Posted by ブクログ
日航機御巣鷹山墜落と、それに巻き込まれた群馬の地方新聞社を描いた本。新聞社内の描写がやけにリアルだと思ったら著者自身が御巣鷹山を追った上毛新聞の記者だったのね、納得。過去と現在、新聞社と山のように時空間が切り替わるテンポがよく、ページを捲らせる本。
Posted by ブクログ
何回目かですね。本書を読み直すのは。時期は大抵この時期。透き通るような夏の青い空と沸き上がるような白い雲を見ているとふっと読みたくなる小説である。
本書が舞台にしている日航機123便墜落事故については、実際にテレビや新聞などの報道を見ていたので記憶している。
受験生だったぼくは、夕方、家に帰った時に日航機が行方不明になったらしいという第一報が入ったところで、夜半過ぎになって、群馬の山中に墜落したことが判明した。
翌日には騒然としたなか、4人の生存者が確認され、そのうちの一人の少女がヘリコプターで釣り上げられながら救助されていた光景は今でも覚えている。
そして、最後に遺体が発見されたのが、(本書には出ていないが)操縦士であったのも印象的であった。
この年、球団初の日本一になった阪神タイガースの球団社長も、犠牲者の一人で、阪神の例年にない快進撃も球団社長の弔いという雰囲気もなくはなかった。
さて、本書であるが、群馬県の地方紙、北関東新聞を舞台に、事件に立ち向かい、取材、報道をする新聞記者や新聞社の姿や苦悩、葛藤などを描いたものである。
事件は、群馬県を地盤とする北関東新聞にとっては、本来の地元の事件ではない。東京から来た、たまたま群馬県の山中に落ちた、いわばもらい事故である。事件としては、当時、史上最大の航空機事故である。520人もの犠牲者を出した事故ではあるが、地元本来の事件ではない、そうした事件を報じるにあたって、理由づけをし、己の心を鼓舞し、叱咤しながら、事件に立ち向かっている記者たちの姿を描きつつも、様々な理由で反対する側に回る幹部職員たち、そして間に挟まれながらも、新聞記者として、新聞社としての良心を日航デスク。それらのせめぎあいが、本書を単純に日航機123便を描いた新聞記者、新聞社を描いたという平板な物語にならず、読者をひきつける物語になったのだろう。
この本は、出版されたのが2003年で、翌年の本屋大賞で第2位になっている。
ちなみに、NHKでドラマ化され、映画化もされている。僕自身は、映画を見て、面白くなって、小説を読むようになった。映画では、全体の3分の2ぐらいで終わっている。
何回か読むようになって、実は命の軽重といった問題など、映画では描かれなかった所が実は大切なんではないかと思うようになった。だからこそ、改めて小説の方を読む意味は大きいと思う。
ちょっと日常に疲れてきた心に、この本を読むとちょっと喝が入る気持ちになる。
人生というのは、階段を一歩一歩、ゆっくりと登っていかなければならないし、何処かでは降りていかないといけないこともあるのだろうなと思う。
Posted by ブクログ
とても惹き込まれる作品。
私はこの事件を知らずに、この小説を読み進め、1985年に悲惨な事故があったことに胸を痛めた。
この事故の裏で、人に届けるための新聞をつくる新聞社の奮闘模様が描かれ、色々考えさせられる1冊だと思う。
"下りるために登る" (北関を辞めて山の世界に戻る)
⭐︎この言葉について私の考え
辞めることや手放すことってむずかしい。
だけど次に進むために怖がらずに行動する勇気が大切なんだと思わせられた。
Posted by ブクログ
本当に作中内にあるような事故があったのか、1つづつ調べながら読んだから時間がかかった。
読む前と読み終わった後では、実際に本の重みが違うように感じた。
読後、映画館でドキュメンタリーを見たような疲労感。臨場感が半端なかった‼︎
Posted by ブクログ
かなり昔に読んだ。記録していなかったのでメモ。
日航機墜落事故の取材に当たった新聞記者の小説。
ニュースで見るよりよほど壮絶な事故だったようだ、とこの作品で知ったように思う。
この作品と前後してWikipediaの記述で、事故について読んだ。より理解が深まって良かったと思う。
新聞記者らしいスクープの抜きあいについてのヤキモキなどは、興味がないのでちょっとだけつまらない。それ以外はすごく面白かった。
近々、再読したい。
Posted by ブクログ
いやー面白かった。アツい。
事故の話かと思ってたら会社での人間関係や政治、人生の話の方も濃くて引き込まれた。
そして親子、家族、、
たまたま山の宿にあったので読んだんだけど、良いきっかけだった。
完全なる『傑作』!
今から15年程前に成りますか、NHKのスペシャルドラマと、劇場版映画でほぼ同時期にリリースされたんですよね。
そんな情報を聞き、テーマが「日航機墜落事故」でしたので、当時まだ中学生で夏休み中の事故で深夜まで報道番組に齧り付いて見ていたり、色々と想い出の多い悲しい事故でしたから、直ぐに原作を手に取りました。
「こんなドキュメンタリーみたいな生々しい、火傷しそうに熱い物語が有ったのか」と読後、ブルッと震えた記憶が未だに残っています。
ただ単にあの悲惨な事故を描くのではなく、あの事故でスクープをスッパ抜いてやろうと云う地元新聞社が舞台の、男たちが熱くぶつかるひと夏のお話と、主人公の親友の死と云う対極的な事故を上手~く絡み合わせた、著者の作品の中では一番好きな小説です。それ以上は、本書を読んで体感してください。
ところで最初に触れた映像化の話ですが、確かTVドラマ版の方がOAが先だったのですが、そのドラマの出来が恐ろしく良くて、劇場版を観に行った時に「ドラマの方が良かったなぁ」と思わず呟いたのも、懐かしい記憶です。
本書を読み終えたら、その映像2作品を観てみることもお奨めします。原作の何処を端折ったのか、何処に力を入れたのか、作り手の考え方が分かって面白いですよ。まだまだ若手だった滝藤賢一さんが良い芝居をしています。
Posted by ブクログ
日航機墜落事故を巡って葛藤する新聞社の話。
単純に読みやすく面白かったです。とてつもない大事件対応の重責を担うことになり苦しんだりもがいたりという過程はサラリーマンの多くが実感する「つれぇよなあ」を劇的に描いていて、ここまででないものの共感を覚えます。
一方で、読み終わったもののあまり「新聞記者としての苦悩」と「山登り」の関係性に、あまり必然性を感じられないなと思いました。新聞のこと描くのに山登りはあまりいらず、山登りを描くにはボリューム少なすぎ、それとこれとのつながりもさほど必然性を感じないというか…慌てて読みすぎて作者の意図を汲めなかったのかもしれません。
ただそこを置いてもエンターテインメント性ではピカイチの面白さで、ジャーナリストとは、という点でも考えさせられることもあり、全体としてとても面白かったです。
Posted by ブクログ
これは泣くよ。
最後らへん、佐山が悠木にいった言葉で私は泣いた。
新聞っていうものを少し知れた。新聞には馴染みなくきた人生だったが、作る人の思いが重くのった紙なんだなと思った。さらに今では考えられない。携帯電話を使用できない環境。現在よりも時間もかかっていたと思うと文明の発展には驚かされる。
もっと早く読みたかった作品。
Posted by ブクログ
日航ジャンボ機墜落事故から40年の報道を見て、今が読むタイミングかと思って読んだ。
横山秀夫の著作を読むのは2冊目。前作もそうだったけど本作も組織のなかの人間関係を描くのが上手い。元新聞記者が描いているのも説得力がある。
実話がもとになっているから、読んでいて苦しくなるところもあったけど、報道のあり方、命の重さについて考えさせられる一冊。
Posted by ブクログ
実際に起きた事件をもとに描かれているので、リアルな描写が多かった。登場人物の苗字が多くて混乱しながら読んだ。
この前に読んだのが、そしてバトンは渡された。だったので、家族とうまく行かない主人公に切なくなった。アナログな業種は人間関係のドロドロが多いように感じた。弊社でも社長vs専務のようなドロドロはあるのだろうか。
ずっと辛い気持ちになるストーリーだったが、最後はハッピーエンドになってよかった。
Posted by ブクログ
御巣鷹山の日航機墜落事故を受けた、地元新聞社を舞台にしたフィクション。
事故のデスクとなる主人公を取り巻く人間模様なハラハラしました。
事故当時と現在を行き来する構成で、現在は亡くなった同僚の息子と登山をする場面が描かれていて、そこで登山と御巣鷹山がかけ合わされています。
現場雑観と隔壁のシーンは特にドキドキしてバーッと読んでしまいました。
ですが、すぐ怒鳴る、手が出る、会社組織なのに荒っぽすぎる気がして辟易はしました。
Posted by ブクログ
夏休みの真っ只中の日航航空機事故は連日テレビで一日中放映されていたのでとても酷い事故だったと記憶している
いまだったら考えられないような報道もされていた
著書の横山さんは当時群馬の新聞記者だったと
昭和の時代はこのように現場が熱く意見の違いから殴り合いなど珍しくもなかったのだろう
ヒリヒリと神経をすり減らして上の意見と現場の意見との兼ね合いもリアルである
今のSNSの無責任でで所のわからない適当な発言などこの時代には考えられない
Posted by ブクログ
登場人物が多くて関係性が曖昧なままだったけど、新聞社の現場の雰囲気がひしひしと伝わってきた。命に重い軽いもないけど、メディアってそんなもの。でもこんなに仕事に真摯に向き合ってる人たちがいること、胸が熱くなるものがあった。分厚い本やったけど読み応え抜群。また映画も見てみたいな
Posted by ブクログ
日航機墜落事故の報道を巡る熱き戦い。報道の使命とビジネスの狭間で揺れ動く現場。地方紙だからこそ出来ることがあり、するべきことがある。仕事の本質を突く台詞に熱くなった。「俺たちは新聞紙を作っているのか、新聞を作っているのか」
Posted by ブクログ
最高の記者小説。私は本職で色々読んだがこれを超えるものはない。昭和中期〜平成中期が舞台の新聞記者ものなら決定版だろう。
臨場感、記者の仕事のしんどさ、心の機微がヒリヒリと描かれている。共感できない部分もあったが時代背景からかも。とにかく描写が緻密で、汗臭く怒号の飛び交う社内の雰囲気を感じられる。
読み解く力がないのか、クライマーズハイと下りるために登るがどこにかかるのかがわからなかった。興奮しているのに冷めちゃう、それで失敗を繰り返すのか?
なんというか、あそこでスクープ取れなかったのは肩透かしだった。勧善懲悪でスカッとするものを求めてるのか。表現したいのがカッコつかない人生に悩む男なら、あれがいいんだろう。終わり方も、ここで終わり?と感じた。家族仲はよくなったみたいだけど、それ以外何も報われてなくない?読者としては主人公が報われてるところがもう少し見たくなった。個人的な好みの話だが。
終盤に出てくる彩子についても、唐突なように思えた。これまで散々事故について書いといて急に出てきた子によってバタバタバタと物語が終われる。私が読み解けないだけで、主人公の中で成長(掲載に踏み切った)と過去の呪縛からの解放を象徴させたのかもしれないが、だとしたら御巣鷹山でなくてもいい気がする。最後の最後に命の描写について出されても、これまでそんな件はほぼなかった。社内政治ばかりで、報道と尊厳については一切触れられていないのに急にお題目を上げられた気分だ。
余談なのかもしれないが、事故がその後どのような変遷を辿ったのか、事件化したのか、できたのか、2行でいいから触れてもいいのかなと思った。蛇足なのかな。
ネッチョリとした人間関係、昭和の働く男たちの嫉妬、ネッチョリ。
未曾有の事故、新聞社の働き方という物語性。
横軸として四十男の苦悩。友人の事故というちょっとしたミステリー。
Posted by ブクログ
以前読んだはずなのに、内容をほとんど覚えていなかったので、再読。「日航機墜落事故」と、「衝立岩登攀」が描かれていて、主人公は新聞記者。令和のいま読むと、「本当にあった事故を題材にフィクションを描くことの重さ」を感じたけれど、その時に感じたからこその筆致というのはあるんだなぁ、と感じた。ミステリーではないので、伏線回収という感じではないけれど、「衝立山登攀」の日に来なかった同僚の本当の姿が分かっていくのは、読み応えがあった。ハピエンという記憶はなかったのに、いま読むと「これはハピエンだな」と思った。
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大学生の頃に見た映画版はあんまり面白かった記憶が無かったんだけど、十数年越しに今度は読んでみたら普通に引きこまれた。日航機事故は生まれる前なので特に思い入れもないし、本編でも事故現場を直接描いているわけでもないのに、新聞記者という生態を通して見る世界は何か凄かった。色々知れて良かったし、ストーリーとしても面白かった
色々理解できた今なら映画も楽しめそうかな。気が向いたら見てみよう。
Posted by ブクログ
1985年8月、お盆休みに起こった世界最大の航空機事故の報道に挑んだ新聞記者たちの物語です。
主人公は北関東新聞の部下無し記者。同じ社の友人に誘われて衝立岩と呼ばれる難所に登ろうと予定していたまさにその日、その事件は起きた。日航ジャンボ機、消息不明。レーダーから忽然と姿を消したそのジャンボ機に搭乗していたのは520余名。行方が分からなくなったのはどこなのか、墜落したらしいが、それは長野か群馬か埼玉か。未曽有の大事故、次々に更新され、錯綜する情報、それらを取りまとめて紙面にする新聞社はさながら戦場と化した。事故報道の果てに見える景色は、一体どんなものなのか。
まずもって、すごい熱量の作品でした。緊迫した空気、読むだけで伝わってくるひりついた緊張感、携帯電話もない、パソコンもない、インターネットもない、当時の限界ぎりぎりの人員投入による紙面作成の様子……作者の方は当時上毛新聞にいた方ということですが、これは中での様子を経験していなければ書けない作品であっただろうと思います。今の世の中では、パワハラだとかなんだとかで引っかかる文脈や表現もあるのですが、それも含めて当時の熱を感じる作品です。読み終わって、正直「すごかった」の一言です。
作中、何度も考えさせられる言葉がありました。「新聞紙」ではなく「新聞」を作りたいのだと叫ぶ声に、今のネット記事社会はそれだけの熱量とそれだけの情熱を記事に注げているだろうかと考えずにはいられません。また、「大きい命」と「小さい命」ということも。この航空機事故が、もっと小型で乗客も少ししか乗っていなかったとしたら、こんなに大きく世界的に扱われることもなかったのだろうと思うと、人の命や人の死にランク付けをして扱ってしまっている現実と、その理不尽を真っ向から突き付けているようでした。
主人公のたくさんの葛藤と、人間臭い逡巡と、格好いいだけではない振る舞いが、物語の登場人物としてではなく生身の一人の人間として目の前にあるようで、最終章に至るまでの人生を思わせます。
この作品は、この作者にしか書けない渾身の一作であると感じました。
今尚慰霊登山が繰り返されている御巣鷹山、いつか私も足を向けてみたいものです。
Posted by ブクログ
色んな要素がありましたが、鉄火場ならではの登場人物それぞれが本音やプライド、理をぶつけ合うシーンの人間臭さが好きです。
重要な選択をしなければならない場面が次々にふりかかってくるノンストップな展開で、忙殺される主人公の日々に引き込まれました。
通勤時間を使って細切れに読ませてもらいましたが、少し時間をおいてから、ぜひ一気読みしたいな、と思いました。
Posted by ブクログ
横山秀夫さんの人の心理描写はやはり圧巻である。これをしつこいと感じる人もいるかもしれないが、私はこの心理描写があるから登場人物に感情移入できるし、惹かれる。
作品としては、父と子の関係、日航機墜落事故の凄惨さ、仕事への情熱、新聞というメディアへの問題提起などテーマが複数あった中、作者はどれを1番伝えたかったのかが見えにくかった。
それでものめり込んで読めるのが横山秀夫作品の凄さ。他の作品も読んでみたい。
Posted by ブクログ
3.0。期待しすぎたというか、期待がズレてた。日航機墜落事故の話というよりジャーナリストの話。だが、かと言ってソレそのものという訳ではなく、1ジャーナリストのヒューマンドラマな感じでそれ以上でも以下でも無かった。「日航機墜落事故の話」とすればもっと他にあるだろってなるし、「ジャーナリズムの話」としても同、なもんで。地方新聞の内部描写は面白く、悪くは無いのだけどね。やはり期待ズレなんだろう。沈まぬ太陽とかみたく、もっと重いズドォオンッドスコォオイッかと構えて挑んでしまったから。
Posted by ブクログ
良かったところ
・なんだかんだ納得エンドっぽくて安心。直前に『沈まぬ太陽』を読んで恩地氏の処遇にガッカリしていたため特に……
・地元紙なりの戦い方や、全国紙に対するポジショニングの難しさは興味深かった
気になったところ
・悠木の立ち居振る舞いが無理(すぐキレすぎ、上司にタメ語でつっかかる)
・組織も無茶苦茶すぎ。こんな社長40年前だとしてもいるか?
・望月彩子の言いたいことが刺さらない。メディアの報道量=命が重い・軽いではないだろう。急病人の治療の順番を後にされた等でもあるまいし。
Posted by ブクログ
3.7/5.0
大事件に振り回される人々のそれぞれの正義や価値観、思惑が衝突する。
個人的に、主人公、悠木がこの小説を通して基本的には善、としてのみ描かれているという点が引っかかった。
他の人物たちにもそれぞれの考えやこの事件に対する向き合い方があったはずだし、そこがもっと描かれていても良いのでは?と感じた。
「悠木の正義を邪魔する組織」の構図がひたすら続く点に少し疑問を抱いた。
Posted by ブクログ
まだ自分が小学生の頃、実際に起きた日航機墜落事故において翻弄される新聞記者達の泥臭い葛藤が描かれていた。
まだ携帯電話もない、今では考えられないほどの現場取材等、読み応えがあった。
長いと感じた
長いと感じた。あまりに色んな要素を一気に詰め込み過ぎていると思う。登場人物も嫌な人が多過ぎて読むのが辛くなってしまった。新聞社ってこんなにどろどろしているのかと驚きでもあった。評価が高かったので購入したが私には合わなかった。