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Posted by ブクログ
陰の季節..D県警警務部警務課調査官の二渡(ふたわたり)真治は、警察一家の要となる人事担当である。二渡は「任期三年」という暗黙の掟を破り、天下り先ポストに固執する大物OB尾坂部の説得にあたるが、にべもなく撥ねつけられてしまう。周囲を探るうち、ある未解決事件が浮かび上がってきた…。
地の声..Q警察署の生活安全課長が『パブ夢夢』のママとできているという、タレコミの封書が届く。新堂はこの密告文書について調べることになるが。
黒い線..D県警警務課の婦警担当係長の七尾友子。機動鑑識班の平野瑞穂巡査が無届け欠勤していると電話連絡を受ける。瑞穂はひったくり犯の似顔絵を描いて、
その似顔絵をもとに犯人が逮捕されていたのだが。
鞄..警務部秘書課の課長補佐である柘植正樹は『議会対策』がその職務である。
柘植は鵜飼県議が県警に向けて、『爆弾質問』をするとの情報を教えられる。
柘植は鵜飼の『爆弾』の中身を確かめようとするが。
Posted by ブクログ
横山秀夫作品は面白い。
凝ったトリックはなく、心理トリックというか、視点人物の錯誤が中心になっている。
探偵ものによくある、調査フェーズが退屈という問題が無いのは、主人公が上司からのプレッシャーで苦悩している姿がヒリヒリするからだろう。
組織内で問題が起こる。
主人公は解決を命じられる。
解決できなければ組織内での評価が下がる。
それは社会的死を意味する。
社会的生命の危機を感じる主人公は操作は、自ずと生命の危機を感じさせるヒリヒリした物語になる。
退屈なミステリーは操作フェーズが退屈なのだ。横山作品の主人公はヒリヒリしている。
だから面白い。
4作品の中では「鞄」が好みだった。
上司からの無茶ぶりに苦しみながら、上昇志向に取りつかれた主人公は逃げる選択を考えられない。リアルなサラリーマンの姿がそこにある。
・陰の季節
天下り先の先輩が暗黙の了解を無視して、居座ってしまう。
・地の声
まじめなベテラン警察官がホステスと繋がっているというタレコミがあり…。
・黒い線
似顔絵担当の婦警が行方不明に…。
・鞄
県議会で警察に打撃を与えるような発表をするという議員への対処で右往左往する広報官。
Posted by ブクログ
64』を読んだときにも感じたが、横山秀夫の警察内部の描写の緻密さがとても印象に残った。
自分は警察について詳しいわけではないので、描かれていることが実際の警察組織とどこまで同じなのかは分からない。それでも、「こういう役職があって、こういう立場や力関係の中で物事が進んでいくんだな」と自然に受け入れながら読むことができた。
特にすごいと感じたのは、これだけ複雑そうな警察組織を扱っているのに、読みにくさがないこと。役職や組織の仕組みを細かく描きながらも、説明が難しくなりすぎず、物語の中で自然と理解できる。その緻密さと読みやすさの両立が魅力だと感じた。
また、短編集なのに一編一編の物語がしっかりしているのも良かった。
「黒い線」は女性が主人公で、他の作品より柔らかい雰囲気があり、個人的に特に好きだった。「鞄」も、警察小説でありながら捜査畑を中心に描かないところが面白く、古い作品ながら新鮮に感じた。
一方で、どの作品も警察組織の中の人間関係や立場、仕事上の葛藤を描いているため、一作ずつは面白いものの、続けて読むと似たような手触りを感じる部分もあった。ありきたりというほどではないが、「またこの感じだな」と思うところはあった。
それでも、どの作品もしっかり面白かった。
警察という普段あまり馴染みのない世界を、緻密でありながら読みやすく描き、一つ一つの短編をきちんとした物語として成立させているところに、横山秀夫の上手さを感じた。
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