あらすじ
警察職員二十六万人、それぞれに持ち場がある。刑事など一握り。大半は光の当たらない縁の下の仕事。神の手は持っていない。それでも誇りは持っている。一人ひとりが日々矜持をもって職務を果たさねば、こんなにも巨大な組織が回っていくはずがない。D県警は最大の危機に瀕する。警察小説の真髄が、人生の本質が、ここにある。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ベテラン刑事三上が広報官という立場になり、記者と刑事と上司と部下、さらに家族や過去の事件の遺族に板挟みにされる物語。
身近な職業ではないけれど人間の普遍的な悩みだから身につまされる。自分に置き換えると本当に胃がキリキリするような、大変な仕事です。しかもここに出てくるビジネスパートナーは一癖も二癖もある連中で、性善説なんて存在しない弱肉強食の世界。家庭を持ってなければこんな仕事即効辞めてるに違いない。
一文一文が短く、終始緊張感のある文章でページ内の文字量も多いので結構体力を必要とします。最初は登場人物が多くまた爽快な話ではないので、三上の一人称視点の単純な構成でなければ読みづらかったかもしれない。
でも後半からは事件を追う構図でミステリ色が強くなり面白くなってきました。特に64事件の自宅班柿沼を落とすシーンは圧巻です。刑事としての本懐と家族を守る気持ちの葛藤が見ていたたまれなくなりました。警察の話等全く縁がないと思っていたけど、その隠蔽の一部始終は大なり小なり誰しもが一度は直面しそうな問題で、どうするのが最善なのか、とても考えさせられるところです。正義と人間の弱さがせめぎあい、そこに翻弄される人たちに自分を重ねる。上巻だけでも心に衝撃を与える作品でした。
Posted by ブクログ
何度も読み返している一冊。久しぶりに読みたくなったので再読。
昭和最後の年に発生した誘拐事件、ロクヨンの長官視察に端を発する警察組織内の攻防。
記者クラブとの駆け引き。
失踪した娘、あゆみの行方。
自らを取り巻く様々な問題に翻弄されつつも、正面から向き合っていく三上の姿が印象的。
特に刑事部対警務部の警察内部の派閥争いの描写が細かく、引き込まれます。警察小説好きにはたまらん。
ストーリーは時に滞留しながら、でもそのもどかしさもまた三上の焦燥感を共にしているように感じられる。
上巻では、ロクヨンの鍵となる幸田メモに迫る。
隠されたその内容に三上がたどり着いたとき、そこにもあまりにたくさんの人生が絡んでいて思わず息をついてしまった。
正邪と利害の間の煩悶を描く
警察組織の人間模様をエモく描いたミステリ。👮日本の勤め人たちは、仕事や職場において正邪と利害の狭間で日々煩悶している。そんな勤め人たちの苦しい胸の内を抉りつつも、明日出勤する活力が湧き上がる入魂作だ。👮また、なぜ美女は得をするばかりとは言えないのか、なぜ社会問題の協議にあたって当事者参画が叫ばれるのかなど、処世において脳裏に揺蕩う疑問に関し、簡明直截に解答を示す。優れたハウツー本でもあるのだ。👮
Posted by ブクログ
『64(ロクヨン) 上』を読んでまず感じたのは、これは未解決の誘拐殺人事件を追う警察小説ではなく、「組織の中で自分の信念を貫くとはどういうことか」を描いた小説だった。
昭和64年、わずか7日間しかなかったその年に起きた少女誘拐殺人事件、通称「64」。事件は未解決のまま時が流れ、時効が迫っている。主人公の三上義信は、かつて刑事として捜査に携わり、現在はD県警の広報官を務めている。そんな中、「64」をめぐって警察庁長官の視察が決まり、三上は再び事件と向き合うことになる。
ただ、上巻を読んで驚いたのは、事件の捜査そのものが物語の中心ではないことだった。三上が向き合うのは、記者クラブとの対立、刑事部と警務部の確執、県警と警察庁の力関係など、警察という巨大組織の中にある複雑な人間関係である。誰が何を知っているのか。誰が何を隠しているのか。誰の言葉を信じればいいのか。殺人犯を追っているわけではないのに、組織内部のやり取りだけでこれほど緊張感が生まれるのが面白かった。
特に印象的だったのは、三上が常に「間」に立たされていることだ。元刑事でありながら現在は広報官。警察組織の人間でありながら、記者には情報を伝えなければならない。上層部の命令には従わなければならないが、現場の事情も知っている。どちらか一方の立場に立てれば簡単なのに、三上にはそれができない。だからこそ、何を守るのか、どこまで組織に従うのかという一つひとつの判断に重みがある。
読んでいて何度も考えたのは、「正しいことをする」ことと「組織の中で正しく振る舞う」ことは、必ずしも同じではないということだった。会社でも組織でも、それぞれの立場には守るべきものがある。上司には上司の事情があり、現場には現場の正義があり、外部には外部の要求がある。そのすべてが完全に間違っているわけではないからこそ、板挟みになる人間は苦しい。
そして三上が魅力的なのは、そんな状況でも簡単に「組織だから仕方ない」で終わらせないところだった。自分の立場を守るためだけに動くのではなく、自分が納得できる答えを探し続ける。決してスマートではなく、衝突もする。それでも、自分が何のために仕事をしているのかを見失わないようにもがく姿に引き込まれた。
一方で、三上自身も決して仕事だけの人間ではない。家庭にも大きな問題を抱え、父親として、夫として、自分ではどうすることもできない苦しさを抱えている。警察では何とか状況を動かそうと必死になる男が、家庭では思うように何もできない。その対比によって、三上という人物が単なる「信念の強い警察官」ではなく、一人の不器用な人間として見えてくる。
『64』上巻は、派手な事件が次々に起こるタイプの警察小説ではない。登場人物も多く、組織内の立場や思惑も複雑で、序盤は少し入り込みにくい。それでも読み進めるほど、人間関係や対立の意味がつながり始め、気づけば三上と一緒に巨大な組織の中を走り回っているような感覚になった。
そして上巻を読み終えた段階でも、「64」という未解決事件の奥にはまだ何かがあると感じさせられる。組織の論理、仕事への誇り、家族への思い、そして十四年前から残された事件。それぞれ別々に見えていたものが、これからどこへ向かっていくのか。
組織に所属しながら、自分の信念を守ることはできるのか。事件の真相以上に、その問いを追いかけたくなる上巻だった。
#2026年35冊目
Posted by ブクログ
面白い!
どうなるの?どうなるの?と気になり、なかなか止められない。
家出をした娘さんについては読んでいて辛い。容姿に悩む自分に似てしまった娘。同性から妬まれるほどの美貌の持ち主の妻。娘からもその美しさを憎まれる…
下巻で、奥さんの思いも掘り下げられるのか?
気になるところ。
本筋もどうなっていくのか気になる?二渡は何を追っているのか??
Posted by ブクログ
典型的な組織の闇が書かれていて、でも警察組織を舞台にされると妙にどす黒く感じた。
現実でも大きい組織ほど部署同士の削り合いがあるんだろうな...無職だから知らんけど
Posted by ブクログ
少女誘拐殺人事件なんて、最悪な事件。
絶対に犯人は捕まって、復讐されるはずです。『64』は人気小説みたいですからね。胸くそ悪い結末にはならないと信じて読みました。
主人公の三上がとんでもなく不細工で、娘のあゆみちゃんはお父さんにそっくりな高校生。あゆみちゃんが不細工を理由に心を病んで家出をするという設定に「不細工で家出って、何やそれ」と思ったのですが、おそらく三上家の家庭に何らかの問題がひそんでいるんでしょう。
お母さんがスーパー美人で、娘はユニークなお顔なんてよく見かけますから。
美人には美人の苦労もあるかもしれないですし、お顔がユニークでも何かしら自分の好きなとこを見つけて生きられればいいですよね。
あゆみちゃんが早く見つかりますように。
Posted by ブクログ
一人娘が失踪中であるD県警広報官の三上のもとに、ある事件の被害者遺族を警察庁長官が訪問するという話が舞い込む。その事件は14年前に発生した幼女誘拐殺人事件で、未だ未解決となっている通称「ロクヨン」であった。遺族のもとに段取りをつけに行ったところ拒絶されたことに疑問を持った三上は、ロクヨンについて書かれた極秘の「幸田メモ」というものが鍵を握っていると考え、調査を開始する。やっとの思いで幸田メモの正体に辿り着いた三上は、それが日本の警察組織自体を揺るがしかねない、隠蔽事件の告発であることを知るーーー。
淡々とした文章の中にも三上の心情がうまく織り交ぜられ、警察組織内の緊張感や重厚感が伝わってきた。幸田メモについて明らかになったので、ここから三上がどうしていくのか、ロクヨンの真相は明らかになるのか、そして娘の失踪とはどう絡んでいくのか、後編を楽しみにしたい。
Posted by ブクログ
情報詰まり過ぎな上、登場人物も多くてついていけず文字を読んでるだけな部分もあった。心折れかけた。
だが中盤以降、自宅班に接近し始めた辺りからもうページを捲る手が止まらない。
人物相関図をメモして理解した上で読むともっと面白いと思うが、どんな結末が待っているか気になるので下巻を早いとこ読むとしよう。
Posted by ブクログ
面白い
過去の事件、行方の分からない娘、ギクシャクする妻との関係…
どこを切り取っても、暗いトーンと重い人間関係。
重厚過ぎて肩が凝ります。
さて、下巻はハッピーエンドになるのだろうか。
Posted by ブクログ
昭和と平成のちょうど間という時代背景がバチっと合いました。被害者、刑事、犯人、三者三様の時代の移り変わりを見事に表現しています。
平成から令和に移り変わった今この時に著書を読むのはすごく良かったです。
ただ全体的に暗いです。登場人物の心情も暗いし、内容も暗い。読んでいてハッピーな気持ちになることは全くありません。そもそもハッピーな気持ちにさせる小説ではないのですが…
Posted by ブクログ
幸田メモの中身がわかる件はドキドキしたけど、それ以上に精神的に三上が追い詰められてて読んでて胃が痛くなる思いだった
もし自分が三上の立場だったらと思うとキツすぎる、、、
Posted by ブクログ
読んでいて緊張感のある、いい作品。
64の謎を追いながらも、警察組織の内容でもある。
D県警シリーズを順に読み進めてきたので、警察組織については初読の人よりは理解が進んでいるかも。なのでさらに面白さが上積みされているかもしれません。二渡さんはこの作品で初めましてではないですし、警務部と刑事部の関係とか。
64について、長官視察について、県警内の対立について、マスコミについて、それぞれの家族について、その他にもいっぱい種まきがなされた上巻。
下巻が楽しみでしょうがないです。
Posted by ブクログ
BOOKOFFで再読のつもりで買ってきたけど…
もしかして読んでなかったかも⁇⁇
なんか面白すぎて新鮮に読めてるんだけど…
読んでないなんてあるんだろうか(꒪⌓︎꒪)
映画もドラマも観てるから
ピエール瀧やら佐藤浩市やら萩原聖人やら
A(エース)の仲村トオルも混ざって頭の中で
ぐるぐる踊りまくりです笑
やっぱ読んでなかったのかなぁ…
嬉しい気持ちで下巻にいきます!!
Posted by ブクログ
警察と記者の関係性に焦点が当てられた前半。元記者という作者の経歴に裏打ちされたやり取りのリアリティと切迫感にヒリヒリする。
少なくない登場人物が各々しっかり存在感のあるキャラクターとして描かれているのは流石。
Posted by ブクログ
大好きな横山秀夫先生の作品。
毎度読書するたびに驚く。
圧倒的な質量に。
これだけの内容を書く為に
どれだけの取材等をしたのか
脱帽する。
このテーマを取り上げるのが、
横山先生しか出来ないのではと
感心もする。
Posted by ブクログ
壮絶なドラマでした。
警察内部の紛争や記者クラブとの軋轢に対峙する描写は凄かったです。
主人公が、記者に対して真摯に向き合う姿に感動しました。
Posted by ブクログ
県警の広報官のお話
警察小説の中で主人公が刑事ではなく、さらに広報官というのは結構珍しい
ただ、その立場だからこそ見えるものもある
詳細な感想は下巻の方でまとめて
以下、上巻の公式のあらすじ
-----------------------
D県警の三上義信は46歳にして20年ぶり2度目の広報室への人事異動をくらった。1度目のときは捨て鉢な態度で職務につき広報マン失格。1年で刑事に戻れたものの、人事異動へ怯えが精勤を支え、結果、刑事として確かな実績を作ってきた。だがしかし――。職能を見限られた気はしたものの、前のような愚はおかさず、警務部長の意向に沿うだけではない、広報室に改革に乗り出し、記者との歪な関係も解消されてきていた。そんな矢先、ひとり娘のあゆみが失踪した。全国への捜索手配を警務部の赤間に願い出た三上は、上司に服従するほかなくなったのだった。 変節をした三上が、記者クラブと加害者のやっかいな匿名問題で対立する中、警察庁長官による、時効まであと1年と少しの「64(ロクヨン)」視察が1週間後に決定した。64とは、たった7日間の昭和64年に発生した「翔子ちゃん誘拐殺人事件」を指す刑事部内での符丁だった。遺族の雨宮に長官慰問の件を知らせに行くとけんもほろろに断られる。なぜここまで雨宮と拗れたのか。雨宮を懐柔するための情報を得ようと、当時の捜査員など64関係者にあたるうち、刑事部と警務部の間に鉄のカーテンが引かれていることを知る。それには元捜査員が口を滑らした「幸田メモ」が関わっているらしい。警務部で「陰のエース」の名を恣にする三上の同期・二渡真治も幸田メモに関して動いていた。幸田メモの真相をつきとめ、警察庁長官の視察の新の目的をさぐるために動く三上の前に二渡が現れる。二渡は名将の誉れ高く、8年前に退官した尾坂部の家に入っていった。
-----------------------
Posted by ブクログ
ドラマや映画で華型である刑事部、警務部ではなく、広報官三上が主役に抜擢されたことや様々な話題で問題になっている記者クラブ(既得権益)との対立構造が組み込まれていることに興味をそそられた。
幸田メモの内容が明かされずに、一枚岩とはいえない警察内部には様々な立場があることをじっくりと理解できた。
同時に、内部にある出世争いや派閥争いの厳しさも感じられた。悪意だけで事件の隠蔽が行われていないことにリアルさを感じた。
Posted by ブクログ
(上下巻)
647頁の大作だったが、重いので持ち歩けず、雑用の合間に読んでいると進み方が遅くなってしまった。予想通りの面白さに一気読みがいいとわかっていたがやっと読みきってほっとした。
前半は細かい職布を見るような書き方で、激動する内容だが警察内部の話が多くそれでも興味深かった。少し時間はかかったが、所々感動的なシーンがあってホロリとするので、外で読むのは少し照れるかなと思った。
三上はもと刑事だったが、今はD署の広報室を任されている。異動時期に刑事が続けられるよう実績を残してきたが、やはり広報に移された。しかし4人の部下は広報と言う仕事にプライドを持ってあたっていた。かれも広報マンのトップの自覚と誇りが芽生える。
娘が行方不明になり二度、死体検分に妻とともに出かけ、そのたびに娘ではなかったことを安堵したが次第に妻は家に籠るようになっていた。
14年前の「祥子ちゃん誘拐事件」の犯人が逮捕されず時効が一年後に迫っていた。突然、一週後に長官の視察があるという。祥子ちゃんの父親宅を尋ね、侘びとともに焼香したいという。三上はその連絡のために被害の雨宮芳男に了解を得てくることを託される。
三上は誘拐捜査で初動班にいたこともあり、未解決のままに父親に会うのは忸怩たる思いがあった。雨宮は一度はかたくなに断ったが、二度目の訪問で三上の情にほだされたのか承知した。
一方、記者室では刑事部の発表に反発して、広報は板ばさみ状態だった。
調べるうちに、祥子ちゃん誘拐の捜査の陰に不審な「幸田メモ」があることがわかる。
犯人の声を録音していた「日吉」と「幸田」が祥子ちゃんが殺害され、身代金をまんまと取られてしまった、捜査がこれからと言うときに退職し、日吉はその後14年間引籠っている。幸田は行方がわからない、なぜなのか。
刑事部の暗部が徐々に見えてくる。だが関係者は秘して黙し、三上には何も語らない。
刑事部に関する押し問答はやがて広報に向かって爆発する。
一方刑務部の二渡の行動が気にかかりだす。彼は新しい庁舎建設の件で動いていると言うが、人事権の裏方の実力者と言われる二渡の不審な行動が目に付く。
外では妊婦が老人を轢いて死亡させた。加害者の氏名は妊婦である上に重要人物の娘だった。刑事部は匿名で記者クラブに知らせろと言う。三上は記者たちの不満の騒動に巻き込まれる。
誘拐事件の匿名発表、事件の経緯などは協定が結ばれ、無言のうちに守られてきた。人道的な面からも記者たちは認めてきた、しかし、今回はおかしいではないか、と言う。三上は苦渋の末、尊敬する上司に問いかける。なぜ匿名なのか。
彼の広報魂が見える、感動的な場面に繋がる一つの山場である。
長官視察を明日に控え、また14年前をなぞるような誘拐事件が起きる。長官視察は取りやめられた。
これは様々な目的でおきた狂言ではないのか。
誘拐された少女はC子でもいい、ではなぜ両親の名まで秘匿するのか。
兄とも慕い尊敬する松岡に聞く。彼はいつもの独り言を言う。父親の名前住所。三上はあの協定が破られるのを恐れ、この情報だけでも流せることを喜んだ。しかし記者団は納得しなかった。
「俺がいえるのかここまでだ」
「しかしそれでは」
「ご再考願います、C子の名前なしでは協定は結べません。」「協定が流れてしまえば、何百人もの記者カメラマンが暴走します。捜査の妨げにもなります」
「言えん」「人間言えることと言えないことがある」
妙な言い方だった。様々に三上は考える。「便乗」誘拐事件の捜査で視察を中止に追い込む。視察は未解決の事件を種に地元警察の星、刑事部長職をキャリアに戻す案があると聞いている。
「本庁に刑事部長を奪われる。私も忸怩たる思いがあります。しかし、本件がもし狂言に乗じたものであるなら、事情はどうであれ、まさしく外道捜査」
「外道に正道を説けるのは外道、そういう言葉もある」
「ならば」
「くどい」「後はお前らの仕事だ、広報室の矜持とやらを総動員してブン屋を仕切ってみろ」
三上は犯人からの電話を聞き、松岡の温情で捜査車両に同乗する。
犯人はいるのか。14年前の誘拐事件をなぞるなら動機は何なのか。
長い長い感じがするが一週間の攻防。刑事部対刑務部。そして君臨する本庁。板ばさみの広報室室長、三上と広報室の団結。
記者会見の矢面に立たされた新米エリートの挫折と自立。
事件は緊迫した中で幕を閉じ、松岡の言葉も理解する。
三上は変わらない日常に帰る。
娘は自分にあった世界を見つけているかもしれない。娘からの電話を待っていた妻も、もと警察官として事件の解決に狩り出されて、渦中に身を置いたことで自分を取り戻す。
力作で、読み応えがあった。
創作の舞台であっても、登場人物たちの動きに同化して、盛り上がる部分では同じように気分が高揚した。
さすがに多くの人々が認めた傑作だった。
二渡は短編集「陰の季節」の最初の話で登場していた。彼の不審な動きはちょっとしたスパイスで、それは学生時代どうしても勝てなかった三上への報復でもあるのかと思えるところが、うまく出来ている
Posted by ブクログ
横山秀夫作品は外れが少ないので、楽しみにと長らく積読扱いだったもの。
本作は犯人探し主体のミステリーではなく(上巻を読む限り)、警察組織内部の権力争いを軸に、関係する記者クラブや遺族、自身の家族問題など組織と個人の相克をあぶり出したヒューマンミステリー、というよりむしろ純文学ミステリーに近い。
県警広報官の三上が、家族を守るための警察組織内での生き残りと警官として残されたなけなしの正義を貫こうとする苦悩との板挟みになりながら、物語(上巻)は進んでゆく。
特に、32章は鳥肌もの。筆者の破綻のない展開、圧倒的な筆力と構想力が堪能できる。感情移入できる登場人物たちのリアリティこそが本作を純文学ミステリーへと強めた所以なのかも。
さてこれから下巻で、どんな結末(収束)を迎えるのかを楽しみにしたい。
Posted by ブクログ
上巻は物語の進行だけを見るとゆっくりで、長く感じる場面もあった。しかし、その時間を使って警察組織の内部や人間関係が丁寧に描かれるため、物語の世界が少しずつ立体的になっていく。テンポの遅さは好みが分かれる部分だが、その積み重ねが作品全体のリアリティを支えていると感じた。
Posted by ブクログ
警察の広報という立場から見る仕事の理不尽さ、組織の非情さ。登場人物は多いけど、主人公・三上に寄り添ってくれたり味方になってくれる人がほぼいないので読んでてしんどかった。妻でさえ、三上にとっては細心の注意を払って扱わなければ壊れてしまう対象。
失踪した娘といい、抱えているものが多すぎる。そして娘から投げつけられたのは、三上にはどうする事もできない自分の容姿の否定。三上の尊厳は破壊され、それでも娘のため妻のために組織の駒として動かなくてはいけない。
家族、上司、部下、マスコミ、その他関わる全ての人が三上に感情や正論をぶつけ「何とかしろ」と責めたてている気がしてつらかった。最後の方でようやく「幸田メモ」の中身が分かり、少し物語は動き出すけど警察も家族もマスコミもここからどう流れていくのか予想できない。下巻はせめて三上が救われるといいな。
Posted by ブクログ
上下巻の感想です。
推理小説としてのストーリーはとても良くできてると思いましたが、やや中弛み感がありました。
あと、私には難しい言葉や表現が多く、ちょっと読みづらさもありました。
Posted by ブクログ
3.9
圧倒的な筆力で警察組織の内情をリアルに描く。
刑事部、警務部、記者たちのパワーゲームの間に挟まれ悪戦苦闘する広報官の三上。
さらにD県警全体を揺るがす謎が絡んでくる。