横溝正史のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
横溝正史のミステリ作品集『白と黒』を読みました。
『人形佐七捕物帳 新装版』、『悪魔の降誕祭』に続き横溝正史の作品です。
-----story-------------
平和そのものに見えた団地内に突如、怪文書が横行し始めた。
プライバシーを暴露した陰険な内容に人々は戦慄!
金田一耕助が近代的な団地を舞台に活躍。新境地を開く野心作。
-----------------------
地方の村や大家族、風俗的な舞台などが多かった金田一耕助シリーズが現代の団地を舞台にした長篇作品です。
1960年(昭和35年)10月11日、金田一耕助は、古いなじみの元ホステス・須藤順子の案内で、彼女の住む -
Posted by ブクログ
ネタバレ横溝正史のミステリ作品集『悪魔の降誕祭』を読みました。
『人形佐七捕物帳 新装版』に続き横溝正史の作品です。
-----story-------------
金田一耕助が悪魔のような犯人に挑む! 本格推理小説の最高傑作!
金田一耕助の探偵事務所で殺人事件が起きた。
被害者は、その日電話をしてきた依頼人だった。
彼女は、これから殺人事件が起きるかもしれないと相談に訪れたところ、金田一が戻ってくる前に青酸カリで毒殺されたのだ。
しかも、その時、十二月二十日であるべき日めくりのカレンダーが何者かにむしられ、十二月二十五日にされていた。
降誕祭パーティーの殺人を予告する犯人とは―(表題作より)。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ猟奇的事件と悲恋の一作。
佐藤春夫が探偵小説を猟奇耽異の果実と評した感想に思わず感嘆の吐息を洩らす。
以下、ネタバレです。
憑かれた女はただエマ子が不憫。罪を犯したのは彼女だけど江南が悪戯心を起こさなければこんな悲劇はなかったものと思いたい。最期を五月と共に逝けたのが救いだけど、それでも悲しいな。
首吊り船は三津木くんの活躍が見事。フットワークが軽くて度量が大きい。さすが花形記者というところ。それ以上に由利先生の理路整然とした推理が素晴らしかった。
最後の幽霊騎手は由利、三津木ペアは出てこないものの、風間辰之助のキャラクタがとても魅力的でヒヤヒヤもワクワクもしながら読めた。
悪友三人の友情に -
Posted by ブクログ
表題作のほか、「車井戸はなぜ軋る」「黒猫亭事件」の三作品を収録しています。
「本陣殺人事件」は、資産家である一柳家の長男である賢蔵とその妻となる克子が、結婚式を挙げた日の夜に密室のなかで死体となっていたのが発見される事件です。克子の伯父である久保銀造が金田一耕助のパトロンで、彼の依頼を受けて金田一が事件の解決に乗り出します。
「車井戸はなぜ軋る」は、戦争で両目を失明した本位田大輔の妹である鶴代の手紙をまとめた形式の物語です。彼女は、復員して帰ってきた大輔が、すっかりひとが変わってしまっていることから、腹違いの兄弟である秋月伍一の成り代わりなのではないかと疑い、次兄の慎吉に手紙を書いて胸のう -
Posted by ブクログ
「由利麟太郎」探偵ものの3作品、300ページほどの表題作が1947(昭和22)年、短い2作「蜘蛛と百合」「薔薇と鬱金香」は共に1936(昭和11)年の作である。
表題作は金田一耕助ものの最初の作品『本陣殺人事件』と同時期のもので、トリックに凝ったかなりややこしい話。怪奇趣味やそれに伴う濃厚な情緒はここには見られず、むしろ機械的に物語は進む。横溝正史自身が四六時中トリックを考案しているようなマニアックな作家であったので、凝ったトリックを設定しエラリー・クイーンばりの本格推理小説を実現したこの作品は、自信作であったのかもしれない。が、情緒性がなさすぎて、私にはさほど面白くなかった。
むしろ、併 -
Posted by ブクログ
1954(昭和29)年発表の金田一耕助もの。『獄門島』(1948)と『白と黒』(1961)の中間辺りの時期だ。
この付近の東京界隈の世相がどんな感じだったのかよく知らないが、本作に出てくる様相はかなりいかがわしい。写真や絵画のためのヌードモデルを派遣する神田の「共栄美術倶楽部」なる事務所が最初の舞台となっており、どうやら当時はカメラを持ちヌード写真を撮ることが流行っていたようだ。だが、これはいかがわしい会社なので契約した客とモデルの間で性交渉もありがちだという設定。この会社に所属するモデルの一人は、のちにストリッパーに転身する。横溝正史は当時のこのような「いかがわしい界隈」をとても愛好して -
Posted by ブクログ
1974(昭和49)年刊。横溝正史の生没年1902-1981を考えるとこのとき既に72歳。もう晩年と言ってよいかもしれない。
本作では4回も結婚し今新たに5人目と交際している大女優を中心に、避暑地の軽井沢で複雑な人間関係が殺人事件の背景として構築される。別荘を持っている人々が大半だから、富裕な層である。
本作の舞台は1960(昭和35)年。テレビが各家庭に爆発的に普及し始めた頃のようだ。
『白と黒』(1961)と同様、文体は軽く、江戸っ子の口上のように剽軽で滑らかだ。この軽さは、昭和20年代の『八つ墓村』等の傑作群で恐怖やおどろおどろしさを喚起し読者を巻き込んでいったあのエモーショナルさ -
Posted by ブクログ
前年から1961(昭和36)年に連載終了。これまでに読んできた横溝正史作品は戦前から戦後間もない頃の作品ばかりで、映画化もされた有名作はその頃のものが多いようだが、果たして後年の作風はどんな感じだろう? そう思ってとりあえず読んでみた。
本作の舞台は1960(昭和35)年の東京で、5階建て20棟から成る当時としては巨大な新築団地である。団地住まいという新しい生活様式がにわかに出現してきた時代と思われる。作者自身がこの新しさについて簡潔に指摘している。
「日本全国にニュー・タウンとよばれる団地が、ぞくぞくと建設されるにしたがって、そこに居住するひとたちの社会心理学というものが、ちがごろ問題