あらすじ
築地の橋下で発見された若い女性の変死体。依頼人によると犯行現場は築地ではなく、西銀座の路地だという。事件の謎が俄然金田一の闘志を掻き立てる。金田一耕助の謎めいた日常生活も描く異色作!
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Posted by ブクログ
『扉の影の女』
金田一耕助の報酬事情や懐事情、なぜ事件解決に打ち込むのかとか、助手の多門修との関係とかで、耕ちゃんの私生活が垣間見えます。
金田一耕助は銀座のバーに勤める加代子から依頼を受ける。加代子は夜道を逃げる殺人犯人とぶつかったのだ。もし顔を見られていたら犯人から狙われるかもしれない。しかし被害者は加代子の恋敵だったので警察に行けば今度は加代子自身が犯人と疑われるかもしれない。そこで金田一耕助に助けを求めに来たのだ。
耕ちゃんは警察で等々力警部を初めとする馴染の刑事たちと捜査に加わりつつも、依頼人の秘密は保ったままで独自にも動く。
等々力警部たちの金田一評が「本質は孤独。事件解決に掛かっている時は良いのだが、探偵の仕事が終わるとまた孤独に入り込んでしまう。だが一種の天才のため家族は持てないだろう」。そして読者が気になる収入は「事件5件に1件報酬もらえばいいところじゃないのか」ってことらしい。耕ちゃんは行く先々でたまたま殺人事件に巻き込まれました、というのが多いのでそんな場合は報酬なしですね。そんな時は、下宿先のご主人や、等々力警部がある程度のお金を貸してくれる。なんか放っておけないんでしょうね(後日高額報酬が入ったら上乗せで返ってくるという安心感もあるんだけど)。
本作ではそんな耕ちゃんの懐事情も語られます。依頼人が資産家だったりすると報酬はかなり多いのだが、入れば入っただけ使っちゃうので仕事がないと素寒貧。今回の事件は関係者に資産家が多くそれぞれが「自分の名前がでないようにしてくれれば高額報酬支払います」と申し出るので、最終的にかなり懐が暖かくなりました・笑
しかしこの依頼者達、それぞれがビミョ〜に隠し事や嘘をついているので案外ややこしい。耕ちゃんも警察に隠し事しているからお互い様ですけどね。
そして助手の多門修とのやりとり。彼は30歳ぐらいの元愚連隊で女たらしで刑務所に入っていたこともある。だがある事件で犯人に間違われたところを耕ちゃんが助けたところから彼に心頭して助手働きに。元々人と話すのは得意だし気の良いお兄ちゃんなので、危険やスリルを好む習性が探偵見習い担ったおかげで満足するようになったらしい。「先生の仕事からあぶれちまったら世の中が味気なくなっちまう」というくらいだから良いやつです。表の仕事として、耕ちゃんの幼馴染でパトロンの一人である風間俊六が経営する「クラブK・K・K」のマネージャーも務めている。
今まで耕ちゃんが話す相手は、依頼人や事件関係者や警察関係者など、耕ちゃんがある程度の礼儀を持って接していたけれど、多門修相手だと親分が子分を教育する感じで一人称も「おれ」になるのが面白い。
さて、今回の耕ちゃんが受けた依頼は「自分の名前を出さないようにして」なので、事件解決前に手を引きます。でも等々力警部たちにヒントやら物的証拠やらを渡したので事件は警察が無事解決。警察も「なんだかんだいって金田一先生は自分たちを手助けしてくれるさ」と信頼しています。
金田一モノってたまに耕ちゃんが事件を解決しないことがありますよね。
『鏡ヶ浦の殺人』
金田一耕助は、事件の合間に鏡ヶ浦のホテルで休暇を過ごしている。そこで知り合った大学教授の江川は読心術によりヨットに乗っている男女が殺人を計画していることを読み取った。だが翌日、毒殺されたのはその江川だった。
100ページ程度の短篇ですが、けっこう人間関係が入り組んでいるし殺人の真相もかなり悪どい。しかし最後には耕ちゃんが関係者にこれからは幸せにおなんなさい、と、明るく締めてました。
Posted by ブクログ
『扉の影の女』と『鏡が浦の殺人』の中編2篇が収録されている。
『扉の影の女』は金田一耕助と容疑者候補の人々、そして等々力警部が互いに騙し合いながら話が進んでいく。しかし、犯人は最後の方に出てきた奴だったのがビックリ!ただ、犯人が誰かということよりも犯人に至るまでの経緯は読み応えがあるので、全体的に満足いく出来となっている。ハウダニットを中心に据えたミステリと言っていいだろう。
『鏡が浦の殺人』は夏の終わりに起きた毒殺事件をめぐる物語。こちらは犯人は誰かに焦点が当てられたミステリであり、トリックは中盤で明らかになるように書かれている。夏の終わりを惜しむ儚さも感じられる一作である。
さて、本書は横溝正史生誕120周年&没後40周年を記念して俗に言う緑字(背表紙の文字が緑色だったもの)シリーズで復刊されたものの一作であり、末尾に必ず編集部から「現在の人権感覚と照らし合わすと不適切な言葉がある」と記されている。
無論、これらの言葉は人権差別を助長するものではない。大事なのは、それらの言葉が現在の人権感覚で使うことが許されていない言葉でいることを読者である我々が受け止めることだと思う。
Posted by ブクログ
昭和30年、私も生まれていない時代に起こった殺人事件と交通事故死。金田一耕助の推理に等々力警部も煙に巻く。登場人物同士の会話が楽しく犯人が誰であっても気にならないほど。金田一の懐が暖かくなる展開も珍しい。
Posted by ブクログ
金田一耕助シリーズも、これでコンプリート。
あとはジュブナイル作品のみ。という時点での一冊。
まさか角川文庫で復刊するとは!
扉の影の女
金田一耕助のこの時点のおおよその年齢、食生活、探偵としてのやる気が起こる時、虚無感に襲われる時それはどんな時か。お金の使い方、など人物像にせまる記述も多い。
結末もいい終わり方をしているし、最後に犯人がどう捕まったかも、しっかり書かれているのでそこもスッキリ。
鏡ヶ浦殺人
海辺のシリーズ(パラソルで隠れて…とか砂に埋もれたときに…とか)みたいのかと思ったら、そうではなかった。ゴムマリのトリックは他で読んだのですぐわかった。
こちらは…ひどいやつが結構いた。それと誰が誰とどんな関係だったのか何度かわからなくなって読み返した。
でも世界観は良かった。
Posted by ブクログ
ハットピンでの殺害というあまり聞き慣れない殺害方法に驚いた。
確か村上春樹のIQ小説でもアイスピックで暗殺するというのがあり、驚いたのを思い出した。
さらに2つ目のお話でも毒針という殺し方で、中々に気づきにくい方法があるんだなあと変に感心してしまった。
どちらの殺人も殺害の動機はよくあるものだったけど、殺害方法が印象に残った。
Posted by ブクログ
表題作が1961(昭和36)年、併収の「鏡が浦の殺人」が1957(昭和32)年の作。
いずれも水準に達した横溝作品。前者はアパートらしきところに住んでいる金田一耕助の生活の様子が垣間見られて楽しい。
最近はやや頭を使うような書物を続けて読んでいて、息抜きとしての娯楽小説が読みたくなって本書を開いた。本格推理ものではあるが私はたいして推理もせずに読んでいるので、息抜きを楽しむことができた。推理小説も謎解きの面で頭を使うのだが、学術的な本を読みながら抽象的な思考を繰り広げるのとでは、おそらく脳の活性部位が異なるのではないだろうか。
「鏡が浦の殺人」の方は例によって金田一耕助と等々力(とどろき)警部が休暇を楽しむため観光地・避暑地に出かけると殺人事件に出くわす。この二人で旅行に出かけると必ず人が死ぬのだから、止めた方がいいと思う。
あまり長くない中編は登場人物たちが長編ほど大量ではないので、苦労せずに読めた。
やはり娯楽としての小説も、私には必要であるようだ。