横溝正史のレビュー一覧
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長編、殊に映像化作品においては、金田一は単独の探偵で、ホームズに対するワトソンのような所謂「助手」はいないと感じられる。
ところが、本書のような短編においては、バディとしての磯川警部や等々力警部の姿が、鮮やかに浮かび上がってくるのである。
長編においても(読み直してみれば)彼らの協力が、事件の解明に不可欠であることが分かるのだが、短編においてはそれが際立っている。
特に磯川警部の如きは、遠方まで静養に来た金田一を何くれとなく世話する様子が、じつに微笑ましい。
事件の内容自体は、金田一の短編においては定番の、ネクロフィリア、首無し、男女入れ替えと若干マンネリ気味である。 -
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金田一ジッチャンの方の事件簿。
冒頭に登場人物一覧ページがあって、非常に助かる作品。
登場人物が多い上に、血族・姻族の関係が複雑なので、中盤までは一覧を見返すことしばしば。
トリック全般はどうということはないが、タイトルに「惨劇」とある通り、一部被害者のやられ方が、まぁ酷い。
それと、金田一作品には珍しく犯人が救いようの無いワルで(※)、金田一も嫌悪感を顕わにしている。
※孫の『金田一少年の事件簿』でも共通しているが、大抵は被害者の方がどうしようもない奴で、犯人には酌むべき事情がある場合がほとんど。
加えて、全編通してのヒロインが存在しないのも珍しい。
強いて言うなら、迷路荘の主の娘、陽子 -
Posted by ブクログ
金田一ファンというより、杉本画伯の描く横溝世界に惹かれて古本屋さんを歩き回って集め、事件年代順に読むという金田一祭りを一人開催中。やっぱり、寝苦しい夜は横溝だなぁ。
読んだ本は、昭和51年発行の杉本画伯が表紙を飾る文庫版でタイトルは「花園の悪魔」。表紙絵は表題作の犠牲者がおどろおどろしく描かれています。
収録作は同じです。
死体陵辱等異常者による猟奇的な事件など、都会においてのおどろおどろしさを出そうとすると、こういう要素が必要になるか。田舎の因習に縛られた一種閉鎖環境での異常性と対比すると興味深い。
金田一は吃音癖があって地方訛りも少し残っているという設定ではなかったっけ?表題作中での -
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上下巻セットで、既に下巻も読み終えてしまってるのですが、上巻の終わりまでの時点で抱いた感想を書きます。
横溝正史が最後に綴った金田一モノということらしいのですが、これまでに角川文庫で出ている金田一シリーズをほぼ読んできた身として言うと、初期の作品の方が面白いかな、という感じ。
時代はこの作品の方が今に近いので理解しやすいかと思いきや、実は横溝作品のほとんどは岡山とその周辺の、当時でさえ「過疎地」とされた辺鄙なところが舞台なので、風習については昭和初期並みに昔の話になってしまい、むしろ理解できない。完璧に、舞台の向こうの話として傍観するしかないです。まぁ、これは古い小説を読む時には仕方ないこと -
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『真珠郎』に続き由利先生シリーズ、但し、こちらはお初。
とは言っても、むか~し、これを少女マンガらしくコミカライズした
高階良子『血まみれ観音』を読んだので、大筋は了解した上。
……で、ビックリしたのは、
あのマンガは物凄く大胆な翻案だったんだな~、
でも上手く纏まっていて、よく出来た話だったな~、ということ。
ストーリーは、
ならず者を殺害した容疑で拘束された美青年が逃走したところから始まり、
この青年の肩に人面疽(瘡)があって、
しかもそこに秘密が隠されているらしく、彼を追う者たちがいて、
名探偵・由利麟太郎と新聞記者・三津木俊助のコンビが謎解きに奔走する
――といったところ。
地の文から -
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金田一が出てこない横溝作品集。書かれた年代もバラバラのようで、作品としても佳作もあれば何だこりゃなものもあり。表題作の『双生児は囁く』以外は、推理小説としては長さとしてもトリックとしても物足りない印象です。
全体的に、横溝作品の絶対的なテーマである「大正から昭和にかけての仄暗い空気感」と、「金持ちは必ず外に妾を作り、本妻が生んだのと同じ年の隠し子を作っておかなければいけないというある種の義務感」(笑)に包まれてるので、その辺が抑えられれば話の展開も読みやすくなります。
全体的には、まぁよほどの横溝ファンでもなければ手を出さなくてもよいでしょう、という印象です。