横溝正史のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
由利先生シリーズのドラマ化に合わせて再登場した
関連本を購入、まず、この『血蝙蝠』から読み始め。
1938~1941年に発表された短編9編。
収録されているのは、
日中戦争勃発によって江戸川乱歩らの探偵小説が検閲を受け、
自由に執筆できなくなり、当局に睨まれないよう
スパイものにシフトせざるを得なかった時期の作か。
理由・動機はどうあれ
日本人が同胞を殺すというストーリー展開が、けしからんと
お咎めを受けたとか〔参照:論創社『守友恒探偵小説選』〕。
とはいえ、ここでは殺人事件も起きているのだが、
なるほど、さほど猟奇的な展開ではないのだった。
以下、ネタバレなしで全編についてサラッと。
★ -
Posted by ブクログ
横溝正史『血蝙蝠』角川文庫。
4ヶ月連続復刊刊行の由利麟太郎シリーズ第3弾。名探偵・由利麟太郎と助手の三津木俊介の活躍を描いた2編の短編を含む9編を収録。横溝正史にしては斬れ味の悪い短編ばかりが収録されているように思うが、どうだろうか。
『花火から出た話』。お伽噺のようなストーリーが展開する。横溝正史作品にはこうした風合いの短編も多い。由利麟太郎は登場しない。
『物言わぬ鸚鵡の話』。舌がちぎれた物言わぬ鸚鵡を巡るブラックな掌編。横溝正史作品独特の斬れ味がある。由利麟太郎は登場しない。
『マスコット綺譚』。縞瑪瑙のマスコットのご利益は……綺麗な意外な結末に胸を撫で下ろす。由利麟太郎は登場 -
Posted by ブクログ
主人公は探偵小説家。終始この男性の一人称で物語は進みます。横溝正史の小説で一人称で書かれているものは珍しいのではないでしょうか。
探偵小説家の友人の妹宛に不審な手紙が来たことから、恐ろしくなった友人は、探偵小説家に、彼の屋敷に来てくれるように頼むのですが、そこで恐ろしい殺人事件が起きてしまいます。それも首なし死体の…!
その殺人には、絶対に取り出せないように厳重に金庫に保管していた刀が凶器として使われたのでした。ここのトリックは、私は全くわかりませんでした。
後半、金田一耕助が登場したところは驚きました。今回は、探偵小説家である「私」が主人公なので、金田一耕助は登場しないと思っていたのです。
-
Posted by ブクログ
奇妙な襲撃事件・何者かに狙われてる美女・歴史ある旧家の異様なキャラクターたち……といつもの金田一ものではあるけれど、金田一が出てくるのは物語のほぼ終盤である。一人称が作家であるパターンは、金田一ものではまああるのだが、この作品は終盤(本当に終盤)で、思いもよらない展開を見せる。
それに心地よい驚きを覚えるか、アンフェアと感じるかは人それぞれかもしれない。ただ、個人的な感想は「苦しいな」という感じ。
きっとこのトリックありきで物語を作ろうとしたのだけれど、伏線らしきものがなかった(と思う)。終盤で説明はしてくれているが苦しいのだ。それを見破る金田一の見解もあまり大したことはしていないというか… -
Posted by ブクログ
金田一耕助シリーズ。伊豆沖の島に住む大道寺家の一人娘、智子が、仮の父である欣造に結婚相手との顔合わせとして東京、伊豆に呼ばれる。そんな中、智子の母親琴絵のと本当の父親との秘密が明らかになる。
序盤どころか、中盤までもアクの強い登場人物をこれでもかというほど多く出し、殺人は唐突に起こるものの、何に判じてのものなのかがわからずという、悪く言えば支離滅裂なストーリー展開が続く。
考えても無駄なので読み進めていたが、盛り上げる割には金田一耕助もこれといった動きをするでもないため、相当にダラダラという感が否めない。
ところが、終盤になって19年前の事件についての情報が出始めてからのスピード感はすご -
ネタバレ 購入済み
横溝正史のジュブナイル作品であり、横溝正史版、明智小五郎&小林少年と言った内容です。
展開が早く、あっという間に読み終えるので、今まで重厚な横溝作品しか読んでこなかった読者は肩すかしをくらうかも。
ティータイム的な感じで気楽に読んでみたら如何でしょうか。
時代背景は一昔前ですが、お子さんのファースト電子書籍に良いかも。 -
Posted by ブクログ
今回の舞台は団地です。
横行する怪文書、団地のダストシュートから黒タールまみれで発見された死体・・・。
金田一さんといえば、地方の閉鎖的な村で、旧家と因習の中での事件に挑むのがお似合いな印象なので(「金田一耕助事件ファイル」を読んでいくと、都会が舞台の事件もかなり多いのですが、やはりイメージが・・。)、“金田一さんと団地”という組み合わせが新鮮な感じがして、これはこれで楽しめました。
タイトルの「白と黒」の意味について、金田一さんが色々な人に質問しているのですが、終盤でその意味が明らかになると、何だか恥ずかしい質問を皆にしまくっていた事になるのかも・・。と勝手に思った次第です。 -
Posted by ブクログ
金田一耕助シリーズの短編集。5本。うち「湖泥」は「貸しボート十三号」、「蜃気楼島の情熱」は「びっくり箱殺人事件」に入っていた物を再編。2行くらい読んだところで、読んだことがあることに気づいた。同じ角川文庫の同じ横溝シリーズにこういうことをするのだな。
さて、最初3編(再録2本含む)は、女性の死体と添い寝してという話なので、そういうのをわざと集めたのかと勘ぐったりする。「湖泥」は個人的にも好きな作品だから良いとして、「蜃気楼島」は再録するほどいい作品かな?もう一つは、横溝版「盲獣」かと思いきや…という作品。これは良い。
残り2本のうち「蝙蝠と蛞蝓(なめくじ)」は、主人公視点を別の男に据えて、 -
Posted by ブクログ
良家の令嬢の所へ突如舞い込んだ
巨額の遺産相続の話。
条件として見も知らぬ男と
夫婦になれというものだった。
この莫大な遺産を巡り、
血みどろの惨劇が巻き起こる。
知っている金田一シリーズとは
全く異なった印象の作品。
麗しの令嬢が悪漢に惚れ染まり、
全く関わりの無かった
裏社会、人間の闇に直面する。
数々の死体を目の当たりにし、
挙句、警察に追われるという
サスペンス色の強い作品で、
この娘の視点で描かれる事件は
非常にスリリングで楽しめた。
メロドラマの様な物語も嫌いでない。
ただ、このシリーズらしい怪奇的で、
凄惨な事件に巻き込まれる
金田一耕助の活躍を楽しみに
していたので少し不