横溝正史のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
1951(昭和26)年-1952(昭和27)年作。
最初この作品の年代を知らずに読んでいたら、すっかりもっと後年(1960年代以降)の作と思い込んでおり、「やっぱり以前と比べて薄味になってるなあ」などと考えたのだった。が、本作は『八つ墓村』(1951)、『犬神家の一族』(1951)などの印象深い屈指の名作にすぐ続く時期の作品なのである。
「にも関わらず」味が薄いのだと言うほか無い。何が薄いかというと、前述のような名作群と比べると、登場人物たちが振りまく強い情念の匂いが、ほとんど感じられないのだ。ここでは密な人間関係における愛憎が浮き彫りにされていないし、おまけに、横溝が得意なはずの怪奇趣味、おどろおどろしさが全く無い。
せっかく中心に「絶世の美女」を配し、彼女に群がる男たちが次々に死んでいくというシチュエーションにしたのだから、その男たちの欲望やグロテスクなジェラシー模様、および、彼女の心理の機微などをもっともっと描き込むべきだったと思う。
あるいはトリックの工夫においてある程度世に評価されている作品なのかもしれないが、私としては、この時期の横溝ならもっと緊密な小説に仕上げられたはずなのに、と悔やまれるところだ。後年の横溝は、確かに軽さの方へと流れ込んでいくのではあるが。 -
Posted by ブクログ
「横溝正史」の短篇集『人面瘡』を読みました。
「横溝正史」作品は昨年10月に読んだ『犬神家の一族』以来ですね。
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「わたしは、妹を二度殺しました」。
金田一耕助が夜半遭遇した夢遊病の女性が、奇怪な遺書を残して自殺を企てた。
妹の呪いによって、彼女の腋の下には人面瘡が現れたというのだが…。
表題他、四編収録。
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本書は、1949(昭和24)年から、1954(昭和34)年に発表された「金田一耕助」シリーズの短篇ミステリー5篇で構成されています。
■睡れる花嫁(原題:妖獣)
■湖泥
■蜃気楼島の情熱(原題:堕ちたる天女)
■蝙蝠と蛞蝓
■人面瘡(原題:支那扇の女)
『睡れる花嫁』は、近隣の家屋から離れ、亭々たる杉木立に囲まれた不気味なアトリエで、警邏中の巡査が殺害される事件が発生し、アトリエには花嫁衣裳に身を包んだ女性の死体が残されていたという、猟奇的な事件を扱った物語、、、
そのアトリエは、現在は空き家となっているが、以前は、画家の「樋口邦彦」が住んでおり、彼は妻が病死したあともその届けを出さず、床に寝かせてその身体を愛し続けるという異常な行為に及んだ場所だった。
「樋口」は、実刑を受けて刑務所に服役していたが、一カ月前に出所していたことから、容疑は「樋口」に向けられる、、、
真犯人は「樋口」の異常な行為の発見に関わった意外な人物でしたが、死体愛好(ネクロフィリア)という異常な性癖を持つ男が、その満足を得るためのみに女を殺し、死体を作りだすという異常性、猟奇性に、嫌悪感を感じてしまう作品でした。
まっ、「横溝正史」らしい作品なんですけどね。
『湖泥』は、岡山の僻村を舞台に、対立する二つの名家の愛憎を絡めた殺人事件を「金田一耕助」が解決するという物語で、舞台も犯罪の状況も王道的な「横溝正史」作品、、、
この地域で力を持っており反目し合う「北神家」と「西神家」… その両家の息子たちが好意を抱いていた「御子柴由紀子」は、結婚相手として「北神浩一郎」を選んだが、その後、隣村で祭りが開かれ夜に行方不明となる。
その後、「由紀子」は、村の外れで牛馬同然の生活を送る敗戦ボケの「北上九十郎」の小屋で死体として発見され、同時期に行方不明となっていた村長の妻「秋子」も、村外れの山中で死体として発見される、、、
村人の当夜の行動を確認した結果、婚約者の「北神浩一郎」や、そのライバルだった「西神康男」、村長の「志賀恭平」等の不審な行動が浮かび上がるが、その背後には狡猾な犯人よる奸智な犯行計画があった。
閉鎖的な農村を舞台にした憎悪や怨恨、嫉妬、反目… それらが原因となった姦通、暴行、殺人… 「横溝正史」らしい作品でしたね。
『蜃気楼島の情熱』は、『湖泥』と同じく岡山が舞台… 瀬戸内の沖合いに浮かぶ、蜃気楼のような小島に建てられた竜宮城のような屋敷での怪事件を「金田一耕助」が解決するという物語、、、
「志賀泰三」は新妻の「静子」とともに、その屋敷で暮らしていた… 「泰三」が親族の通夜で故人「村松滋」の遺言として、あることを告げられ、心身が不安定な状態で帰宅した夜、「静子」が殺害される。
「泰三」は、かつてアメリカに在住しており、現地で結婚していたが、妻を殺害されたという経験があり、その事件も含め、嫌疑は「泰三」に向けられる… 「金田一」は故人「村松滋」の遺族の不審な行動に気付き、捜査を始める。
小島での殺人事件ということで、密室性があったのですが、「金田一」が、そのトリックを見事に暴きます。
成功者への羨望や嫉妬が動機となった事件でした。
『蝙蝠と蛞蝓』は、比較的軽めな内容のミステリー作品、、、
同じアパートに引っ越してきた蝙蝠のような男「金田一耕助」と、隣家に住むメソメソして陰気で蛞蝓のような女「お繁」… この二人のことを嫌う「湯浅順平」は、この二人が登場する小説を書くことで大いに溜飲を下げる。
その小説は、蛞蝓女「お繁」が「湯浅」によって殺され、蝙蝠男「金田一」がその罪をかぶって、死刑になるという物語であったが、、、
それから半月程がたったある日、「お繁」が本当に何者かによって殺され、例の小説が犯行計画書と誤認され警察に捕縛されてしまう… 「湯浅」が嫌っていた「金田一」が、事件を解決し、「湯浅」の潔白を証明するという内容でした。
少しコメディタッチのミステリーって感じでしたね。
『人面瘡』は、またまた岡山が舞台… 僻村、孤島の次は山間の温泉宿で発生した事件を、骨休みとして滞在していた「金田一耕助」が解決する物語、、、
宿の若主人「貞二」と結婚の約束をしていた女中の「松代」が毒を飲んで自殺未遂を起こす… その後、「松代」の妹「由紀子」が稚児が淵で溺死体として発見され、夢遊病の症状を持つ「松代」は自分が殺害したと証言する。
「松代」の謎めいた半生と、その身体にある人面瘡の秘密が、明らかになるに連れて、真相が徐々に判明する… 「金田一」の推理というよりも、登場人物の証言により真相が明らかになるという展開でしたね。
それぞれ愉しめましたが、ちょっと物足りない感じ… 「横溝正史」作品は長篇の方が面白いですね。 -
Posted by ブクログ
金田一耕助ものが3編入っている。「湖泥」1957(昭和32)年、「墜ちたる天女」1954(昭和29)年、「貸しボート十三号」1957(昭和32)年。
横溝正史の長編だと最初の方に大量の登場人物がいて、人の名前を覚えるのが苦手な私の場合、彼らの名を覚えるのに苦労し、わざわざ登場人物をリスト化するメモを取りながら読まなければならないほどだ。それに対し、これらの短編はそんなに人物は多くなく、メモを取る必要がないので、気軽に読める感じだった。この気軽さが、良い。
3つとも面白く読めた。それぞれのトリックのアイディアは確かに意外性があって良いし、金田一耕助じしんのユニークなキャラもあってストーリー展開も楽しかった。出色のものでもないだろうが、気軽に読める娯楽作として有用なものだ。