岩井圭也のレビュー一覧
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凄い作品に出会った。
作品自体がその時代背景があるからなのか、昔好きで読んでいた昭和の文豪の小説を読んでいるような不思議な感覚を感じる。
まずタイトルが「分身」ではなく「文身」。読後考えてみて「分身」でも違和感なくストーリーと共和する気がするが、さらに彫っての「文身」なのだろうと推測。
「現実と虚構」というテーマ、読後に考えてみれば作品全体に蔓延り、読者である自分も作品を読みながら「現実と虚構」が整理がつかずグチャグチャに混ざりなんだかわからない状態になる。
虚構を読んでいるのにその中の虚構に虚構か現実かが分からなくなってくる不思議さ。
そこを上手くミステリー風に仕立てている感じが凄く関心を引っ張られていく。
これは凄い作品だと。
文体や言葉の表情等は違うのだが、太宰治の「人間失格」ような不思議な魅力を感じる、文学史に残るべく作品かとも思う。
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ネタバレ 購入済み
読み応えあります
む〜ん 後半の暗さである瞭司の苦悩が、私には辛かった。その上で、熊沢の苦悩も辛い。一方で、平賀先生の対応が今の世界の普通の対応でないかとの思いが捨てきれず、現在の生き難さを示していると思う。その上、平賀先生本人は苦悩が無いのであろう。これも真実。
瞭司の凄さを理解すると共に瞭司二世が出てきたという、このような終わり方で良いのだろうかという、不満が心の底にある。 -
Posted by ブクログ
ネタバレなんとも表現し難い作品でした。
あまりの展開に嫌悪感が募り、顔を背けたくなりながらもどうしても先が気になり読んでしまう。
昔のウッチャンナンチャンのバラエティ番組で『未来日記』というコーナーがあったのですが、それを思い出しました(歳がバレる笑)。司令書に未来の日記が書いてあって、そうなるように自分たちで動いていくのです。
この物語の主人公は兄弟ふたり。15歳の時に偽装自殺した弟が、その後姿を隠して小説を書き続け、兄の名前で世に出す。その小説は私小説として発表する。
「私小説は自然主義の文学であり、現実にあったことでなければ書いてはならないという認識すらある。」
でも普通の私小説と違うのは、弟が書いた小説の内容を後から兄が経験するというところ。
ここまで読んで、え?ということは、序幕で書かれていたあの場面は弟が書いたシナリオの結果なの?と気付き、なんとも言えない嫌悪感が‥‥。
どこまでが事実でどこからが虚構なのか?この兄弟を結びつけているものは何なのか?
何とも言えない薄暗い物語でした。
でも、先が気になってどうしてもページを捲ってしまいました。
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Posted by ブクログ
主人公は、タイトル通り刑務所のお医者さん。でも本人が希望した職場ではない。しかも、若い医師に対する患者の受刑者は見下してくる。助手の人もベテランで、新米の若い医師には立場が逆転したかの様に次々と経験値から言える指導をする。日々、薬を求めて受診に訪れる患者(受刑者)は詐病を訴えるのが多い中、本当の病気を疑う症状を見逃さない感性が真剣に病の症状に悩む犯罪者を救う結果になる。
主人公の母親は認知症を患い看病で生じるトラブルもある。そんな家庭環境を理解している彼女との恋愛では、級友の女友達とのいざこざもある。医療のメインストーリーの合間に描かれている私生活も苦楽が満載である。
冒頭の場面は、犯罪者が逃亡している情景が描かれており逮捕される瞬間で終る。その場面が中盤になり、診察の状況を一変させる。逮捕された犯罪者と主人公の医師の関係が後半の中では主軸になり、最後には背けていた感情を少し和らぐ変化が読み取れる。
不本意な感情が使命感を帯びて、前向きな気持ちに変化していく様が仕事の面、私生活の面で並行して描かれているところが現実の自分の生活を見直す考えを促される気がする。 -
Posted by ブクログ
神経内科医としてのキャリアを目指していたのに経済的理由で奨学金免除の義務を果たすべく3年だけと刑務所の医師、矯正医官となった是永史郎。
刑務所であるから患者は犯罪を犯した海千山千の受刑者。医務の助手は准看護師の資格を持つベテラン刑務官。限られた医療体制に薬剤、検査方法。そんな環境下でも、主人公は研修医を終えて即、単独でしかも総合医的な診断をしなくてはならない。
帯には本格医療ミステリー的な扇情的なフレーズが書かれているが、受刑者の病状を明らかにする過程は、数年前にNHKでやってたドクターGのカンファレンスを彷彿させる。
またミステリーよりも矯正医官としての成長するヒューマンドラマと感じる。学生時代の仲間、刑務所のスタッフ、家族、恋人、そして受刑者たち。物語が進むに連れて、主人公との距離感が近づいたり離れたり。楽しめた。