【感想・ネタバレ】汽水域のレビュー

あらすじ

亀戸で複数の死傷者を出した無差別殺傷事件が発生。犯人の深瀬という男は逮捕後、「死刑になりたかった」と供述している。事件記者の安田賢太郎は週刊誌での連載のため、深瀬とかかわりのある人物にインタビューしていく。彼の人生を調べていくうちに、不思議と共感を覚えていく安田。しかし、安田の執筆した記事によって、深瀬の模倣犯が出現して…。社会との繋がりを失った人々の絶望と希望を紡ぎ出す、迫真のサスペンス。

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Posted by ブクログ

物語の中身ではなく、外側について。
岩井さんの小説は、セリフと物語が、いかにもなセリフや物語としての書き言葉ではなく、本当に口から紡がれたかのような切り方、それも長い時も短い時もある。それが臨場感や焦燥感など、空気を作り出しているように思う。
また、キャラクターが「立っていない」。だから、本当にいそうで、本当にそう考えそうで、「ふつうに考えた範囲では、ふつうそうなるよな」と思えて、「いやそうはならんやろ」とあまり思わない(一部作品にはあるが)。
そうしたことが没入感をつくり出していると考えた。では人物に共感するか?というと、そういうことではない。ましてや今回の物語は共感してはいけない。そもそも創作物は共感ではなく、違和感を知るためのものだから。でも、その違和感によって、私の今を確認できる。それは『楽園の犬』もそうだった。

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2025年08月22日

Posted by ブクログ

淡々と読んでいたのがいつのまにか没頭していた。はじめは主人公のあまりの薄情さに冷たい視線を送っていたが、彼の仕事ぶりと生い立ちを追っていくと次第に胸が熱くなっていった。主人公の安田はフリーの事件記者。「死刑になりたかった」と供述している無差別殺傷事件の犯人、深瀬を取材しているうちに、深瀬と自分との共通点を見出す。取材が進むほど苦境に立たされても他人事とは思えない安田は事件を深堀りしていく。安田と深瀬の「父親が憎い」という共通点、その危うさに思わず共感してしまった。それでも安田の心の葛藤と成長に救われた。

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2025年07月07日

Posted by ブクログ

汽水域とは、淡水と海水が混じり合う所


〝水中を漂うミズクラゲが、安田の目には人間と重なって見えた。
誰もが常に、善悪の汽水域を漂っている〟


うわぁ~
すごく良かった
良かったよぉ゚゚\(´O`/)°゜゚ 
岩井さんの作品の中でもかなり好きなやつ



無差別殺傷事件を引き起こした犯人は「死刑になりたい」と供述している。
その事件を追う記者・安田が主人公で、別れた妻との間に七歳の息子がいるのだが、まぁ本当に父親としてはダメダメだと思う。
家族にはまるで興味なくて、子供のことは全て妻任せ。

そんな父と息子の関係。
また、安田の子供時代における父親との関係。
そこに犯人の過去がリンクしていく…



安田の仕事に対する向き合い方は本当に真面目で、被害者側でも加害者側でもない中立な立場を保とうとしている。
なのに、自分の過去と犯人の過去をどうしても重ねてしまう…

各章ごとに記される過去、誠実さがよく分かる安田の記事。
この辺がめっちゃ効果的で、どんどん物語に惹き込まれる。



〝寂しい時には、自分の周囲に命綱が張り巡らされていることを思い出してほしい〟

著者のメッセージがしっかりと伝わる一冊だったと思う。

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2025年07月06日

Posted by ブクログ

幼少期の家庭環境に左右され、自分の努力では思い通りにならない世の中に嫌気がさして無差別殺人を起こした犯人。
その犯人の真の動機を追うフリーのライターもまた幼少期に父から暴力を振るわれ、金銭的な苦労もし、一歩間違えば自分もそのような犯罪を犯していたのではないかと考える。
そこから、犯人に決して共感するわけではないが、安易な結論ではなく、真因に近づくべく徹底的にリサーチし、ジャーナリズムの使命として同じような事件を起こさないことに繋げようと考える。

本作では、ジャーナリズムの使命とその長短、正義感とその危険性、ビジネスは貸し借りで成り立つこと等、話の展開の中で様々な点にも焦点が当てられている。

本作のタイトルの「汽水域」は海に近い川の下流で海水と淡水が混ざった領域を指す。
ライターが犯行の真因を追う中で1つ見出したことは、人の中身は常にこの汽水域のように、善と悪の間を行き来しているということ。それが、本作のように家庭環境等のきっかけにより、完全に悪の方向へ流されてしまうこともある。
そのような時、自分を見てくれている存在や逆に自分が必要とする存在(親族や親友に限らず、少しでも気にかけてくれている存在、自分が熱烈なファンとなれる存在)がいることで、その存在が悪の流れから引き戻してくれる可能性がある。そのような命綱のような存在をできるだけたくさん持っておきたい。

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2025年06月22日

Posted by ブクログ

ジャーナリズムの意義、親子の関係、無敵の人。色々な要素がバランスよく折り重なって、テンポよく楽しく読めました。私たちは皆、汽水域を漂っている。

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2025年11月27日

Posted by ブクログ

「誰でもいいから殺したかった」
「人を殺して死にたかった」
最近よく事件のニュースで耳にするフレーズ。
そのたびに
他人を巻き込まずにひとりで死んでくれ
と強く思う。
そんな連続無差別殺傷事件について
フリーの記者として地道に取材を重ね
答えのひとつと
これからのヒントを導き出している。
ジャーナリストとしての
矜持や覚悟にも惹かれたけれど
犯人と自分を重ね合わせながら
自分自身の弱さをさらけ出すことで
ひとりの子であり、父であることの強さや
やさしさを取り戻していく姿に心を動かされた。

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2025年11月03日

Posted by ブクログ

「三人殺せば死刑になる」と無差別に通行人を刺した深瀬。
フリーの記者・安田は週刊誌から依頼を受け、その事件を追う。深瀬の同級生や担任、元恋人の取材を通じて次第に明らかになる過去。

他の媒体が深瀬を残虐な犯人と報じる中、元同僚は彼の印象が悪人とは違ったと語る。会社の不正を許せず上司に詰め寄った過去があり、周囲との衝突があったという。報道に違和感を抱いた元同級生もまた、深瀬の正義感めいた人間性や、父の借金で東大進学を諦めざるを得なかった過去を語る。

タイトルの「汽水域」とは淡水と海水の混ざる境界域を指す。我々もまた、ある種の汽水域に漂っているのではないか。自分が「正しい」と信じることが必ずしも正解として判定されるとは限らない。しかし深瀬は、正しいと信じたことを全て正解にしたかったのだろう。

本書はタイトルの汽水域を比喩に、善と悪、加害者と被害者、オールドメディアとウェブメディアといった複雑な領域を描き出す。

最終章では、息子が生まれてからも父性を感じなかった安田が、事件を通じて小さな父性の芽生えを経験する。だがそれは離婚後の最後の面会でのことであり、安田の喪失感に胸が締め付けられた。ただ、ライターとしての背中を見せるという小さな光を見出し、絶望のまま終わらなかったことに救いを覚えた。

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2025年10月24日

Posted by ブクログ

思わず読んでる最中に作者に対して「悔しい…ぃっっ」と発してしまった。汽水域ってそういうことかねと多角的に解釈したくなるストーリー。
安田の息子(海斗)のある一言に涙がドバッと来た。

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2025年10月11日

Posted by ブクログ

サスペンスは苦手分野。
でも、ブク友さん達のレビューを読んで
「これはきっと読むべき」と感じて手に。

皆さんも書かれているように、やはりレビューを書くのが難しい本だ。

無差別連続殺人を廻り、様々な社会問題を盛り込んだ作品。
中でも私はジャーナリズムのあり方について考えさせられた。

ジャーナリストは傷ついた人々にマイクを向け、苦しみの中からでてきた声をあらゆる手段で加工して世にだす。それはやり方次第で傷口に塩を塗るような存在になり得る。
それでも彼らは、社会のためにという使命感を持ち、誹謗中傷に堪えながらペンを握っていたのか…

ワイドショーや週刊誌を開くと芸能人や政治家のゴシップや殺人事件の容疑者を叩く記事ばかりが目に付き、虚しさを覚えることばかり。

安田のように事件を追い、容疑者の動機の真相を明らかにできれば、社会の歪みから生まれる殺意が掬われる世の中になるのかもしれない。
ジャーナリズムは社会を変える力を持っているのだ。

誰もが汽水域という、善悪の中に漂っている。
それでも、「自分の周囲に命綱が張り巡らされている」と思える者は、悪の流れに流されずにいられるはずだ。
誰もがその命綱を実感できる社会。
それこそが最も難しいテーマだ。
ジャーナリズムがそんな社会に近づける力をもっている。
その事に気づいているジャーナリストはどのくらいいるのだろう…

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2025年08月11日

Posted by ブクログ

亀戸で複数の死傷者を出した無差別殺傷事件が発生。犯人の深瀬という男は逮捕後、「死刑になりたかった」と供述している。事件記者の安田賢太郎は週刊誌での連載のため、深瀬とかかわりのある人物にインタビューし、彼について調べていく。しかし、安田の執筆した記事によって、深瀬の模倣犯が出現して…。ネット記事とか週刊誌とかあまり読まないのですが、記事を書くのにここまで信念を持ってやってる人もいるのかな。記事の見方(読み方)が少し変わる。

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2025年08月02日

Posted by ブクログ

 亀戸で発生した無差別殺傷事件、犯人の深瀬は「死刑になりたかった」とその動機を語る…。事件のことを深堀するのは、事件記者の安田賢太郎…深瀬と関わりのあった関係者に取材を重ねるうちに、共感する気持ちが芽生えるようになり…。

 どんな過去があろうとも、犯罪によって何も関係のない人々の命が脅かされるのは、やっぱりあってはならないことです。事件記者の安田なんだけど、きっとあたたかい家庭への憧れがあったんでしょうね…。でも、そのとばっちりを受けるのは息子なんだから、ちょっとしっかりしてよ!って言いたくなりました。

 タイトルの「汽水域」、初めて知りました。淡水と海水が混じり合う場所らしいですね…。この社会においても、善と悪の混じり合った人がほとんど…いつ、どう善悪が強くなるか、悪が強くなった場合自制できるのか、誰にもその本人にもわからない…。そう考えると、ちょっと怖さも感じます。

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2025年07月29日

Posted by ブクログ

犯行を決意した時、
全てに失望し、家族とか仲間とか、社会とのつながりとか…そういうものとも切り離されてしまい。
失うものがなく、
その凶行を「やらない理由」がない、
そう感じてしまったことが全ての引き金だったのか。

終盤、
誰かが自分を見ている。
つらい時は自分を見てくれる誰かを頼れ
絶対に1人じゃない
そんな言葉が出てきて、
自身が絶望した時にそう思えるかどうかってすごく大事で。
それがもしかしたら犯罪に手を染める、染めないの境界で。汽水域のようにはっきりライン引きできないもやもやとしたところなんだろうな。

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2025年07月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ



大量殺傷事件とそれを報道するマスメディア、家庭内暴力がテーマなので、大変重い内容である。


主人公の安田は仕事ひとすじのいわゆるダメ人間だけど、その仕事への情熱は凄まじく、ダメ人間である彼に魅力さえ感じてくる。

誰もが、正しさと犯罪の狭間で揺れている。そう、私もである。
その微妙な均衡を保つ命綱は、孤独ではないことではないか。
過去の自分を省みると、確かにそう思う。孤独より辛いものはこの世にない。


★心に残った文
どうか、この子の人生が明るいものになりますように。吹き抜けた3月の風は温かみを帯びていた。


この一文で、息子への愛情に懐疑的であった安田が、最高の愛情を示す言葉で私まで嬉しくなった。
海斗といつかまた会えるといいね!
安田だからこそ、海斗に教えてあげられることもたくさんあると思う!

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2025年07月12日

Posted by ブクログ

東京都江東区で通り魔により九歳の小学生女子児童を含む三人が死亡。四人が負傷するという殺人事件が起こります。
犯人は三十五歳の深瀬礼司で「死刑になりたい」と供述していました。

フリーの事件記者である安田賢太郎三十六歳は事件を追いかけて、深瀬にかかわってきた人物を取材します。
すると深瀬は中学から高校にかけて成績はかなり上位で「東大に入る」と周囲に言っていたことがわかります。
そして失踪した父親の借金を返すため高校を中退して働いていたこと。職場では正義感が強く社内の不正を指摘したことなどもわかってきます。

その後、安田の書いた記事を読んだと思われる人物による模倣犯による通り魔殺人が札幌で起こってしまいますが…。

記者の安田賢太郎が犯人の深瀬にみていたものはもしかしたら自分だったかもしれない犯罪者の姿でした。
最後の方に「安田と深瀬は一枚のコインの表裏だった」という一文がでてきます。

深瀬も安田の文章を読み安田の中に自分を見ています。
父親の存在によって今の自分になることを余儀なくされたと思っている二人。


作者の岩井圭也さんが仕掛けた作中のトリックはお見事でした。まんまと騙されました。

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2025年07月10日

Posted by ブクログ

作品毎に、全く異なるテイストの岩井圭也さん。
今回の作品は『汽水域』


●あらすじ

物語の主人公は、事件記者としてフリーで活動する
安田賢太郎 36歳。

記者として、亀戸で起きた無差別殺傷事件の容疑者
深瀬礼司の犯行動機に迫って行く。
逮捕後、「死刑になりたかった」と供述している深瀬。
彼を無差別殺傷事件に向かわせたものは、
一体何だったのか・・・

ジャーナリズムの真髄を求め、
時に同業者の裏切りや、
SNSの誹謗中傷に悩み苦しみながら、
安田が辿り着いた答えとは・・・


●レビュー

汽水域とは海水と淡水の間、つまり、両者が混ざり合った水域のこと。

言葉の意味すら知らなかったタイトル名だが、結末まで読み切ると、このタイトルに隠された岩井さんからのメッセージが、ジワジワと胸に響いてきた。

事件記者という珍しい視点からの社会派ミステリー小説は、被害者、加害者双方の立場を、客観的に捉え、
事件を客観視することの難しさが、とてもリアルに描かれていた。
人間という個体の心の脆さと、社会との結びつきの大切さを改めて痛感する。

犯罪に向かわせない為の抑止力。
社会と繋がり、自分を見ている誰かがいること。
些細なことかもしれないが、この命綱を、誰もが必ず持っていることを知っておく必要があるのだと思う。

安田自身が、深瀬だったのかもしれない。
その境地まで読者を導き、その境界線の危うさを訴えかけた筆力が、凄まじい作品だった。

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2025年07月09日

Posted by ブクログ

岩井圭也さん著「汽水域」
ここ数ヶ月で著者の作品は何冊か読んでいるが、扱うテーマや題材が多彩な上に専門的な事も多い。その割りに執筆ペースも早くどんどんと新刊が書店に並んでいく。
著者本人に興味を持ち始めている。どういう人なのだろうか?いずれトークショー等があれば話を聞いてみたいと思える作家さんの一人になっている。

今回の「汽水域」、まず書店で見た時のインパクト。緑色の表紙ってなかなか見ないなという感想。色味から訴えかけられ手に取らされた様な感覚もあった。

物語も秀逸でジャーナリズムとは?という真髄に迫る奥深さが読み取れる。
無差別通り魔事件の犯人の真の姿を追うと同時に主人公の内外にある親子関係の葛藤がしっかりとリンクしていて読み応えのあるミステリーサスペンスになっている。
随所で心情として重いものを引きずっていくため物語の展開は少なくそして遅い、なかなか読む手が進んでいかなかった。

しかし終盤の「ジャーナリズムとは」という真髄には共感させられる。それら含めてタイトル「汽水域」とは表現が粋だなと思わされた。

今後も著者の作品を読んでいきたい。

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2025年06月24日

Posted by ブクログ

汽水域とは淡水と海水が混ざる所。そして人は常に善悪の汽水域を漂っている。。確かに私も不安定な時があって、そういう時は命綱のどれかが、自分を引っ張ってくれて、かろうじて今日まで生きてきた気がするなぁ

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2025年06月08日

Posted by ブクログ

無差別殺人の容疑者を追う記者、安田。あんまりこのジャンルを読んでないんで取材の仕方とか新鮮に感じられる。今はもうSNSを駆使して情報を集めるんだ。一昔前はどうしてたんだろうと素朴に思う。
家族にも見放さられ、仕事にしか打ち込めない安田がどうしようもない人物に見えてくるが、有りがちなキャラにも思え中々共感は出来ない。
犯人の深瀬と同じく父親に憎悪を抱きながら生きてきたが故に心が近づいていくのはわからんでもないが、どうも物語に山が感じられず最後まで読み切ってしまった。
ただ、誰かと必ず繋がっている命綱がある限り、無敵の人にはなれない、と言う点はわかり、海斗にも伝えようとする最後の思いは良かった。

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2025年11月29日

Posted by ブクログ

通り魔事件が起きる。無差別に殺傷。犯人が捕まり、「なぜやったのか?」と聞くと「誰でもよかった、死にたかった」など訳の分からない動機を語る。ニュースを見て「だったら、一人で死ねばいいじゃん」、「こういうのには巻き込まれたくないよね」と友人たちと世間話みたいにおしゃべりして、そして忘れていく…。通り魔事件が起きた時の私の一連の流れ。

この物語はその流れがそのまま出てきます。でも物語では事件記者の安田賢次郎が、犯人の深瀬礼司の本当の姿を深掘りしていきます。どうして通り魔事件を起こしたのか?安田はただそれを知りたくて、深瀬の知り合いに取材します。

私はもともと記者が取材を通して犯人を特定する、という話が好きです。この物語は少しテイストが少し違う。人物像を知る事により事件の全容を見る、というのは今まであまり読んでなかった気がするので新鮮でした。物語を読んで、私は悲しい事件が起きても野次馬根性でニュースを見て分かった気になってたなと気付かされました。もちろん人を傷つけるのは許されない事。でも全容を知ればまた違う見方が出来る、一方的になっちゃいけないな。記事のどういう部分を読めばいいのか週刊誌を読む目的が少し変わったかも。
報道のあり方なども考えさせられますね。
安田が深瀬をどこまで知れるのかが読みどころですね。

私は、記者同士の駆け引きあり、騙し合いが面白いと思いました。

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2025年11月07日

Posted by ブクログ

うーん。読みやすいんだけど、あまり心に響かなかった。個人的に、もう少し犯人視点の話や事件に至るまでの背景を深掘りしたものが読みたかった。

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2025年10月27日

Posted by ブクログ

何年かに一度、無差別通り魔殺傷事件が起きているが、ノンフィクションかのようなリアルさを感じる話だった。

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2025年10月20日

Posted by ブクログ

少し刺さる部分があり、自分自身にも投影して考えることがあったので良かったです。

中年になり人生の折り返し地点で過去のことを振り返れば、良い思い出より後悔することの方が多い。勉強をもっと頑張っておけば良かった。新入社員で入った会社にもっと心血を注げば良かった。家族や友人ともっと誠実に向き合えば良かった。などなど、本書を読み進めるたびに思い起こしていました。

無差別殺人を起こす人物が過去にどのような人生を送ってきたのか、どんな心理状態にあったのか、事件の真相を事件記者が追っていく過程がとても良かったです。

贅沢できなくてもマイナス面が少ない子供時代を過ごせることが、いかに恵まれていることなのか読者に叩きつけてきます。そのことが特に刺さったし、実際に大きなマイナスを背負って社会に出なければならなかった人達もいることがよく分かる内容でした。

エンタメとしての要素が無かったので評価は普通となりましたが読んで良かったです。

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2025年09月11日

Posted by ブクログ

SL 2025.9.8-2025.9.10
誰もが常に、善悪の汽水域を漂っている。
無差別通り魔事件。犯人はなぜ犯行に及んだのか。被害者の思い、時に理不尽なまでに責任を追求する気持ち。ジャーナリストは中立な報道ができるのか。
こういった事件の加害者がここに至る背景や、被害者の誰に責任をぶつけても救われない思いとか、答えの出ないいろいろを考えさせられた作品だった。そしてジャーナリズムのありかたも。

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2025年09月10日

Posted by ブクログ

重たい。岩井さん、理系から文系に?二度と悲惨な事件が起きないように、その動機や社会的な背景を抉り出し社会に警鐘鳴らすのが事件報道の意義だろうけど、現実社会は表面なぞるだけのケースばかり。下世話な好奇心満たすだけで、主人公のような深掘りは…そもそも本人だって動機、理路整然とは語れない。「誰もが常に、善悪の汽水域を漂っている。100%の善や悪に浸かっている人間はいない。その時々で異なる濃度に身を置きながら、どうにかバランスをとって生きている。しかし、ごく稀に、極端な場所へ流されてしまうこともある。汽水域にいる限り、そちらへ流されないという保証はどこにもない」ここでも運か⁈

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2025年09月05日

Posted by ブクログ

 いやぁ、キツい!岩井圭也さんはどこに重点を置いて描いたのかわからないが、私にはジャーナリストの仕事が本当にしんどいと思えてならない。

 確かに色んな意見を受けるのはしょうがないかもしれないけれど、よほど信念を持ってないと務まらない仕事だと思った。

 主人公はフリーのジャーナリスト。仕事を理由に子育ての手伝いもせずに、妻との関係が悪くなり離婚している。そんな安田は取り決め通り、定期的(決して積極的ではない)に息子と会っては釣りなどをして過ごしていた。

 さて、無差別殺傷事件が起こり、安田は取り憑かれたようにその事件を追う。犯人は『死刑になりたい』一心で犯行に及んだ。なぜ死刑になりたかったのか。

 犯人の関係者にインタビューをしていくうちに、正義感の強い一面もあるなどの事実も浮かんでくる。

 物語は、なぜ無差別殺傷事件を起こしたのか。なぜ死刑になりたかったのか、それを辿ることに終始するが、安田の内面をより深く描いている。裏切りやバッシングなど、あまりにしんどい仕事だなと、私にはジャーナリストの大変さばかりが刺さってきた。それだけリアルに主人公側に立って描いているとも言えるのかもしれないが、あまりにも仕事以外での安田の無気力感が悲しい。ラスト、息子との会話にホッと胸を撫で下ろした。

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2025年08月04日

Posted by ブクログ

凄まじいペースで執筆を続けている印象のある作者、今作でも無差別殺傷事件を巡る報道という非常に重厚なテーマで、なぜ人は無差別殺人を犯してしまうのか、ジャーナリズムは何のために存在するのかという2つの命題を堂々と書き上げている。「汽水域」というタイトルが秀逸。

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2025年07月23日

Posted by ブクログ

亀戸で起こった無差別殺傷事件の容疑者は
“死刑になりたい”と供述した。

事件記者の主人公は、
この犯人に惹かれ、
取材を続けるうちに
だんだんと自分とその男との境界線があいまいになっていく。

正直主人公には共感はできず。
なんとなく結婚し
生まれた子どもに対しても無関心。
欲しいと思ったこともないし…みたいな態度、許せん。

でも仕事にだけは情熱を持ってる。
その気持ち、家族に対しても持って欲しかったよ。。

岩井さん、
毎回ほんとに違う作家さんのように
作品ごとに色が変わる。
書きたいことがたくさんあるんだな。

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2025年07月11日

Posted by ブクログ

マイブーム岩井さん。「汽水域」聞いたことない言葉。最後でわかるこの言葉の意味。犯罪のきっかけは暴力とぎゃんぶり依存の父親の存在。その取材をする安田もバツイチで月一面会だけをおこなうだけの男。父子の関係を深く考えてもらいたい感じの作品だった。タイトルのからみの内容がもう少し欲しかったな。

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2025年07月10日

Posted by ブクログ

亀戸の路上で男が通行人を切りつけ、三名が死亡する事件が発生。容疑者の深瀬礼司(35)は、調べに対し「死刑になりたい」などと供述。フリー記者の安田賢太郎は、犯行動機を調査するため深瀬の関係者に取材を進めるが…

一見、いわゆる“無敵の人”による犯行に見える事件が、調査を進める中で徐々に違和感が見え隠れし、謎が深まっていくプロットはリーダビリティが高い。食い扶持を稼ぐために必死に真相に迫ろうとする記者ジャーナリズム魂や、フリー記者ならではの世知辛い状況もひしひしと伝わる。父として息子との向き合い方も考えさせられた。
一方、事件の真相はちょっと無理があるように感じた。ミスリードにはやられたが、共感できないし得られるカタルシスは少ない。タイトルの“汽水域”。汽水(海水と淡水の混ざった水)を善と悪に喩えてるんだけど、しっくりこなかった。話は逸れるが、ウチの近所に流れている川の塩分濃度も河口に近づくにつれ濃くなっていくんだろうか。息子に自由研究で調べてもらおうかな(^^)

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2025年06月14日

Posted by ブクログ

今年に入ってからも同様の事件がたくさん発生している。群がるような報道の少し後には、消費された事件は跡形もなく、当事者の慟哭は忘れ去られる事が繰り返される。読者が知りたいことを書く事が使命ですって、1人の人生を狂わせて薄笑いを浮かべる金儲けの出版社がこれからものさばるのか。淀川より暗い道を歩いているようで暗澹とします。

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2025年06月11日

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