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Posted by ブクログ
フリーライターのなぜ書くかみたいな作品。
読み応えあった。
安田は息子の海斗を連れて釣りに来ていた。4年前に離婚した妻の子だ。
安田はフリーライターだ。3人を殺して4人を負傷させた深瀬礼司容疑者の事件を調べることになった。事件は亀戸駅の歩行者天国で起こったようだ。犯人は取り押さえられて、死刑になりたいと言っていたようだ。
車の中に海斗を残して行ったのだが、車に戻るといなかった。血の気が引いた。コンビニにいるというので迎えに行く。
大阪まで来て、約束していた元同級生に取材を断られるが、SNSで一緒に死なないかと言ってきた人間が犯人だったというアリサに会って取材できた。遠足のしおりみたいな自殺のタイムスケジュールを送ってきたので、つい会ってみる気になったという。だが話しているうちに勢いがなくなった。
シリーズで任せたいと言われて安田は喜ぶ。犯人は高校を中退していて、父のギャンブルによる借金と出奔が原因で働かなきゃいけないという。その頃淀川には通り魔がよく出ていた。
元恋人だという佐田清夏に連絡を取る。高校中退後の足取りがつかめて、工場で一緒に働いていた人と連絡をとる。
Posted by ブクログ
最も嫌いなタイプの主人公。自己中心的で仕事に託けて周囲の人を全く考えない。その仕事も政治家に次ぐ最低最悪。野次馬根性丸出しで人の嫌がることに口を挟み、興味本位の文章を並べて得意げに騒ぎ立てるだけのもの。社会への問題提起や知られていない悪事の暴露ならまだしも、後追いの3面記事などただのゴミです。それがジャーナリズムとか笑わせます。という設定なのにさすが岩井さん、すっかり話に引き込まれてしまいました。主人公の安田さん、そこまで自分を悪者にしないで、色々考えている真っ当な社会人だと思いますから、ご自分のお子さんにも逃げずにちゃんと向き合ってください。
Posted by ブクログ
物語の中身ではなく、外側について。
岩井さんの小説は、セリフと物語が、いかにもなセリフや物語としての書き言葉ではなく、本当に口から紡がれたかのような切り方、それも長い時も短い時もある。それが臨場感や焦燥感など、空気を作り出しているように思う。
また、キャラクターが「立っていない」。だから、本当にいそうで、本当にそう考えそうで、「ふつうに考えた範囲では、ふつうそうなるよな」と思えて、「いやそうはならんやろ」とあまり思わない(一部作品にはあるが)。
そうしたことが没入感をつくり出していると考えた。では人物に共感するか?というと、そういうことではない。ましてや今回の物語は共感してはいけない。そもそも創作物は共感ではなく、違和感を知るためのものだから。でも、その違和感によって、私の今を確認できる。それは『楽園の犬』もそうだった。
Posted by ブクログ
江東区の亀戸で無差別殺傷事件が発生。犯人は逮捕された後、「死刑になりたかった」と供述していると報道された。
フリーの事件記者・安田賢太郎は週刊誌編集部から依頼を受け、犯人として逮捕された深瀬という男について調べはじめたが……。
善悪の狭間でもがかざるを得ない人間にスポットを当て、その苦悩を描き出すヒューマンサスペンス。
◇
11月の隅田川テラス。今日は日曜日だが、晩秋の夕刻ともなると、さすがに人の姿は見当たらない。
そんな寒々とした中で、安田賢太郎は川面に垂れた釣り糸を見つめていた。
始めて3時間になるが、竿先はピクリとも動かない。それもそのはずで、シーバス釣りの時期はとっくに過ぎているのだ。
安田の横に座る海人は早々に釣りに飽きたようで、さっきからずっとスマホで動画を見ている。
今日はひとり息子の海人との面会日だ。
4年前に離婚してから定期的に海人と会っているが、どこに連れて行ってやればいいのか安田は未だにわからない。挙げ句、7歳の息子を季節外れの川釣りに連れ出して、退屈させてしまっているのだった。
釣果がないまま日没を迎え、海人と焼肉屋で夕飯を食べ終えたとき、安田はスマホに仕事のメールがいくつも来ているのに気がついた。
最新のメールは『週刊実相』の三品デスクからであると知り、慌てて開けてみると、
「ヤスケン、これ取材できる?」
とあり、その下にURLが貼り付けられている。
そのURLをタップすると飛んだ先はニュースサイトで、30分ほど前に配信された凄惨な事件についての記事だった。
そこには、
〈亀戸で通り魔 7人が死傷〉
という目を疑うような見出しが……。( 第1章 ) ※全5章。
* * * * *
無差別殺傷事件として世間を震撼させた亀戸で起きた事件。
犯人は深瀬礼司という35歳の男で、深瀬は動機について、「死刑になりたかった」と供述しているということでした。
安田は最初、フリーの事件記者としての打算で取材を引き受け、事件を調べはじめました。
けれど深瀬について調べを進めるうち、安田はなぜか事件への執着を覚えるようになります。
そして、週刊誌での連載ルポを2回で打ち切られてからも、安田は自費で取材を続けていくのでした。
「善」と「悪」の狭間でもがかざるを得なかった深瀬の人生を知るに従い、似た境遇で育った自らを省みる安田。
深瀬は罪を犯し、自分はすんでのところで踏みとどまった。しかし、そのとき立っていた場所は、善悪のどちらにも染まり得るという点で、深瀬と自分に違いはなかった。
中盤過ぎまでの安田の心情は、ざっとですが上記のような推移をたどります。
まったく、ずしりと重く心にのしかかる展開です。読んでいて、実にしんどい。
重圧に弱いいつもの私なら、少しずつ消化しようとして、恐らく何日もかけて読んだでしょう。でも今回は読むのを止められませんでした。
そして読み終えたあとは、世間や人間そのものの不条理について、柄にもなく考えてしまうなど、余韻をかなり引きずりました。
これはもう、岩井圭也さんの圧倒的な筆力のなせる業であると、しみじみ感じ入ったのでした。
また、『汽水域』という作品タイトルも秀逸だと思います。
でもやっぱり疲れました。
Posted by ブクログ
「三人殺せば死刑になる」と無差別に通行人を刺した深瀬。
フリーの記者・安田は週刊誌から依頼を受け、その事件を追う。深瀬の同級生や担任、元恋人の取材を通じて次第に明らかになる過去。
他の媒体が深瀬を残虐な犯人と報じる中、元同僚は彼の印象が悪人とは違ったと語る。会社の不正を許せず上司に詰め寄った過去があり、周囲との衝突があったという。報道に違和感を抱いた元同級生もまた、深瀬の正義感めいた人間性や、父の借金で東大進学を諦めざるを得なかった過去を語る。
タイトルの「汽水域」とは淡水と海水の混ざる境界域を指す。我々もまた、ある種の汽水域に漂っているのではないか。自分が「正しい」と信じることが必ずしも正解として判定されるとは限らない。しかし深瀬は、正しいと信じたことを全て正解にしたかったのだろう。
本書はタイトルの汽水域を比喩に、善と悪、加害者と被害者、オールドメディアとウェブメディアといった複雑な領域を描き出す。
最終章では、息子が生まれてからも父性を感じなかった安田が、事件を通じて小さな父性の芽生えを経験する。だがそれは離婚後の最後の面会でのことであり、安田の喪失感に胸が締め付けられた。ただ、ライターとしての背中を見せるという小さな光を見出し、絶望のまま終わらなかったことに救いを覚えた。
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