岩井圭也のレビュー一覧

  • この夜が明ければ

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    各章で語り手になっていない人物がほとんどいない作りになっており、結末の予想がつきづらかったです。
    それぞれが抱える過去がどれもつらく、全員幸せになってもらいたいと思いました。

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    2025年01月03日
  • われは熊楠

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    南方熊楠は粘菌の研究家と思っていたが、それどころではなく、菌類や植物、およそ自然の中に生存するものすべてにはつながりがあり、そのすべてを知り尽くしたいと望む人であった。
    脳に持病があり、(死後の脳から海馬に萎縮が見られたことがわかった。原因の一つかもしれない)てんかん発作や癇癪を起こしたり、暴力を振るったりするので、寄行も絶えなかった。

    評伝のようでもあるが、小説として色々なファクターを含んだ描きかたがしてある。宗教的な問いかけがあったり、男色を匂わせる要素も取り入れ、(実際は不明だが、研究していたことがある)熊楠の頭の中の表現は独特だった。それは熊楠の情熱であり、自分のidentityを問

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    2024年12月31日
  • 楽園の犬

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    ネタバレ

     そうだったのか。と、参考文献を読んで納得した。なぜこういう設定の小説が生まれたのか。南洋通信だったのか。
     虎になる男のことは、コメント欄では、あまり話題になっていないのかな。

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    2024年12月13日
  • 舞台には誰もいない

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    ──私はもう、遠野茉莉子という役から降りた。
    私は今、誰でもない、ただの〈私〉だ。──


    語り手は幽霊の茉莉子。
    ずっと自分自身を演じて生きてきた。
    演じる事でしか生きられない人生とは…


    最初から最後まで不穏な空気を纏ったまま、物語は進行していく。
    しかし重苦しくは感じず、すいすいと頁を捲ってしまうのは、私が岩井さんの文章を好きだから?


    人間は誰でも、様々な顔を持っていると思う。
    職場での自分、実家での自分、友人の前での自分、家族との自分…
    と、それぞれ違うはずだ。
    では一人でいる時こそ、本当の自分なのか?
    それもよく分からない。
    だって、どれも自分だから。


    しかし茉莉子はこうい

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    2024年12月06日
  • 楽園の犬

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    戦時下のサイパンで海軍の諜報活動をせざるを得なくなった麻田健吾の話。ある意味、密室とも言えるサイパン島で海軍少佐から無理強いされる諜報活動における推理ドラマと、戦争に翻弄される民間人の苦悩の両方を見事に描いている。

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    2024年12月04日
  • 舞台には誰もいない

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    ネタバレ

    女優 遠野茉莉子がゲネプロの最中に奈落に落ちて亡くなった。公演は中止となり、劇場に関係者が集まる。それを袖からそっと見ている茉莉子。茉莉子が自分の過去を語っていく。


    ちょっと思っていたのと違った。ミステリーだと思っていた。
    茉莉子の死が事故なのか、自殺なのか、他殺なのか、それを問題にする話かと思っていたのだけれど、そうではなかった。なのに、読ませる読ませる。ハードカバーの分厚い本なのに、一気読みしてしまった。
    単にあらすじだけ書いてしまえば、「面白くない話」と私は思ってしまっていただろう。しかし読んでいると目が離せず、次を読みたくなる。茉莉子の生き方は共感を得にくいし、そりゃ病むわ、と思わ

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    2024年12月04日
  • いつも駅からだった

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    ストーリーも連作で面白かったし、最後の謎解き仕掛けも良かった!!!
    実際に謎解き街歩きやりたかったなー

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    2024年11月24日
  • この夜が明ければ

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    季節バイトに集まった7人のうち、1人が遺体で見つかる。犯人捜しのミステリに進むのかと思いきや、意外な方向に。
    先が気になって一気に読んだ。
    踏み出した明るい場所に待つものが、本当に夜明けなのかは分からない。
    ただ、過去への執着やしがらみから抜け出し、意志をもって踏み出す一歩こそが、自分を変えていくのだと感じた。

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    2024年11月24日
  • 舞台には誰もいない

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    ゲネプロ中に奈落に落ちて死亡した女優、遠野茉莉子。彼女がなぜ死んだのか?彼女の生い立ち、遠野茉莉子がどういう人間だったのか?を幽霊となった遠野茉莉子が、自分自身を淡々と語っていく。
    たぶん淡々と語る口調が、人の怖さを感じさせる効果があるんだろうな。なんか終始怖かった。

    まず彼女の生い立ち。毒母のせいで感情が欠落してしまう。高校生の時、女優になろうと決めたきっかけがあるんだけど、そこが怖い。感情が欠落してるせいなんだと思うけど、とっさにあんな行動が出来るものなのか?

    女優の遠野茉莉子も怖い。役作りのためにそこまでやるのか?そこまで追い込むものなのか?役者という職業をよく知っている訳ではないの

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    2024年11月23日
  • 舞台には誰もいない

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    主演女優が舞台直前に亡くなった、ミステリーと思いきや主人公がこうしなければならなかった切ないノワール文学に近い本でした。
    岩井圭也さんの作品は楽しみに拝読していますが、今回も期待を超えた深い洞察で、読み進めながらも考えさせられる内容でした。

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    2024年11月17日
  • 楽園の犬

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     舞台は太平洋戦争開戦前の1940年のサイパン。タイトルの「楽園の犬」の犬とはここではスパイのことを意味します。
     スパイと聞くとドラマや映画ではなんとなくかっこいいいイメージもありますが、実際には孤独で常に危険と隣り合わせの命を賭けた任務のように思います。スパイであることにいいことは一つもないように思えてしまいますが、抜けたくても抜けられなくなってしまうのでしょうね。
     日本ではスパイ活動を取り締まる法律がなく、世界からは「スパイ天国」と言われているようです。大丈夫なのかな?
     第二次世界大戦のさなかに勃発した太平洋戦争では、アメリカには石油等の資源量、経済力や軍事力でも到底敵わないことをわ

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    2024年11月16日
  • 舞台には誰もいない

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    ゲネプロの最中に不可解な死を遂げた女優・遠野茉莉子。
    事故なのか、自殺なのか、『幽人』の関係者たちが彼女について語りだすのだが、ラストに幽霊になった彼女が語ったのは…。

    母親の言いなりに生きて、自分の感情を露わにすることがなかった彼女が、高3の夏に母を事故で亡くしてから好きに生きようと東京へ出た。

    自分以外の役柄を演じることができるなら別の誰かになれると役者の世界へ。
    最初についた役の名前〈遠野茉莉子〉を芸名にし、影響を受けた劇作家・名倉敏史が信奉するメゾット演技を武器にして名だたる舞台女優となったのだが。


    彼女にはしばしば母の幻影が取り憑いていたのも誰かを演じなければ自分というものが

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    2024年11月14日
  • 飛べない雛 横浜ネイバーズ(2)

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    ネタバレ

    横浜ネイバーズの第二弾、第4章のマザーズ・ランドは地面師の話で特にサクサク読み進めることができた。QRコードを使った詐欺やSNSなど現代を表したわかりやすいストーリーだと思う。

    心に残ったワード
    P60 大半の人はあなたを外見で判断する。しかしごく一部の人は外見以外の部分に目を向けてくれる。ルッキズムに満ちた世の中は誰があなたに取って本当に大事な人かを教えてくれるはず

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    2024年11月10日
  • この夜が明ければ

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    ネタバレ

    初めて文庫本を3時間強で読破しました。
    一文一文が短く簡潔で読み易いため、工夫の凝らされた文章を楽しむというより、展開を楽しむ本という印象です。
    映像化したら面白そう。

    登場人物がみな魅力的でしたが、主人公と唯ちゃんだけがずっと気味が悪かったです。
    その不気味さも、心の内が知りたくて早く読み進める促進剤となりました。
    独白シーンで、主人公には共感できましたが、唯ちゃんは本当に気持ち悪いと思いました。

    最後は皆でお金持ってバイト飛んだという解釈で合ってるのでしょうか。
    本人たちが自分の過去をそれで清算できるなら、それでよいのでしょう。
    雇用者が可哀想だな、と思いましたが。

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    2024年10月31日
  • この夜が明ければ

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    書店で見つけて衝動買いしました。北海道が舞台というのが気に入って。読み始めたら、止まらなくなりました。あっという間の350ページでした。次どう展開するのかが待ちきれなくなります。

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    2024年10月29日
  • 舞台には誰もいない

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    物語の中へ引き込む力が凄まじい。
    そして一旦はまってしまったら
    主人公の舞台女優がどんどん
    破滅へと向かっていくのと同様
    途中で抜け出すことができない。
    ずっと誰かを演じなければ
    生きてこられなかった女の半生が
    あまりにも過酷すぎて
    悲しいとか辛いとかの感情も超え
    最後まで本当の名前も明かされないまま
    顔も本性もわからず
    まさに幽霊を見せられている?
    かのようだった。

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    2024年10月22日
  • この夜が明ければ

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    重かった。季節アルバイトで北海道南端の港町に集った男女7人。描かれるのはたったの1日。7人それぞれが秘密や葛藤を抱えていて、それぞれがみんな重い。悪い見方をすればミステリーの形を借りた不幸自慢ともいえる。全体としてまとまりがあるのか、登場人物たちの夜は本当に明けたのか、スッキリしない感じも残ります。ただ、読みごたえはあるし、いろいろと考えさせられるお話でした。

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    2024年10月19日
  • 暗い引力

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    表紙のイラストがとても印象深く手に取った。
    6話の短編それぞれ、このイラストの如く、闇に堕ちるようなお話。それぞれとても面白かったし、同時に表紙から受け取る印象を全く裏切ってない。

    中でも「極楽」
    借金から逃げるために認知症を装って施設で匿われるお話。
    自分が突然行方不明になったら、唯一の身内である一人息子に迷惑がかかる、、であろうが、そんな事はお構い無しで、、
    それも仕方ない、唯一の親孝行だと諦めてもらおう、、なんてお気楽な主人公。
    暗い中にもクスッと笑える部分あり、飽きずに楽しめた。

    この作家さんは、色んなテイストの物語が得意らしく、どれもとても好評らしい。ぜひ、読んでみよう!

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    2024年10月16日
  • プリズン・ドクター

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     肩書が矯正医官、つまりは塀の中のお医者さん(刑務所Dr.)、この特異な名称や業務内容、周辺事情を初めて知りました。

     本作は文庫書き下ろしで、序章・終章に挟まれた4章で構成されています。舞台は北海道の千歳刑務所。主人公は、新人矯正医官・是永史郎です。神経内科の専門医を目指していますが、奨学金返還免除のため、3年の期限付で(渋々)赴任しました。

     第1章を読み、是永の矯正医官としての成長譚として、ヒューマン・ドラマが十分成立すると思いましたが、いやいや岩井圭也さん、攻めてきます。
     医療サスペンスに加え、是永の母(認知症)と父(犯罪者)という家族ドラマ、さらに岩井さんには珍しい?是永の恋愛

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    2024年10月09日
  • 付き添うひと 子ども担当弁護士・朧太一

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     2000年の少年法改正により、少年審判の手続きや処遇を適正に進めるため、裁判所に協力する役割を果たす「付添人」(主に弁護士が担当)が公的に認められたとのこと。つまりは、被疑者の少年(少女を含む)の味方となる人ですね。

     本作は、副題の「子ども担当弁護士・朧太一」が主人公の、5話からなる連作短編集です。名前はオボロ、見なりはオンボロ‥、でも少年たちへ寄り添い、手を差し伸べ続ける熱い心の持ち主で、自身が過去に傷を負っている背景がありました。

     オボロは様々な問題を抱えた子どもたちへ真摯に対峙しますが、彼らはなかなか心を開かず、SOSの声の上げ方もわからないようです。それでもオボロの丁寧な語り

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    2024年10月08日